第32話「無自覚男と恋煩い」


ばさらの森武闘会。Aブロック準決勝が始まろうという朝。

伊達軍本拠地内(パンダ小十郎の家)ではちょっとした騒動が…。


幸村「う……ッ!? うわああああああッ!!!?」

佐助「どうしたの旦那ッ!?」
小十郎「どうかされましたか幸村殿!?」(慌てて部屋に突入する佐助と人間の方の小十郎)
元就「……貴様、我の眠りを耳障りな騒音で妨げおって……死にたいのか」←やや遅れて超不機嫌ながら登場
幸村「………ッ」←ぱくぱくと口を動かしたまま声もない
小十郎「あ……」
佐助「ありゃ」
元就「………阿呆が」(くるりと踵を返して客室へ戻って行く)
政宗「うるっせえなぁ……」(幸村の絶叫に眉をひそめて抗議の声をあげる政宗)
幸村「まま……まままま政宗殿……っ」
政宗「あぁ…? 何だよ? ったく、朝っぱらから突拍子もない声出しやがって。腹でも減ったのか?」
幸村「そそそそ……なななな……」←未だちょっとしたパニック中
佐助「独眼竜の旦那。真田の旦那が叫んだ理由はアンタでしょ、どー考えても」
小十郎「そうですよ政宗様。仮にも幸村殿は客人ですよ。一体どういうおつもりです、幸村殿の寝室に入りこむなどと」←その割にあまり咎め立てている感じではない。やや呆れ気味。
政宗「あん…? ああ……そっか」

2人に指摘されて政宗もようやく自分のいる場所を思い出したようだ。
幸村が叫んだ理由。
それは幸村が眠っていたフカフカベッドの中に、何故か政宗もいた事に因る。
しかも何故かしっかと幸村の身体を抱きしめて。

佐助「あのさぁ、真田の旦那は小熊の時からこっち、まだまだ純情初心な青年なんですから。いきなりそういう刺激の強い事やめてくれません?」
政宗「はぁ…? けど、前だってこうして寝た事あるぞ? あん時は小熊だったから、えらく抱き心地が良かったけどな。ま、今もそう悪くはねーが」←全く悪気なし。小熊時代を思い出すように更にぎゅうううと抱きしめてみる天然政宗
幸村「………………」
佐助「あ。意識を失った」
小十郎「政宗様。いい加減幸村殿をお放し下さい。朝食の支度も出来ておりますから」
政宗「ふわぁ……All right。ったく、何をガミガミしてんだぁ、朝から変な奴らだな?」
佐助(このヒト……もしかしなくても物凄く迷惑な鈍感野郎なんじゃ……)
幸村「…………ばったり」←政宗が離れて改めてベッドに深く沈みこむ人間・幸村


