第11話「強い彼?」

佐助「ちょっとちょっと旦那! 大ニュース〜!」
幸村「…煩い佐助。俺は寝ているのだ、話しかけるな」
佐助「何頭から布団被って不貞寝してんのヨ。ンな事してる暇あるなら独眼竜のトコ行ってくればいいのに」
幸村「う、煩いと言っているだろうッ! 俺の前で政宗殿の事を口にするな!」
佐助「あっそ。じゃあいいよ。折角面白い事教えてあげようと思ったのに」
幸村「……そういえば大ニュースがどうとか。何かあったのか」
佐助「どうしようかな〜? だって旦那の前で独眼竜の話はしちゃいけないらしいし〜?」
幸村「!! 政宗殿の事か!? 一体何があった!?」(がばりと布団を跳ね除け起き上がる幸村)
佐助「やっぱり気になるんじゃん」
幸村「佐助!」
佐助「分かった分かった。あのね、鬼が島出身のチカちゃんいるでしょ。長曾我部さんちの風来坊」
幸村「元親殿がどうかしたのか?」
佐助「あの人って元々旦那と行動パターンが似てるじゃない? で、やってきちゃったんだって」
幸村「何をだ?」
佐助「決闘」
幸村「な…っ! ま、まさか元親殿が政宗殿に決闘を…!? 決闘を申し入れたのか!!」
佐助「まあそんなちゃんとしたものじゃないらしいんだけどサ。『余所者の田舎モンがよォ〜。俺が一つ、腕っぷしを見てやろうじゃあねえか!』……とか何とか言ってちょっかい出したらしいのよ〜」(元親の口真似がちょっと似てる佐助)
幸村「何という無茶な事を! 元親殿の腕っぷしは相当なものなのに! ま、政宗殿に怪我などは…っ!」
佐助「あ。それ逆」
幸村「逆!? 何が逆なのだ!?」
佐助「怪我したのはチカちゃんの方だって」
幸村「…は? な…何だ、それは…どういう意味だ…!?」
佐助「だから。どういう意味も何も、チカちゃん返り討ちに遭っちゃったんだって。どうにも大層機嫌悪い時に行っちゃったみたいで、かなりこっぴどくやられたらしいよ?」
幸村「ま、政宗殿が元親殿を……」
佐助「ねー、やっぱあの人結構…ってか、相当強いんじゃないの?」
幸村「………」

佐助(ふふふ。ちょっと面白い事になってきたかもね?)



第12話「何者?」

幸村「も、元親殿、大丈夫でござるか!?」(バンと勢いよく元親の部屋のドアを開ける幸村)
元親「あぁ? ちぇ、佐助テメエ…その調子で色んな奴らに言いふらしてんだろ!」
佐助「人聞きの悪い。元就サンには言ってないから安心して?」
元親「んなっ…!? あ、あいつに言いやがったらマジテメエ〜…!!」
佐助「だから、言ってないっての」
幸村「そ、それより元親殿。この怪我は本当に政宗殿から…?」
元親「ん? あ、あぁ、まあな…。俺は手を抜いてやってたんだが、向こうはスゲー本気でよォ。たかが喧嘩に熱くなりやがって」
佐助「でも吹っかけたのチカちゃんじゃない」
元親「佐助! テメエは煩ェんだよ、いちいち!」
幸村「し、しかし大事ないようで何よりです。病院には行かれたのですか」
元親「よせやい、これっくらいで医者になんか診せてられるか! ただの全身打撲だぜい!」
佐助「全身かよ(笑)!」
元親「あー…ちち。けど、思い返してもむかつくぜぇ、あの野郎…! 余裕かました態度でよォ、木刀持ってるくせにロクに振りもしねーの」
幸村「木刀? 政宗殿はやはり剣術の心得が…」
佐助「でも、ロクに振らないってどーゆー事よ?」
元親「だからそのまんまの意味だよ! こう…軽く一振りしただけでな、すげぇ風圧。くそ、何か知らねー間に後ろに回られてたし…」
幸村「………」
元親「確かに俺もカッときて冷静さを欠いてたけどな。ありゃ相当の使い手だぜ…何者だよ」
佐助「あれ、認めちゃうの? 手抜いてたんでしょ? 大した事ないんでしょ?」
元親「だからテメーは煩ェって【怒】!」
幸村「……某も―」
元親「ん?」
幸村「ま、政宗殿に、お手合わせ願ってくるでござる!」
佐助「………」
元親「は? マジで? いや、それは俺もちょっと見てえなあとは思ってたがよ。何か知らねーけど、アイツ、理由もなく喧嘩吹っかけてくる奴ってマジむかつくらしいぞ?」
佐助「そりゃフツーの人は誰でもむかつくと思うけど」
幸村「理由なら……ある! 行ってくる!!」(だだだーっ)
元親「何だありゃあ……?」
佐助「ま、ちょっとね」



