「雨」
〜本日の訪問客・盲目の者〜


ウゴー「ふよふよふよ……」(龍麻の家の前で漂っています)

龍麻「あ…お前…。何やってんだ? うちの部屋の前で」(気配を感じてドアを開けた龍麻)
ウゴー「ウゴ! ウゴウゴ?」
龍麻「あー…美里か? 追い出したよ。素直に帰らないと選ばないぞって言ってさ」
ウゴー「ゴ!? ウゴーガオーゴ?」
龍麻「はは…いやいや、別に素直に帰ったってあいつを選びやしないさ」
ウゴー「ホウ」
龍麻「お? お前、何ほっとしたような顔してんだよ? お前は美里のペットだろー? 主人を裏切るような態度を取っていいと思ってんのかー?」(つねり)

ウゴー「ピギャ!」
龍麻「あははは。面白いな、お前! よし、ちょっと付き合え」
ウゴー「ガゴー?」

龍麻「散歩だよ、散歩。さすがに…息苦しくなってきたからな。たまには外の空気も吸わないと」
ウゴー「ガオー! ゴウンゴウン! ルンルン♪」
龍麻「んー? 何だ、お前行く気満々だなあ。散歩って言っても、ちょっとそこらを歩くだけだぜ」(玄関口にある傘を取り出して外に出る龍麻)
ウゴー「…………」

龍麻「ん? 何だ、この傘がどうかしたのか?」
ウゴー「グオオオオオオー!! グイーンッ!!」(何と盲目の者は変形し始めた!!)
龍麻「わっ…。す、すげえ、傘になった…! お前、そんな芸当持ってたのか。最早何でもアリだな…」
ウゴー「エッヘンエッヘン」(傘の形のまま胸を張る)

龍麻「面白い。それじゃ、せっかくだからお前差して行くか」
ウゴー「テレテレ……」
龍麻「相変わらずよく降るなあ…」(どんよりとした雨空を見上げる龍麻)
ウゴー「ウゴーン……」
龍麻「でもさ、お前らみたいな異形はこういう暗い天気の方がイイんじゃないか? 色々悪さもできるだろ」
ウゴー「ウゴ!? ウゴングオン!! プンプン!!」
龍麻「なになに、お前はもう美里の下僕だから良い異形だって? 美里の下僕なら尚のこと悪の使者って気がするが…」
ウゴー「ハッ!! …………シ〜ン………(汗)」←「確かに…」と思っているらしい
龍麻「……ま、そんな事はどうでもいいや。俺には関係ないし…な」
ウゴー「ウゴ?」

龍麻「しかし埃臭い街だ…。雨が降って少しは空気も顕れるかと思ったが……」
ウゴー「グオー……?」
龍麻「………知ってるか、お前。俺はな…俺は、こんな街、大嫌いなんだ」
ウゴー「ゴ……」
龍麻「俺の故郷はさ…すっごく綺麗な所なんだ。こういう話、あんまりした事ないけどな…。周りにいた人たちはそんなに好きじゃなかったけど、あの町は好きだったな」
ウゴー「………ゴウン」
龍麻「1人になれたし。望む時は」
ウゴー「……………」
龍麻「今は面倒臭いな。色々とさ」(家並みを通り過ぎ、商店街を抜けて歩き続ける龍麻)
ウゴー「ウゴー…シューン…」
龍麻「おい、こら! いきなり縮むなよ、濡れるだろーがっ」
ウゴー「ショボーン……」
龍麻「ほらほら、そんな寂しそうな声出すなって! 別にお前の事どうだこうだ言ってるわけじゃないだろッ」
ウゴー「ウゴー! ガオグオガー!!」
龍麻「美里の事だって悪くは言ったけどさ、嫌いじゃないって」
ウゴー「ジー…」
龍麻「本当だって。あいつらの事だって…別に嫌いじゃないんだから」
ウゴー「グオン?」
龍麻「本当だよ。ただ面倒臭いだけ」
ウゴー「ガ!」
龍麻「………ホント、かったるい。真剣にそんな事思う俺がいる」
ウゴー「………ガウーン」
龍麻「普段は割とちゃんとやれてんだけどなあ…。どうしたのかな、急に。何かさ、誰にも会いたくない、干渉されたくない。使命だ義務だ運命だって…余計な事考えたくない。好きな事だけして眠っていたい……」

ウゴー「ウゴーン」

龍麻「……ま、つまりは俺の我がまま…なんだけど」
ウゴー「グオグゴガウン!」
龍麻「……でも心が…ねえ。なくなったなんて言われるのは心外だ」
ウゴー「ガオ!」
龍麻「確かにどうなってもいいとは思ってるし、あいつらの事をウザイと思う事もある」
ウゴー「ギャ!」
龍麻「けど、それは俺が病気だから…おかしくなってしまったからなんかじゃない。それは俺がずっと心の奥底に抱えていた俺の本心なんだから。俺は元から…そういう自分を隠していたんだ。それを晒しただけ」
ウゴー「……ウゴ〜!!」←「そんなあ」と言っている模様
龍麻「……ひどい奴だろ。でもそうなんだ。そうなんだよ、俺って奴はさ」
ウゴー「ゴウンゴウン!!」←「違う違う!!」と言っている模様
龍麻「……………」
ウゴー「ゴウン?」
龍麻「でも…そのはずなのに…何でかな……」
ウゴー「???」

龍麻「すごく、辛いや……」
ウゴー「!」

龍麻「この雨を見ていると…何だか、胸が痛い」(ふと立ち止まって辿り着いたある場所を見上げる龍麻)
ウゴー「ウゴ…ッ。ウゴーンウゴーン」
龍麻「ここの神社。お堂の中に入れるんだぜ。入ろうか?」(階段を昇り、境内に入ってきて言う龍麻)
ウゴー「ゴウ!? ブルブル!!」
龍麻「大丈夫大丈夫。お前、化け物のくせに度胸ないなあ。ほら、中結構広くて床冷たくて。気持ちいいだろ」
ウゴー「ゴ……。ゴウ〜ンvvv」(龍麻と一緒に横になって気持ち良さそうにする盲目の者)
龍麻「よし、お前枕になれ! へへ…何だ、結構ふかふかしてんじゃん…」
ウゴー「テレテレテレ……ポッ」(龍麻をくるむような形に変形した盲目の者)

龍麻「…………」
ウゴー「…………」
龍麻「…・…静かだな」
ウゴー「ゴウ〜ン」
龍麻「………なあ」
ウゴー「ウゴー?」
龍麻「俺、さっきは誰にも会いたくないって言ったけど……」
ウゴー「ウゴ?」
龍麻「……待っている奴が、いる………」
ウゴー「!?」
龍麻「そいつなら…俺の欲しい答えをくれそうだから……」
ウゴー「ウゴ!? ウゴウゴウゴ!??」←「誰誰誰!??」と訊いている模様
龍麻「……何ぐずぐずしてんだよ…ホント…さ……」




以下、次号…







戻る