食卓にて。


小十郎「政宗様。今日もトーナメントの方、朝から参りますか?」
政宗「ん……そうだな。今日のゲームはどこから始まるんだ?」
佐助「Aブロックの準決勝。風魔小太郎vs濃姫……織田軍を支える鬼姫様の登場だ」
政宗「そうか。風魔の奴は気になるし、食ったら行くか」
小十郎「その次は佐助殿の試合ですしね。幸村殿、元就殿も行かれますか」
元就「我は行かぬ。また無駄に待たされてはかなわぬからな」
幸村「…………」←ぼーっ
小十郎「……幸村殿?」
佐助「旦那っ。真田の旦那ってば!」
幸村「………」←ぼーっ。そしてただ1点を見つめている幸村
政宗「……幸村」(食事の手を止めて不意に視線を投げかける政宗)
幸村「………」
政宗「おい、幸村っ。呼んでんだろうがっ」
幸村「はっ!? は、はいっ? な、何でござろうか、政宗殿!?」(赤面)
政宗「あ……あのなぁ…。一体どうしちまったんだ? さっきからぼーっとしてよ」
幸村「い、いえ…」
政宗「しかもさっきから人の顔ジロジロ見やがって、俺の顔に何かついてんのか?」
幸村「はっ!? そ、某、政宗殿の事を見てなど……!!」
政宗「いいや、思いっきり見てたぞ」
佐助「うん、見てた」
小十郎「私もそのように感じておりました」
元就「くだらぬ」
幸村「……っ」
政宗「ま、まあいいけどな。で? アンタはどうする? 試合、一緒に観に行くか?」
幸村「はっ…? 試合……ですか…。それは…勿論…」
佐助「そうしなそうしな。どうせ次俺サマの試合だし? お館様に武田軍の戦勝報告もきっちりしなきゃだからね?」
幸村「う、うむ……。そうだな……」
小十郎「私はパンダ小十郎の様子を見て、出られそうならば後を追います。幸村殿、佐助殿がいらっしゃるならば、政宗様も無茶な真似はされませんよね?」
政宗「何だよそりゃ。俺はいつだって大人しくしているつもりだぜ?」
小十郎「そのお言葉、この小十郎、しっかと耳に入れましたよ。幸村殿、政宗様のこと、どうぞ宜しくお願い致しますね」
幸村「は……はい……」←とにかく挙動不審
元就「我はもう一眠りするぞ」(ふわあと大きな欠伸をする我関せずのナリ様)


そして場面は大会会場。武舞台。


濃姫「くっ……。このクソ生意気な風魔め…ッ」(荒く息を継ぎながら次々とマシンガンを発射する濃)
風魔「………」(立て続けにくる弾丸をものともせずに避け続ける風魔。弾筋を既に見切っているようだ)


政宗「おっ、もうとっくに始まっていたみたいだな。戦況は…?」
佐助「どうやら風魔の方が一枚上手みたいだ。まあ当然と言えば当然…かな?」
幸村「は、速い…。あの女子の動きも最早常人のものではないというのに」


濃姫「負けられない…! 上総之介様の天下の為…ここで私が負けるわけには…ッ」
風魔「………」
濃姫「……ハッ!?」
風魔「………」
濃姫「きゃ……きゃああああッ!!」
風魔「…………」


佐助「ん!? 何か起こった!? 今??」
幸村「み、見えぬ…。何やら銃器と飛び道具から発せられたような爆煙が激しく……!」
佐助「あれって風魔のとこのレアアイテムかな? いいなあ、俺サマもちょっと欲しいかも」
政宗「ん…? お、煙が引いてきたぞ」


風魔「…………」
審判「はっ!? な、何が起こったのだ!? 闘技場の上にいた私までもが視界を遮られていたなど……あっ!!」
濃姫「………」←いつの間にか倒されている。銃器は場外へ、そして彼女自体は武舞台の上で完全にグロッキー状態である
審判「む…完全に気を失っている。こ、れまでッ! 試合終了―ッ!! 勝者、風魔小太郎ッ!!」
観客「どわああああああ!!!!!!!」


佐助「……俺サマとした事が、何が起きたのか全然分かんなかったよ」
幸村「お、俺もだ…。ま、政宗殿は?」
政宗「ん? あぁ……俺もよく分からなかったな」
幸村「……そ、そうでしたか」←どこかほっとしたような嬉しそうな顔の幸村
佐助「……?」
政宗「それより、ちょっと食いもんでも買ってくる。ここにいろよ、幸村? あんまりうろちょろすんな」
幸村「は…?」
佐助「食いもんって。朝ご飯食べたばっかでしょうが。……何考えてんだろね、あのお人も。ねえ、真田の旦那?」
幸村「………はぁ」
佐助「? 旦那?」
幸村「さ、佐助……困った事が起きた……」
佐助「……何よ?」
幸村「俺はどうも……政宗殿が傍にいると、心の臓が痛くて堪らんのだ……」(苦しそうにぎゅっと胸を掴む幸村)
佐助「……そりゃ困ったねえ」(はああと深く溜息をつく佐助であった)


次号へ続く!!




つづく



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