第48話「やる気になった政宗様」


ばさらの森武闘会。…の、前日。変わらずパンダ小十郎の家にて。


小十郎「あ、政宗様」(居間で幸村に食事を振る舞っていた人間の方の小十郎)
幸村「!」←びくっ
佐助「あ、島津公は帰ったの?」←お茶しながら幸村に付き合う佐助
政宗「ああ…。ん、慶次の奴はどこだ?」
小十郎「お帰りになりました。…何やら、政宗様が島津公と客間へ向かうのを見た後、どうも様子がおかしくなったような気がします」
佐助「あ〜……そうかも。ちょっと何か暗い顔してたかもね」
政宗「パンダの方の小十郎は?」
小十郎「一度戻ってきたのですが、この雨でしょう? 畑が心配だからと、また外へ」
佐助「働き者だよねえ。ってゆーか、あの人ホントに向こうの世界の有名な武将? 完全に野良仕事が性に合っている農民パンダなんだけど。あ、でももう脱皮したから人間かぁ」
政宗「だな。明智のことを調べるって言ってたが、どうだったんだか…」
幸村「……」(そわそわ)
政宗「む…」(挙動不審の幸村に気づく政宗)
幸村「……」(そわそわそわ)
政宗「……っ」←ちょっとイラッ
小十郎「……ところで政宗様。食事の支度はとうに整っておりますから。どうぞこちらへ」
政宗「あ? ……あぁ、何かもう腹減ったの通り過ぎた」
小十郎「駄目ですよ、きちんと食べて頂かなければ。明日はまた試合なんですから」
政宗「……ち。最初は単なる祭り気分の大会だったのによ。いつの間にかやたら面倒な事になってきやがって」
佐助「なになに? 島津公の持ってきた話と何か関係ある? 俺サマでお手伝い出来る事あるならしますけど?」
政宗「何だ、いやにサービスいいじゃねえか。何か企んでんのか?」
佐助「人聞きの悪い。別に何もありゃしませんよ〜。ただ、うちの旦那が色々お世話になってるし。これからもなりそうだし?」
政宗「ああ?」
幸村「さ、佐助っ!? なな、何を言い出すのだ、俺は別に…!」(ガタンと立ち上がってムキになる幸村)
佐助「だってそもそも、独眼竜の旦那があの大会に出る事になったのだって、真田の旦那が誘ったのが始まりだし」
幸村「う!」
佐助「それで何か起きてるってんなら、こっちがお手伝いするのが義の漢のする事でしょうが。そでしょ?」
幸村「う…ううう…ぐぐぐぐ…」
政宗「……はん、別にンな事どうでもいいぜ。俺自身、面白そうだと思ったから参加したまでだ。別にこんな奴は関係ない」
幸村「むっ! こ、こんな奴とは、何という…!」
政宗「こんな奴だからこんな奴って言ってんだ! つか、テメエ、いつまでここにいる気だよ!? さっさと帰れよな!」
幸村「い、言われずとも…!」
佐助「ちょーっと、待った待った! 2人とも落ち着いて!」
小十郎「そうですよ。今仲違いしたまま別れたら、お2人とも後悔しますよ」
政宗「何だそれ!? 別に俺は後悔なんかしねーよ!」
幸村「某とてっ! 別に政宗殿と仲違いしたところで、何ともっ!!」
佐助「意地っ張りなんだから〜もう」
政宗&幸村「「違うっ!!」」
佐助「はいはい、2人とも凄く息あってるから〜」(両手を耳に当てて聞こえないフリ)
小十郎「それに政宗様、外をご覧になって下さい」
政宗「外…?」
小十郎「先ほどから降り始めまして、今はかなりの強風と豪雨ですよ。このような時に客人にお帰り願うなど、礼を重んじる武人としてあるまじき行為かと」
政宗「……ああ、分かったよ! んじゃ、好きにすりゃいいだろ!」
幸村「いいやっ。某は失礼させて頂く! 明日の試合の事もある、帰って鋭気を養わねば…!」
佐助「鋭気ならここに泊まって養えばいいじゃない。どうせこれまでだって泊まってたんだし。ここのご飯最高に美味しいし。俺サマも食事の支度しなくていいから楽で楽で♪」
幸村「な、何を!? 佐助、お前はさっきから――!」
政宗「Ah〜、Shut up! 煩ェ! 泊まってけって行ってんだから、素直にそうすりゃいいだろ!」
幸村「そ、某は…!」
政宗「俺の顔見たくねーなら、見なきゃいいんだしよ! 俺は俺でこれから用があるから、ちょっと出掛ける。アンタはここにいろ!」
