第20話「ばか〜」

幸村「あ……」
政宗「怪我したのかって訊いてんだろうが。……立てるか」
幸村「も、勿論…っ。痛…!」
政宗「……捻ったか」
幸村「だ、大丈夫でござる、このくらい! お、お気遣い無用!」
政宗「………」←あからさまムッとしている
幸村(な、何とみっともない…! 政宗殿の前で醜態を…木の根に躓き、足を挫くなど…!) 
政宗「そんなんで歩けるのかよ。立ってみろ」
幸村「だ、大丈夫だと申しておろう! さっ、先に行って下され!」
政宗「はぁ…?テメエ、人が心配してやってんのに、その態度かよ…」
幸村「だ、誰も頼んでござらん!」
政宗「………ああ、そうかよ」
幸村「な…!? な、何を…っ」
政宗「いいから腕回せ。肩貸してやるってんだ」←幸村の腕を取って自分の首に回し、支えながら無理やり立たせる
幸村「うっ…」
政宗「やっぱ痛ェんじゃねーか。やせ我慢してんじゃねェよ」
幸村「い、痛みなど! 何ほどの事もない! 某は武士故!」
政宗「武士だぁ…? 21世紀に何ほざいてんだテメエ」
幸村「ほざ…!?(むかっ) そ、某はッ! お館様の一番隊隊長で、真田隊の末裔なのだ! だ、だから…!」
政宗「だから、何だよ…? つーか、足動かせっての。片足は無事だろうが。全然前進まねーだろ」
幸村「は、離せ…! 某は一人でも歩ける! 政宗殿の手など借りぬ!」
政宗「って、テメ、暴れ…痛ェ!」
幸村「離すでござるぅ〜!」(じたばた)
政宗「てっめえ、いい加減にしろよッ!?」
幸村「わっ…!!」←政宗に身体を離されて倒れこむ
政宗「何なんだテメエ! 人の事さんざん視姦してやがったくせによ! 手ェ貸してやったら猛烈暴れやがって、何考えてんのか全っ然分かんねー!」
幸村「あ……」
政宗「佐助の奴や小十郎までお前と口きーてやれとか言うからよ! 相手してやれば! ったく、バカバカしくてやってらんねーぜ!」
幸村「な…そ、某、そのような事、頼んではおらん…!」
政宗「ああ、そうみたいだな! そうだよな、お前は俺のお節介がはじめっから迷惑だったんだもんな!」
幸村「え……あ……」
政宗「冗談じゃねえよ!」
幸村「あ…ま、政宗殿、某は……」
佐助「真田の旦那〜! どうしたの〜!?」
幸村「佐助!!」
佐助「わ、何怪我したの? 大丈夫? どこ痛めたのよ?」
幸村「ひ、左足を…」
佐助「ったくドジなんだから。どうせ木の根に引っ掛けるか何かしたんでしょう?」←さすが佐助
幸村「な、何を、俺は…!」
佐助「はいはい、言い訳は後で聞きますって。それより、ほい乗っかって。おんぶして帰ったげるから」
幸村「な、何を、俺は…!」
佐助「何照れてんのヨ。安心しなって、独眼竜の旦那ならもう行っちゃったから」
幸村「え…!?」←きょろきょろと見回すが本当にいない。佐助が傍に来たのと同時に行ってしまったらしい
佐助「何かすんごい怒ってたけど。またメンドクサイ事になったんじゃないでしょうねえ?」
幸村「……っ」(項垂れ)



