第4話「5歩」



政宗「さーてと。散歩がてら幸村でも探すかな」
慶次「行ってらっしゃ〜い」
政宗「あん? お前は来ないのか? お前の大好きな散歩だぞ?」
慶次「ハハハ、行かないよ。俺、これ以上幸村に嫌われたくないもん」
政宗「はぁ…? まあ、いいけどな。あんま長居して小十郎に迷惑かけんじゃねーぞ」
慶次「はぁい。おやつは政宗と幸村の分、ちゃんと残しておくからね!」(お座りした状態でぱたぱたと尻尾振ってお見送り)



佐助「あー、独眼竜の旦那だ!」(木から木へと飛び移りながらやってきたお猿佐助)
政宗「お! いい所に来たな。幸村、何処行ったから知らねーか」
佐助「んー、俺サマは今大将のお使い途中だから…。でもあれ? 確か独眼竜の旦那ン家にお邪魔しに行ったはずだけど?」
政宗「まー、来たんだけどな。3秒ほどで出てった」
佐助「は?」
政宗「あー、いい、いい。知らねェならいい。適当にそこらへん歩きながら探すからよ」
佐助「そういや旦那が外に出てるの珍しいね? ようやく引きこもりから卒業ってトコ?」
政宗「もうちっとは引きこもっていたかったんだがな。それよりお前こそ、大将の遣いって何の事だ?」
佐助「えーと、俺サマはねー。優秀な忍だから。真田の旦那だけじゃなくて、大虎の信玄大将にも全幅の信頼を得ているわけ」
政宗「やっぱ虎とかもいんのか、この森。強そうだな」
佐助「強い強い、アンタ! そりゃ強いなんてもんじゃないよ。大将が一声吼えただけで、この辺りの森なんかもうビリッビリに震えちゃって!」
政宗「ふうん。んじゃ、その大将がこの森の実質的な【大将】って事なんだな?」
佐助「あー…、それを話すと、ちょっとばかし複雑な事になるんだけど…」



秀吉「力だッ! 力こそが世を変える! 我が力こそ、世の理! 真実!」(のっしのっし)
半兵衛「勿論だよ秀吉。君の絶対的な正義の前には誰もがひれ伏すさ。僕がそうさせてみせる」



政宗「………今、目の前を通り過ぎてったゴリラと猫は何だ?」(たらり…汗)
佐助「つまり、今のが第1勢力。――あ、第2勢力が来た」



信長「……フン!」(ズシンズシンズシン)←偉そうに
蘭丸「信長様、カッコイイ〜! …あ、人間政宗だ! こらお前! 信長様がお通りなんだから脇に避けて頭下げとけよな! 無礼だぞ!」
濃姫「ああ上総之介様…何て凛々しいのかしら…(うっとり)」←信長しか見えてない為、政宗に気づかない
明智「くっくっく……。昼間の大名行列も悪くはないですね……くっくっく」



政宗「………………」
佐助「……独眼竜の旦那、何考えてんの?」
政宗「あ…? いや別に……」
佐助「もう自分の国に帰ろうとか思ってないでしょうねー?」
政宗「思ってねえよ。つか、お前! 上から人に探り入れるような目ェ向けんな! うっぜえ!」
佐助「な〜に不機嫌になってんのヨ。とにかくね。今さっき通ったゴリラ秀吉と猫の半兵衛がばさら森の完全支配を企んでる新勢力。んで、たった今通った黒獅子の織田信長ってのが、実質的に現在の森の陰の支配者ってトコかな? 別に本人支配してるつもりはないみたいだけど、あのオーラでしょ? みんな怖がっちゃってしょーがないのよねー」
政宗「お前んトコのその大虎大将とやらは何なんだよ?」
佐助「うちの大将は表の支配者ってトコかな? 何せ信長や秀吉と違ってウチの大将は人格者ですから♪ 人望があるのよー」
政宗「ふーん」
佐助「……何その《どうでもいい》って態度は。まあいいけどネ。それ以外に、大将の茶飲み友達・白豹の謙信公も結構な力の持ち主だよ? まー、ばさら森で顔売ってるって言ったら、それくらいかな?」



今川「おじゃじゃおじゃじゃおじゃじゃ〜! 麿も! 麿も有名人であるぞぉ〜!!」(くるくると舞いながら通り過ぎていく孔雀)



