第50話「運の悪い黒羊」
|
|
ばさらの森武闘会。……が、あったのが何やら遠い昔のよう……。 幸村「政宗殿! どちらへ!?」 政宗「豊臣秀吉の所だ」 幸村「何と!?」 政宗「多分、慶次の奴もそこへ向かっている。魔王のオッサンが破壊を望んで暴れたがっている今、豊臣軍が織田軍に対抗して動くのは必至だし、そうなっちゃ、あいつの立場なら秀吉ン所へ行くだろ?」 幸村「そ、それは何故…?」 政宗「あん? あいつら、ダチ同士だったんだろうよ」 幸村「そ、そうですが、ですが、今は……」 政宗「今がどうだろうが、昔馴染みの奴が戦おうって時に呑気に茶なんか飲んでられるか? まぁ…上杉ン所に増援に向かう事も考えられるが……いや、あいつの性格じゃあ、やっぱりそれもねェな」 幸村「……け、慶次殿とは、某の方が付き合いが長ぅござるのに、何やら……政宗殿の方が、慶次殿のことをよく分かっているようですな……」(ぐぐっと唇を噛んで悔しそうな幸村) 政宗「……んだよ。そんなに俺があいつを分かってちゃ、面白くねーか?」←違う方向に勘違いしてむっとする政宗 幸村「当たり前でござる…。お2人は……以前も、某のいない所で仲良くしておられて……。某など、政宗殿は眼中になくて……」←後半の台詞はめちゃめちゃ小さくて政宗には聞こえていない 政宗「……ち。アンタは分からな過ぎなんだよ」 幸村「はっ!?」 政宗「鈍いっつーか。無神経っつーか!」 幸村「な…ななな……! そ、それを言うなら、政宗殿とて!!」 政宗「あぁ!? 俺が一体何を分かってねーっつーんだよ!?」 幸村「分かっていないでござる! 全っ然、分かってないでござる!!」 政宗「訳分かんねーっ! ああ、もういいっ! とにかく、俺は豊臣ン所へ慶次の奴を探しに行くぜ! お前はさっさと、お館様の所でも何処でも行けよ!」 幸村「い、言われなくとも、某とて好きにするでござる!!」(ふいっとそっぽを向く) 政宗「〜〜〜! ホンット、可愛くねーっ!!」 幸村「政宗殿とて、可愛くないでござる!!」 政宗「……っ。言ってろ!」(わざと荒い足取りでズンズンと幸村から背を向け、去って行く政宗) 幸村「あ……!」(それにハッとし背中を眺めるものの、後を追おうとして止まる幸村) 細く長い雨は降り続き、幸村も既にぐっしょりと全身を濡らしている。 幸村「……政宗殿」(それでもその場から暫し動けない幸村 場所は変わって、豊臣軍領地――。 政宗「ったく、幸村の野郎…! 何かっつーと俺に突っかかってきやがって、何なんだ! あれか、そうか、俺が慶次と親し…くなんて、別にしてなかったけど、それが面白くなくて苛ついてたのか!? あいつ、そんなに慶次の事が好――」 言いかけて、ぴたりと口を閉ざして黙りこむ政宗。 政宗「……好き、なのか。そうなのか。幸村の奴、慶次の、ことが……? ……いや、まさか、あいつにそんな趣味……けど、確かにいつもあいつら一緒だったな。俺がこの森に来る前から……」 緑生い茂る森の中、一人ぶつぶつと独り言を呟きまくる不気味な政宗様。 政宗「幸村の奴が……慶次、を……?」 ザビー「OH!? ソコ〜ニ、イルノハ、独眼竜ボーイ!!」 政宗「!?」 ザビー「OH、コレモ神ノオ導キネ〜! アナタ、ワタ〜シノ作ッタスパイメカ、ヨクモ悉ク壊シテクレヤガリマシタネ〜! ザビー、カンカンヨ!」 政宗「黒い羊……。不気味な角だな。こいつか、あのザビーって奴は。確かにあのメカそっくりだ」 ザビー「OH? 何ヲブツブツ言ッテルデースカ!? トモカク、ココデ会ッタガ百年目ネ〜! YOUハ、ザビー教ニ入リマスカ!? ソレトモ、ココデ死ヲ選ビマスカ!?」 政宗「あ? 何言ってやがる…。俺が何に入るって?」 ザビー「イッツ、レッツ、ザビー!! 選バヌ者ハ、死、アルノミネ!」(ジャキン!と、突然両手に巨大バズーカを持ち出すザビー。もさもさの毛皮を持つ割に眼光は凶悪そのものである) 政宗「……丁度いい。俺ァ、今、かなり機嫌が悪かったんだ……」(ちゃきんと腰に差していた刀を抜く政宗様) ザビー「!!」 政宗「羊ってなぁ、元来臆病な動物なんじゃねーのか? それを……物騒なモン飛ばしてアブナイ真似ばっかしやがって。……お仕置きが必要だな」 ザビー「ムゥ……YOU、モシカシテ、強イネ?」 政宗「めちゃくちゃ強ェぜ」 ザビー「……YOU、ワタシト一緒ニ豊臣軍入ル?」 政宗「いいや、入らねえ。アンタは豊臣軍の一員なのか?」 ザビー「……秀吉ノ仲間ニナレバ、森ヲ征服シタ後、ザビー教、国教ニシテクレルッテ約束シタネ」 政宗「半兵衛の奴がか? はーん、それでお前、大会もわざと棄権したり、秀吉の対戦相手の九の一をメカで攻撃したり、俺らに対してスパイ活動したり、協力してやってたってわけか」 ザビー「イエーッス! 動物界厳シーネ! 生キ残リカケテ必死! 魔王サンハ、ソモソモ同盟自体結バナイシネ!」 政宗「だろうな」 ザビー「ダカラ独眼竜モ豊臣ニツクネ!」 政宗「つかねーよ! そんでお前! 話しながら、逃げの体勢取ってんじゃねえっ!!」(言いながら既に必至の逃走を始めているザビーの背中目がけて飛びかかる政宗) ザビー「ギャ!!」 政宗「豊臣軍と戦う気はねーが…!」(容赦なく剣を振り下ろす政宗様) ザビー「OH MY ZABYIIIIII〜〜〜!!!」 ザーザーと降りしきる雨の音が辺りに響く。 立ち尽くす政宗の足元には、剣を寸止めされながらも恐怖で失神してしまったザビーの気絶した姿が……。 政宗「……とりあえず悪さしている奴は叩きのめす。そうしねーと話が終わらねェからな……」 単に幸村のことで苛ついていたから八つ当たりしただけのくせに……。 イライラする政宗様、刀を収めて次号へ続く……!! |
|
つづく |