小十郎「は…? ま、政宗様、このような悪天候の時に何処へ行かれると?」
政宗「前田慶次の所だ。ちょいと話したい事が出来たんでな」(言いながらもう出掛ける用意を始める政宗)
小十郎「何も今でなくとも…。明日では駄目なのですか?」
政宗「駄目って事はねーが、俺が一度気になるとさっさと済ましたくなる性分なのは分かっているだろ。明日の風魔との試合の前に、色々確かめたい事もあるしな」
佐助「確かめたいって何を? もしかしてねね姫様のこと?」
政宗「お前、知ってんのか?」
佐助「そりゃあ、この森の住民ですから。ねね様と慶次が特に仲良しだったって事は、長くこの森にいる連中なら、皆知ってるんじゃないの?」
政宗「それで、その姫さんが突然いなくなったってのに、お前ら誰も慶次に行方を訊かなかったのか?」
佐助「訊いたよ、勿論。島津公だってそうでしょ? でも慶次は、自分は知らないの一点張りだし、この話になると奴さん、どうぶつが違ったみたいに怖くなるからねぇ。だから誰も突っ込んだ質問は出来ないわけ。独眼竜が訊いたところで無駄だと思うよ」
政宗「しかしそんな態度なら、明らかに何かあったって事じゃねーか」
佐助「うん、そうなんだけどね。……でも、どっちかって言うと、ねね様の事は、慶次よりも豊臣秀吉の方がアヤシイかな」
政宗「怪しい? 怪しいってのは、何だ?」
佐助「まあ……あんまり大きな声じゃ言えないけどさ。実は、ねね様は秀吉に殺されたんじゃないかって噂があるんだ」
政宗「何!?」
幸村「なな、何と!?」
佐助「……何でそこで真田の旦那も一緒に驚くわけ?」
幸村「そそ、そんな莫迦な!? 某は、ねね姫様はにんてん様の命により、一時《さとがえり》というものをされていると聞き及んでおったぞ!? そそ、そんなまさか、こ、殺された、など…!」
佐助「その噂の出所、どこよ? まぁ、確かにいろんな憶測が飛びまわってるからね〜。どれが本当かは分からない」
政宗「でもよ、お前が聞いた噂の方がおかしくねーか? 仮に、本当に秀吉の奴がその姫さんをどうにかしたってんなら、その…にんてん、様、か? 天の神様が黙ってねーだろうよ。呑気に武闘会なんざ開いてる場合かよ」
幸村「そそ、そうだぞ佐助! 神の御使いであるねね様に手をかけたという秀吉とて、無事でいられるわけがない!」
佐助「だから単なる噂なんだって〜。それににんてん様とは言え、基本的に森での出来事はノータッチなんだって聞いた事あるよ。どうぶつ界のことはどうぶつ界で。ねね様だって、所詮人間だしね」
政宗「姫さんって人間なのか」
佐助「すっごい美人だよ〜? 独眼竜の旦那の好みかも」(ニヤリとしながらわざとそんな事を言い、幸村を見る佐助)
幸村「……っ!!」←案の定動揺
政宗「はぁ? 何言ってんだお前…」
佐助「それに、ねね様がいなくなってから秀吉が変わってさ、凄く荒れ始めたのも事実なワケよ。前は天下統一だ何だ口にした事なかったもん。で、慶次と秀吉が仲違いを始めたのもその頃」
政宗「……やっぱり慶次の奴に直接確かめた方が良さそうだな」
佐助「だから、慶次は何も話さないって…」
政宗「いや。口を割らせる」
佐助「ちょっ…。何で独眼竜の旦那がそんなムキに?」
小十郎「そうですね。私も不思議です」
佐助「やっぱり美人のお姫様に興味があるとかっ!?」
幸村「……!」(ガーンガーンガーン)
政宗「いや、そうじゃねえ」
佐助「じゃ、何よ?」
政宗「この問題を解決しなきゃ、この連載がいつまで経っても終わらねーからだ!」
佐助「はい?」
政宗「俺はバカンスに来てんのに、全っ然! この森で休めてねえ! 全ての問題を解決させて、この森を平和にするしか道はねーだろ!!」
小十郎「……政宗様、前向きなようでいて、何だか投げやりですね…」
幸村「……」(ガーンガーンガーン)←全然聞いてない


以下次号…!!




つづく



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