第58話「地下道を抜けて」


政宗「こんな所に出るとはな……」
元パンダ「驚きました。この森には長く居りましたが、まさかこのように見知った場所に辿り着くなどと」

政宗と小十郎は秀吉を追うようにして、行きとは別の道から秘密の洞窟を抜けた。
長い長い道のりの先、ようやく外へ臨める出口に着くと、そこからは下方に広い海岸線が臨めた。

政宗「あそこから向こうの森はもうどうぶつ達の居住地じゃねーのか?」
元パンダ「はい。下っている感覚はありましたが、ここまで続いている地下道だったとは驚きです。確かに抜け道の2つや3つなくては、あのような断崖の隠れ家……、奇襲を受けたらひとたまりもありませんが」
政宗「それで明智の野郎もとんずら決めこめたってわけだな」
元パンダ「でしょうな。どうやら奴は我らだけでなく、豊臣方も敵に回しているようですし」
政宗「とりあえず海岸線まで下りるか。その女には医者が必要だ」
元パンダ「はい」←濃姫はこじゅがおんぶしています


元親「お、おいー!? そこにいるのは政宗か!?」
政宗「……あん? 元親?」(海岸線に到達した所で駆け寄って来る元親と遭遇)
元親「お前、こんな所で何やってんだよ!? 俺はてっきり、武田のオヤジん所で戦の準備でもしているもんだと……っていうか、おい片倉…。お前が背負っているのって――」
元パンダ「この近くに医者はいるか? 森の中まで戻ってもいいが、こいつには早急に医者が必要だ」
元親「そ、そいつ! 織田軍の女狼じゃねーかッ! 何でお前らがそいつを! まさかもう一戦やった後か、もう戦は始まってたのか!? 俺はてっきり明朝かと!!」
元就「耳元で喚くな鬱陶しい【殴】」
元親「ぎゃ!」←ばったり(倒)
政宗「元就。お前もいたのか」←気配もないまま元親の背後にいた為、気づかなかった
元就「全く騒がしい夜だ…」←かなり不機嫌
政宗「俺んちにいるもんだと思ってたぜ」
元就「そうしていたかったがな。この莫迦鬼が偉そうに、我を呼び付けたのだ」
政宗「元親が?」
元就「我の居住区に豊臣だか織田だか知らぬが、無断で侵犯した上、何やら怪しげな物資を運んでいると言うのでな…」
政宗「何だと…。で、その一党はいたのか」
元就「見ての通りだ。確かに一個小隊ほどのどうぶつが通った跡はあったが、特に異常は見受けられぬ。この鬼の過剰な騒ぎだったか、或いは既に事は済んだ後か」
政宗「恐らくは後者だろうぜ」
元就「………」
政宗「一応調べたようだが、その足跡周辺はもう少し念入りに洗った方がいい。俺もどっちの軍の仕業かは断定できねェが、今回の戦には厄介な爆弾が出回っている」
元就「爆弾だと…。そのような無粋なもの、人間界にのみ存在する屑。この神聖なるどうぶつの森にあって良いものではない」
元パンダ「それを秘かに造っていた者たちがいたのだ。そしてそれを織田軍、豊臣軍双方が用いようとしている」
元就「おのれ……我の領地にもそれをばらまいたと言うか!」
政宗「それは分かんねェ。だが、織田の一党が上杉の領地にそれを仕込もうとしていたのはこの目で見た。あとこの女が言うには、その爆弾は豊臣も持っているって事だ。更にこいつは、あのワニの松永がそのこうもり役をやったっぽい事も言っていたな」
元就「……その女狼は織田軍の者だな。我に渡せ。消し炭にしてくれる」
政宗「落ち着け。こいつには松永の事を聞かなきゃなんねー。……この傷じゃ、まともに喋れるかは分かんねェが……」
濃姫「……殺せ」
政宗「! 気が付いたか」
濃姫「上総之介様の足枷になるくらいならば死を選ぶ…! 私が…くっ……お前達などに、何か口を割るとでも…っ」
元パンダ「喋るな。傷口が開くぞ」
元就「死ぬと言っているのだから死なせてやれば良かろう。我がその望み叶えてやる」
政宗「だからダメだって言ってんだろーが。大体、神聖などうぶつの森で殺生なんざしていいと思ってんのか?」
元就「時と場合によるな」
政宗「あのな…。おい元親! テメエ、いつまでくたばってんだ、起きろ【殴】!」
元親「イテ! テ、テメエ、政宗…! 偉そうに俺に命令すんじゃねえッ!」←ナリ様にどつかれてただでさえ痛かったのに、さらに頭を擦るチカちゃん
政宗「いいから、お前の出番だ。この女、お前が介抱するか医者を呼ぶかしてやってくれ。んで、爆弾の詳しい出所…は、まぁ松永と明智の野郎が絡んでいるらしいんだが、とにかく入手の経緯を聞き出しておいてくれ」
元親「は!? おい、何だって俺がそんな真似――う!」(いきなり問答無用でこじゅから濃姫をどすっとパスされるチカちゃん)
濃姫「だ、誰が話すものかッ! 殺せッ!」(チカちゃんに抱かれる格好ながら暴れ、しかし傷の痛みで再び苦悶する濃姫)
元親「うおっ、だからバカ、暴れんなって! お前、ホントに死ぬぞ!?」
元就「だから殺してやれば良いのだ」
元親「ていうか、爆弾って何の事だよおい!!」
濃姫「誰が……話すものか…!」
元就「ではやはり殺そう」
元親「わ、バカやめろ元就! 俺まで斬ろうとすんじゃねーって(焦)!」
政宗「だーっ! ごちゃごちゃ騒ぐんじゃねえ、うざってえ!」
元パンダ「落ち着いて下さい、政宗様!」

