「雨」
〜本日の訪問客・藤咲亜里沙〜


藤咲「龍麻? アタシよ、亜里沙。来てあげたわよッ!」
龍麻「……あぁ」
藤咲「な〜によ、陰気な顔しちゃって。折角のキレイな顔が台無しじゃない。どんなに素材が良くったって、きちんと磨いてやらなくちゃ、それもただの石ころだってコト、アンタ知ってた?」
龍麻「……石ころ」
藤咲「は? ちょ、ちょっと何余計どんよりしちゃってンのよッ! 別に龍麻のコトを石ころだって言ってるわけじゃないのよ? ただのたとえ話よ、たとえ話」
龍麻「いいよ、どうせ俺は道端に転がる石ころさ」
藤咲「ちょっと…」
龍麻「だから俺の事は放っておいてよ。俺はさ、今独りでいたい気分なの。そんで、ここでぴこぴこゲームをやっていたいって言うか」

藤咲「……アンタは人気者の石ころだから、それは無理な願いかもね」
龍麻「……何でだよ。俺は知らない」
藤咲「んもうッ! 冷たいオトコね、アンタも。でもまあ…そんなところもアタシは好きだけどね」
龍麻「えぇ?」(すごく胡散臭げに藤咲を見る龍麻)
藤咲「え、じゃないわよ、え、じゃ。聞こえなかったの? こんなイイオンナが龍麻、アンタのコトを好きだって言ってンのよ。ちょっとはぽっと赤くなったり汗かいたりして焦ったりしなさいよッ」
龍麻「藤咲の告白なんて信用ならないよ」
藤咲「何ですってェ〜!?」
龍麻「だってお前、色んな奴に気がいくじゃん。京一や壬生だって結構イイなって思ってんだろ?」
藤咲「思ってるわよ」
龍麻「あん?」

藤咲「だってイイオトコじゃない」(しれっと)
龍麻「……そうだよな、いい男だよな」(呆れ顔)
藤咲「でも、アンタも相当イイ線いってるわよ、龍麻」
龍麻「あ〜ありがとありがと。嬉しいよ、涙が出そうだ」
藤咲「何よ、その感情のカケラもこもってない感謝の言葉は。みんなが言っていた『龍麻の心が失われた』って噂はどうやら本当のようね」

龍麻「いや、別に今の台詞はその問題とは関係ないと思うぞ」
藤咲「ごちゃごちゃ煩いわねェ。そんで龍麻はどうなの、アタシの事ちょっとはイイと思ってくれてるの?」
龍麻「は? ………さあ」
藤咲「何よソレ! 最低ッ! アンタね、オンナのアタシから告白したのよ!? それに対して『さあ』って、そんな返事の仕方がある!?」
龍麻「こ、こらそんな接近して怒鳴るな。耳がキーんとするだろ…ッ」

藤咲「いいからちゃんと答えなさいよッ! 龍麻はアタシの事をどう想ってンのかって聞いてンのよッ!」
龍麻「ど、どうって……。だから……」
藤咲「だから何よ」
龍麻「お、俺…そういう事、よく分からないから…」
藤咲「何も難しく考える事なんかないわよ。好きか嫌いか聞いてるんでしょ」
龍麻「え?」
藤咲「アタシの事、好きなの嫌いなの?」
龍麻「に、二者択一かよ」
藤咲「『フツー』とか言いやがったら張っ倒すわよ」
龍麻「……………」
藤咲「さあ、観念して答えなさい、人気者の石ころさん」
龍麻「………そりゃあ―」
藤咲「ほら、ちゃんと真っ直ぐこっちを見る!」
龍麻「! わ、分かってるよ。そりゃあさ…どっちかって言われたら……好きだよ」
藤咲「……………」(じーっと龍麻に視線を送る藤咲)
龍麻「ふ、藤咲のそういう強引だけどはっきりしたとこは、俺は嫌いじゃない」
藤咲「まあ、当然の返答ね。アタシを嫌う男なんてこの世にいるわけないからね」
龍麻「………(汗)」
藤咲「それで?」
龍麻「へ?」
藤咲「へ、じゃないでしょ。龍麻、シャンとしなさい。アンタの好きな相手がこうやって無防備に傍で座ってンのよ。何かするコトがあるでしょう」
龍麻「何するの?」
藤咲「いいのよ、アタシは。アタシもさっき言った通り、龍麻のコト結構好きだし。今日は一日中、龍麻だけのモノになってあげるから」
龍麻「は、はあ?」
藤咲「フフフ……実はそういうコトもあるだろうって、ちゃ〜んと勝負下着つけてきたのよ、アタシ。ものスッゴイセクシーなやつよぉ。見たいでしょ、龍麻」
龍麻「……………」(ぽかん)
藤咲「香水もね、いつものとちょっと替えてみたの、気づいてた? 龍麻っていつもアタシがつけてるやつにはあんまり反応しないし。化粧濃いオンナもそんなに好きじゃないって前言ってたから、今日は限りなくすっぴんに近いメイクなんだからね。ま、アタシは元々素だけでも勝負できるオンナだし」
龍麻「………あのう」
藤咲「何があったのか知らないケド、傷心の龍麻をアタシのカラダで存分に慰めてあげるからッ。ウフフ…感謝しなさいよねッ」
龍麻「………藤咲」
藤咲「確かにアタシは京一も壬生も結構イイなって思ってるケド。あ、ついでに紫暮とか醍醐とか肉体派のオトコも捨て難いって感じだけど。それから名家の御門に、村雨みたいなワイルドなオトコもイイけど。あらヤダ、ウッフフ…。想像したら興奮してきちゃったv」
龍麻「あ、そう」
藤咲「何よその目は〜。龍麻だってそういうのあるでショ? みんなにそれぞれ魅力があって、みんなに惹かれる事って。ないとは言わせないわよッ」
龍麻「分かるよ。別に分からないなんて言ってないだろ」
藤咲「龍麻だってみんなが好きでしょ」
龍麻「…………好きだよ
藤咲「……フフ。いいコね」
龍麻「ふ、藤咲…ッ」
藤咲「あ、そうそう。めくるめく龍麻との一夜を過ごす前に何か作ってあげようか? アタシ、こう見えて結構家庭的なところもあンのよ。和食とか得意なんだから」
龍麻「……悪いけど、今は」
藤咲「ナニ遠慮してンのよ。あ、そうだ! あれやってあげようか? 裸エ・プ・ロ・ン。龍麻だけに特別に見せてあげるわよ? アハハ、これってかなりオイシイサービスよ〜?」
龍麻「藤咲、俺は…ッ」
藤咲「………龍麻。そんな辛い顔をしないでよ」
龍麻「藤……」
藤咲「アタシはね。そりゃ、魅力的な男はみんな好きよ? ……でも1番は、龍麻、アンタなの。龍麻がアタシの1番。そういう事はちゃんと知っておいて。……別にアタシを選ばなくてもいいから」
龍麻「………お前」



以下、次号…







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