第23話「あれ？　何で？」

元就「遅いぞ政宗」
元親「お前、俺より先に校舎出たんじゃねーの？　ま、別にいいけどよ。邪魔してるぜえ」
政宗「小十郎はどうした？　それ出したの、アイツだろ」（２人がつまんでいる茶菓子を見ながら）
元親「裏の畑出てるってよ。贅沢な家だな、ここは。道場に畑にこのデカイ屋敷だろ」
政宗「………」（無表情のまま何となくその場に鞄を投げ捨てる政宗）
元就「真田は来ないのか」
政宗「……あ？」　
元親「ん？　アァ幸村か？　アイツは来られねーぜ、クソ麿の補習で―」
元就「黙れ、貴様には訊いておらぬ。我は政宗に尋ねているのだ」
元親「うぐ…」
政宗「何で俺に訊く」
元就「あれと話していて遅くなっていたのであろう」
政宗「別に話してたって程じゃねえよ。佐助の奴が煩くてな」
元就「フン…くだらぬ…」
元親「？　何？　何だよ？　テメーら、俺にも見えるような会話しろ！　幸村がどうしたんだ？　政宗、お前もしかしてまたアイツの事苛めたのか？」
政宗「はぁ？　何だそりゃ」←おもっきしムッ！
元親「いじめてんじゃねーか。アイツ、いっつも必死こいてお前の事見てンのに、お前の方は無視ばっかでよ。性格悪ィ奴って感じだぜぇ、なぁ元就？」
元就「黙れと言うのだ【殴】」
元親「イテッ！　な、何すんだよ元就！」（ガタリと椅子を蹴って立ち上がる元親）
元就「貴様の声はガチャガチャと耳障りなのだ。余計に口を動かすな」
元親「お、俺は本当の事言ってやってるだけだろがッ」
政宗「聞き捨てならねえな。訳分かんねえのはあっちの方だろ。俺はあいつが関わるなと言うから関わらないようにしているだけだぜ」
元親「あん…？　関わるなって……幸村がそう言ったのかよ」
政宗「ああ、そうだよ」
元就「フン……そうは言っておるまい」
政宗「あ！？」
元就「一言一句その通りの言葉を言ったのか？　違うであろう。…これだから単細胞は」
政宗「何だと…。おい、俺はな、今猛烈に不機嫌なんだよ。闘る気があるならいつでも相手してやるぜ」
元就「元より、そのつもりだ」
元親「お、おい！？　ちょっと待て、また２人だけで勝手に話を進めるんじゃあねェッ！　俺だろ政宗！　今日は俺と闘る約束だったはずだ！　元就は引っ込んでろ！」
元就「何だと。貴様、もう一度言ってみろ【殺気】」
元親「！！　ち、違う、俺はただいつもお前ばかりがコイツと闘って怪我するから―」
元就「…面白い事を言うな元親。よし、まずは貴様から消してやろう。そこへ直れ」
元親「うっ！　だ、そ、その物騒な顔止めろ！　落ち着け、俺はお前と闘る気は―」
元就「問答無用！」
元親「ぐわっ！　ちょっ、待っ、こら、こんな所で武器振り回すなッ！！」（脱兎）
元就「ちょこまかと逃げ回りよって、小癪な…！」←音もなく追いかけるナり様。怖い。

―独り残される政宗―

政宗「けっ…くだらねえ……」
小十郎「仕様のない２人ですな。止めてきますか」
政宗「……突然現れるな。いつからいたんだ？」
小十郎「政宗様があの真田を苛めている…というあたりからですか」
政宗「とっくにいたんじゃねえかよ。つか、苛めてねえ。……いいか、小十郎。余計な事は言うなよ。俺はもうお前の言う事だろうが何だろうが、あいつと口きいてやる気はねえからな」
小十郎「元よりこの小十郎、政宗様の意に逆らう意など毛頭ありませぬ。…ですがまた来ているもので、どうしたものかと思いまして」
政宗「は？」
小十郎「真田が外の裏門あたりをうろついております」
政宗「はあぁ！？　んなわけあるかよ、あいつは補習に―」
小十郎「詳しい事は存じませんが、いるものはいます。屋敷の裏手をウロウロと小動物のように徘徊していまして。声を掛けると逃げ去るのですが、暫くするとまた戻ってくるので如何致したものかと」
政宗「……何なんだよ。訳分かんねェ【苛】！」
第24話「…見たくて」

