「雨」
〜本日の訪問客・雨紋雷人〜


雨紋「龍麻サン?」(玄関先で声をかける雨紋)
龍麻「…………」(一心不乱にゲームをしている龍麻)
雨紋「……(汗)。龍麻サーン! もしもーし? 雷人ッスけど。上がっていいですか?」
龍麻「…………」
雨紋「龍麻サ―」
龍麻「鍵」
雨紋「?」
龍麻「開いているだろ」
雨紋「あ…え、ええ、まァ……」
龍麻「いちいち出て行くのが面倒臭いから開けてるんだよ。上がりたきゃ勝手に上がれよ」
雨紋「…………」
龍麻「…………」
雨紋「じゃあ、まァ…そうさせてもらいますけどね……」
龍麻「…………」
雨紋「お邪魔しまッス。隣、座りますよ?」
龍麻「…………」
雨紋「………随分ご機嫌ななめスね」(龍麻の横に座りながら)
龍麻「別に」(テレビ画面から目を離さない龍麻)
雨紋「聞きましたよ、今回の事。龍麻サン、俺らを愛する心が失くなっちゃったらしいスね」
龍麻「そうらしいね」
雨紋「…………」

龍麻「…………」
雨紋「あ、そうそう、ここに来る途中で買ってきたんスよ、これ。龍麻サンに差し入れ」
龍麻「何」
雨紋「最中」
龍麻「……高そうだね」(ちらりと視線を送る龍麻)
雨紋「そうでもないッスよ。この間バイト料出たばっかだし」
龍麻「……さんきゅ」

雨紋「へへ…やっと龍麻サンの顔、ちょっと和らいだ」
龍麻「…………」
雨紋「ンな難しい顔してやるモンじゃないでしょう。折角のゲームなんだから楽しんでやらなきゃ」
龍麻「……だって」
雨紋「じゃあちょっと休憩したらどうですか。コレもあるし。オレ様直々にウマい茶でも淹れてあげますよ!」
龍麻「…………」
雨紋「台所借りますね」
龍麻「…………」
雨紋「ヤカンは…っと、これか。綺麗にしてますね、男の独り暮らしには見えないスよ。たまに美里サンが来たりするんですか」
龍麻「呼ばないよ」←そんなひどい
雨紋「じゃあ龍麻サン、いっつもここで独りでメシとか作ってンですか?」
龍麻「別に……」
雨紋「別にって、それ、答えになってないスよ」(苦笑しつつ手を動かす雨紋)
龍麻「……なあ、雨紋。みんなは…今、どうしてる?」
雨紋「…………気になります?」
龍麻「そりゃあ…」
雨紋「だって龍麻サン、オレらを愛する心をどっかへやっちゃったんでしょう? 気になるなんておかしいスよ」
龍麻「知らないよ、そんなの。俺、自分が今どんな状態か自分でもよく分かっていないんだ」
雨紋「…………」
龍麻「ただ…モヤモヤとはしてる」
雨紋「…みんな相変わらず大パニックですよ。ここに来る順番とかも大揉めに揉めてるし。中には別に1人ずつこうやって会いに来なくても、もういきなり龍麻サンに選んでもらえばいいって言ってる人もいますよ」
龍麻「え………」
雨紋「自信があるんですかね。龍麻サンに選んでもらえるっていう」
龍麻「そんなの…」
雨紋「龍麻サンはもう決めてるんスか? 一緒に旅する相手」
龍麻「俺は……」
雨紋「まァ、それがオレ様じゃないって事だけは確かですけどね!」
龍麻「雨紋?」
雨紋「…って、思ってました。ここに来るまでは」
龍麻「………?」
雨紋「けど…龍麻サンのそんな顔を見てると……」
龍麻「え……」
雨紋「やっぱり、出来たら選んで欲しいって思いますよ。…たとえ龍麻サンがオレ様なんか眼中になくても」
龍麻「…………」
雨紋「龍麻サンだって、どうせなら強い奴を連れて行きたいでしょ?」
龍麻「…………何で」
雨紋「え? おっと、湯が沸いた」(慌ててヤカンの火を止める雨紋)
龍麻「何で……。俺、お前に何かした?」
雨紋「え? すいません、何スか、龍麻サン?」
龍麻「お前にそんな事言われるような事を、俺は何にもしてないって言ってるんだよ! 何だって…俺の事なんか放っておけばいいだろ! 俺なんか…ッ」
雨紋「龍麻サン…」
龍麻「俺、ヤなんだよ! どいつもこいつも生温くって、優しくって頭にくるんだよ! 俺は…ッ!」
雨紋「…………」
龍麻「……俺は…分からない。お前らの事が分からなくなってるんだ…だから…」
雨紋「…だからオレ様は…龍麻サン、アンタを護りたいんだ。そう思っちまうンだよ。それが苦痛だってんなら…謝るけどさ…」
龍麻「………ごめん、雨紋」



以下、次号…







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