第13話「先客」

幸村「たのも〜う! 政宗殿、たのも〜う!!」
小十郎「おいおい、人ン家の門前でそんな大きな声を出すな。そこにインターホンがあるだろうが?」
幸村「わっ…。そ、そなたは!?」(ザッと槍を持って警戒態勢の幸村)
小十郎「それはこちらの台詞だ。大槍なんざ構えやがって、政宗様に何用だ? 事と次第によっちゃ、この俺、片倉小十郎が相手をするぞ」
幸村「そ、某は真田源ニ郎幸村! 貴殿に用はない、政宗殿はご在宅か!?」
小十郎「………」(ため息)
幸村「こ、こら…っ! 聞いているのか、某は―」
小十郎「煩ェ…ったく。 いらっしゃるが…今はお前のような先客がいてな。裏手の道場へ行っておいでだ」
幸村「先客!? ど、道場…!? そ、それは一体?」
小十郎「この土地の人間は礼儀を知らないらしいな。越してきたばかりの政宗様に、あろう事か因縁つけて決闘などと…! 一人目の奴で懲りたと思ったんだが、まさか増えるとは…」(再度のため息)
幸村「で、では!? 元親殿以外にまた政宗殿に手合わせを申し出た者がいると!?」
小十郎「ああ。確か、毛利元就と言ったか」
幸村「元就殿が!?」
小十郎「だがまぁ、もうそろそろ終わるだろう。少し待てるのであれば続いてお相手をお願いするがいい。政宗様の許可が得られれば、だがな」
幸村「な…何を…何を言っているのだ…? 元就殿はああ見えて元親殿に匹敵する程の剣客…! そ、それを、その後などと―」
政宗「小十郎」
幸村「!!」
小十郎「はっ…これは政宗様。申し訳ありません、おいでになられた事に気がつかず…」(さっと脇に控えて頭を下げる小十郎)
政宗「今終わった。あいつ手当てしてやれ。やたら気ィ強ェから、引っかかれるかもしれねーけどな」(ちょっとニヤリ)
小十郎「承知致しました」
政宗「あと、奴の持ってきた武器は貰っとけ」
小十郎「は?」
政宗「面白ェから、俺が勝ったらくれって最初に約束しといた」
小十郎「……政宗様」(ちょっと嫌な顔)
政宗「大丈夫だよ。あいつ、真剣勝負用の持ってきてねーから。ったく、どいつもこいつも俺の事舐めすぎだろ」
小十郎「畏まりました。それと政宗様、ここにいる者が―」
幸村「!」
政宗「あー、腹減った。飯にする」(くるりと背中を向けて去って行こうとする政宗)
小十郎「は…? しかし政宗様、この者が政宗様に…」
政宗「そんな奴知らねえ」
幸村「……っ!」
政宗「俺にだって相手選ぶ権利くらいあんだろ。……そいつとは剣を交えたくねえ」
小十郎「……?」
幸村「……っ」(ふるふると震える手で槍を握り締める幸村)
政宗「先行くぞ、小十郎」
小十郎「はっ…」(ちらちらと幸村を見つつ、後を追う小十郎)
幸村「………」

じんわりと瞳を潤ませる幸村であった。




つづく



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