第56話「バナナに惹かれたのは」


明智を追って崖下の洞窟に入った政宗たちは、そこで黄金色に輝くバナナの木々を発見する。
しかし、何故かそこに居合わせた豊臣秀吉の攻撃によって思わぬダメージを負ってしまった!!


元パンダ「……宗様ッ。――政宗様ッ!!」
政宗「う……小十郎……ちぃ…!」
元パンダ「政宗様、お怪我は!?」
政宗「……何もねえッ! っくしょう、あのゴリラ野郎…!」(悔しそうに歯軋りする政宗様)
元パンダ「……とてつもない力です。あれは人間の持つ力をとうに超えております」
政宗「だから、ゴリラだろ!」
元パンダ「は……そうなのですが。しかし、ゴリラの割にこれらバナナの木々を見向きもせずにいたあの所作は――」
政宗「は!? ……おい小十郎、俺は今、お前のそんなくだんねェジョークに笑える心境にゃねーんだがな!」
元パンダ「た、戯れを申しているわけではありませんッ! 政宗様こそ、こういう時にこそ冷静であれと、幼き頃よりよくよくお教えしたはずですが!?」
政宗「お前が、『あのゴリラ、ゴリラのくせにバナナに見向きもしねー』とか! スーパーどうでもいい発言すっからだろ!?」
元パンダ「で、ですから! どうでも良くはないでしょう!? 聞いておられなかったのですか、奴の呟きを! この場所を『憎き墓』と…! 奴はそう言っていませんでしたか!」
政宗「……ッ。確かに……そう言っていたが、よ」
元パンダ「………」(何事か考え込むこじゅ)
政宗「それが何だってんだよ…?」
元パンダ「分かりません。しかし……奴の行動はどうやらあの竹中の意図とは異なっている様子。先刻ここへ現れたのは恐らく我らと同じ、明智の討伐が目的だったのでしょうが……奴にはまだ何かがありそうです」
政宗「ふん……。それにしても俺らを振り払っただけで立ち去るとはな…。随分と舐められたもんだぜ!」
元パンダ「いつでも息の根を止められると思っているのでしょう…。実際、奴の力に我らは成す術もなく、気を失してしまいました」
政宗「……くあー、むかつく!! ……あ? そういえば……風魔の奴は、どうした?」
元パンダ「気がついた時には何処にも。豊臣を追ったか、或いは自陣に戻ったのやもしれません」
政宗「そうか…。奴には借りが出来ちまったな」
元パンダ「はい…。礼を言いそびれました」
政宗「ん?」
元パンダ「明智との闘いの後、この小十郎を運んでくれたのはあの風魔だと聞きました」
政宗「……あ。そういや、そうだった」
元パンダ「そうは聞いておりましたが……、あの時の記憶が曖昧だったので、実は奴の事も敵か味方か判じる事が出来ずにいたのです。――ですが今回の事を見るに、少なくとも奴は我らの敵ではないでしょう。下手に勘繰って申し訳ない事をしました」
政宗「まぁけど、それは仕方ねェ。あの北条の爺さんもちっといけすかねえ感じがしたからな。俺も半信半疑だった」
元パンダ「そうなのですか? てっきり……政宗様は奴を最初から信じているものと」
政宗「んなわきゃねーだろ? こんな突然戦争がおっ始まるような危険な森だぜ? おまけに人間みてーな勢力争いだらけでちっとも油断できねえ。……って、今は油断しまくっちまったが」
元パンダ「はい(汗)」
政宗「けど、風魔の奴は次の武闘会の対戦相手でもあったしな。もし万が一敵側だったとしても、それならそれで、その場で片をつけられて都合がいいとも思った」
元パンダ「武闘会? 政宗様、まだ大会の事など気にしておられたのですか?」
政宗「当たり前だろ? 俺は元々幸村が俺と大会で手合せしてーって言うから……あ〜……嫌な事思い出しちまった…」(がっくり)
元パンダ「ま、まぁ、その事はまた後になさって下さい(疲)。それより、これからの動きです」
政宗「あ、ああ…。これからってなぁ、そりゃあ決まってるだろ? このままやられっぱなしで俺が黙っていられねえ事くらい、お前なら分かるよな?」
元パンダ「無謀な行動はお控え下さい……と、言いたいところですが、今回ばかりは不覚を取ったこの小十郎めも、おめおめと退くわけには参りませんな」
政宗「そうこなくっちゃな。そうと決まればあいつの後を追うぜ! Are you ready!?」
元パンダ「無論です! ……ですが、その前に」
政宗「――ああ、そうだな。このバナナな」
元パンダ「少し調べてみましょう。もしやこの黄金色のバナナがあの爆弾と関係あるやもしれませんし」


