第41話「次はおんぶ攻撃」
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ばさらの森武闘会。ブロック決勝を前に、それぞれの動物(ヒトも含む)は小休止中である。 政宗「おい、小十郎! 戻ったぞ!」(バタンと荒々しくドアを開ける政宗) (元から人間の)小十郎「!? 政宗様、どうしたのです、幸村殿は!?」 幸村「ふぐぐ……ふぐぐぐぐ(涙)」(苦しそうに胸を片手で押さえつけている幸村。因みに苦悶して歩けなかった為、政宗におぶってきてもらった) 政宗「おい、医者だ医者! この森にいる人間の医者を呼べ! 幸村が急に苦しみ出して、さっきからずっと胸を押さえてる」 小十郎「胸を……? はあ、そうですか」←すぐに事態が呑み込めた 佐助「あ、旦那たち。お帰りなさ〜い。一体どこ行ってたのヨ? 二人で話したい事がある、なんて行って森の奥に消えるから俺様てっきり…」←呑気に伊達家の食卓に御邪魔中 政宗「おい猿! お前、こいつの様子が目に入らねーのかっ。何呑気に飯なんぞ食っていやがる、幸村が大変なんだぞ!?」 佐助「えー? ああ…、半ば予想はしていたけど、大した話じゃなかったみたいね? むしろ傷口抉った感じ?」←こっちも余裕で察してる 政宗「傷口を抉っ…!? って、何だそりゃ!? 特にそんな様子は見られなかったが…! やっぱこいつ、何か傷隠してるのか!?」 佐助「そういう意味じゃないんだけどねえ…」(ため息) 小十郎「ま、まあまあ…。ともかく。政宗様も幸村殿をずっとおぶられていては大変でしょう。とりあえず客室へ」 政宗「お、お前ら……。いやに落ち着いてやがるな? 幸村がこんなだってのに」 幸村「ふぐっ。うぐっ。ぬぐぐぐぐ…!」←変な病気にかかった人みたいにもがいている 佐助「俺様が思うに、その体勢もダメなんだと思うよ? 何? 独眼竜の旦那がずっとおんぶしちゃってくれてたワケ? あの闘技場付近からここまで?」 政宗「当たり前だろ!? 幸村の奴、突然倒れてもがき苦しみ出したんだ。おい、小十郎! 脱皮ってやつは、ホントに人体に影響はねーんだろうな!」 小十郎「大丈夫ですよ、そりゃあ個人差はありますが…。大抵は大怪我をした動物がそれを回復させる為に防衛本能で起こすものなんですから。傷も動物でいる時よりは回復しますし。現にうちの――」 ???「政宗様!!」(突然4人のいる前に現れた人間の男) 政宗「……ッ!? だ……誰だ……?」 ???「政宗様、ご無事で! すぐに会場へ向かえず、申し訳ありません…! この片倉の野郎がさんざっぱら邪魔を…!」 小十郎「貴方の為に引き留めたんですよ。第一、まだ傷が塞がっていないのですから、そのような状態で行っても政宗様の足手まといになるだけです」 ???「何だとテメエ…! ……む!? ま、政宗様!? 真田は…どうかしたのですか?」(きっと小十郎を睨んだり、政宗の背におぶさっている幸村を見て不思議がったり忙しない男) 政宗「……ま、まさか、お前……」 佐助「そのまさか」 政宗「パンダの……あの、小十郎、か?」 元パンダ小十郎(以降、【元パンダ】と表記)「は……? この小十郎、正真正銘、政宗様の右目、片倉小十郎でございます」(きりっ!) 政宗「嘘だろ……。人間のお前って、んなむさくるしい顔してたのか」 片倉「なっ…。ま、政宗様。それはあまりの言いよう…!」←軽くガーン 政宗「うっ…sorry……。何せ、あの呑気に畑仕事するレッサーパンダの印象しかねえから…」 小十郎「政宗様がこの元パンダと会っていたのは幼少の頃だけですからね。無理もないです」 佐助「コミックス版の小十郎さんとは似ても似つかないしねー」 小十郎「性格も全然違いますよ」(にっこりと秀麗な笑み。