第5話「姫若子の君のせい」



政宗「へー、この森、ちょっと突っ切るとこんなキレーな海が拝めるんだな」
元親「………」
政宗「…おいおいまだむくれてンのか? 勘弁しろよ、もう謝ったじゃねーか。それにお前も悪いんだぜ? 人の話も聞かないでいきなり喧嘩吹っかけんだからよー」
元親「………」
政宗「テメエ、元親いい加減に――! …ん? 何してんだ?」
元親「よしっと。これでいい」



政宗「今、海に流したガラス瓶。中に何か入ってなかったか?」
元親「へ…? う、うおッ!? 政宗!! テメエ、いつの間に俺の背後に!?」
政宗「…あのな。気絶したお前をこの海まで運んできてやったのは俺なんだがな。お前がちっとも目ェ覚まさねえから」←殿が気絶させたんだけど
元親「フ、フン! テメエ、そうやって親切ぶって俺に取り入ろうとしても無駄だぞ! お前は敵だ!」←しかも別に親切じゃない
政宗「分かった分かった。それより何を流してたんだよ」
元親「な、何だっていいだろーが…」
政宗「俺は一旦気になると他の事が出来ない性質でね。教えるまでここ動かねーぞ。何か…手紙っぽかったな?」
元親「な…!」
政宗「やっぱ当たりか。けど、手紙なら役場行って出せばいいだろ? 何だってまた…」
元親「ど、どうして分かった!? 何で俺が密かに想いを寄せてる元就に、こっから手紙出してるって分かったんだッ!? 直接出しても破られるだけだからとりあえず書くだけ書いて、こうして海に流して満足してるだけって! そ、その俺の思考回路をお前はどうやって読みやがったんだぁ〜ッ!!」
政宗「………」←ちょっと可哀想になってる


ザザンと静かな音を立てる細波を見つめながら。砂浜にて。


元親「……元就はああ見えてホントは優しいところもあるんだぜ?」
政宗「へえ」
元親「昔何かあったのか誰にも心を開かねーけどよ。いつも…一人ぼっちだがよ…。けど、だからこそ、あいつは人の弱さとかも誰よりよく理解出来るあったかい奴だと思うんだよ」
政宗「お前、そりゃかなりドリーム入ってないか?」
元親「何ッ!」
政宗「それにアイツ狐だし」
元親「政宗ッ!」
政宗「うおっ!? な、何だよ急に、肩いてー! 掴むなっつの!」
元親「どうやって! どうやってお前、元就とあんな仲良くなれたんだよ!?」
政宗「別に仲良くねえよ。だから、その泣きそうな顔近づけるのはよせって!」
元親「政宗〜!!」
政宗「……マジで泣くなよ(汗)。そうかそうか、お前はそんなに情緒不安定だったのか」←やっぱり可哀想になってきてる
元親「何で、何でこんなに好きなのにあいつは全然振り向いてくれないんだ〜! 俺のどこが気に食わないっつんだよ〜! こんなにイイ男なのに!」
政宗「そうだなそうだな、お前はイイ男だ!」(投げ遣りながらも一応よしよしと頭を撫でてやる殿)
元親「元就はな、前なんか俺がわざわざ採ってやった果物も《こんなもの我は食さぬ》って言って目の前で足蹴にして踏み潰したんだぜ〜。その前の時はアイツに似合うだろうと持ってった服をハサミでジョギジョギ切り刻んだんだーッ。くうぅっ」
政宗「何でそんな奴に惚れるんだよお前は…(相手の方が鬼じゃねえか・汗)」
元親「だからー! 優しいトコもあるんだって言ってんだろーがぁッ! ちゃんと人の話聞いてんのか政宗!」
政宗「聞いてるだろがっ! つか、素面で酔っ払ってんじゃねー!」
元親「うっ……(じんわり)」
政宗「だーっ!! だから泣くなっつの、デカイ図体して!」(わしゃわしゃとまたしきりに頭を撫で撫で)



幸村「あ……!」



政宗「ん? あ、幸村! お前、こんな所にいたのか! 探したんだぞ!」←実はあんまり探してないけど
幸村「ま、政宗…殿…」
政宗「お前どうして急に走って出てったんだよ? 訳分かんねー。今日だってなー、俺はお前の為にわざわざ街からお前のスイーツ用意して――」
元親「政宗っ! 俺の話聞いてんのかよーッ!」(政宗に抱きついて駄々をこねる半泣きチカ)
政宗「い、今はそれどこじゃ…! ……って、おい、幸村!?」
幸村「う…うぐ……」(ふるふる)
政宗「……おい、ちょっと待て。お前また――」
元親「政宗〜!」
政宗「テメ、元親! お前、まさかわざとやってんじゃねーだろなっ。いいから離れろっ」
幸村「は、は、は………破廉恥でござるッ!」
政宗「は…?」
幸村「そのように! だ、だだだ抱き合うなど…ッ! しかもここは公共の場であるのに…っ。ま、政宗殿など、政宗殿など〜!」
政宗「おいだから待て幸村。お前、この状況よく見てから――」
元親「政宗〜!」(ぎゅううぅと抱きつく元親)←嫌がらせか?
政宗「……ッ!!」



幸村「政宗殿など大嫌いでござるうぅ〜ッ【泣】!!!」(ダダダーッ)



政宗「………」(ぽかーん)
元親「何でだ〜。元就は何で俺にはあんな冷たいんだ〜」
政宗「………」
元親「俺が鬼っ子だからなのかぁ〜」
政宗「黙れ【叩】」
元親「痛ェ!!」



政宗「………幸村」



――泣かせたくないのに。幸村の走り去る後ろ姿を見つめながらちょっぴり胸が痛んだ政宗様なのであった。




つづく



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