第40話「ダチ×2、連呼しないで下さい」


ばさらの森武闘会。本来なら日没まで試合は続くのだが、第2闘技場まで破損した為、午後を少し過ぎたところで本日の日程は終了。
また、1日を置いてのブロック決勝となった!!

さて、誰もが把握していない(と思われる)トーナメント状況。
この小休止を良い機会として、ここで今一度紹介しておきたいと思います。

出場動物(ヒト科政宗含む)は、総勢32頭(匹or人)中、残るは8頭(匹or人)のみ!
現在はA〜Dの4ブロックでそれぞれの準決勝が終わったところ。
次回から再開される各ブロックの決勝戦は以下↓の選手たちによって執り行われる!!

【Aブロック決勝戦】風魔小太郎(コンドル)vs伊達政宗(人間)

【Bブロック決勝戦】かすが(豹)vs豊臣秀吉(ゴリラ)

【Cブロック決勝戦】竹中半兵衛(ペルシャ猫)vs松永久秀(ワニ)

【Dブロック決勝戦】織田信長(黒獅子)vs真田幸村(小熊→人間へ脱皮)

本準決勝はA+Bブロックの勝者、C+Dブロックの勝者で行われ、決勝戦はその試合を勝ち進んだ者同士との戦いとなる。
つまり、幸村が政宗と戦う為には、決勝戦にまで進まなければならないのだ!!(お約束設定)



と、説明調はここまでにして。
突然政宗から「2人だけで話がしたい」と言われた幸村は――!?



幸村「まま、政宗殿……話とは何でござろうか……?」(森の中の人気のない場所。幸村は落ち着かない様子でそわそわと身体を揺らしている)
政宗「………」
幸村「ま、政宗殿…?」
政宗「幸村。お前、怪我の具合はどうなんだ」
幸村「は…? あ、いえ、それは…。も、もう大した事はござらん! 特に痛みもありませぬ故!」
政宗「脱皮の影響ってのは?」
幸村「心配ないでござるよ! 実のところ、某も脱皮という経験は初めてでござったので戸惑いはしましたが…。むしろ毛皮もなくなり視界良好、身体も軽くなりまして、ヒトとは便利な生き物であると……」
政宗「じゃあ、さっきの試合は何なんだ?」
幸村「……は?」
政宗「怪我の心配もない、脱皮による影響もないって言うなら…。さっきのあの無様な闘いは何だって訊いてんだよ!」
幸村「ま、政宗、殿?」
政宗「アンタにはガッカリだ」
幸村「!」
政宗「もっとやれると思ってた。アンタの覇気はいつも近くで感じていたからな。こいつはただもんじゃねえ、剣を交えたらきっととんでもなく楽しいに違いねェ…。俺はそう思っていたんだ。幸村、俺はアンタに誘われるまでもなく、いつかアンタとは真剣に一戦交えたいと……願っていた」
幸村「政宗殿…」
政宗「だが、今の真田幸村は……。迷ってばかりの相手と、真剣勝負なんざ出来るわけがねェ!」
幸村「……!」
政宗「元就に浴びせた最後の一太刀だけは、確かにちょっとは見られたけどな。だが、ギリギリ追い詰められた末の自棄と取れなくもねえ。何を悩んでいるのか知らねェが、あんなに槍の鈍ったアンタとまともに闘りあっても楽しいわけがねえ。……正直、さっきは頭にきたぜ」
幸村「某……某は、政宗殿と本気の仕合をしたいと、考えております…!」
政宗「だったら、何に悩んでんのか言ってみろ! その問題を解決しなけりゃあ、幾らアンタが何度気合を入れ直したって、今回みたいな事は続くだろ!? 俺は、そんなのは御免だ! そんな真田幸村は見たくねえ!」
幸村「う、うぐ……。そ、某の、悩み……」
政宗「そうだ! 何か隠してるだろうが、それくらい分かる!」
幸村「か、隠して、など…! そ、そもそも某自体、己のこの気持ちを測り兼ねておるくらいで…! い、いや! も、もう……自覚はあるのだが……恐らく」
政宗「あ!? 何をごちゃごちゃ言っていやがる!? とにかく、分かんねえ事も何でも、全部ひっくるめて話してみりゃいいじゃねーか! そうすりゃすっきりするかもしれないだろ!?」
幸村「い……」
政宗「い?」
幸村「言えるわけ、ござらん…! 絶対無理でござる!」(ぶんぶんと激しく首を振る幸村)
政宗「な、何でだよ!? 言えっ! 言ってみろ、でなきゃお前、俺たちの仕合が…!」
幸村「だ、大体! 何故某の胸の内を政宗殿に話す必要があるのでござるか!? ま、政宗殿には、関係なき事! 某の問題は……そ、某が、解決致します故!」
政宗「関係ないだと!? 関係ないわけないだろうがっ!」
幸村「な…何故でござる!」
政宗「何故って……バカ! 俺たちは、ダチだろうがよ!!」
幸村「ふぐっ!?」(突然胸を押さえてばったりと倒れ、苦しみ悶える幸村)
政宗「ゆ、幸村!? おい、どうした!? 幸村!」(突然倒れた幸村にぎょっとし、訳も分からないまま身体を揺さぶる政宗)
幸村「くくく、苦しい…! 息が出来ないで、ござる〜…!」
政宗「てめ…っ。やっぱり調子悪いんじゃねえかよ…! くそ、医者か!? 医者だな、よし待ってろ、今医者に……って、この森に獣医はいるのか!?」
幸村「そ、某、もうヒトでござるよ…」(未だ胸を押さえながらゼーゼーと息を吐く幸村。でもツッコミは忘れない)
政宗「そ、そうだったな、じゃあ普通の医者だ! って、それこそ、こんな動物の森に人間の医者がいんのかよ!?」(あたふた)