第21話「友達の推薦」

元親「ケッ…テストで人間の価値が量れるかってんだよ、なぁ幸村!」
佐助「そこでうちの旦那に振るの止めてくれない? 今回、結構傷ついてるみたいなんで」
幸村「こ……このような……このような醜態を晒して、お館様にどのような顔でお会いしたら…!」(ぶるぶる)
元親「アァン? ンな酷かったのかよ? けど、ドンケツはC組の武蔵ってバカだと聞いたぜ? そんでそん次が俺だから、まだお前なんかマシな方じゃねえかあ? なあ?」
佐助「アンタのレベルと一緒にしないでって。旦那はいつもはもうちょっといいんだから。ねー、旦那?」
幸村「な…っ。さ、佐助、まさか見たのか…!?」←慌てて成績表を胸に抱いて隠す
佐助「ま、お世話係としては、旦那の成績は詳しく把握しとかなきゃね。大将に報告する時困るじゃん?」 
幸村「さ、佐助ッ!? お、お館様へは俺が自らお話する! た、他言は絶対に無用だぞ!!」
佐助「えー、でもいいの? 助け舟出さなくて? 今回の中間テスト、色々集中出来ない事多くて大変だったじゃない。俺サマなりにフォロー入れてあげようと思ってるんだけど?」
幸村「いらぬ世話だ! お、俺はもう帰る!」
元親「帰れるわけねーだろー。幸村、お前俺と同じ補習組に入ってるぜ?」
幸村「な…っ」
元親「クソ麿の奴がまたクラス対抗意識とか燃やしやがって、赤点3コ以上取った奴は今日から1週間毎日居残りだとよ。ケッ…」
佐助「あら、そんでチカちゃん素直に居残りするんだ? なかなか殊勝じゃない」
元親「あぁ? 何言ってやがる、誰が出るっつったよ。俺ァ帰るぜ!」
幸村「も、元親殿?」
元親「俺は帰るが、幸村、お前はそういう事は出来ねえだろうってこった。だろ?」(ニヤリ)
幸村「うっ…うぅ…」
佐助「確かにねえ。でも、おじゃる先生の補習なんか聞いても、成績上がるどころかガックシと下がりそうだよね。声聞いてるだけで萎えるし。家で復習でもした方がよっぽどいいんじゃない?」
幸村「い、いや…。担任殿からのお達しとあらば仕方がない…。不甲斐ない成績を取った某が悪いのだから…」
元親「ハイハイ、真面目だねえ。んじゃ、俺は帰るわ。今日こそ政宗の野郎に一太刀浴びせてやるぜえ!」
幸村「!」
佐助「はぁ? 呆れた、アンタ達まだやってたの?」
元親「っせえ! 試験中はあの小十郎の奴が屋敷前を完全封鎖してくれやがったからよ! 延期してたんだ! そ、それに……元就も行くと言ってたしな……」
佐助「なるほど」
元親「じゃあな! あいつらもういねーし! クソ、俺を置いてくなっつー話だよ!!」
幸村「あ……」
佐助「………」←頬杖をついたままちらと横目で幸村を見やる
幸村「……っ」←成績表を握り締めながらがっくりと項垂れている
佐助「こんなに席近いのにサ。あの体育の時からますます喋ってないね」
幸村「煩いぞ佐助……」
佐助「まあ足もまだ完全じゃないから、旦那は手合わせどころじゃないけどサ。それにしても、ねええ。何とかならんもんかね」
幸村「煩いと言っているだろう、佐助! 先に帰って良いぞ!」
佐助「帰りますけどネ。……はーあ、出来の悪い主人を持つと大変だね。テストもさ。独眼竜の旦那は堂々の学年トップだったってのに」
幸村「!!」
佐助「情けないなあ」
幸村「佐助ッ!!」←ガタリと立ち上がって怒りで真っ赤

政宗「―…っせえよ。何叫んでやがる」(突然ガラリとドアを開けてやってきた政宗)

幸村「あ…!?」←びっくり
佐助「あれ。帰ったんじゃなかったの。チカちゃん、焦って出てったよ」
政宗「フン…あいつ、うぜェよな(笑)」←でもどこか楽しそう。因みに政宗は佐助とは普通に話す
佐助「まあでも、あーゆーとこが可愛いでしょ。旦那だって結構気に入ってるみたいじゃない、チカちゃんの事」
政宗「ハッ……まぁな。単純で素直な奴は分かりやすいし、嫌いじゃねーよ」
佐助「でしょう!? あら〜、じゃ、俺サマ1人そのタイプに思いっきり合致するヒト知ってるから、独眼竜の旦那に紹介しちゃおっかな〜?」
政宗「はあ…?」
幸村(さ、佐助、一体何を言っているのだ…【焦】!?)



