「雨」
〜本日の訪問客・阿師谷伊周〜


伊周「オーッホホホホホ! 待ってたわよ〜ん、アタシのた・つ・まv」

龍麻「……………」(玄関に立ち尽くしたまま呆然とする龍麻)
伊周「うっふん、さあさ、あがってあがって。アタシね、寒い雨空の下、震えて帰ってくる龍麻の為にお風呂の用意をしておいてあげたのよん。いやん、アタシってば気がつき屋さん〜!」
龍麻「どうやって入ったの、中?」
伊周「アラ、アタシのために開けておいてくれてるのかと思ったわ〜。フツーに戸締りしてなかったわよ」
龍麻「そ、そうだっけ…?」
伊周「あら! あらあらあら! ところで背後にいるそのヘンなのは何なのォ〜?」(もの凄く嫌そうな顔)
芙蓉「……龍麻様。命じて頂ければ直ちに排除致しますが」(殺気炸裂の芙蓉)

伊周「いやん、物騒な事言うコねえ。これだからアイツの式神はアタシのと違って品がないっていうか…」
芙蓉「晴明様を侮辱する言…! おのれ、覚悟…ッ!」
龍麻「芙蓉」
芙蓉「!?」
龍麻「ごめんな。送ってくれてありがとう。でも、もう平気だから」
芙蓉「で、ですがこの者は…ッ!」

伊周「アンタも気が利かないわねえ。龍麻はアタシと2人っきりになりたいってンだから、さっさと帰りなさいよ
龍麻「いや、君も帰ってよ」(あっさり)
伊周「はうっ! た、龍麻、そんな言い方ってないじゃない。あんまりだわ…!」
龍麻「知らん

芙蓉「……………」
龍麻「芙蓉。御門に俺が無事家に戻ったって伝えなきゃだろ? 俺は平気だから、気をつけて帰って」
芙蓉「……はい、分かりました」
龍麻「ありがとうな」
芙蓉「は。龍麻様、どうかお気をつけて…」(伊周をギンと睨みつけて退出する芙蓉)

伊周「な、な〜によ、アイツ。たかが式神の分際で生意気にもこの阿師谷伊周にガンたれてくれちゃって」
龍麻「どうでもいいけど、何しに来たんだよ? いいから君も帰ってよ」(ウンザリしながらリビングに入ってどっかりと座り込む龍麻)
伊周「い、いや〜よ。アタシってば、健気な奴だから、龍麻にどんなにひどい事言われたって帰らないわよ。今日はアタシが龍麻のコト、甲斐甲斐しくお世話してあげるんだから〜」
龍麻「何世話って? かなりアヤシイんだけど」(思い切り胡散臭げな眼を向ける龍麻)
伊周「だ・か・ら。さっき言ったでしょう。お風呂の準備は万端よv まずはアタシが龍麻のお背中流してあげるでしょ〜? その後はアタシことともちゃん♪特製のディナーを振舞ってあげるv それから夜は…うふふ、大サービスしてあげるから〜」