政宗「………今のは?」
佐助「記憶しとかなくていいわ」



政宗「しっかし。一歩外出ただけで大騒動だな、この森は。幸村探すどこじゃねーぞこりゃ…」
いつき「あー! 政宗さだべー! 政宗さー♪」(ぴょんぴょんと跳ねてくる元気うさぎ)
政宗「おっ、いつきか。相変わらず元気だな」
いつき「うんっ。オラはいつでも元気全開だぞ! 今日はな、うさぎの皆で虫獲り大会してるだ!」
政宗「みん―……っ!?」(ふと後ろを振り返ってぎょっ)

いつき親衛隊「い・つ・き・ちゅあぁ〜ん【愛】!!!」←うさぎルックのむさい男どもが虫獲り網をバトン代わりにして踊ってる

政宗「……この犯罪者集団は何モンだ?」
いつき「へ? 皆オラの仲間だべさ! 政宗さも一緒に遊ぶだか? 誰が一番珍しい虫を捕まえられるか競争するだよ。1等賞には、虫の形した金ぴかのトロフィーが貰えるだ!」
政宗「いや……ちょっと忙しいんでな……。また今度にするわ」
いつき「えー、そうかー…残念だべさ…。オラ、政宗さと一緒に遊びたかっただども…」(名残惜しそうに政宗の手を取りながらシュンとするいつき)

いつき親衛隊「!!!???」

政宗「はは…また今度な?」(親衛隊の異変に気づかずいつきの頭を撫でてやる殿)
いつき「ホントだか!? 絶対だべよ!? 絶対、今度は一緒に遊んでくれな!?」(更に気づかず政宗の手をぐいぐい引っ張っておねだりモード)

いつき親衛隊「ざわざわざわ……!!!!」←動揺の音

政宗「あー、分かった分かった。んじゃな、もう行け」
いつき「うん! 政宗さ、まったなー!!」(手を振り振りぴょんぴょん跳ねて去って行く)
いつき親衛隊「キッ!!!!」(政宗を睨みながらおのおのぴょんぴょん跳ねて去って行く)
政宗「凄ェストレス……(汗)」



元親「おい」



政宗「ん? ――あぁ、お前はさっきうちの家ん中覗いてた……元親だっけか? (どうでもいいが、まだ家出て5歩くらいしか歩いてねえぞ俺…)」
元親「テ、テメエ…。ちょっと…ちょっと姿が人間だからって、調子…調子乗ってんじゃねえぞコラァッ!!」
政宗「は?」
元親「元就だってなッ! 今はお前って存在がちょっと珍しいから構ってやってるだけだ! それを! 変に勘違いしてアイツに変な真似すんじゃねーぞ! 分かったか!?」
政宗「………」
元親「コラァ! テメエ、俺の話聞いてんのか!? ハッ!? そ、そ、それとも…!? ま、まさか、まさかもうお手つきしちまったとか言うんじゃねえだろうな!? そうなのか!?」
政宗「……あー」(がりがりと髪の毛をかきむしる殿)
元親「そうなんだなッ!? こ、この野郎…! 俺だって、元就と話してもらうまでに一ヶ月くらい必要としたのに、何でこの村来て1週間ばかしのお前が…! やっぱり俺が鬼だからか!? 人間でも動物でもない、頭にこんな角生えてる異形だからか〜!? それが原因なのか〜!?」
政宗「……まあ落ち着けよ。お前、全然かっこ悪くなんてねえから。角生えてて乳首出してて変な紫の服着てるけどよ。よく見りゃイイ男じゃねえか、な?」←結構投げ遣り
元親「煩ェ〜ッ! 俺は、俺はどうせ村の外れもんだぜ! 仲間は海の魚たちだけだぜ! けどなあ! そんな魚たちは、皆俺の事《アニキ》って呼んでくれるんだからなッ! 参ったか!」
政宗「参った! かなり参った! だからな、とりあえずそこどけ!」(イライラ)
元親「くっそー、テメエ! こうなったら、俺とタイマンだあッ! 元就を賭けて、1対1の――」
政宗「HELL DRAGON!」
元親「ぐはあッ!!」
政宗「だから! さっきから全ッ然、前に進めねえってんだよ【怒】!!」(ゼエハアと息を吐く殿)
元親「きゅううう……」←のびた



元就「………フン、莫迦め」←窓際から一部始終を見てたらしい



――ちょっと大人げないな〜と思いつつも、鬱憤溜まってついに刀を抜いてしまった政宗様なのであった。




つづく



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