「雨」
〜本日の訪問客・美里葵〜


龍麻「う…う〜ん…(汗)」(何やら寝苦しい様子の龍麻)

???:シトシトシト…ピタリ。ギシッ…ミシッ…。ゴソリ……。
龍麻「う…ん……? な、何か、熱……」(ごろりと身体を反転させて寝返りを打つ龍麻)
???「うふふふふ………龍麻………」
龍麻「…………え?」
???「うふふふふふふ……1人用のベッドっていいわね…。密着しないと落ちてしまうわ……」(むぎゅっといきなり龍麻の身体にへばりつ謎の人物)←バレバレです
龍麻「………………」
???「うふふふふ…龍麻の胸…あったかい……」(寝返りを打って振り返った龍麻の胸元に頬をすり寄せる謎の人物)

龍麻「…………美里」

美里「うふふ………なあに、龍麻?」
龍麻「…………どわあっっ!!!!!」(驚いて身体を起こそうとする龍麻)
美里「うふふ、龍麻、どうしたのそんなに大きな声を出して…」(逃げようとする龍麻を両手でむんずと抑えつけ、起き上がらせないようにする美里様)
龍麻「みみみ美里…ッ! な、な何してンの……っ」(じたばたともがくも美里に羽交い絞め状態の龍麻)
美里「何って…うふふ、いやね、龍麻。今日は私がこの家の訪問者なのよ」
龍麻「い、いやそれにしたってっ! な何で何の前触れもなく…ッ! だ、大体こんな時間にいきなりベッドに潜りこんでさっ」

美里「龍麻が驚くと思って」

龍麻「お、驚くよ、驚いてるよ十分ッ! だ、だからちょっと離れ…」
美里「龍麻」(いきなり龍麻の両肩を抑え付け、上にのっかる美里様)
龍麻「みっ…美里…っ!?」
美里「龍麻………」
龍麻「?」
美里「……………」

龍麻「どうしたんだよ…?」
美里「……………」
龍麻「『うふふ』笑いは…もうしないの?」
美里「………そうね」
龍麻「……………」
美里「……………」
龍麻「何だか…今日の美里は変だよ…?」

美里「………そうかしら」
龍麻「そ…そうだ…よ。そんな思いつめた顔して…さ」
美里「……………」
龍麻「その割にはこんな夜這いみたいな強引なことしたりして…(汗)」

美里「今日は最後まで強引にいこうと思ってきたのよ」
龍麻「!?」

美里「……でも今龍麻の顔を見たら、何だか動きが止まってしまったわ」
龍麻「え……」
美里「だって龍麻……私がこのまま強引に攻めまくったら、あっさり陥ちてしまいそうなんだもの」

龍麻「は(汗)?」
美里「龍麻、貴方今もの凄く弱っている…。まるでずぶ濡れの子犬のようよ…」
龍麻「こ、子犬って……」
美里「私の手にかかれば貴方みたいな弱った子猫ちゃんをぱくりぱくりと食べてしまうのは簡単よ…。まあ…それはそれでものすごく楽しそうだけれど……」

龍麻「あ、子猫に変わった」
美里「龍麻っ!!」(がばあっ)
龍麻「おわっ!!」
美里「単刀直入に言うけれど。私を連れて行って」
龍麻「美里……あの……」
美里「私を貴方の傍に置いて」
龍麻「ちょっ…! そ、そう言いながらすりすりすんのはやめ…」
美里「龍麻っ。私は真面目に話をしているのよ、ちゃんと聞いてっ」
龍麻「聞けないようにしてんのは美里だろーがっ!」(じたじたともがくも再度抑え付けられる龍麻)
美里「今の貴方を護れるのはこの私しかいないわ。この後やってくるあのケダモノどもの事を思うと…今すぐ龍麻を遠い遠い無人島にでも連れて行ってあげたい気分……」
龍麻「ぐわっ…! どどどどこ触った、今ーッ! 今だ、今こそが俺のピンチなんだーッ!!」
美里「静かにして、龍麻。ご近所迷惑よ」
龍麻「ひ…ッ! あ、だ、駄目…や…あ…ッ」
美里「可愛い龍麻……。でも貴方の本当は、それだけじゃない…」
龍麻「ほ、本当に…怒る、ぞ……」
美里「貴方のことなら何でも知っているわ、私…。そして貴方の全部が私は好きなの…」
龍麻「ん…っ! や、美……ぁ…ッ!」
美里「だから……今はこれで、お仕舞い」(すっと動かしていた手を止め、それをぺろりと舐める美里様)
龍麻「……っ。ハ…ハァハァ…ッ…」
美里「気持ち良かった、龍麻?」
龍麻「み、美里……お前…ッ!」

美里「ちっとも怖くなんかないわ。今の貴方に何を言われても、私は平気」
龍麻「美里ッ!!」
美里「龍麻。私を連れて行きなさい」
龍麻「………!」(びくりとして絶句してしまう龍麻)
美里「私には貴方しかいないの。そして貴方にも私しかいない」
龍麻「な………」
美里「だって私たちはお互い惹かれあう運命なんだもの。そう決まっているんだもの。それなのに…余計なライバルがうじゃうじゃと…! 龍麻に分かる? 公式ヒロインの私がここまでやらないといけない…この切なさが…!」
龍麻「………知るか。俺の方がよっぽど切ないよ……」(怒る気力がどっとなくなる龍麻)
美里「大体、龍麻。冷静になって考えてごらんなさい」←聞いちゃいない
龍麻「何…」
美里「長い旅行、むさい男と肩を並べるのと、私みたいな可憐な乙女に付き従われるのと、貴方はどちらが気持ちいいと思って?」
龍麻「………可憐な乙女」
美里「でしょう。良かったわ、龍麻が総受けサイトに汚染されていなくて」
龍麻「でも美里は可憐な乙女なんかじゃない」(きっぱり)
美里「まあ龍麻…! 弱っているくせにそういう口は立派にきけるのね」
龍麻「うん、セクハラ美里のお陰で!」
美里「………あら」
龍麻「大体なあ〜! 今の犯罪だぞ、美里!! たとえ俺に訴えられても文句言えないんだからな!!!」
美里「構わないわよ。世界の全部を敵にしたって、私は闘えるもの。貴方のためなら」
龍麻「なっ…何だよ、それ……」
美里「……………」
龍麻「……………」
美里「……………」
龍麻「………ははっ。ったく、もう……」
美里「……うふふふふ」
龍麻「美里って……ホント、ばっかだなあ……」
美里「あら、そうかしら」
龍麻「黙っておとなしくしてれば美人で清楚なお嬢様なのに。馬鹿だよ」
美里「龍麻が望むなら、そういう私でもいられるけれど?」
龍麻「……それって、どっちも本当の美里だから?」
美里「……そうね」
龍麻「その話…他の誰かも言っていたなあ」
美里「そうなの? ふふ…きっとその人も考えている事は同じ…ね」
龍麻「………美里。そろそろどかない?」
美里「あら、このままの体勢がいいのかと思って」
龍麻「いいわけないだろ、もう…。でも、さ…はは…。美里と一緒に行くのも…楽しいかもな」
美里「かも、じゃなくて絶対よ」

龍麻「すっげえ……自惚れ……」
美里「うふふふふ……だって龍麻。ヒロインはヒーローと結ばれるものだもの。そう、決まっているのよ」




以下、次号…







戻る