何か思うところがあるらしい) 政宗「ま、まあ、それは、いいか…。お、お前は、怪我の具合はどうなんだ?」 元パンダ「はっ…。この度はとんだ不覚を取り、伊達軍の名に泥を…! つきましてはこの小十郎、是非とも政宗様に明智討伐の許可を頂きたく…!」 政宗「ま、まあ、待て。とりあえずその話は後だ。今はこの幸村だ! ほら、ベッドに運ぶぞ!」 佐助「俺様が請け負うよ。ほら、旦那。いい加減、降りて降りて」 幸村「む…? 佐助…?」(薄ぼんやりと目を開ける幸村。意識も朦朧だったらしい) 佐助「まったくしょうがない小熊だねえ。あ、もうヒト科か。ったく、苦しいなら独眼竜の旦那におぶってもらうなんてやめればいいのに」 政宗「あん!? 何で俺がおぶるのがダメなんだ!?」 佐助「いやいや、ダメじゃない。ダメじゃないけど、ほら、ね?」 政宗「ん……?」 幸村「ふう……」(政宗から離れ、佐助に抱えられた事で明らかに一息ついている幸村) 政宗「…………おい。幸村、胸が痛いのはどうした?」 幸村「はっ…!? あ、あの……もう、大丈夫でござる。すみませぬ、政宗殿にいらぬ手間を…!」 佐助「まあ、でも大事にした方がいいから、とりあえず客間に行こう行こう! あ、小十郎さん、後で旦那に何か食べるものお願いしまーす」 小十郎「承知致しました」 政宗「……おい」 幸村「う、うむ。それでは失礼して…!」(さささと逃げるように政宗から離れる幸村) 政宗「な、何なんだよ……!」 小十郎「あの調子なら、医者は呼ばなくても良さそうですね」 元パンダ「元々この森に、そんなもんはいねえぞ」 政宗「……何だよ。あの猿の顔見たらすぐ元気になりやがって」(ぶっすー) 小十郎「……さて、政宗様もお疲れでしょう? 昼食に致しますか? それともひとまずお休みに?」 政宗「あ…? あ、ああ…。そういや、腹減ったな。何も食ってねーんだ。何かとありやがってよ」 小十郎「それでは準備しますね」 政宗「……ったく」(小十郎が台所へ去り、広間のソファにどっかと腰をおろす政宗) 元パンダ「政宗様。粗方の事はあの猿飛から聞いておりますが。どうですか、大会の方は」 政宗「ん…? あぁ、まあまあだな。強ェ奴も結構いるぜ。盛り上がってんじゃねーのか?」 元パンダ「どうにも、あまり乗り気のようには見えませんが」 政宗「いや、いきなり人間のお前に戸惑ってんだよ(汗)」 元パンダ「……このような形で人間の姿に戻るなど想定外でした。あの明智…。確かにこの小十郎にも一片の油断がありましたが…。あれは想像を絶する力の持ち主です」 政宗「けど、あいつも脱皮してたぜ。お前がやったんだろ?」 元パンダ「はい。しかし…実は明智に決定的な一太刀を浴びせたと思った直後の記憶が曖昧なのです」 政宗「記憶が?」 元パンダ「明智の奴が何かを仕掛けたとは思うのですが…。気づけば奴の姿はもうなく、この小十郎もいつ奴に脱皮する程の傷を負わされたのか…」 政宗「そういや明智の奴、妙なことを言ってやがったな。自分も小十郎もただの被害者だ、と」 元パンダ「は…!? そ、そういえば先ほど明智が脱皮と…っ! 政宗様、まさか明智と会ったのですか!?」 政宗「あ? ああ、まあそれはどうでもいいこった。奴も別段仕掛ける感じではなかったしな」 元パンダ「……ですが、これであれがまだ動ける事は分かりました。トーナメントから名前は消えましたが、明後日の決勝までにまた妙な動きがないとも言いきれません」 政宗「ふ…ん……。…………」(不意に頬杖をつき、物思いに耽る政宗) 元パンダ「ですから、この小十郎に明智討伐のご許可を…!」 