第17話「体育の授業」

元親「ハァ〜、次は体育か。かったりぃな。サボるか…」
政宗「へえ…」
元親「ん? 何だよ、その顔は」
政宗「いや別に。ただお前って如何にも体育会系だろ。だから今の台詞が意外だった」
元親「球技とか武道系なら好きだぜ? けどなー、今日はあれだ。一番最悪な持久走だ。うちの体育は球技と武道と走りを交互にやるって決まってンだ。熱血理事長の方針で」
政宗「ふうん。確かにあの理事長、見るからに暑苦しかったもんな」
元親「お前、そりゃあ暑苦しいの暑苦しくねえのって。いや、暑苦しいんだよ!」
佐助(結局チカちゃん、独眼竜ともう普通に会話してるよなぁ…)←横目でさり気なく2人の気配を追う佐助
元親「あ、けどな、ウチの理事長の悪口はここでは禁句だぜ? 前の2人がそりゃあ煩く怒り狂うからな!」
政宗「ん……」
佐助「べっつに俺サマは怒り狂ったりなんかしないよ。真田の旦那だけでしょ、それは」(後ろを振り返りながら迷惑そうに)
幸村「………」
佐助「……(ため息)。旦那。旦那って!」(ぐらぐらと肩を揺する)
幸村「ハッ!? ど、どうした佐助…?」(ぱちぱちと瞬きして我に返ったようになる幸村)
元親「…よう幸村。最近お前、本当変じゃねえかぁ? マジでよー、どっか具合悪いんじゃねえの?」
幸村「そっ…そのような事はござらん! 平気で…ござる…」
政宗「………」
佐助「(あ〜あ)…で、チカちゃん。体育サボるの? 今日の持久走はその我が理事長も見に来るらしいよ?」
元親「げっ、何だよそりゃあ…」
佐助「真田の旦那、良かったね。今日は2クラス合同で順位とタイムも細かく出すらしいからサ。いつもみたいに1番取らないと! お館様の前でイイトコ見せるんでしょ?」
幸村「ん…あ、ああ……そうだな……」
元親「テンション低っ。ホント、どうしちまったんだあ? いい加減心配になるぜ。なあ元就?」
元就「我に振るな。やかましいのだ、貴様は。いちいち」
元親「ぐっ…。だ、だから、何でお前はそうとことん冷てェんだよ…(汗)」
政宗「………」←憮然とした様子でしょんぼり俯く幸村の後ろ姿を眺めている



第18話「体育の授業―その2―」

―校庭にて。ジャージに着替えたA組+B組男子―

元親「ハァ。女共は体育館でバレーだってよ。ずりぃな…」←結局いる
佐助「ならチカちゃんも行けば? 隣のクラスのエロ慶次はソッコーで体育館行ったらしいよ」
元親「俺はあそこまで恥知らずにはなれねぇ」
顕如「がっははは! どうれ、集まったかクソ餓鬼ども〜!! さあさあ走れよ走りまくれよ、金はやらんがなぁ! ガッハハハー!!!」←金ジャージを着込む体育教師・本願寺顕如。指導棒も金ピカ
元親「……うちの学校って、まともな教師いねえよな」
佐助「あれぇ? 大将来てないなぁ。(折角真田の旦那を奮起させようと思ったのに〜)」
元親「いねえのかよ! あいつが来るっつーから仕方なく出席したのによ! おい顕如! 何で信玄のオッサンは来ねーんだよ!」
顕如「ムム…? また貴様か、この顕如先生に無礼な口をきくのは…。仕置きされたいのか?」
元親「煩ェよカネの亡者が。信玄のオッサンはどうしたって訊いてんだろうが」
顕如「武田理事長は急用が入ったとかでここには来られん! だがな、だからと言って手を抜いたら承知せんぞ! この金の延べ棒がお前等に正当な裁きを下すからな! ガッハハハ!!」
元親「チッ…マジでうぜえ……」
幸村「………」(ボーッ)←無意識に政宗の姿を見ている
佐助「……旦那。ちゃんと身体あっためた?」
幸村「………」←まだ見てる
佐助「旦那ってば!」
幸村「はっ…!? な、何だ佐助! 急に横にいたらびっくりするだろう!」
佐助「さっきからいました。…それより、もういい加減にしたら?」
幸村「な、何がだ……」
佐助「独眼竜の旦那のこと。ずーっと見つめては溜息ついて。もう3日も経つじゃない。そろそろ俺サマも限界」
幸村「な、何を…俺は別に…っ」
佐助「別に、じゃないよ。前の席に座ってる時だってそう。意識しまくってるのミエミエだし! チカちゃん以外の人間は皆気づいてるからね! 旦那が独眼竜の事、気にしてるのに話しかけられないで悶々としてる事!」
幸村「な……な……(赤面)」
佐助「勿論、気づいてるのは独眼竜当人だってそうだよ」
幸村「ま…政宗殿も…?」
佐助「それでも知らないフリしてんのはサ。本当に心底真田の旦那の事を嫌ってるか―」
幸村「!」
佐助「もしくは、待ってるのかも。旦那が何か話してくるのを」
幸村「ま、まさか…ありえん! 政宗殿は、俺にはもう話しかけてくるなと…!」
佐助「そんなの。状況は変わるもんだよ。チカちゃん達だってそうじゃん。最初はあんなに独眼竜の事嫌ってたのに、今では普通に喋ってるし。仲良しじゃん。だからさ」
幸村「だ、だから…?」
佐助「真田の旦那も、逃げてばっかいないでちゃんと勇気出して切り出せば、独眼竜の旦那だって態度変えてくれるかもしれないよ?」
幸村「…そう…だろうか…」
佐助「うん。そうだよ!」
幸村「だが俺は…くっ…!(どうして…こんなに、怖いと思うのだろう…)」
元親「オイお前ら何してんだあ? スタートだぞスタート! さっさと来いよー!」(遠くから大声で呼ぶ元親)
佐助「とにかく行こう旦那!」
幸村「わ…っ。さ、佐助…!」
佐助「独眼竜の旦那徹底マークだからね! あの人きっと速いよ! 絶対負けたら駄目だからね。勝って一目置かせるんだから!」
幸村「い、痛いだろう、佐助! そんなに背中を叩くな!」
佐助「気合気合! 大将の代わりだよ!」
幸村「う、うう……」