幸村「うぅ…俺は一体何をしているのだ…」
政宗「まったくだぜ」
幸村「う、うわあっ！？」（自分の背後に立っている政宗に驚き腰を抜かす幸村）
政宗「………」←腕組んで見下ろしてる顔が怖い
幸村「ま、政宗、殿……」
政宗「ここは俺ん家の裏口だが。何か用か」
幸村「……う」　
政宗「大体、テメエ何なんだ？　補習はどうした？」
幸村「…ふ…腹……」
政宗「あぁ！？　聞こえねーんだよ、はっきり言え！」
幸村「（むっ！）た、担任殿が突然の腹痛で、補習は中止になったんでござる！」
政宗「腹痛だぁ…？」
幸村「そ……それで……某は…単なる帰り道で……」
政宗「……帰り道ィ…？」
幸村「そ、そうでござる。別に、貴公に用があったわけでは」（必死に上からの視線を避けようと目を泳がせる）
政宗「……そうかよ。ならさっさと帰れ。この辺を勝手にうろうろしてんじゃねェ」
幸村「ど、何処を歩こうが某の勝手でござろう！？」
政宗「勝手じゃねえ」
幸村「は……はぁ！？」
政宗「勝手じゃねえよ。俺はアンタの顔見るとむかついてしょーがねーんだ。だから俺ん家の周り100メートル圏内立ち入り禁止だ。今決めた」
幸村「な、何をふざけた事を…！　天下の往来、何処を歩こうが貴公に指図を受ける謂れはない！」
政宗「フン、知ったこっちゃねーよ。こっちだって始終ふざけてるアンタにんな事言われたかねェんだ」
幸村「ふ…！？　某のどこがふざけていると―！」
政宗「ふざけてんじゃねえか！！」（ぐいと幸村の腕を掴み、己の顔を近づける政宗）
幸村「！！」←いきなり距離が縮まってびびる
政宗「何なんだ！？　あ！？　俺に何か文句があるのか、それとも単なる嫌がらせか！？　関わりたくないんだろうが！？　アンタは！？　この俺と！！」
幸村「う…は、放せ、手を―」
政宗「煩ェ！　さっさと答えろ！」
幸村「め、命令するな…ッ！　某に命令して良いのはお館様だけ…！　政宗殿にそのような言われ様―」
政宗「ああ、そうだな、アンタも俺が嫌いなんだもんな！？　だったらこうして近づいてくるのは何でなんだ！？　それがどんだけ俺の神経逆撫でしてんのか、アンタ本当に気づいていないのかよ！？　えぇ！？」
幸村「は、放せ…ッ！　そ、某は…た、ただ―…！」
政宗「誰が放すか！　ただ、何だ！？」
幸村「う…っ」
政宗「真田幸村ッ！」

幸村「た、ただ……！　政宗殿が、見たくて―…！」

政宗「……ッ！？」
幸村「か、顔が………顔が、見たかったんでござる…！」（目を瞑りながら絶叫）
政宗「―…ッ」
幸村「ま、政宗殿の…顔を……一目……」

―間―

政宗「……はぁ？」←予想外な答えに思わず手を放した
幸村「……はっ」←己の発言の重さに気づいた
政宗「………どういう意味だよ……それは」
幸村「べ、別に…っ」（赤面）
政宗「別にって事はないだろうが。キライな奴の顔わざわざ拝みたいのか、アンタ？」
幸村「き……………ん…」
政宗「あぁ？」（眉をひそめる政宗）
幸村「き、嫌いでは、ござらん…！　そのような事、一度も思った事はござらん…！」
政宗「……！」
幸村「……っ」（俯いたまま、何故か正座）
第25話「仲介者を得て」

