第29話「オヤジ顔が見てた」


ばさらの森武闘会。Dブロックの第四戦が始まろうという頃。


政宗「ちょ〜〜〜〜ど、うまい具合に日が傾いてきたな」
小十郎「そうですね。恐らくこのブロック最終戦をもって本日は閉幕でしょう。どう致しましょうか。最後の試合…ご覧になられてから、お帰りになりますか」
政宗「そーだな。元就の奴も、どーせ俺らくらいしか応援してやるのいないだろうし。観てってやるか」
幸村「!」
小十郎「……? 幸村殿、どうかされましたか。何やら先ほどから顔色が優れぬようですが」
政宗「?」
幸村「べ……別に……何でも、ござらん……っ」
政宗「ホントかよ? 傷が痛むんじゃねェのか。熱とか――」(言って幸村の額に触れようと手を伸ばす政宗)
幸村「……ッ! し、心配ご無用ッ!!」(咄嗟にその手を叩き落とす幸村)
政宗「ってえ……」
幸村「あ……」
政宗「何すんだよ。ちょっと熱計ろうとしただけじゃねェか」
幸村「も、申し訳ござらん…」
政宗「? いや…別に…いいんだけどよ…」


審判「これより! Dブロック第4試合、毛利元就vs上杉謙信の試合を始める!」
観客「わーわーわー!!!」
かすが「きゃああああ!!!! 謙信様ああああああ!!!!!!」←誰よりも声がでかい


政宗「お。始まるようだぜ」(すぐに意識が武舞台へと向かう政宗)
幸村「!」←ガーンな感じ
政宗「相手の上杉って野郎はこの森の表のボス、武田のオッサンのライバルだって言うじゃねーか。どうだ、真田幸村。弟子のお前から見て、師匠のオッサンと上杉謙信とやらの実力差は?」
幸村「………」
政宗「……? 幸村?」


毛利「日輪よ! 照覧あれ!!」
上杉「おちぬ、てんめいあればこそッ!!」(刃を剣で返す凄まじい攻防が繰り広げられる)


小十郎「何と……両者共に素晴らしい太刀筋です。これは見応えがある」
政宗「あぁ……」(しかし様子のおかしい幸村が気になるので試合に集中出来ない)
幸村「〜〜ッ! そ、某……! 失礼するで、ござる!」
政宗「は?」
小十郎「え? しかし――」
幸村「片倉殿を呼びに行った佐助も戻ってきませぬ故…! 某、一足先に屋敷に戻るでござる!」
政宗「おい待てよ。試合、観なくていいのか?」
幸村「そ、某は政宗殿と違い、この試合を観る理由なぞ…! 何故、そのような事――…」
政宗「は? 何故って、この試合の1人、上杉謙信はお前の師匠のライバルだろ? だからお前はオッサンの代わりに、このゲームを見届ける義務があんじゃねーのか? つか何だ、俺こそ、この試合を観る理由って?」
幸村「ま、政宗殿は元就殿の事が気になるのでござろう!? は、離して下され!」(いつの間にか政宗に腕を掴まれていてびびる幸村)
政宗「そりゃ気になるだろーがよ! ダチの試合ともなりゃ――」
幸村「そ、そんな風には見えませぬ! もっと…!」
政宗「もっと? もっと、何だ?」
幸村「もっと特別な――…。……っ」
政宗「はぁッ!? 何だって!? よく聞こえねーよ、言いたい事あんならきっちり――」
小十郎「政宗様、席を立ったままでは後ろのお客様にご迷惑がかかりますよ。幸村殿も――」
幸村「某は、帰る!!」(バッと政宗の腕を力強く払い、真っ赤になって怒鳴る幸村)
政宗「……ッ」
幸村「某は! 政宗殿の事など、嫌いでござる!!」(だだだーっと言い捨て御免な勢いで走り去る幸村)
政宗「……っ」←絶句な政宗


