第49話「魔王様は退屈」


ばさらの森武闘会。…は、もう再開されないかも(何)。


幸村「政宗殿っ!」
政宗「む…何だよ幸村…。後を追ってきたのか。この雨だってのに…」
幸村「べ、別に某とて、好き好んで追ってきたわけではござらん! だが、貴殿は慶次殿の所へ向かうのであろう!?」
政宗「それが?」
幸村「慶次殿は某の大事な友人故! 政宗殿がねね姫様の事で何か慶次殿に不当な疑いを掛けては大事! 某も同行致す!」
政宗「何だそれ…」
幸村「ふんっ」(無駄に息巻く幸村)
政宗「別に勝手にすればいいだろ。……けど」(不意に自分の着ていた上着を幸村に投げる政宗)
幸村「あ…?」(咄嗟に受け取る)
政宗「それ、羽織ってろ。この降りじゃ、傘なんざ差してても、どうしても濡れちまうからな」
幸村「そ、それなら、政宗殿とて!」
政宗「俺は大丈夫だ、元より頑丈に出来てるんでね。アンタは一応病み上がりだろ」
幸村「そ、某は…! べ、別に病人ではござらん! この人間の姿にも大分慣れてまいった!」
政宗「それでも着てろよ。人の好意は素直に受け取っておくもんだぜ」(言いながらもう先を歩き出す政宗)
幸村「まっ……待たれよ!」
政宗「あ〜…。しかし、むかつくほど降りやがるな…」
幸村「……。ま、政宗、殿」
政宗「あぁ? 何だよ」
幸村「か、かたじけない…」
政宗「は…? ……いや。別に、気にすんな」
幸村「………」
政宗「………」


――その頃、パンダ小十郎宅。保護者二人、まったりティータイム中。

佐助「真田の旦那、飛び出して行っちゃったけど。あの人たち、この雨の中、また無駄なケンカしてないといいけど」
小十郎「大丈夫でしょう。きっと、雨がやむ頃にはすっかり仲直りしていますよ」