政宗「……俺の事は嫌いじゃないのか」
幸村「………」（黙って頷く）
政宗「なら何であんな態度取りやがる。大体お前は俺と―」
幸村「お、お手合わせ願いたいと言う気持ちに、変わりはござらん」
政宗「……！」
幸村「だ、だが、闘いたくないというのも…また偽らざる気持ち…」　
政宗「……それが…ワケ分かんねェ…」
幸村「………」
政宗「……黙るなよ。何か言え」
幸村「そ、そのような…っ。責めるような言い様は止めてもらいたい…！」
政宗「責めるだろうがよッ！　普通は！？　こんな状況で優しく物が訊けるほど、俺は優しい男じゃねェぜ！」
幸村「や…優しいではござらんか…！」
政宗「はぁ…？　……また何を意味不明な事言いやがっ―」
幸村「政宗殿は優しいでござるッ！　某以外の皆には…！　元親殿にも、元就殿にも…！　いつも笑いかけておられる…っ」
政宗「悪いか！？　あいつらはダチだからな！　アンタと違って気持ちのいい奴らだしよ！」
幸村「……っ」
政宗「俺ははっきりしない奴は好きじゃねェ！　アンタは俺の事が嫌いじゃねェらしいが俺は―…」
幸村「……！」
佐助「わーっと、待った待った！　独眼竜の旦那、それ以上はストーップ！」
幸村「佐助…？」
政宗「何だ…？」
佐助「もう旦那、補習ないと分かったらすっ飛ぶように学校出ちゃうんだもん。折角俺サマが工作してあげたのに感謝もないんだからねぇ…」←後半の言葉だけかなり小声
政宗「……？」←怪訝な顔をしたまま沈黙
幸村「な、何をしに来た、佐助！」
佐助「何って。んー……助っ人？　または、旦那達がまぁた暴走して変な方向いかないように監視役として参上、とか？」
幸村「な…何を…」
政宗「おい、自称忍」
佐助「自称じゃなくて、一応ホントに忍の末裔なんですけど。でもいいか。何？」
政宗「この要領を得ないバカの代わりにお前が翻訳しろよ。一体何なんだ、この男は？」
幸村「ば…ッ！　そ、その、バカとは某の事か…！？」
政宗「アンタ以外に誰がいるんだよ」
幸村「何を…っ！　今の言葉、撤回されよ！！」
政宗「嫌だ！」
幸村「政宗殿！」
佐助「だぁから、そんな顔突き合わせて睨みあわないでって。こんな事、お互い望んでやってるわけじゃないでショ。ね？」
幸村「お前は黙っていろ！」
政宗「先にテメエの方から黙らせるぞ！」
佐助「………ムキにならないでよぉ」（頭を抱える）
元親「おいおい、何の騒ぎかと思いきや」
元就「全く騒がしい……」
佐助「あら。ギャラリー増えちゃったよ」
幸村「元親殿…元就殿…」
元親「やーっぱ、あの怒鳴り声は幸村だったか。何だよ、結局はお前も政宗と手合わせしたいんだろ？　だったら政宗、やってやりゃいいだろーがよ。互いに打ち合えばきっとすっきりするぜえ」
政宗「部外者はすっこんでろ」
元親「あぁ！？　…ったく、何で幸村の事になるとお前はそうも頑固なんだよ？」（半ば呆れ気味）
元就「くだらぬ」
小十郎「政宗様。このような所で立ち話でもありますまい。皆に中へ入ってもらったらどうです」
政宗「……小十郎」
佐助「さんせ〜い。座って話しあおう、座って！」
元親「俺はてっとり早く喧嘩がいいと思うがな」
幸村「………」←俯いたまま
つづく



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