《2》
シトシトと細い雨が降り注ぐ夕暮れ刻―。



天童「おい! 誰かいねえのか?」
雷角「は、ははーッ! お帰りなさいませ、御屋形様ッ(焦)!」(慌てて奥の間から走ってきて頭を垂れる雷角)
岩角「あー御屋形様ー。お帰りなざい〜」(ぼりぼりと菓子を食って登場の岩角←主人の前で食うかフツー)
天童「……? お前らだけか。他の奴らはどうした」
雷角「はっ…! 水角は町へ買い物へ、風角と炎角はそれぞれ山と川へ行っております…ッ!」(汗だらだら)」
天童「あ? ……そうかよ」
雷角「そ、そんな事より、さぞお疲れでございましょうッ。湯の支度が出来ておりますれば、まずは―」
天童「おい、岩角」
岩角「ん〜何だど〜?」
雷角「お、御屋形様…?」
天童「こいつ等、また何かくだらない事企んでやがるだろ?」
雷角「お、御屋形様、何を…っ!?」
天童「お前にゃ訊いてねえよ。岩角、どうなんだ。残りの奴らは何処へ行った?」
岩角「んー……水角は〜町で買い物。風角と炎角は〜…えーど、山と川で茸と魚を採りに行ったんだど〜」
天童「…………」
雷角(ほっ!)←何度も練習させて良かったと心底安堵の雷角であった
天童「……おい、雷角」
雷角「ギグッ。ほほほ本当でござりまするッ。何も企んでなど…! 我らが御屋形様の命なくして勝手な事をするなど…ッ。そんな事が一度としてあったでしょうかっ!」
天童「しょっちゅうじゃねえか」
雷角「そそそそのような…ッ!」
天童「……まあいい。だがな、龍麻にだけは妙な事するんじゃねえぞ。これは俺の命令だ…分かっているな?」
雷角「も、勿論でございますッ!」
岩角「じゃーひーちゃん様以外の奴になら何しでもい―」
雷角「わーわー! さささっ、御屋形様、早く奥で休んで下さいませっ!」(必死に岩角の口を抑える雷角であった)


さて、その頃屋敷から姿を消していた水角と風角、炎角の3人は。
雷角の命令で「外法世界へ行く為の手掛かり」を握っているという人物の元へと向かっていた。


風角「しっかし、雷角の奴もデカイ事言っている割には、考えがねえんだからなー」
水角「ホントだわよ。あんなに張り切っているから、もう当然向こうへ行く方法も見つけているのかと思いきや」
炎角「イエッ! でも久々に燃える燃えるぜイエイエ〜」
風角「…お、ここか。雷角の話ではここにいる人物が外法世界への旅立ち方を知っているという事だが…」
水角「な、何だか妙に入りにくい嫌な感じがするわねえ…。ぶるっ! 悪寒がっ!」
炎角「ヒャウッ! 俺のダンシングスピリッツが青白い炎に焼かれそうだぜイエッ!」
風角「し、しかしここまで来たんだ、引き返すわけにもいかないよな。開けるぞ…?」
水角「……でも、元は敵のわらわ達に協力してくれるかしら……」


3人がやって来たその場所は夕刻の薄暗さとは関係なく、不穏な闇の匂いに満ちていた。
また目の前に立ちはだかる重く黒い扉は、来る訪問者の魂を嘲笑いながら引き裂いてしまいそうで…。
そう、そんな恐ろしき場所とは―。


風角「ごくり…ご、ごめんくださ〜い…」(ギギギギギイィィィ……と扉を開いて中を覗く風角)
水角「い、いるかえ…?」
炎角「イエッ! サーチ開始ッ! イエイエイエ〜人の気配〜人の気配〜」
風角「だ、誰もいないか…?」
???「う〜ふ〜ふ〜」
水角・風角「ギャッ!!」
???「うふうふ〜いら〜っしゃ〜い〜」
炎角「オウッとらえたぜ! そっちに人の気配発見ッ!」(びしりと声のする方向に指を差す炎角)←役立たず
???「ようこそ〜ミサちゃんのお部屋へ〜」
風角「へ? こ、ここは真神学園オカルト研究部部室では…?」
水角「あ! じゃ、じゃあもしや貴女…!」
裏密「うん〜。ここの〜主〜ミサちゃんだよ〜」