第22話「怖い」

佐助「ねえ独眼竜の旦那? チカちゃんよりもずーっとずーっと可愛くて旦那好みのイイ人知ってんですよワタシ♪ 安くしときますんで、お一つどうですかい?」
政宗「何だよ気持ち悪ィな(笑)。その妙な手つきは止めろって。お前はどこぞの悪徳商人か」
幸村「だ、大体佐助、その言い方は―…ッ!」
政宗「……じろ」←幸村を見て突然機嫌悪くなる人
幸村「うっ……。………」(がっくり項垂れ)
佐助「(やれやれ…。)えーっとねえ。俺サマが推薦したいのは、ズバリここにいるこの人、真田幸村なんだけどネ」
幸村「さ、佐助…!?」←さすがの幸村もあまりのストレート勝負に驚愕の眼差し 
政宗「………」
佐助「そんなさー、怖い顔しなくってもいいじゃない。独眼竜の旦那だって、いい加減この状態疲れない? こーんな席近い状態でずっと喧嘩なんてさ、よくないよ、やっぱり。俺サマ達、折角縁あってクラスメイトってやつになったんだし! ねっ☆ 皆で仲良くしましょーよ!」
幸村「………」(しきりに政宗をちら見)
政宗「………」
佐助「大体さー、独眼竜の旦那は、この真田幸村の事をさ、思いっきり誤解してるわけよ。んなのずっと見てれば旦那も分かると思うけどっ。真田の旦那が性格悪くないってのは皆の反応とか見てても分かるっしょ? この人クラスの人気者だし! 下手な嘘つけないし! おばかだし!」
幸村「さ、佐助…っ!」
政宗「………」
佐助「ちょーっと、口下手なトコがあるからサ、何か誤解させちゃうようなトコあったかもだけど? まあ大目に見てやってくれません? この人もいたく反省してるみたいだから」
幸村「佐助いい加減にしろっ! お、俺は別に反省など―」
政宗「してねえよな、そりゃあ。別にアンタは悪くない。そうだろ?」
幸村「え…」
政宗「元々は俺が、そうとは望まないアンタに色々世話焼いたのが迷惑だっただけだもんな? だからそれでいいじゃねェか。別に喧嘩なんざしてねーぜ。単に互いに干渉し合わない、そういう関係でいようってだけだ。だろ、真田?」
幸村「……!」←泣きそう
佐助「いや、だから。あのー、ほら、この今にも崩れ落ちそうなこの人の顔を見てもらえれえば分かる通りですね…」
幸村「〜! 煩い佐助ッ!!」
政宗「煩ェよ!!」
佐助「ぎゃっ!」

政宗・幸村「「もう構うなっ!!」」

佐助「な、何なのよアンタ達〜…」
政宗「……フン」(むかついたように教室を出て行く政宗)
幸村「……!」(真っ赤になりながら改めて席に着き、補習用のノートを出す幸村)
佐助「……旦那、何でなの?」←呆れを通り越してちょっと怒り気味
幸村「………」
佐助「独眼竜と仲良くしたいんでしょ? したくないの?」
幸村「もう帰れ、佐助」
佐助「嫌だ。アンタが何考えてるか分かんないなんて嫌。何なの今の態度。どうしてそんな意固地になっちゃうの? 一言言えばいいんだよ。本当は凄く凄く友達になりたかったけど、ちょっとしたボタンの掛け間違いで下手な事言っちゃったんだって」
幸村「………煩い」
佐助「独眼竜だって、何で真田の旦那が自分にだけこうもつんけんするのかって、それが面白くないんであってさ。絶対嫌ってないよ。むしろ何でだろうって思ってるよ」
幸村「煩い」
佐助「煩くない。ちゃんとこっち向いてはっきり―」(ハッとして口を閉ざす)
幸村「俺は…」(じんわりと目じりに涙)
佐助「だ…旦那?」←やや怯んで後ずさり
幸村「政宗殿が……怖い」
佐助「………え?」
幸村「見つめられただけで竦んでしまう。声を聞くと耳を塞ぎたくなる。心が乱れるんだ、政宗殿に関わっていると、俺は…おかしくなる…! どんどん……どんどん、酷くなる…!」
佐助「……でもそれって……結構出会った頃からそうで……」
幸村「違う! 前より酷いっ。前より……酷く胸が痛むのだ…っ! 俺は、政宗殿と一緒にいられない…!」
佐助「………」
幸村「政宗殿を直視できん…!」
佐助「………」
幸村「こんな状態で勝負など出来るわけあるまい!」

佐助(何でそこまで重症になってんのよ…。距離置き過ぎて…感情だけ先走りまくってる…?)




つづく



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