その間にも、元就と謙信の壮絶な闘いは続いている――。
観客席からは絶え間ないどよめき、感嘆の声が漏れる。


小十郎「……政宗様、お座り下さい」
政宗「……ち。何なんだあいつ。急に怒り出しやがって」
小十郎「人間の姿になった事とも相俟って、頭の中を整理するのが大変なのですよ」
政宗「だからって何で俺に当た――…」
小十郎「? 政宗様?」
政宗「……何だありゃ……」
小十郎「は?」
政宗「……来い、小十郎。幸村を追うぞ」(言ってダッシュで幸村の後を追う政宗)
小十郎「は!? は、はい…っ!」(言われて自らも慌てて立ち上がる小十郎)


会場・外――。


政宗「ハァハァ……チッ! 幸村の奴、逃げ足の速ェ…! もう姿が見えねェぜ!」
小十郎「一体…突然どうされたのですかッ?」
政宗「む…!」(追ってきた小十郎には構わず、不意に背後に意識を向ける政宗)
小十郎「政宗様…? ………ハッ!?」
政宗「屈めェ、小十郎ッ!!」(叫びながら姿勢を低くした小十郎を飛び越えるようにして刀を抜く政宗)
小十郎「うわっ!!」(咄嗟に身体を屈めてその政宗をやり過ごす小十郎)
政宗「JET-X!!」

???「ピピピピー!!! ガーガーガー………自爆、スルネ」

政宗「な…!?」
小十郎「政宗様!!」(今度は小十郎が剣を抜いてその向かってくる謎の物体に刃を投げつけ、傍の大木に串刺しとする)

???「ガ……ガ………ボスン」(黒い煙を出しながらその場で停止)

政宗「……助かったぜ小十郎。サンキュ」
小十郎「いいえ私の方こそ…。何ですかこれは…? 異国のからくり人形でしょうか…?」
政宗「さぁな。何にしろ、かなり精巧だ。こいつ、さっきから俺らの上空をウロウロ飛び回ってた」
小十郎「は…!?」
政宗「幸村にも同じようなのが一匹ついてた。だからあいつが移動した瞬間、これの動きに気付いたんだが…。忍の最新システムってヤツか? 要は自動偵察機だろ」
小十郎「これが……。む? しかし……このオヤジ顔の人形…。よくよく見ると、誰かに似ていませんか?」
政宗「あん…? さぁな…」

いつき「あーっ! 政宗さ、めーっけ!!」(ぴょんぴょん跳ねながらやってくる、久々登場いつきうさぎ)

政宗「いつき…」
いつき「政宗さー。おら、試合負けちまったべ! だから暇なんだぁ! 遊んでけれ、遊んでけれ〜!」
政宗「ちょっ…腕引っ張んな! 俺は今ガキと遊んでいる暇は…!」
いつき「ん? あーっ、それ! メカザビーでねーか!!」(小十郎がつまみ上げたロボットの残骸を見て指を差すいつき)
政宗「メカザビー?」
小十郎「あ! 思い出しました! そうです、ザビーです! あの変な宗教かぶれの黒羊ですよ! ザビー教に入信しろしろって、片倉の家にも再三使者を差し向けてきて!」
政宗「そんな奴いたか?」
いつき「おらにもすっげえしつけかっただ! それにあいつ、このメカ使って人のぷ…ぷ…えーっと、そだ! ぷらいばしいだ! それを探って弱みを握ろうとするだよ! 政宗さにもつけてたんか! どうしようもねえ奴だべな!」
小十郎「そのザビー、今大会では竹中半兵衛との試合で、突如白旗宣言をして早々に敗退したはずです」
政宗「竹中……何かあるな……」
小十郎「……このスパイメカでもしも我らだけでなく、幸村殿の動向も逐一探っていたのだとしたら……、明智との遭遇にも奴が絡んでいる可能性が…!」
政宗「…やっぱ俺は幸村を追う。それに小十郎! お前は自分の分身を探せ! もしかするとパンダの小十郎にもスパイがついていたかもしれねえ!」
小十郎「はっ!」
いつき「政宗さ…?」
政宗「わりーな、いつき! 遊ぶのはまた今度だ! それと、出来れば今の試合見届けて、勝った方に今のこと教えて注意を促してやれ!」
いつき「何か分かんねーが、了解したべ!!」(びしっと敬礼して政宗たちを送り届けるいつき)

政宗「幸村…。嫌な予感がするぜ…!」


以下次号…!!




つづく



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