松永「――おやおや。何やら無用なネズミの声が聞こえると思っていたが……卿らであったか」


政宗「松永!」
元パンダ「貴様、何故ここに!?」(さっと政宗の前に立ち、身構えるこじゅ)
松永「何故と言われても、どちらかと言えばその質問を発する権利はこの私の方にあるように思えるのだが。ここは私の領地だからね」
政宗「は!?」
元パンダ「貴様の…? では明智の背後にいて奴を動かしていた者とはお前か!?」
松永「明智……? ククッ。怖気のするような事を述べるのはやめてくれたまえよ。あれは私の興味をそそる類のモノではない。むしろあれには迷惑していたのだよ。私の領地に勝手に押し入り、私のこの美しい果樹園の周囲をうろついていたのだから。――しかし、豊臣秀吉公が来なかっただろうか? 彼があれを退治してくれると言うので、様子を見に来たのだが」
政宗「秀吉の奴が明智を……だからあいつはここに」
松永「やはり来ていたかね。やれやれ、契約に予期せぬ侵入者に対する排除までは入れていなかったから、彼も卿らの事は見逃したらしい。気前の悪い事だ」
元パンダ「契約ってなぁ何だ?」
松永「なに、些細な交換条件だよ。私が武闘会での次の対戦相手、豊臣方の軍師に無条件で勝ちを譲れば、この私の領地をうろつく明智光秀を排してくれる、というね」
政宗「それで……お前は竹中との試合を棄権すると言ったのか」
松永「互いの目的が達せられるのだから、これほど合理的な事はあるまい。武闘会自体にもそれなりの興味はあったが……なに、余計な血を流さずに済むのだから、こちらの方が利口だろうよ」
政宗「それで…? 余計な血を好まないお前は、その侵入者とやらの俺たちとは戦う気があるのか、ないのか?」
松永「さて……。このまま立ち去ってくれるのならばそれも良し。しかし……この実に触れると言うのならば、私としても黙認するわけにはいくまいな。何せこれは至高の宝。私がやっと手に入れた最高の逸品なのだからね」
政宗「しかし胡散臭ェ…。この木がお前のものだと?」
松永「……無論だよ独眼竜。昨日今日この森に来た卿には分かるまい。この木の価値も……けれど打ち捨てられたこの木の悲哀も」
政宗「……?」


濃姫「松永久秀…ッ!!」


政宗「何だ…!?」(松永が現れた入口から新たにやって来た人物に眉をひそめる政宗)
元パンダ「魔王軍の…!」
濃姫「ハアハア…ッ! お前……一体、どういう、こと…ッ! 我らとの契約は…!? あの爆弾を、お前は、豊臣方にも流していたのねッ!」
松永「……やれやれ、騒がしい夜であることよ。とうに消し炭になったと思えば……闇夜に蝶の羽なぞ見えまいて」
濃姫「我らを…上総之介様を裏切るとは…許せない! この黄金の木々と共に消し飛べ…!」(全身傷だらけのようだが、ジャキン!と、どでかいバズーカのような銃を取り出す姫)
政宗「おい…マジか…!」
元パンダ「政宗様、後方へ!!」
濃姫「上総之介様の敵はこの濃が全て排除する…! そしてこの森は我ら織田軍のものとなる!」
松永「……美しきものも、道を迷えばこれほどまでに見苦しくなる。この実の価値も分からぬ愚かな女よ。――死ぬがいい」
政宗「!!」
元パンダ「政宗様!!」
濃姫「は……!?」

――松永がぱちんと指を鳴らした瞬間。
濃姫が現れた入口付近、岩のように硬い土が不意に盛り上がったと思った瞬間、辺りが凄まじい爆発を起こす!!


政宗「……ッ! あの野郎、地雷を……!」(爆風と火炎で何も見えなくなるも、濃姫がいた方向を凝視しようと前進する政宗)
元パンダ「政宗様、ひとまずおさがり下さい…! あの女はもうダメです…!!」(それを必死に止めようとする小十郎)


松永「クックック…! 業火に彩られ輝く樹木もまた一興…! この黄金の実は私の最高のコレクションだ…!」


――地下で爆発なんか起こしちゃって大丈夫!? 木々にその火は移らないのか!?という様々なツッコミを残したまま、以下次号!!




つづく


今回のタイトルは、「バナナに惹かれたのはゴリラでなくワニ」という意図でつけました。
……説明しないと分からないタイトル……。



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