「雨」
〜本日の訪問客・青葉さとみ〜


さとみ「こんにちは、緋勇君!」

龍麻「やっぱり」
さとみ「え? 何、何なのその反応は?」
龍麻「昨日比嘉が来たからさ。今日は青葉さんなんじゃないかなって思ってた」
さとみ「あら、なーんだ、比嘉君は昨日だったの? 私、もうとっくに行ってるんだって思ってたわ。だって比嘉君、この間っからずーっとソワソワイライラしてて落ち着きなくて」
龍麻「……そう。昨日も何だか散々怒鳴っていったよ」
さとみ「ふふ…。その光景、何だか容易に想像できちゃうな」
龍麻「そういえばその比嘉は青葉さんから色々情報を聞いて知ってるなんて言っていたけど、何で俺の近況の事とかを青葉さんが知ってんの?」

さとみ「ああ、私が? 緋勇君の情報を何で掴んでいるかって?」
龍麻「うん」
さとみ「それはまあ…さとみネットワークの広さのお陰でね」

龍麻「は?」
さとみ「ふふふッ。まあ、いいじゃない、そんな事どうでも。それより、昨日の比嘉君は緋勇君にちゃんと手土産か何かを持っていってた?」
龍麻「うん、ケーキを買ってきてもらっちゃったよ。うまかった」
さとみ「そう。ダブらなくて良かった。私は、はいこれ」(手にしていた大きなカゴを龍麻に差し出すさとみ)

龍麻「え? 何これ果物? すっげえたくさんだなあ」
さとみ「だってお見舞いって言ったらやっぱりこれでしょ」
龍麻「お見舞い?」
さとみ「緋勇君は明日をも知れぬ重病だって聞いていたんだもの」

龍麻「だ、誰だよそんな事言ったの! もう…俺は見ての通りぴんぴんとしているよ。心配してくれたのは…嬉しいけどさ」
さとみ「本当〜?」
龍麻「えっ? な、何だよ、その目は…」
さとみ「緋勇君って〜。ホントは人に心配されるっていうか、気にされるの嫌でしょ」
龍麻「そ、そんな事…」

さとみ「ぜーったいそうよ。口では『ありがとう』とか『嬉しいよ』なんて良い人っぽい発言するけど、本当のところはウザイって感じてるっぽいもの。緋勇君って案外冷めてる人なのよね〜」
龍麻「あ、青葉さん……?」
さとみ「だから。比嘉君みたいな純情青年は緋勇君の事を抱えきれなくて悩んで苦しんでしまうっ! そういうのってよく分かる、私。比嘉君には悪いけど」
龍麻「………(汗)」
さとみ「まあ、そういう挫折を経験して人間って大きくなっていくものなんだと思うから。緋勇君も比嘉君の事はあんまり気にしないでいいのよ? ちゃーんと選ぶ人選んでくれればv」

龍麻「青葉さんの話…」
さとみ「んー?」
龍麻「何か俺にはよく分からないんだけど…」
さとみ「ええ〜何で分からないの? 何が分からないの? だから、緋勇君は脇役の比嘉君の事なんか微塵も気にしなくていいから、好きなあのお方を選べばそれで万事おっけーって話をしているの」
龍麻「あのお方?」
さとみ「そ」
龍麻「……脇役?」
さとみ「比嘉君がね」
龍麻「………選ぶって?」
さとみ「え? だから、旅行に行く相手を選ぶんでしょ?」
龍麻「そ、そりゃまあ…そういう事になってるんだけど」
さとみ「私、今日はその事を話に来たの。ねえ、緋勇君は一緒に連れて行く人もう決めているの? 決めているのよね?」(迫る勢い)
龍麻「あ…旅に行く奴はまだ決めてないよ…。だってまだ全員来てないし…」
さとみ「ふんふん。本命のあのお方はまだ来ていないから、この段階で指名はできない…っと」(何故かメモりながら独り言を言うさとみ)
龍麻「な、何なの?」
さとみ「あ、いいのいいの気にしないで。途中の状況をメモってるだけだから。それにしても…ねえ、緋勇君は実際どう思っているの?」
龍麻「な、何が?」
さとみ「お仲間のこと」
龍麻「え……」
さとみ「緋勇君って八方美人の割には閉鎖的な性格しているから。誰とでも仲良くできるけど、でも一方で、実は誰とも仲良くできないタイプでしょ。だからこそ比嘉君もアタシも苦労したんだけど…」
龍麻「く、苦労してたんだ」
さとみ「そうよう。けど、あわよくばこっち向かせて懐いてくれればっていう野望も当初はあったんだけど」
龍麻「あわよくばって…(汗)」
さとみ「でもアタシたちじゃ駄目なんだって事は今はもう分かっているから」

龍麻「……また。そんな距離あるみたいに言うなよ。それじゃ昨日の比嘉と同じじゃないか…」
さとみ「そういう壁を最初に作ったのは緋勇君でしょ〜?」
龍麻「イテテテ! ほっぺたつねるなっての!」
さとみ「フフッ。かわいい、緋勇君♪」
龍麻「まったくもう…。怒ってるのかからかってんのか分からないなあ、青葉さんは」
さとみ「そんな事より話を戻すわよ。緋勇君はお仲間の事をどう思っているの? 大切?」
龍麻「き、決まっているよ、そんな事…」
さとみ「そう?」
龍麻「そうだよ…」
さとみ「じゃあ、質問をちょっと変えるわね。その大切な仲間の中に、特別な人はいる?」

龍麻「え……」
さとみ「本当の自分を見せられる人」

龍麻「……………」
さとみ「緋勇君が心を失ってしまっただなんて…悪い冗談よね」
龍麻「……………」
さとみ「私はそんな事、これっぽっちも信じていないから」
龍麻「青葉さん…」
さとみ「でも、本当の緋勇君を引き出せるのは、やっぱり私でもなく、比嘉君でもなく…緋勇君の中にいる特別な誰かなんだって思うの」
龍麻「特別な…」
さとみ「それがお仲間の中の誰かとは限らないと思うけどね。ふふふ…私はあのお方だと思ってるけどね」

龍麻「また何だか企み顔して…。でも特別な人だなんて…そんな事、俺は…」



以下、次号…







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