第47話「呪いの噂と森の姫」
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ばさらの森武闘会。…は、明日開催されます。今はまだ前日のお昼過ぎ。 場所はパンダ小十郎の家。政宗の休んでいる部屋にて。 政宗「よう、すまねェな。俺に用があるみたいだったのに、ほっぽっちまって」 島津「いやいや、気にせんでよか。突然押しかけたんはおいの方じゃからのう。おまはん、飯は食うたんか?」 政宗「……いや、今は下で幸村の奴が食ってるから、俺は後で食う。アンタの話を先に聞くぜ」(むすっ) 島津「んん?」 政宗「どうせ飯食うなら、気持ち良く食いたいからな。むかつく相手とは一緒にいらんねえ!」←幸村並にいじけている政宗 島津「何じゃ、喧嘩でもしんさったか」 政宗「ほっとていくれ! で? アンタ一体、俺に何の用なんだ」 島津「おお、ほうじゃった、ほうじゃった。……まずは、これを見てくんしゃい」(ずいと懐からある物を取り出す) 政宗「それは…!」 島津「何に見えるね?」 政宗「黒いバナナ……いや、爆弾か!?」 島津「ほう? これを爆弾と言いなさるか」(片手に持ったそれを自分も見やり、感心した風に言う) 政宗「アンタ、それ一体どこで…!」 島津「まぁ、慌てんでもよか。これは正真正銘、ただのバナナじゃ。ちぃと腐りかけてはおるがな」 政宗「ただの…バナナ?」 島津「これは、な。じゃどん今ぁ、こんバサラん森に、これによう似たバナナ爆弾ちゅうもんが大量に生っとる場所があるようなんじゃ。どうやら、独眼竜。あんたぁ、既にそん事を知っておったようじゃが…」 政宗「……どういう事だ。一体この森に何が起きてるってんだ」 島津「こん森のどうぶつ達んとって、こういう《ふるーつの木》から出来た果物ちゅうんは、生きてく上での貴重な生活源じゃ。ある者はこれらをもいで食い、ある者は収穫して店で売る。ばさらの森にはそりゃあたくさんのふるーつが生っとるからのう。こんバナナだけじゃなか、りんごや梨や桃や…昔はそりゃあいろんな木が植わっておったもんなんじゃ」 政宗「昔は…?」 島津「ほうじゃ……んがぁ、おいが力試しの旅から戻ってきた時にゃあ、こん森はもう変わっておった…。一見したところは長閑じゃろう? 実際、この異変に気付いておるどうぶつも少なかろう。じゃどん、森は確実に変わってきとる。黒か森の噂は本当の事やもしれん…」 政宗「黒い森の噂……ってのは、何だ?」 島津「おう…独眼竜はこん森に来てからまだ日が浅かったのう。……そうじゃ、そもそもおはんは、こん森の創造主ちゅうんを知っとるかいのう?」 政宗「創造主? 何だそりゃ…、まるで神さんみたいな言い草だな?」 島津「まっこと、その神様よ」 政宗「ああん?」 島津「神がこん森の大地を肥えさせ、海を敷き、大山を築いて水を通したんじゃ。無論、後に村や町ばこさえてここを大きゅうしてったんは、こん森の住民たちじゃがの。《最初》を作ったんは神様じゃ。おい達は“にんてん様”と呼んどる。正式名称は“任天堂”様じゃあ」 政宗「……とてつもなく胡散臭い話になってきたな」 島津「そのにんてん様が年に一度、森の祭りとしてばさらの森大会をお考えになったんじゃ。実質的に森を統治して秩序を保たせとるんは、それぞれの大地主である武田の大将だったり、わしら島津の家だったり、上杉家だったりするがのう」 政宗「なるほど。分かったような、全然分からねェような?」 島津「ところが、じゃ。大会は例年通り今年も開かれたが、今大会には、にんてん様の代理人である姫様のお姿が見えん」 政宗「姫様?」 島津「姫様はわしらどうぶつとにんてん様とを結びつける唯一のよすが。要は巫女姫様じゃ。そん姫様が姿を現さんので、一部のどうぶつ達は皆心配しとる。しかも、それと時を同じゅうして、黒か森の噂も流れ始めた。姫様のおらんくなった森の一部に呪いが生まれ、木々の一部に恐ろしか殺傷能力を持った実が生り始めたとなぁ」 政宗「それが黒いバナナ爆弾か…」 島津「呪いちゅうもんの存在が真実かは分からんが、黒か爆弾の木がある事ぁ間違いなか。現に、このおいも見た」 政宗「見たのか!? それはどこに!?」 島津「場所は分からん。木に生っていたじゃろうもんの一部を渡されたんじゃい」 政宗「渡された? 一体誰に?」 島津「おはんもよく知っとる男。北条の忍…風魔小太郎じゃ」 政宗「あいつか!」 島津「何故奴がそんなもんを持っとったのか、おいに見せに来たんかは分からん。じゃどん、嫌な予感ばする。そこで独眼竜、おはんの力を借りにきた」 政宗「俺の?」 島津「本来なら、おいが大会に優勝して、にんてん様に姫様の事や黒か森の正体ば尋ねようと思っとった。じゃが見ての通り、おいはおはんに負けた。こん森の事はこん森の住民で何とかすると言うて面目もねェが、ここは一つ頼まれてはくれんか」 政宗「そのいなくなった姫さん探しと、黒い森の正体を暴く手伝い、か? 大忙しだな」 島津「なに、大会に優勝しさえすれば、おのずと知れる事もあろう。それに、次のおはんの相手はあの風魔じゃ。そこで知っている事を訊き出してもらうんでも構わん」 政宗「つっても、あいつ全然口きかねーじゃねーか」 島津「ううむ……それは、確かになぁ。北条に直接聞いても良いんじゃが…何故かおいは、あの老翁にはえらく嫌われとってのう」 政宗「ふうん? まあ、大会優勝は言われるまでもなく狙うつもりだし、その辺はあんたに頼まれるまでもねえ。訊ける事がありゃ訊いてもいいぜ。どうせ優勝しても欲しいもんとか特にねェしな」 島津「ほう!」 政宗「それより、その姫さん、か? 本当に誰も所在を知らないのか?」 島津「おいも旅に出ていたからのう。心当たりは探ったんじゃが…例えば、あの前田の風来坊」 政宗「前田の…慶次か?」 島津「おう、そうじゃ。あれは姫様とは特に仲が良くてな。訊いてみたんじゃが……何じゃ、突然不機嫌になりおって、『俺は知らん!』の一点張りじゃ。何も話してはくれんかった」 政宗「あいつが姫さんと…? 何だそりゃ……」 島津「……もう一人、姫様と親しかったもんがおるんじゃが、そいつにはもっと訊きづらい」 政宗「誰だよそれ?」 島津「豊臣んとこの……秀吉どんじゃ」 政宗「なっ…!?」 島津「ねね姫様はこの2人と特に親しくしておられた。……じゃどん、ある日を境に急に……あの方だけが、姿をお隠しになったんじゃ」 以下次号…!! |
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つづく |