第30話「日は落ちて」


日が落ち、元就と謙信の試合が未だ続く中、政宗は――。

佐助「独眼竜の旦那!」(走る政宗の前に突如として出現)
政宗「おっ! 真田の忍!」
佐助「急いでどうしたの? まさかさ、片目の旦那に何かあった?」
政宗「何…!?」
佐助「実は片目の旦那の姿が見えないんだ。家にも行ったし、大会場所と家を結ぶルートも既に幾つか当たってみたんだけど、全然会えないし。これはもしかして…と思ってさ」
政宗「やっぱりか…。今、もう1人の小十郎にも探させてる。大会会場に、明智の野郎も姿を見せなかった」
佐助「えっ、それって…」
政宗「それと、訳分かんねーが、幸村のヤローもどっか行っちまった」
佐助「は?」
政宗「俺のこと嫌いとか何とか叫んで走って行っちまったんだよ! ったく、あいつってよ、一体何なんだ? キョドッたりキレたり、ホント忙しねーっつーか」
佐助「あー……。まぁ、事情はよく分かんないけど、そういう場面は想像出来るわ」
政宗「あいつも明智に狙われてたし、今独りにさせるのはまずいだろ。パンダの方の小十郎は俺らで何とかするから、お前は幸村を探してやってくれ」
佐助「了解!」(行ってすぐに姿を消す佐助)
政宗「……ったく」


――そして、数時間後。パンダ片倉小十郎の家――。


政宗「まだ見つからねェか…」
小十郎「申し訳ありません。方々手を打って探しては見たのですが」
佐助「どうも」(タイミングよく現れる佐助)
政宗「そっちはどうだ!? 幸村は!?」
佐助「ご心配をお掛けしましたケド、こっちは大丈夫でした。真田の旦那は、俺様がきっちり屋敷の方に運んでおきましたから」
政宗「運んだ…?」
佐助「そ。多分、独眼竜の旦那を撒こうと猛ダッシュして傷が開いたんでしょうネ。森の中でばったり倒れてた。そこを運良く俺様が発見したってわけ」
政宗「……本当に危ねェとこだったな(汗)」
小十郎「それでも、幸村殿だけでもご無事で何よりです」
佐助「と言う事は、そっちは? パンダの旦那、帰ってきてないの?」
政宗「あぁ……」
佐助「……俺様、もう1回、この辺りを捜索してくるよ」
政宗「いや、いい。これ以上お前には迷惑掛けられねェ。日中も色々動いてもらったしな」
佐助「けど…」
政宗「それより、幸村についててやれよ。あいつ、よく分かんねーけど、情緒不安定だし」
佐助「それは独眼竜の旦那が何とかしてくんなきゃさぁ…」
政宗「あ?」

元就「邪魔するぞ」(インターフォンも鳴らさずに家の中に入ってくる元就)

小十郎「おや」
政宗「元就! お前…試合はどうした? その様子じゃ、随分とキツイ闘いだったみたいだな?」(元就は全身埃だらけ。大きな怪我はないようだが、あちこちに切り傷などの軽症を負っているように見える)
小十郎「もしかしたらお見えになるのではないかと思って、湯の用意をしておりました。どうぞこちらへ。その後、傷の手当てを致しましょう」
元就「……構うな。それより、あの気色の悪いからくりは何なのだ」
政宗「ああ、いつきから聞いたのか? つかお前、試合の結果はどうだったんだよ? まずはそういう事から報告しろよ。いつきの話を聞いてあのメカの事を知ったんなら、まあ、お前が勝ったんだろうが」
元就「無論だ」
佐助「ひゅう〜。あの謙信公を倒すとは、やるねえ」
元就「ふん。戦意喪失の者など倒しても何の価値もないわ。我を馬鹿にするにも程がある。あれが見ているのはいつでも、貴様のところの大虎だけだろう」
佐助「ありゃ」
元就「それより政宗。あの気色の悪い――」
政宗「あーあー、何度も言うなよ。俺らだってついさっき気付いた事だ。けど、そのザビーって野郎のバックには明らかにあの竹中半兵衛がついてる。これからのトーナメント、試合外でも油断はしない方がいいって事だ」
元就「フン…」
政宗「というわけで、お前も折角うちに寄ったんだから、今日はこのまま泊まっていけよ。小十郎の言う通り、怪我の手当てもした方がいいだろ」
佐助「うっわ。それ、真田の旦那には絶対内緒にしなきゃ」(ぼそりと小声で呟きながら首を竦める佐助)
元就「……パンダはどこだ?」
政宗「ん…」
元就「パンダの姿が見えない。まさかまだ行方が知れぬのか」
政宗「ああ。だから、お前も独りになるな」
元就「我に命令するな。……我は帰る」
政宗「おい、待てよ」(慌てて立ち上がり、再び外へ出て行こうとする元就の手首を掴む政宗)
元就「気安く触るな」
政宗「むっ! あのなぁ、俺はお前の事を心配して――」

