「雨」
〜本日の訪問客・織部雪乃〜


雪乃「よお、緋勇」

龍麻「あれ…お前も来たの?」(ゲームの最中)
雪乃「き、来ちゃ悪いのかよ…ッ!」
龍麻「悪くないよ。お前もやる? 外法ゲーム」←その呼び方って…
雪乃「……………」
龍麻「俺ね、今すごい霊場潜りに凝ってんだ。式神つくりに必要なアイテム、阿師谷がどこにあるかとか教えてくれたから、結構今それ目標にプレイ中」
雪乃「……そんなによ」(そろそろと龍麻の傍に近づいて座る雪乃)
龍麻「んー?」(雪乃に振り返りもせず画面に釘付けの龍麻)

雪乃「ゲームって面白いのか…?」
龍麻「ああ、面白いよ! 結構時間経つの忘れるな!」
雪乃「ふーん……」
龍麻「ほら、雪乃。見てみなって。俺の育てたキャラのレベル! ここまで育てると必殺技とかもこーんなに持ってるんだぜ! すごくない?」
雪乃「ン…ンな事言われても俺にはなあ…(焦)」
龍麻「あ、そっか。じゃあこの中で誰が1番好みだ?」

雪乃「は、はあ!?
龍麻「いや、このゲームってカッコいい人とか可愛い子とか目白押しで、人物人気でも評判良いらしいから。女の子なんかもすっごくやってるらしいよ」
雪乃「………そ、そうなのか」
龍麻「そうなんだよ。で、雪乃は誰がいい? これ攻略本。誰が好みだ?

雪乃「え、えーとそうだな、じゃあ俺は……」(渡されるままに攻略本を見始める雪乃)
龍麻「うんうん」(テレビ画面を見ながらも雪乃の返事を待つ龍麻)
雪乃「えーとえーと俺は……って……そうじゃないだろッ!」(ツッコミ調子で攻略本を叩きつける雪乃)
龍麻「あん?」
雪乃「こら緋勇! お前なあ、何で俺がここに来たと思ってンだよ!」

龍麻「俺と一緒にゲームをやりに来た!」
雪乃「ちがーうッ! 違う違う違うッ! 断じてそんな理由じゃあねえっ!!」
龍麻「うっるさいなあ、何だよ雪乃ー」(実に迷惑そうに振り返る龍麻)
雪乃「何だよ、じゃねえっての! お前、今この街がどうなってるか知らないわけじゃねえんだろっ!?」
龍麻「知ってるよー。雨が止まなくてそれは俺が病気になったせいで、だからそれを治す為にどっかへ行かないといけないんだろ?」

雪乃「そうだそうだ。分かってンじゃねえか」
龍麻「で、今は俺が誰とその旅に出るかを決める期間なんだよな? もうさー誰にするのかさっさと決めてくんない?」
雪乃「な、何言ってンだ! だからそれを決めるのがお前なんだろーがっ。お前こそさっさと決断して誰か連れて行って問題解決してこいよ!」
龍麻「ええ〜。俺誰でもいいよ〜」(実に面倒臭そうに再びゲーム画面に目をやる龍麻)
雪乃「何ィッ! 何だそのいい加減な返事はっ! 誰でもいいってのは、どういう事だ!?」
龍麻「だって誰を選んでも大変な事になりそうだし…。波風立つの嫌なんだよな。だからさ、こんな風に1人1人来て何か言って来なくていいから、くじ引きとかで決めたらどうかな」
雪乃「……こ、こ、この…緋勇、テメエ……【怒】」
龍麻「何ならお前、俺と一緒に来る役やる?」
雪乃「!?」
龍麻「雪乃を選んだってなったらみんな納得しそうじゃん。京一とか美里とか言ったら…何か周りが煩そうだけど」
雪乃「……………」
龍麻「お前ならさ、安心だし。俺たちって特別何かあったとかいう噂が出た事もないし」
雪乃「……俺はお前の体のいい誤魔化し役かよ」
龍麻「ん? 何?」
雪乃「ふざけんなッ! 人の話は真面目に聞け!!」(ぶちっとプレステの電源を消す雪乃)
龍麻「わーーー!? なななな何すんだ一体〜!!」
雪乃「るせーッ!! テメエが悪いんだろーが!! いつまでもゲームばっかしてんじゃねえ!!」
龍麻「ひどすぎるー! 俺、今一気に20階くらい降りてたんだぞ! 全然セーブしてなかったんだぞ!」
雪乃「知るかッ! 何ならこのゲーム機ごとぶっ壊してやろうか!?」
龍麻「そそそそんなッ! 雪乃、俺が一体何したって言うんだよ!?」
雪乃「見損なったぜ、緋勇! テメエ、いつからそんなへたれな男になりやがったんだ!? 俺はお前はもうちょっとは根性も責任感もある野郎だって思ってたんだぞ!!」
龍麻「……そんな勝手に思われても」
雪乃「ああ、勝手に思ってたぜ、悪かったな! それがこのザマだよ! 俺は自分の男を見る目のなさに、今ほとほと呆れ返っているぜ!」
龍麻「え、自分に呆れ返ってんの? 俺には呆れ返ってないの?」

雪乃「お前にも呆れ返ってるよ!」
龍麻「あ、そう……」
雪乃「…ったく。一体どうしちまったってんだよ…」
龍麻「スイマセン」
雪乃「―で、済んだら世話ねえっての!」
龍麻「でもさ、雪乃。あんまりそうカリカリすんなって。血管ぶち切れるぞ」
雪乃「切らそうとしてんのはどいつだー!?」
龍麻「……ああ、俺だっけ」
雪乃「そうだよ、お前なんだよ…」(ぴくぴくと肩を震わせながらも怒りを通り越して笑みを浮かべる雪乃)
龍麻「はーあ。雪乃にも怒られちゃった」
雪乃「ったりめえだ。俺はお前が病気だろーが何だろーが容赦しねえよ! お前1人の我がままで東京がどうなっちまうと思ってんだよ」
龍麻「うん……」

雪乃「他の奴らは甘いからよ。それに、どいつもこいつもお前と一緒に行きたがってるしな。キツイ事もそうそう言ってこないだろ。けど俺は違うぜ。せめて俺だけはきっちりお前に言ってやる! 甘えるなってな!」
龍麻「うん、そうだな。俺、甘えてんな。我がまま爆裂だな」
雪乃「……その素直な頷き具合がどうも信用ならないな」
龍麻「何だよー。俺、本気で反省してるんだぜ? だから、今は雪乃の説教もちゃーんと痛く受け止めてるから」
雪乃「ったりめえだよ…ったく。……けどよ、それじゃあ真剣に誰と行くかも考えろよ?」
龍麻「雪乃はどう? 俺と行きたい?」
雪乃「おっ、俺は…ッ! 俺はいいんだよ…。俺は…こんなんだから…お前の支えにはなれねえしさ…」
龍麻「何で? 『こんなん』ってどんなの? 俺、お前の性格って結構好きだと思えるけど」

雪乃「な、何言ってンだよ…(赤面)! 俺…ッ。お前の病気の事も考えずに…さ、こんなガンガンキツイ事言う女だぜ? そ、そんな奴……お前だってムカツクだろ?」(俯き加減に)
龍麻「ええ? お前、あんだけ威勢の良い事言っておいて、実はそんな風に思ってたの? ……薄々思ってたけど、お前って損な奴だな」



以下、次号…







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