第19話「体育の授業―その3―」

―BASARA学院の外周は1周約5キロ。更にその経路を離れて裏山に突入する修行コースは往復で約25キロというイイ感じなマラソンコースとなっている―(体育の授業でそんな走らされたら死ぬよ……)

元親「あ〜やっぱやってらんねぇ…」←コースから離れた裏山の繁みで一服するチカちゃん
佐助「あら。最初猛烈スピードで飛ばしてったと思ったら、こんなトコで油売ってたのー?」
元親「適当な時間になったら帰りゃいいだろ。真面目にてっぺんまで行って戻ってくる奴なんざ、要領の悪ィ馬鹿だけだな」
佐助「んー、でもチカちゃん、これで補習決定だね」
元親「は……何で? ……って、何だこりゃあ!?」←身体の周りをぶんぶんと煩く飛び回っているのは超ミニメカザビー
佐助「顕如先生が音楽教師のザビーセンセに特注して作らせた追跡メカ。生徒一人ずつにつけて、サボりがいないかチェックしてんのよ」
元親「っざけんな! うお、何だコイツ攻撃してきやがって…! アチ! アチチチ!」←超ミニメカザビーは小さなバズーカで火花攻撃も出来る。授業をサボる悪い子チカちゃんをそれでお仕置き
佐助「あの人、何で音楽教師なんかしてんだろね? ま、ともかく、俺サマも巻き添え食わないように走り再開しますよ。じゃあね〜」
元親「まっ…待てって、俺も行くからよ…! って、熱ィ! 熱ィってんだよ、ぶち壊すぞこのクソメカ【怒】!!」
佐助「それ一体百万円だってよ〜。気をつけてね〜」
元親「ハ、ハアアア!?」

―そして一方。佐助達の更に前を行く頂上付近の先頭集団―

幸村「…ハァ…ハァ…!(は、速い…政宗殿のペースは…)」
政宗「……ッ」←黙々と走りつつもちらと背後の幸村を気にした模様
徳川「ぐおおお負けん! わしは負けんぞおおお!!!」(ドドドド)
ホンダム「………」←無言で空を飛んでいる(生徒!?)
兼続「俺は無敵だ! 貴様らなんぞに負けるわけがない!!」(ゼエハア)
浅井「ぬおお…! 正義は必ず、勝ぁつ【気合】!」←現在僅差で1位

……という、何だかよく分からない先頭集団である……

徳川「おい! お前がこの間転校してきた独眼竜かッ!?」
政宗「あぁ…?」
徳川「儂はB組の徳川家康! この学院はそのうち儂が締めるからの! 心しておけよ!」
政宗「……お前、何でその見た目でそんなジジイ言葉なんだ?」
徳川「な…っ。ち、違うだろうがぁッ!? 言うべき事はそーゆートコじゃないだろう!? こ、この無礼者が【怒】!!」
政宗「あの頭上に飛んでるやつ。ずっとお前をマークしてるな」
徳川「む? わ…わははは! 驚いたか! あれは本田忠勝! 儂の忠実なる家臣じゃ! 凄いだろう!?」
政宗「あれって反則じゃねえの? つか、生徒なのか?」
徳川「な、何を〜…? ち、ちっとは驚いたり恐れ慄いたりしろぉ〜!(ぎりぎりり…)」
浅井「ふははは! 貴様らが無駄話をしている間に、ほれ、私はどんどんと差をつけていくぞー!」(ズドドドド)
徳川「な!? い、いかん、忠勝、全力だー!」
ホンダム「……!!」(ギラン!と眼が光って超エンジン全開)
兼続「俺が負けるわけがないぃ〜!」←とか言いつつ、どんどん引き離されて行く
政宗「ったく、変な奴ら……」(加速)
幸村「あ…!」←焦って続こうとするも…
政宗「……!?」
幸村「う…っ!」←ドッシャアと見事にコケる
政宗「………」←一瞥はしたものの、走り続ける
幸村「い…つつ。不覚…。木の根に躓くなど……」
兼続「俺が負けるわけ……」←幸村のずっと背後で何か言ってるが、もう遠過ぎてあんま聞こえない
幸村「………情けない。動けん。………本当に……俺は、情けない…っ」(くしゃりと表情を歪めて俯く)
政宗「おい」
幸村「え……!?」(びくりとして顔を上げる幸村)
政宗「怪我したのか」←いつの間にか戻ってきていて幸村を見下ろしている
幸村「ま…政宗…殿…」
政宗「………」
幸村「……っ」




つづく



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