こじゅの一喝により、一瞬でしーんとなる一同。

政宗「と…とにかくだな。お前らだって嫌だろ? この森一帯が物騒な地雷原になったり、織田と豊臣が無茶苦茶やって土地が荒らされるのは」
元親「そりゃあ……そうだ。勿論。俺らの土地だぜ?」
元就「煩いのは好かぬ」
政宗「だろ? で、俺らはこれからまず豊臣の所へ落とし前をつけに行くからよ。爆弾やら、この女の事はお前らに任せたいって、こういうわけだ。ここで会ったのも何かの縁だろうしな」
元親「けどよー、女の介抱より、そっちの方が明らかに楽しそうじゃねーか?」
政宗「(面倒くせー奴だな…!!) ……いや、聞け元親。これはマジな話なんだがな。ヒトでもねえ、どうぶつでもねえ。いわば中立の立場である鬼っ子のお前だからこそ、この女から重要な情報を聞き出せる可能性が高いと思うわけだ、俺は」
元親「は?」
元就(……適当な事を)
元パンダ(政宗様もうまい事を仰る)
政宗「つまりだな、いわばお前はこの森の平和を導く為のキーマンって事だ。you,see?」
元親「ゆ、ゆー……? ま、まぁ……そりゃあ……そうだな」
政宗「だろ!? そうすりゃ、もうこの森のヒーローはお前に決まりだ!」
元親「そ……そうかぁ!? ま、まあ俺もそうじゃねえかという気はしてた!!」
政宗「だろ!? そうしたらお前、これからは自分だけがどうぶつじゃねーとか何とかって引け目を感じる事もねえしな! 大手を振って森を闊歩すりゃあいいぜ!」
元親「おおぉ! 分かった! ならこの女と、その爆弾か!? よく分かんねーが、それは任せろ! 俺が何とかしてやらあ!」(どんと胸を叩いて張り切るチカちゃん)
政宗「――と、いう事だ。元就、お前も頼んだ」
元就「……貴様、我がこの莫迦と同じ煽てに乗るとでも?」
政宗「そうじゃねえよ…。チカはほら、こういう奴だ。女の心を開かせるのは問題ねーだろうが、多分爆弾の件は意味が分かってねぇ。……あぁ、お前も今耳に入れたばっかの話って意味では、訳が分かってねーとは思うが」
元就「我を愚弄するか。……フン。だが、貴様とこれ以上言葉を交わすのも不愉快。――行け。我の領地の問題でもある故、織田・豊臣双方に出回っているという、その無粋な屑については探りを入れておいてやる」
政宗「はっ…さすが。悪ィな。そいつの形態は黒いバナナだ。ぱっと見は真面目にホンモノに近い」
元就「黒いバナナ…?」
政宗「何か心当たりでもあるのか?」
元就「……貴様とて分かるであろう。あの果実を最も食すのは誰だ」
政宗「?」
元就「それは猿人の類だ。しかしあの手の実はこの森に生ってはいなかった。……その事を、あの猿と懇意にしていたあの女は随分と思い悩んでいた」
政宗「あの女?」
元就「人間の巫女だ」
政宗「ねね姫か…。ならやっぱり、あの黄金のバナナを作ったのはその姫さんって事になるか」
元就「黄金のバナナだと…」
政宗「ああ、地下の洞窟に生えてた。しかしその話は後だ。とにかく、俺と小十郎は豊臣秀吉の所へ向かう。後は頼んだぜ」
元親「おい、しかしこれからって、お前ら2人だけでか!? 武田のオヤジや幸村たちに援軍頼んで行った方が――」
政宗「俺らはでかい戦をしに行くわけじゃねえ。それに蘭丸やこの女の動きから見るに、その手の戦を先に仕掛けそうなのは織田軍の方だ。武田のオッサンたちにはそっちの方を任せておかないとな」
元パンダ「政宗様、海岸向こうの森は既にどちらの軍とも分からぬどうぶつ達の布陣が整いつつあるようです。豊臣の領地へ向かうならば急いだ方が」
政宗「分かった。じゃあな、お前ら。後は頼んだぜ!」
元親「お、おい政宗! ……行っちまった。全く忙しねえ奴だぜ。結構毎日たるそうにしてやがったくせに」
元就「奴もこの森の住人らしくなってきたという事か」
元親「ん?」
元就「二度は言わぬ。それよりその女、とうに気を失しておるぞ。何か聞き出すのであろう」
元親「うおっ、そうだった、やべーやべー! こいつに織田軍の動きやその武器の事なんか教えてもらわなきゃな! けどその前に手当てか、とりあえず俺んちに運ぶぜ!」
元就「……まったく。この森で戦などと……」


静かな夜の海を眺めつつ、ぽつりと呟くナリ様であった。
以下次号…!!




つづく



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