裏密ミサ。
そうなのだ、3人が尋ねてきた人物とは、この裏密ミサちゃんだったのだ。


風角「あ、あ、あのう…。貴方が…いえ、貴方様が外法世界へ行く為の鍵を握るというお方なのでしょうか…っ!」
炎角「俺たちは〜イエッ! 何とか向こうの世界へ行きたいんだぜ〜イエッ!」
風角「何でも前回のひーちゃん様と亀玄武こと如月翡翠めの旅立ちを手助けしたのは貴女様だとか…!」
水角「わらわ達、どうしても訳あって向こうの世界に用があるんだえ!」
炎角「だから〜シャウッ! 行き方を教えて欲しいんだぜ〜ジャンピンッ!」
裏密「……うふ。うふうふふ〜」(にた〜りと笑うミサちゃん。蝋燭のゆらゆらと揺れる光の向こうで眼鏡の奥の眼光もギラリと揺れる)
風角(す、水角…。どうする、俺すげえ怖いぜ…)
水角(あ、怪しい…怪しすぎるわよ、この女…! 本当にあっちへの行き方なんか知っているのかしら…!)
炎角「イエッ! こそこそこそこそ2人で密談ッ!」(暗闇の中、独りでぐーるぐる踊り狂う炎角)
裏密「う〜ふ〜ふ〜。向こうへの〜行き方は〜か〜んたん〜」
風角「えっ!?」
水角「ほ、本当かえっ!?」
裏密「うん〜。簡単〜。前回と同じでいいなら〜」
風角「ぜ、前回と同じ方法!? そ、それは…!?」
裏密「ミサちゃんのパワーと〜ここのお客さんたちのパワーとを合わせて〜君たちを飛ばすの〜」
風角「……は? というと……?」
水角「ここのお客さんって・・・ここのサイトのお客さんの事かえ?」
裏密「そうだよ〜。前回は〜ひーちゃんと如月君を飛ばす為に〜。ミサちゃんの魔力だけでな〜くて〜お客さんからのパワーを貰っていたんだよ〜。それで飛ばす事ができたんだよ〜」
水角「そ、そういえば人気投票やっていたわよね・・・。その勝者である如月めがひーちゃん様のお供をしていたわけだけど…」
炎角「我らが御屋形様は〜惜しくも落選だったぜ〜ダウンッ」
風角「御屋形様も熱を入れて参加して下さっていればなあ〜。ひーちゃん様の家にも行かなかったし…ぶつぶつ」←思い出して悔しくなったらしい
水角「で、あの時の如月並の得票を得られれば向こうへ飛ばしてもらえるわけだね。それなら…! わらわ達、あの時60票くらい入ってたわよね♪」
風角「すげえ人気者だぜ。えっへへ〜照れちゃうな!」
炎角「メインキャラだからだぜ、イエ!」
水角「で? 前回の如月の奴は何票貰って飛ばしてもらえてたわけ?」
裏密「1371票だよ〜」


一同「しーん……」


風角「あ、あはは…? な、何票って言ったのかな〜? 気のせいかなっ(汗)。何か幻聴が…」
裏密「1371票」
水角「……お、おほほほほほは……な、な〜によ、それっくらい…!」
炎角「オーイエッ! 俺たちの2倍くらいか〜?」
風角「……あほ(嘆息)」
裏密「うっふふ〜。ミサちゃんだけの魔力で飛ばすのは〜難しいよ〜。それが出来ていたら〜ミサちゃんだってとっくに向こうに遊びに行ってるもの〜」
水角「どーッすんのよッ(涙)! わらわ達がそんな票数得られるわけないじゃーないのよーッ!」(ぐいぐいと風角の胸倉を掴み、締め上げて行く水角)
風角「ぐ、ぐるじい…落ち着、け…水、角…!」←死ぬ寸前
裏密「貴方〜たちが〜ここに来る事は〜見えていた〜。でも悪いけど〜ミサちゃんにはどうともしてあげられないの〜」
水角「…・・…(涙)」
風角「ゼエゼエハアハア…ッ」(首を抑えて苦しそうな風角)
炎角「ガッカリ〜カリカリカリッ」←怒ってるのか?
裏密「その代わり〜。事態打開の為に〜貴方たちがこれから何処へ行けばいいのかを〜占ってあげるね〜」
水角「は〜占い? フン、そんなもん当てになるのかどうか(毒)」
風角「まあまあ。一応訊いておこうぜ。どうせ行くあてもねえしよ」
裏密「………むむむ〜」


ミサちゃんは何やら神妙な顔つきで目の前に置いてある水晶球に両手をかざし始めた。
するとやがて水晶から淡い光がボウッと浮かび出して……。


水角「はわ〜き、綺麗だわね〜」
風角「な、何だ…何が…?」
裏密「うーん……」
炎角「何だ何だ何処へ行けばいいんだ〜?」
裏密「……対象物は、動いている」
水角「は…?」
裏密「貴方たちが目指すべきものは〜今もまさに移動中〜。常にその場を定めない〜。先回りをして追いなさい〜。そうすれば〜光〜光が見えてくるはず〜」
水角「ど、どっちへ行けばいいの…!? その動いているものって…」
裏密「そこまでは見えない〜。でも〜場所は〜」
風角「場所は!?」
裏密「…………地下水路」



以下次号……






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