「雨」 〜本日の訪問客・劉弦月〜 |
劉「アニキ―――――――ッ!!!」(いきなり抱きつきっ!!) 龍麻「わ…っ。りゅ、劉…!?」 劉「一体何処に行ってたんー!? わい、めっちゃ心配したで〜!!」 龍麻「ちょっと気晴らしに散歩してただけだよ…。それよりお前、いつうちに来てたんだ?」 劉「んー五分くらい前かな?」 龍麻「………全然待ってねえじゃねえかよ(汗)」 劉「何言うてんの! わいにとっちゃ、アニキのいないこの部屋で待つ五分は、百時間にも百日にも思えたわ!」 龍麻「あーはいはい、そりゃ悪かったな。どうでもいいけど、そろそろ離せって」 劉「ええ〜」(言われて余計にぎゅうっと抱きつく劉)←弟の特権 龍麻「『ええ〜』じゃねえよっ! 外から帰ってきたばっかでただでさえ濡れてて気持ち悪いのに、暑っ苦しくべたべたしてくんなっての!」 劉「ア、アニキがとてつもなく冷たい〜」 龍麻「別に普通だよ」 劉「ふ〜ん、そうなんか。でもまあ、それでアニキが風邪でも引いたら大変やし、風呂にでも入る?」 龍麻「あ〜そうしよっかな…」 劉「じゃ、わい沸かしてくるわ」 龍麻「ちゃんと浴槽洗ってから湯を張るんだぞ」 劉「……(汗)。んな事言われんでも分かってるて…」 龍麻「……はあ〜」(風呂場へ向かった劉を見送ってから、リビングのソファに座り込む龍麻) 劉「あ、そや、アニキ〜!!」(風呂場から叫ぶ劉) 龍麻「あー? 何だよ?」 劉「そこにわいの土産置いてあるやんか?」 龍麻「土産?」 劉「それ、わいの自信作やねん。かわええやろ〜??」 龍麻「……………」(テーブルの上にあるねじまき式歩くひよこちゃんの玩具を見つめる龍麻) 劉「それなー! 1個300円で売ったんやけど、学校ではすぐに売り切れたわ〜」(ジャーッとシャワーの音が聞こえる。洗剤を洗い流しているらしい) 龍麻「…ひよこ育てるだけじゃなくこんな内職もしてたのか。あいつ…ちゃんと生活できてんだろうな(汗)」(ねじを巻いてひよこちゃんをよちよち歩かせてみる龍麻) 劉「ふうぅ〜風呂掃除終わったで。あと湯がたまるまでちょっと待っててな、アニキ」 龍麻「ん…あぁ、さんきゅ」 劉「あ、アニキ、どやそのひよこちゃん! ごっつかわええやろ?」(龍麻の横に来て嬉しそうにひよこちゃんを見つめる劉) 龍麻「そんな事よりお前…」 劉「これなあ、実はネジをもっときつ〜くキコキコひねってから離すと、一瞬ダッシュするんやで! その仕草がまたキュートなんや〜vvアニキ、見たい?」 龍麻「いや、どうでもいい」 劉「はうっ! ア、アニキがやっぱし冷たい…」 龍麻「そんな事はどうでもいいんだよ! お前、何やってんだよ!」 劉「何て」(きょとん) 龍麻「こんなもんせこせこ作って学校で売らなきゃいけないほど生活に困ってたのかよ? 道心先生っていっつもあんな公園で寝泊まりしてるし…お前、ちゃんと食う物食ってんのか?」 劉「はあ…ま、それなりに」 龍麻「それなりって何だ、それなりって! あ、そういえば今雨ずっと降ってるけど、一体何処で寝てんだよ? まさか公園にはいられないだろ」 劉「別にわいらは大丈夫や。アニキがそんなん心配する事ないて」 龍麻「心配するに決まってんだろ! お前、道心先生頼って来たって言っても、あの人あんなだし…。外国から渡って来て、ロクな生活できてないんじゃあ…心配するに決まってんだろ!」 劉「何で?」 龍麻「な、何で? 何でってのは何だ?」 劉「何でアニキがそんな心配してくれんの」(じっと龍麻の事を見据える劉) 龍麻「何でって……そりゃ…お前は俺の……」 劉「……………」 龍麻「お前は俺の…弟みたいなもんだし……」 劉「……………」(再びおもむろにテーブル上のひよこのネジを巻き始める劉) 龍麻「……俺たち、親戚みたいなもんだし」 劉「……………」(劉がぱっと手を離すと、ひよこはちょこちょことテーブルの上を歩いた) 龍麻「……だから心配なんだよ」 劉「そういうしがらみ、嫌なんとちゃうの?」 龍麻「え……」 劉「アニキは、自分の血を…憎んでるんやろ?」 龍麻「ち、違うよ、俺は―!」 劉「そうでないにしても…アニキは、自分に課せられた運命が重くて…辛いんやろ? 全部抱えて、疲れてしまってるんやろ?」 龍麻「……………」 劉「……わいみたいな存在が1番面倒臭いやろ?」 龍麻「……劉ッ!!」 劉「殴っていいで。思いっきりこいや、龍麻」 龍麻「りゅ……」 劉「その代わり……わいも容赦せん。お前の事、思いっきりぶん殴ってやるわ。余計な事、考えられなくなるくらいな」 龍麻「……………」 劉「……そんで…めいっぱい喧嘩した後は……」 龍麻「……………」 劉「……………」 龍麻「………何だよ」 劉「仲直りしよ」 龍麻「劉………」 劉「兄弟やもん。アニキが嫌や言うても…わいらは兄弟やから。絶対離れられん。だから…わいは今のアニキにめっさ腹立ててるけど、それ以上に自分にもムカついてる。アニキをこんな苦しめて、わいは何の力にもなれてないて」 龍麻「何……言ってんだよ…」 劉「だってそうなんや。わい、アニキにそんな顔させて…ほんま、しょーない弟なんや」 龍麻「もうやめろって劉! 何でお前は…いっつもそうやって分かった風にばっか言って…いっつも俺を許して…自分ばっかり飲み込んで我慢しちゃうんだよ…」 劉「アニキが好きやから」 龍麻「……もう……なら、尚更我慢なんかするなよ。俺こそ劉にそんな顔させて……兄貴失格だ」 以下、次号… |