龍麻「いらん。もう絶対的に大々的にいらん。そんなサービス」
伊周「た、龍麻…! アンタって人は一体いつからそんな冷酷な台詞吐いちゃう素敵なダーリンになってくれちゃったわけ!? アタシ、今かなりときめいたわ!!」
龍麻「阿師谷って…冷たい事言われるの好きなの?」
伊周「いやん、アタシの事はともちゃん♪って呼んで! でも、まあそうね! イイ男に冷たくあしらわれるのってすっごくゾクゾクするわ! 振り向かせ甲斐もあるしねv」
龍麻「俺、振り向く気ないんですけど…」
伊周「いやんいやん! そんな素っ気ない事言って〜。でも分かってるのよ、龍麻。ホントはアタシが来てすっごく嬉しいって事は! だってアンタの顔に書いてあるものv アタシが来てう・れ・し・いって♪」
龍麻「……何でも善意に解釈できる阿師谷ってある意味無敵だね」
伊周「うもう、龍麻! アタシの事はともちゃん♪って呼んでッ!」
龍麻「しーん」
伊周「んふふ…いいのかしら、龍麻? そんな冷たい事いつまでもやってるとぉ〜。アレの極意を教えないわよ?」
龍麻「アレの極意??」
伊周「聞いているわよん♪ 龍麻、外法にハマッてるんですってね! 式神ちゃんはどれだけ作れたのかしらん?」
龍麻「!! ま、まさか…ッ!!」
伊周「オーッホホホホホ!! このアタシを一体誰だと思ってけつかるのよ! この阿師谷伊周、式神作りのエキスパートよ! それはゲームだろうが何だろうが同じ事! アタシ…外法の式神コンプリートしたセーブデータ持ってるんだ・け・どv」(ぴっとメモリーカードを差し出してびらびら見せびらかすともちゃん♪)
龍麻「わーー!! 阿師谷!! 見たい見たい、それ見たい、見せてー!!」(興奮)
伊周「阿師谷〜? 龍麻、今アタシの事何つったのぉ〜?」
龍麻「ともちゃん! 見せて下さいッ! すげえよ、全式神コンプリートなんて! 尊敬! 感動!」
伊周「ホホホホホ! そうでしょそうでしょ、もっと誉めちぎっていいのよ、龍麻」
龍麻「それにしても、お前もゲームなんてやるんだなあ。ちょっと意外だった」
伊周「普段はやんないわよ」
龍麻「え? じゃあ、外法だけ?」
伊周「そうよ。龍麻の為にこれだけやったのよ」
龍麻「お、俺の為…?」
伊周「そ♪」(ぱちんとウインクして見せるともちゃん♪)

龍麻「な、何で?」
伊周「何でって事はないでしょーが。アンタの仲間たちと一緒よ〜。アタシだって、龍麻。アンタの事とーっても好きなんだから〜んv」
龍麻「……………」
伊周「それに、アタシは今のアンタの方が普段のアンタよりも好きかな」
龍麻「え? な、何で?」
伊周「だーって、自分のやりたい事を周り無視してやっているんでしょ〜? 使命だとか何だとか、面倒臭ェ事ぜーんぶ放棄してぇ」
龍麻「そ、それは……」
伊周「いいじゃないの、龍麻。アンタがそうしたいならそうしてればいいじゃない。アタシは応援しちゃう。働いてばっかじゃ息が詰まるってのよ」
龍麻「……そんな」
伊周「ん? ナニ?」
龍麻「そんなさ。分かったような目でそういう事言うなよな。お前、俺の敵のくせに」
伊周「アーラ、そうだったかしら?」

龍麻「……まあ、お前にしてみたら、黄龍の俺がぐずぐず我がまま言ってゲームなんかに呆けていた方がありがたいよな。東京も混乱したままになるだろうし、色いろ暗躍しやすくな―」
伊周「オラ、龍麻」(いきなりぐっと龍麻の胸倉を掴んですごむともちゃん♪)
龍麻「うぐ…ッ!?」
伊周「いじけた事言うんじゃねえよ。せっかくこの俺が高く買ってやってんだからよぉ…。ガッカリさせんじゃねェ」(吐き捨てるように言い、龍麻を解放するともちゃん♪)
龍麻「け、けほけほ…ッ」(息を詰まらせて咳き込む龍麻)
伊周「………まァ。悩める青少年の為に、今日はこの俺がたっぷり遊んでやるからよ。覚悟しな?」
龍麻「………げほん。……じゃあ…式神作りのアイテムある場所とかも…教えてくれる?」
伊周「ふ……。いや〜ん勿論よぉ〜!! 今日はその為に来たんじゃな〜い!! 手取り足取り、外法の真髄を教えてあげるわ〜ん!!」

龍麻「あ…あはははは…っ。もう、ホント…君ってヘンな人だね。何だか毒気抜かれちゃったよ」
伊周「あ〜ら、そうお? アタシなんか毒ありまくりなのにねえ……。うふふv」



以下、次号…







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