第28話「棄権」


ばさらの森武闘会。Cブロックの第四戦が始まろうという頃。

政宗「はぁ!? Bブロックの試合、もう終わったのか!?」
小十郎「はい。予想外の早さに、大会運営者も途惑い気味です。幾らスピードアップが命題と言っても、ここまで早いと観客も興冷めでしょうし…」
政宗「ったく、あのバカチカ! あいつは一体何してやがんだッ!」
小十郎「おや。まだ私はどちらが勝ったかは申し上げていないのですが…」
政宗「あいつが負けたに決まってんだろ! こんなアホな結末、誰にも予想出来ねえ! あいつはそーゆー事を平気でかます奴だ!!」←大抵失礼発言

元親「……ぶえっくしょんッ!! ……うぅ、ちくしょうめ……!!」(浜辺の方にまで飛ばされて、海水にツッコミずぶ濡れのチカちゃん。本当にすまん)

政宗「……で? 次のパンダ小十郎はまだ帰ってきてねえよなぁ…」
小十郎「先ほど家に向かったばかりですからね。さすがに」
幸村「さ、佐助を呼びに行かせました故…! 片倉殿なら、直に戻ってこられるかと!」
政宗「すまねェな幸村。お前に借りが出来ちまった」
幸村「! べ、べべ別に……某は、借り、などとは、思ってござらん……」(そっぽを向きながら終始頬が赤い幸ちゃん)
小十郎(ん……?)
政宗「とりあえず、大会運営本部にもう少し待ってもらえるように掛け合ってみようぜ。今回は石版が破壊されるなんて事もなかったみてェだし、下手したら明智の野郎が不戦勝なんてふざけた結果になっちまう」
小十郎「そうですね。では――…おや」

元就「次の試合は30分休憩を挟んで後の再開だそうだ」

政宗「元就!」
幸村「!!!」
小十郎「いらしていたのですか。こちらへ来てからお姿をお見かけしていなかったので、どちらにいらしていたのかと思っていたのですよ」
元就「ふん…。バカな元親があまりに煩いから避難していたのだ。先ほどの無様な試合……全く目も当てられぬわ」
政宗「怒ってんのか?」
元就「どうでもいいわ。……が、腹立たしい気持ちがないと言えば嘘になろう。あの鬼は我自らがこの大会にて鉄槌を下そうと思っていたのでな」
政宗「ハッ、おっかねえな。…それより、次の試合が30分後ってのは?」
元就「これの次が我の試合なのでな。日が暮れる前に終えて家に帰りたい故、さっさと始めろと意見しに行けば……、どうやらそちらの片倉だけではなく、対戦相手の明智も行方が知れぬそうだ」
政宗「あん…?」
元就「選手双方がおらぬので、一応時間を決めて待ってみるそうだが、どちらか…或いは双方共に時間内に現れなければ、試合進行上、両選手とも棄権とみなし、失格にするとの決議が出た。我は時間など決めずとも、さっさと失格にすれば良いと思ったのだが」
政宗「おいおい、そもそもアンタんとこの元親があんな早く試合終わらせるから、うちの小十郎だって迷惑被ってんじゃねえかよ」
元就「……誰が誰のものだと? 総毛立つような事を述べると、如何な貴様でも容赦はしないぞ」
小十郎「ま、まあまあ…。お2人の仲が宜しいのはよく分かりましたので、待つ間はお茶にでもしませんか? ちょうど用意も整っておりますし」
元就「……仲など良くはない。貴様も我の日輪の力で焼かれたいらしいな」
政宗「俺だってごめんだぜ。こんなツンツンした狐はよ!(はぁ〜、幸村のもふもふした毛皮が懐かしいぜ…)」
幸村「……しょぼーん」(がっくりと項垂れている幸村さん)



その頃、ばさ森の奥の奥。
そこはパンダ小十郎の家の近くでも、トーナメント会場の通りにもかからない、深い茂みに囲まれた場所。

パンダ「どうやらテメエは、晴れやかな表舞台じゃなく、こういったドス暗い場所で卑怯な闇討ちをするのが好きらしいな?」
明智「くっくっく…。いえ、何ね…。明るい場所だと余計な邪魔が入るのじゃないかと思いまして…。でも、貴方だって私の誘いに乗ってくれたじゃあないですか。ここを闘いの場所に選んだのは貴方だって望むところだったようにお見受けしますよ……」
パンダ「まぁな。人目…おっと、どうぶつたちの目につくところで血生臭い争いをしたくはねえ。特に、テメエのような毒虫を退治するところなんざ、俺1人が見れば十分よ」
明智「くくくく……つくづく失礼な方ですね……。私は虫じゃない。ハイエナですよ…。常にお腹はぺこぺこでも、何でも飛びついてがっついたりはしません。遠慮深くて慎ましやかな、上品な獣なんです」
パンダ「それはお前以外のハイエナの事なんだろうよ…! とりあえず、構えな。テメエがコソコソと俺の後をついてきた時点で、テメエの運命は決まった。あんな武闘場じゃあなく、この藪の中で汚く這い蹲ってもらうぜ…!」(スラリと剣を抜いて構えるパンダ小十郎。繰り返しますが、姿はパンダです。パンダの着ぐるみを着ているような感じでお願いします)
明智「ふふふふ……いいですねえ、その眼…! 実に美味しそうです! 私は美味しい物に本当に目がないんですよ…! だからあの小熊さんも大変美味しく頂きました…!」
パンダ「! テメエ…!」
明智「……ですが、あの小熊さんは……実際に絶品、というまでには至りませんでした」
パンダ「……!?」
明智「……もう少し熟れてからにするべきだった……。自覚直後の甘酸っぱい途惑いも可愛いものですが、まだ確信にまで至ってはいなかった。だからあの男の名を持ち出しても、まだ私が本当に欲する表情をしてはくれませんでしたから…」
パンダ「……何をぶつぶつ言っていやがる……?」
明智「だからね、決めたんです」(自らもようやく大きな鎌を振り上げてパンダ小十郎を見る)
パンダ「むっ!」
明智「人間の姿にして、本当の恋とやらを意識してもらった後……小熊さんの大切な男を餌食にし、それからもう一度あの小熊を喰らおう…ってねぇ…!」(話しながら、突然鎌を振り上げて地面の土をパンダ小十郎に向けて振りかける明智)
パンダ「貴様…っ!?」(それによって一瞬目を潰されるパンダ小十郎)
明智「ヒャウッ…! フハハハハ……!! さあ、死になさい、竜の右目……!!!」



そして大会、会場では。

審判「時間切れ…! Cブロック第四戦、片倉小十郎vs明智光秀の試合は…ッ!! 両者共に会場に現れない為、棄権とみなし、ドロー! 両者を失格と致します!!」
観客「うわあああああ!!!!」(怒号と驚きの声で会場内騒然)

政宗「……間に合わなかったか」
幸村「佐助は何をしていたのだ…!」
小十郎「しかし、妙ですね。うちの片倉だけでなく、明智の方まで姿を見せないとは……」

蘭丸「もう〜! 光秀の奴、一体何をやってるんだよーっ。負けちゃったじゃないかっ!!」
濃姫「……上総之介様のお力になれない輩など、もう帰ってこなくともいいわ。この濃が上総之介様の敵は全て打ち払う…!」
信長「フン……!」


人(どうぶつ)知れずパンダ小十郎と明智の闘いは続くが、大会はどんどんと先へ進む。
パンダの命運は!? 以下次号…!!




つづく



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