第24話「炎と、煙と」


ばさらの森武闘会。Cブロックの第三戦が始まろうという頃。

政宗「小十郎、幸村のこと頼めるか」
小十郎「は…それは無論…。闘技場へ行かれるのですか」
政宗「あぁ…」
小十郎「…やはり、あの松永。気になりますか」
政宗「ん、そういうわけじゃねェが…。とりあえず、な」
小十郎「分かりました。向こうには片倉もいるので大丈夫かと思いますが…政宗様、くれぐれも無茶な真似はされませんよう」
政宗「あぁ…? ハッ、何だそりゃ。別に暴れたりはしねーよ」
小十郎(だといいが……)←溜息をつきつつ、松永が寄越した紙袋をちらりと見やるパンダ小十郎

――そして、闘技場では――

(人間の方の)小十郎「政宗様!」
政宗「おう。こっちはどうなってる。ひでェ有様だな」(闘技場の各所に崩壊の後があり、呆れたような顔をする政宗)
小十郎「は…。現在はBブロックの第三戦が終了したところです。織田軍とその配下、前田家との戦いだったのですが…、前田側に軍配が上がりました」
政宗「へえ」
小十郎「前田利家の女房がそれは恐ろしい動物使いでして…。自分も動物なのに」
政宗「あん…?」
小十郎「巨大な熊や猪を操る技です。しかし今回はその動物の戦闘というよりは、それらが意味もなく闘技場の周りを暴れまくったせいでこのように…。現在は石板入れ替え作業と整備の為に小休止に入っております」
政宗「何だかよく分かんねーが…」
小十郎「それより、真田殿は大丈夫ですか。佐助殿からある程度状況は伺いましたが…脱皮されたとか」
政宗「ああ…つか、てめ! 何で“脱皮”のこと、俺にあらかじめ説明しておかなかったんだよッ!」
小十郎「は…? ご説明しておりませんでしたか?」
政宗「聞いてねーよっ。お陰でめちゃめちゃびびっちまったじゃねーか!」
小十郎「しかし、あのパンダ小十郎とて昔は殿の城におりましたし」
政宗「ガキの頃の事だろっ。覚えてねーっての!」
小十郎「そ…それは失礼致しました。しかしそんなにムキにならなくても…」(政宗の突然の興奮っぷりにやや引き気味というか驚く小十郎)
政宗「べ、別に……。…――ん?」

風魔「……………」

政宗「…? 何だ…」
小十郎「北条のところの忍…」(途端警戒して政宗を庇うように立ちはだかる小十郎)
風魔「……………」←何も言おうとしない。だが、確実に政宗を凝視している。
政宗「よう、アンタ足は大丈夫かい? 先の戦いで武田のオッサンにやられたろ?」
風魔「……………」
政宗「俺とお喋りする気はねェみてーだな? なら何で来たんだよ。お前の主はどこだ?」
小十郎「確か次の試合に登場するはずです。相手は……松永久秀」
政宗「そうか、あいつの相手があのロバの爺さんだったのか…」
小十郎「…? 松永を観に来られたのですか」
政宗「まぁそういうわけでもねーんだが…。ん」(突然覆い被さる影に眉をひそめる政宗)
風魔「………」(一瞬の隙に小十郎をすり抜け、政宗のすぐ傍に移動してきた風魔)
小十郎「政宗様!」
風魔「……………」
政宗「……足は大した事ねーみてーだな。凄ェ動きだ」
風魔「……………」(黙ってすっと政宗の前に何かを差し出す風魔)
政宗「……?」(それを同じく黙って受け取る政宗)
風魔「……っ」(すぐに飛び退り、消える風魔)
政宗「……何だあいつ」
小十郎「政宗様…? 奴は一体…?」
政宗「…さあな。けど、とことん無口ってわけでもねーらしい…」(風魔が渡してきて物を見つめる政宗)


――そして闘技場整備が終わり、Cブロック第三戦。北条氏政vs松永久秀――


北条「キエエエ! ご先祖様ああぁ〜! 今こそ北条の底力を見せる時、キエエエエ〜」
松永「耳触りな……」
北条「キエエェ! ワシは勝ぁつッ! 松永久秀ッ! 我が伝統ある北条の槍を喰らうがいいッ! トウリャアッ!!」(ぶんぶんと巨大な槍を振り回し、真っ直ぐに突進するおじいちゃん)
松永「北条家……。生きた化石に興味はないが、北条の城に眠る宝物は大いに興味深い……フフッ」
北条「むむうぅ…ッ!? 見かけによらず、ちょこまかと避けおって…!!」(何度槍を突こうとしてもほんの数ミリの差でかわされてしまうおじいちゃん)
松永「北条の。3割方手加減するという事で手を打たないか? それにより、今後も卿は五体満足でつつがない老後を送れよう。代わりに――…、卿のあの城を丸ごと私に譲るというのは…?」
北条「ヒッ!? な……ななな、何を、ぶあっかな事をぉ〜【怒】! こ、この無礼者があぁッ!!」
松永「……ふ。やはり、交渉決裂、か?」(と、同時にぱちりと指を鳴らす松永)
北条「……ッ!?」
松永「さらばだ、醜く愚かな化石よ……」(松永の足元から激しい炎が沸き立ち、闘技場の石板を激しく破壊しながらおじいちゃんへと向かっていく)
北条「ぎゃ…。ぐあああああッ!!!」(炎にまみれるおじいちゃん)
松永「………我が炎に包まれるその一瞬だけは、どのような屑も美しく散れよう」


小十郎「これは……何の躊躇いもなく……」
政宗「観客席まで燃えてるぞ…。ちっとやべえな…。ん!」


風魔「………ッ」(突然闘技場に現れ、煙幕と共に氏政を救出する風魔)
北条「がはっ……ふ……風魔……」
松永「………伝説の忍か」


政宗「何だ…!? 炎と煙でよく見えねェ…!」
小十郎「ですが確かにあの風魔が入っていきました! あ…ッ!」


審判「終了! 終〜了〜ッ! 助っ人の参入は禁止! この試合! 松永久秀の勝利!!」
別の審判団「消火だ! 急げッ!!」
別の審判団「お客様ッ! 非常口から落ち着いて! 落ち着いて順番に避難して下さいッ!!」
別の審判団「消火〜! それに医者だ! 医者を呼べーっ!!」


政宗「……とんでもねえ騒ぎだな」
小十郎「ええ…。政宗様、煙の勢いが凄いです。我々も一旦外へ出ましょう」
政宗「そうだな…。あのロバの爺さん、大丈夫か?」
小十郎「風魔が逸早く救出に入りましたし、心配はないでしょう。…それよりもあの松永…全く周りを意に介しておりませんでしたね。ああいう手合いが一番厄介です」
政宗「そうだな…。で、あの忍はそういう厄介なのを俺に押し付けようって腹なのか?」
小十郎「……? 政宗様、それは…?」
政宗「あの忍が俺に押し付けてきたモンだ。よくは分からねーが、対抗策があるなら何で主に渡さねーんだよ…」(政宗の手にあるのは小さな袋に入った謎の黒い粉。どうやら何らかの忍道具らしいが…?)
小十郎「政宗様は各方面より色々と期待されているようですからね」
政宗「迷惑な話だな…」(軽く肩を竦める政宗)


闘技場は未だ炎と煙とでパニック状態になっている。この調子では次の試合も遅れが出そうだ…。
不敵な松永を振り返り見ながら、政宗は闘技場を後にする。以下次号…!!




つづく



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