政宗「………なぁ、小十郎」 元パンダ「……?」(突然口調を変えられて戸惑う元パンダ) 政宗「俺って怖いか?」 元パンダ「………は?」 政宗「何つーか、小熊みたいな動物が思わずびびっちまうような、よ。俺は、そういう恐ろしい顔をしているかって訊いてんだ」 元パンダ「い、いえ……そのような事はありませんが……」 政宗「じゃあ何だって幸村はあんな態度なんだ?」 元パンダ「ま、政宗様。真田の事も大変でしょうが、今は森を揺るがす勢力争いが――…」 政宗「ったく、少し前まではあんな懐いてたのによぉ、この頃どうにも挙動不審なんだよな! 何かっつーとどもってはっきりしねーし! 俺が何したってんだよ!」 元パンダ「は、はあ…」 慶次「政宗っ!!!」(バーンと扉を開いてワンコ慶次登場) 元パンダ「む…前田の風来坊か。おい、いきなり人んちにノックもなしに入ってくるたあ、どういう了見――」 慶次「政宗、頼む! 俺と一緒に来てくれよ!!」(がばあっと政宗のいるソファに乗り込んで尻尾を振る慶次) 政宗「ああ? またかよ。悪いが俺は今最高潮に機嫌が――」 慶次「かすがちゃんを止めないと! 次、かすがちゃんはあの豊臣秀吉とぶつかるんだぜ! そんなの絶対やめさせなきゃ! あの子の敵う相手じゃないんだ!」 政宗「このパターン数話前にもあったぞお前……(汗)」 慶次「何? 分かんないこと言ってないでさ、とにかく俺と一緒に来てくれよ!」 政宗「知るかっ! 何で俺がんな事しなくちゃなんねーんだ、止めたきゃお前1人で行きゃいいだろうがっ!」 慶次「俺1人じゃ説得できないから政宗にも頼んでるんだろ!? そんなに友達甲斐なかったのかよ!!」 政宗「あのなあ、俺はそのかすが…? だっけか、そいつの事なんかあんま知らねーし(家を覗き見られた事なら何度もあるが)、そもそもお前のせいでまだ飯も食ってな――」 慶次「飯なら俺が後で幾らでもおごってやるからさ! とにかく、行こうぜ!!」 政宗「うお!? てめ、何しやがる!?」(突然慶次に抱え上げられ驚く政宗。ワンコ慶次はとてつもなくでかいワンコなのだ。因みに二足歩行) 慶次「んじゃ、そういう事で!!」 元パンダ「お、おい、テメエ! 前田! 政宗様に何を…!?」 佐助「まあまあ、右目の旦那」(突然現れて元パンダを羽交い絞め) 元パンダ「うおっ!? 猿飛、テメエ…!?」 佐助「面白そうじゃない、行かせてあげようよ♪」 元パンダ「ふざけるな、おい、前田! ま、政宗様〜!!」 政宗「てめ、離せ、ふざけんな〜!!!」(絶叫しながら、それでも家の外へと連れ出されてしまう政宗。段々声が遠くなる) 元パンダ「い、行ってしまわれた……」 佐助「まあ、さ。織田軍にしても、豊臣軍にしても。独眼竜の旦那がキーマンだと思うわけよ」 元パンダ「む…?」 佐助「真田の旦那も心配だけど、この森のことだって俺様心配してんだからね」 元パンダ「だからといって何故政宗様に…!」 佐助「あれー? 右目の旦那だってその話しようとして空ぶって。戸惑ってたじゃない」 元パンダ「そ、それはそうだが…」 佐助「それに。そもそも、独眼竜の旦那がこの時期にこの森へ来たんだもん。誰でも期待しちゃうじゃない。でしょ?」 元パンダ「何をだ……?」 佐助「独眼竜の旦那が、闇の迫るこの森に一石投じてくれるってサ」 元パンダ「……猿飛」 幸村「う、うおおお、折角胸の痛みが引いたと思ったのに、この部屋には政宗殿の匂いを感じるものがたくさんあって苦しいでござるうう〜!!!!」←未だ呑気にベッドでごろごろと苦悶中 以下次号…!! |
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つづく |