第38話「小休止」
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ばさらの森武闘会。Cブロック準決勝第2試合……のはずだが。 慶次「腹減ったなぁ。なぁ政宗、飯食いに行こうぜ! 俺、政宗ン家で小十郎さんの作った飯が食いたいなぁ!」 政宗「食いに行くって人ん家かよ! テメエは、あのバカップルの家へ帰れ! そこで飯でも何でも食えばいいだろうが!」 慶次「何だよ冷てェなあ! 今あの2人はアツアツラブラブ真っ最中なんだから、俺が入っていったら邪魔だろー? ったく、どうも政宗は男と女の恋愛っつーもんが分かってねェ! そんなんじゃあ、例え粋な伊達男でもモテないぜ?」 政宗「けっ、余計なお世話だ。それより、何で観客連中もぞろぞろ外に出てきてんだ? またすぐに次の試合も始まるだろうによ」 慶次「んー!? 政宗は、ホンット、この大会のアナウンスとか何も聞いてねーな。さっき放送で案内があったじゃねえか。次のCブロック準決勝は松永久秀の自動繰り上げ・ブロック決勝行きが決まってるから、1時間の小休止を挟むって。次のDブロック準決勝が始まるのは昼過ぎだから、みんな一旦外に出てきてるってわけさ」 政宗「松永久秀…!? って、あの怪しいワニ野郎か!?」 慶次「そうだよ? 珍しいもんを集めるのが趣味って、ちょっと根暗なオッサンさ。骨董品集めなんかより、恋に生きればいいのによー」 政宗「何であいつが不戦勝なんだ? 対戦相手はどうなった?」 慶次「どうなった……って。元々、アンタんとこの小十郎さんと明智光秀の勝者がCブロックの準決勝に行く予定だったのを、2人が試合に来なくて失格になったんじゃねーかよ。そういや、結局何で小十郎さんは試合に来なかったんだ? まさか、何かあったとか?」 政宗「いや…ちょっとな。休めば何てことはねェ。うちの小十郎があれくらいの傷でぶっ倒れるわけねーからな」 慶次「傷? ……つまり、本当に何かはあったわけだな。もしかして――」 政宗「あ?」 慶次「……いや。けど、政宗。これだけは言っておく。これから先、嫌でもぶち当たる秀吉と竹中半兵衛。こいつらには気をつけろ」 政宗「お前、前もそんなこと言ってたな。一体豊臣ってのは何なんだよ。お前とどういう関係なんだ?」 慶次「……秀吉は…俺の、友達だ」 政宗「友達? 友達相手に、気をつけろの忠告か? どうにも解せねーな」 慶次「とにかく、気をつけろよ! それじゃあ、俺はもう行くよ!」(いきなり厳しい顔つきになり、ダッシュでいなくなってしまうワンコ慶次) 政宗「お、おい! ……何だよ、行っちまった。飯食いに来るんじゃなかったのか」 その頃、闘技場から少し離れた森の中では。 幸村「うう……。どうした事だ。腹でも減ってしまったのだろうか…。身体に力が入らない…」(がっくりと項垂れてその場にへたりこむ幸村) 佐助「旦那! 大丈夫!? ったく、こんな森の中でダウンしてないでよ! 危ないでしょうが!」(追いかけてきた佐助) 幸村「佐助、一大事だ…。腹が減って力が入らん…」 佐助「はあ? ったく。まぁ、それもあるかもしれないけど、旦那のそれは、明らかに疲労と怪我のせいでしょうが」 幸村「ん?」 佐助「ん、じゃないよッ! アンタね、脱皮してからまだそんなに間が経ってないんだから! 本来なら当分はおとなしく安静にしてなきゃいけない身体なんだよ!? それなのに、今日も朝からやたら興奮したり落ち込んだり、精神的にも色々負担がかかってるから!」 幸村「……負担が」 佐助「それに、極め付けはさっきのダッシュでしょ。何なの、独眼竜の旦那から逃げ出す為とは言え、あーんな全力疾走しちゃって」 幸村「に、逃げ出してなどおらん!」 佐助「逃げたでしょ」 幸村「逃げてない!」 佐助「あーあー、分かったから、興奮しない。