第7話「雨の中で」
|
|
政宗「ん…何だよ雨か。ついてねーな…」(幸村を探し、森の中に彷徨いこんだ政宗) お市「どうかした…?」 政宗「うおっ!? な、何だぁ…? ど、どっから沸いてきたんだアンタ! (全然気配感じなかったぞ)」 お市「………」 政宗「……あー。アンタは、黒獅子…か? なかなかカッコイイな。ん? けどこの動物ってどっかで見たような」 お市「貴方が……最近この森に越してきた人間ね……」 政宗「ん? ああ、そうだぜ。伊達政宗ってんだ。よろしくな」 お市「………」 政宗「で、アンタは? (暗い女だな〜しかし)」 お市「………市」 政宗「は? …あぁ、イチ、さんかい? 覚えたぜ。よろしくな」 お市「忘れてくれていいわ……」 政宗「あん?」 お市「市は…市は、呪われた存在……。この身など、不要のもの……。だから、そんなモノの事なんていちいち覚えておく必要はない……」 政宗「はぁ? ……よく分かんねーがよ。覚えとくのも忘れるのも俺の勝手だな。アンタの知った事じゃねえだろ?」 お市「………」 政宗「余計な事言うようだが、アンタ折角別嬪なんだし、もっとこう明るく笑ったらどうだ? きっといい寄る男も増えると思うぜ! 彼氏とか、好きな男、いねーの?」 お市「彼氏……?」 政宗「Yes!」 お市「……市は呪われているの」 政宗「は? いやだからな…俺が言いてェのはそんな事じゃなくて―」 お市「市は…市は、もう駄目…ッ。兄様の妹として生まれた時から…もう、市の人生は終わっているの。折角市を拾ってくれた長政様の事も―」 政宗「ん? ナガマサ? そりゃ男の名前だな! 何だよ好きな奴いんじゃねーか。他人事ながら何かホッとしたぞ俺は」 お市「………でも、食べたくなってしまうの」 政宗「………What?」 お市「長政様はとても綺麗なカモシカで…。とても真っ直ぐなお方。そんな長政様を…市は、市は、時々どうしても食べたくなってしまうの…っ」 政宗「………」 お市「長政様は、市の事、お嫁にしてくれるって言ってくれたの…。市が呪われていることも『関係ない』って、『あまりメソメソするな』って。いつも怒ってくれるの…。それなのに…。そういう長政様を見ていると、とっても身体の中が熱くなって……ムラムラしてきて……頭からぱく!って……」 政宗「……食いたくなるわけか?」 お市「………」(こっくりと頷く) 政宗「………頭痛くなってきやがった(汗)」 明智「おや…あそこに美味しそうな群れがいますね…。ふふふふ…どれどれ、狩ってきてあげましょうか、ふふふふ……あははははは……!!」←政宗達を無視してフォークとナイフ持ったまま小走りで駆け抜けていく 政宗「……ああいうのもどうかと思うが(汗)。おい、イチさん…って言ったかい?」 お市「………」 政宗「アンタ肉食の黒獅子だろ? カモシカ食いたくなるってのは、まぁある意味正常な感覚だ。何も無駄に自分を責める事ァねえよ」 お市「……でも」 政宗「ただな、もしも本当にそいつの事が好きなら、食った後スゲー悔やみそうだろ? だから、まあ…食うなら違うカモシカにしとけ。俺が言えるのはそれくらいだ!(我ながらバカくせえ発言だぜ…呆)」 お市「……市の罪を責めないのね」 政宗「今いきなり知り合ったアンタを俺が責められるわけねーだろ? 大体なあ、そのカモシカ男だって、ちっと話聞く限りじゃ、お前の事ちゃんと好いて一緒にいてくれているみてーじゃねえか。それで結果的にお前が野生の本能に負けて奴を食ったとしても―…まあ、そいつはお前を恨んだりしねえと思うぜ?」 お市「………」 政宗「……多分な」 お市「……分かった。ありがとう、独眼竜」 政宗「は? お前何だって俺の名…」 お市「小熊の能天気なあの子が話しているのを聞いたの…」 政宗「!! 幸村を見たのか? ―…って、今日聞いたとは限らねェか…」 お市「うん。話を聞いたのは前……。でも、今日も市、見たよ……」 政宗「は? 幸村見たのか!? あいつどっち行った!?」 お市「蜂の大群に追われて……池のある方へ」 政宗「マジかよ! Thank youな! 池ってあっちか? よっし、今度こそ追いつくぜ!」 お市「あ…」 政宗「じゃあな! アンタ元気出せよ!」(猛ダッシュ) お市「……独眼竜」 幸村「う……ううう。某とした事が……不覚でござる」(蜂に刺されてしまった腕の傷をぺろぺろと舐める幸村) 政宗「幸村!! 遂に見つけたぜ!!」 幸村「!!! ま、政宗殿、どうしてここへ!?」 政宗「どうしてじゃ、ねえ! お前の事探してたに決まってんだろーがッ!」(ズンズンと勢いよく池の傍にいる幸村の元へと近づく政宗) 幸村「わ、わわ…!」 政宗「おっと逃がすか!」(首根っこむんず!) 幸村「は、離…離せ…っ! 政宗殿など…き、嫌…っ!」(じたじた) 政宗「煩ェ! テメエ、こっちはずぶ濡れだし、テメエは怪我してるし…! 機嫌最悪なんだからこれ以上騒ぐとマジキレるぞ俺は【怒】!」 幸村「……っ! ふ…う、うぅ……! も、もう、怒っておられるではないか…!」 政宗「アァ!?」 幸村「政宗殿など嫌いでござる〜〜〜〜!!!!」(びーっ【大泣】!!!) 政宗「……ッ!!」 ――大地が揺れる程の漢泣き、小熊幸村。 そんな幸村の動転したような姿に途惑いながら、より酷くなる雨に濡れて、どうにも言葉の出ない政宗様なのでありました。 |
|
つづく |