――再び所変わって、前田慶次の家。

政宗「何だか物々しいな…。いろんな動物が入れ代わり立ち代わり…。一体どうしたってんだ?」
幸村「ここは慶次殿の家でもあるが、慶次殿の叔父御である前田利家殿の屋敷なのでござるよ。その利家殿はこの辺り一帯のどうぶつ達をまとめておられる故、斯様に訪問客も多いのでござろう」
政宗「血縁関係にあるのに、何で慶次が犬で、前田は猪なんだ?……ってまあ、んなこたぁ、どうでもいいか(汗)」
まつ「そこにおられるのは、真田殿と……人間の、伊達政宗殿では?」
幸村「おぉ、まつ殿! ご無沙汰しておりまする! 政宗殿、こちら、利家殿の細君、まつ殿でござる!」
政宗「……あぁ、大会にも出ていた威勢の良い姉ちゃんか。俺のこと知ってんのかい」
まつ「勿論でござりまする。最近この森にやってきた異色の人間として、貴方様はどこへいっても噂の的。ところで、このような時分に何用でござりまするか。犬千代様に御用でも?」
政宗「いや、アンタの旦那にじゃなく、慶次に用があってな。いるかい?」
まつ「慶次ですか? あの子はいつもそこら中を遊び回っていて、うちになど滅多に帰って来ませんよ! まったく、話があるのは私どもの方ですわ! 前田家の一大事だというのに、あの子ときたら一体どこを遊び歩いているのやら!」
幸村「一大事…とは? 何やら、客人の数もいやに多ござるが…」
利家「おお、まつ! ここにいたのか!」
まつ「犬千代様!」
利家「どうしたのだ、早く来い! お前も我々の詮議に加わるのだ」
まつ「はい、それが」
利家「む? 何だ、武田の所の幸村と……、人間の伊達政宗ではないか! どうした? おぉもしや、武田の大将からもう今回の話が伝わったのか!?」
幸村「今回の…と、申されますと?」
利家「む…知らなんだか。それでは…むーん、話しても良いものだろうか。どうだ、まつ?」
まつ「これだけ大事になればどのみち知れる事でござりましょう。話されても別段支障はないように思いまする」
利家「そうか! なら話すか!」
幸村「い、一体何事でござるか?」
利家「戦だ、戦! この平和などうぶつの森で戦が始まろうとしているのだ!」
幸村「何と!」
政宗「戦だって?」
利家「うむ。実は今しがた織田軍の使者より知らせが入ってな…。まずい事に、信長公はもうばさらの森武闘会に飽きてしまわれたらしいのだ。元々気紛れで参加されていたようなものだから、遅かれ早かれこうなる事は分かっていたが…。退屈ここに極まれりと言ったところか、これから武舞台の外で問答無用の戦いを強行すると」
幸村「そ、そのような! では織田信長は我が武田にも攻撃を!?」
利家「いや、信長公に従うと表明したどうぶつ達の所には攻め入らないとの事だ。濃姫様が約束して下された。……ただし」
政宗「ただし?」
利家「その証拠として、信長公に逆らう勢力には共に織田軍傘下として戦うようにと」
幸村「なな、何と横暴な…! この平和なばさらの森で、堂々と全面戦争を謳うとは…!」
政宗「表の大将である武田のオッサンが大会に負けた事で一気にこの森を掌中に収めようって腹か」
幸村「こ、こうしてはおれん! 某、お館様の元へ向かわねば!」
政宗「武田のオッサンは信長の奴に従僕する気はないのか?」
幸村「あ、あるわけなかろう! あのような傍若無人な輩をお館様が放置されるわけはない! きっとこちら同様、戦の準備を――?」
政宗「そうなのか? 前田の大将?」
利家「……いや。勿論、これから仲間たちと詮議をするが、俺は信長公に従う文を出すつもりだ」
幸村「な、何を!?」
利家「今、信長公を敵に回すのは得策ではない。我が前田領は織田軍領地の目と鼻の先にあるんだ。信長公のあの強さ……生半可な勢力ではやられてしまう」
幸村「だがしかし! かの者は理不尽な暴力でこの森を…!」
利家「分かっている。勿論、織田軍の傘下にいたとしても、貴殿のいる武田や他の者たちを攻撃するつもりはない。……今は辛抱し、機を待つべきだと思うのだ」
まつ「ご英断にござりまする、犬千代様」
政宗「――と、いった話を聞いちゃ、あれは早々に潰しておいた方がいいだろうな」
利家「ん?」
政宗「JET-X!!」

ミニメカザビー「ガガガ……ピーピーピー……ジバク、スルネ」

幸村「うおっ!?」
政宗「避けろ!!」(幸村を突き飛ばして自らも横へ退く)
まつ「きゃあ!」
利家「まつ!!」(咄嗟に爆風からまつを庇う利家)
幸村「う……あ……あれは……?」
政宗「スパイメカだ。恐らくは豊臣軍の方のだろうが、最近これがあちこちに飛んでいやがる。アンタらも注意した方がいいぜ」
利家「何と……。あれは確か黒羊ザビーが作っているおかしな機械だ。あいつめ……いつもロクな事をしないが、今回もどうせ力のある方に擦り寄って自分たちの教義を広めようとしているに違いない…!」
政宗「教義?」
まつ「ザビー教とかいうおかしな宗教です。私たちには何の話かさっぱり分かりませぬが」
利家「とにかく独眼竜、助かったぞ! この礼は必ず!」
政宗「いや、そんなのはいいんだが。それより、アンタの甥っ子が行きそうな所って知らないか?」
利家「ん? 慶次か? ……そうだなぁ、あいつはいつもそこら中をうろついているから」
まつ「一番よく行くのは謙信公の所ですけれど」
政宗「あいつか…。そういや、そうだったな。……またあんな所まで行くのかよ(疲)」
まつ「もしも慶次が戻ったら伊達殿が探していた旨伝えましょう。あのパンダさんのお宅へ向かわせれば宜しいでしょうか?」
政宗「ああ、頼む。……だが、恐らくもうそれはないだろうぜ」
まつ「え?」
政宗「……あいつも同じ考えかもしれねえ。魔王のオッサンも動いて森が混乱し始めたんなら、豊臣の方とも一気に片をつけるしかねえってな」


以下次号…!!




つづく



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