傷に触るから。……にしても、困ったな。本当なら今すぐにでも休ませたいけど、もうすぐ旦那の試合だ。向こうに戻らないと」 幸村「俺なら平気だ。今すぐにでもこの槍を振るえる」 佐助「相手はあの毛利元就だよ? 今の旦那じゃ、ちょっと厳しい気がするけどね」 幸村「ふがっ!?」(突然呻いて、ばたりと頭を地面にこすりつける幸村) 佐助「だ、旦那!? 真田の旦那、どうしたの!?」 幸村「さ……佐、助……」 佐助「どうした!? 傷が痛むのか!? そうなんだな!?」 幸村「も……」 佐助「も?」 幸村「元就殿の、名を、聞いたら……、突如として、胸が痛くなった……(涙)」 佐助「そっちかよ!!」 幸村「うおぉ…何なのだ、この胸の痛みはぁ…!」(ふがふがと苦しみながら胸をかきむしる幸村) 佐助「はーあ。こりゃ重症だ。……ん!?」(突然の気配にさっと警戒を強めて幸村の前に立つ佐助) 松永「ふっふっふ…。なればこそ、あれを卿に渡したというのに……」(ゆらりと木の陰から登場) 佐助「お前は……?」 幸村「う…? あ、貴殿、は……」 松永「ご機嫌如何かな、真田幸村君。その様子では、とても快復したとは言い難いようだが」 佐助「アンタ……何でこんな所に?」 松永「何、退屈でね。ゆるりとこの辺りを散歩していたら、偶然卿らと出くわしたというわけだよ。何せ私の試合はもうずっと先だ。本来ならば、次の試合で新しい武舞台の様子を間近で鑑賞出来るはずだったのだが、私の相手は何故か2人とも前の試合で消えてしまったからね」 佐助「…! そうか、小十郎さんと明智の勝者が、アンタと闘う予定だったんだな」 松永「その通りだ。聞くところによると、片倉君もあの愉快なパンダの姿を卒業してしまうそうじゃないか。実に残念だ。彼にはあの姿が非常に似合っていたというのに」 佐助「………」 松永「それはそうと。私が差し上げたあの薬は、どうやらお気に召さなかったらしいね。使っていないだろう」 佐助「薬……?」 幸村「……これのことか」(懐から取り出した小さな小瓶。幸村が倒れた際、見舞いと称して松永が持ってきた物である) 松永「そうそう、それだよ。卿にやったものだからね、今更どうこう言うつもりもないのだが。それは二つとない逸品なのだよ。もしも使わぬというのなら、これほど残念な事もない。それはこれまで味わった事もないほどの爽快感を卿の身体に与えるだろうに」 佐助「……そんなにいい物なら自分で使えば? うちの旦那には、見知らぬ人から物を貰ったらいけないって教えてあるはずなんですけどね」 幸村「さ、佐助…! 子供扱いするな!」 佐助「だって子どもじゃん」 幸村「子どもではない!」 松永「ははは……左様。子どもにそれは少々効果が強過ぎるというもの。私の目に適ったから私はそれを卿に与えたのだよ。まあいい。使うも使わぬも卿の自由だ。…だが、卿の希望である独眼竜との死闘…それの為には、その薬は持っておく事だね」 幸村「……?」 松永「では失礼するよ」(ゆらーりと長いしっぽをゆらめかせながら去って行く二足歩行の怪しいワニ松永) 佐助「……ふう。相変わらず食えないオッサンだよ。旦那? その薬、俺様が成分調べてみるから、預けておきなよ。毒じゃないみたいだけど、変な物だったらまずいでしょ」 幸村「………」 佐助「旦那?」 幸村「死闘……。そうだった。俺は……そもそも、政宗殿と戦いたいと思って、この大会に政宗殿をお誘いしたのだ。……それが」 懐の小瓶をぎゅっと握りしめながら独りごちる幸村。 その頃、闘技場では元親と元就も到着。 Dブロック準決勝第2試合、真田幸村vs毛利元就との試合は間近である…! 以下次号!! |
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つづく |