松永「ふっふっふ……。どうかしたのかね」(突然ゆらーりと現れるワニ松永)

政宗「! テメエは!」
松永「幸村君……。苦しいのなら、今こそ私が与えたあの薬を飲みたまえ…。さすればその胸の苦痛などたちどころに消え去り……卿に素晴らしき快楽をもたらすであろう……」
政宗「ああん!? 何だテメ、怪しさ全開だな…!?」(警戒心丸出しで庇うように幸村の前に立つ政宗)
松永「おっと、独眼竜。私は卿とやりあう気はない。卿にはまだ楽しいものをたくさん見させてもらう予定だからね。むしろ私は卿にとっても良い事を打診しているに過ぎない。そこの若熊子が快楽を得るという事は、必然的に独眼竜、卿にも快い時が訪れるという事なのだから」
政宗「何訳の分からねえ事言ってやがる…。あの時は一応受け取ったが……やっぱり胡散臭いにも程があるな。おい幸村、あの薬、絶対使うなよ? まだ持ってるんだろ?」
幸村「持って…ござらん…」(ゼイゼイと未だ苦悶中)
政宗「あん?」
松永「………」←ちょっと驚きながらむっとしてる
幸村「あれは……佐助に渡しました。佐助が薬の《せいぶん》を調べるとかで…」
政宗「お。なかなか気が利くじゃねえか、あの猿」
松永「ふ……まぁ、好きにしたまえ。それでも…卿はいつかあれを使いたいと思う日が来るであろうよ。それに、体調を万全にしなければ決勝などとても残れまい? 何せ貴殿の次の相手はあの第六天魔王…。果たして今の卿にあの地獄の業火をかいくぐるだけの力があるものやら」
政宗「………第六天魔王」
幸村「そ、某は……政宗殿と戦うまで、誰にも負けぬ…!」(ぐぐぐと歯を食いしばりながら立ち上がる幸村)
政宗「幸村……!」(気合で立ち上がろうとする幸村にハッと目を見張る政宗。幸村の不屈の闘志に目を見張ったらしい)
幸村「某は…真田源次郎幸村…! 熱き炎の武人でござる…!」(ごうっ【燃】)
松永「ふ……そうかね。では、本番でもそうなる事を願っているよ。……おっと、新たな客だ。怖い怖い、私を睨んでいるようだ。無理もないか、何せ彼の主を焼きかけたのだから」
政宗「……! お前は!」

風魔「………」←知らない間に3人のすぐ傍で立ち尽くしている伝説の忍びコンドル

松永「そう睨むな。主は元気かい? あれが露と消えたらいつでも私の元へ来るがいい。卿のような忍なら喜んで雇い入れるよ。では失礼…」(のっしのっしと去って行く怪しいワニ松永)
風魔「………」
政宗「……ホントに、あの松永を狙ってここに来てたのか? お前」
風魔「……」
政宗「はっ…喋らねーんだったな。訊くだけ無駄か。まあいい。おい、幸村。とにかく、帰ろうぜ。掴まれよ」(言いながら幸村の腕を取って自分の肩へと回す政宗)
幸村「ま、政宗殿……」
政宗「悪かったな」
幸村「は…?」
政宗「アンタの気概を疑うような事を言った。どうかしてたな。アンタが早々簡単に倒れるわけねェのに。……けどさっきの試合では、どうしてだか俺にも分からねえ、どうにも胸がざわついちまって」
幸村「……当然でござる。確かに、先ほどは我ながら不甲斐ない試合でござった。某こそ、申し訳ござらん」
政宗「いや……」
幸村「………? 何でござるか?」
政宗「その…。やっぱり、俺に悩みを打ち明ける気にはならないか?」
幸村「! か、かたじけのうござる…。も、もう少し、時間を頂けるだろうか。そうすれば、いつか、きっと……」
政宗「……All right. 分かった、しつこくして悪かった。待つぜ。アンタがいつか話してくれるのを、な」
幸村「政宗殿……」
政宗「何せ、俺たちは……ハハッ! ダチ、だからな?」
幸村「ふぐおっ!?」(再びダメージを受けて胸をかきむしる幸村)
政宗「!?」
幸村「ぬ…ぬぬぬ……ふおおお…!」(やっぱりばったり倒れて苦悶)
政宗「お、おい、またか!? またなのか幸村っ! おい、幸村! おい、大丈夫か!?」(幸村の傍に座りこみつつ、焦ったように呼びかける政宗の図)
幸村「胸が…」
政宗「幸村!」
幸村「胸が痛いでござる〜(涙)」

風魔「………………………」


………以下次号!!




つづく



戻る