幸村「あ…………」(そして最悪のタイミングで開かれたドアの前に立ち尽くしている幸村)

政宗「!? 幸村…!?」
幸村「…………」←元就を掴んで向かい合っている政宗の姿にボー然
佐助「真田の旦那、何でいんの!? 家で大人しく寝てなさいって言ったでしょーがッ!?」
幸村「あ…その…。そ、某、あのような事を突然怒鳴り……やはり、政宗殿に謝ろうと……」
佐助「だから〜。そんなの、俺様が伝えておいてあげるって言ったでショ! も〜! そんなんだからへロヘロ体力が元に戻んないんだよ! 独眼竜の旦那! つーわけで、今夜、うちの旦那も泊めてもらえる!? また運ぶのもかったるいし!」
政宗「あ? あ、あぁ…別に、それは構わねえけどよ…」
幸村「そ! そんな! 某はそんなつもりでは! 某は、帰ります!」
元就「我も帰るぞ」
政宗「だっ…、テメエは、だから帰るなっつってんだろ!」(途端むっとして元就を怒鳴る政宗)
幸村「!」←ガーンガーンガーン
元就「だから、離せと言うのに!」
政宗「パンダの小十郎も帰ってこねえ! そんな状態で1人フラフラすんなって言ってんだ!」
佐助「そうだよー。真田の旦那もね」
幸村「………」←フリーズ中
小十郎「やれやれ………ん?」(ふと、立ち尽くす幸村の背後に動く影を見て、小十郎が眉をひそめる)

風魔「……………」

小十郎「あ、貴方は…!」
政宗「ん…どうし――…う!?」
佐助「え。あ!」
幸村「!」

パンダ小十郎「う……政宗、様……」(風魔に肩を担がれるようにして項垂れているパンダ小十郎)

政宗「小十郎! どうした、何があったんだ!?」
パンダ「申し訳ございません…この小十郎……一生の不覚…このような無様な」
政宗「喋んな! もういい、とにかく中へ入れ! あ、お前…」(小十郎の身体を受け取った後、ハッとして風魔を見上げる政宗)
風魔「…………」
政宗「お前……じゃあ、ねえな。うちの小十郎をこんな目に遭わせたのは…」
風魔「………」
政宗「こいつを運んでくれたのか。礼を言うぜ。一体、お前――」
風魔「……」(何も言わず、飛び退って姿を消す)
小十郎「……読めない男ですね」
政宗「ああ…」
佐助「それより、独眼竜の旦那! 早いとこ片倉の旦那を中へ! もう気を失ってるよ!」
政宗「あ、ああ! おい小十郎、お前も手ェ貸せ!」
小十郎「は、はいっ!」
幸村「……あ…」(ボー然とし過ぎて、手を貸すのが一歩遅れてしまった幸村)


手負いのパンダ小十郎に一体何が!? 明智との勝負に敗れてしまったのか!?
幸村の誤解もどんどん深まりながら、次回へ続く!




つづく



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