《3》
くすん、くすん…。しくしくしく…。
何やら悲しげな泣き声が地下に木霊している。
その声の主とは一体…。



龍麻「なあ翡翠〜。腹減ったよ〜」
如月「さっきからそればかりだな。意識すると余計空腹にならないか?」
龍麻「我慢して抑えている方が腹減るって。あーあ。もうどうなってんだ、このサイトは〜」(やややさぐれ気味の龍麻)
如月「確かに。新しいサイトの場所をこんな訳の分からない地図だけで…。あの管理人のズボラさには僕も呆れる」
龍麻「そうだよ。それに俺たちだけに最後まで留守番させておいて、引っ越した途端ほっぽくなんてさ。それで各自で勝手に集まれ、だろ? 酷いよ。それに、本当にこっちの方角でいいのかな。さっきからずっとこの暗い地下道歩いてるけど、全然先が見えない」
如月「多分道はあっていると思うが。この限りなく頼りない地図によると…そろそろ地上だ」
龍麻「本当〜? こんな真っ暗なのになあ。あーもうっ。疲れた〜。腹減った〜。蒲団で眠りた〜い」(じたばた)←その場に座り込み、駄々をこね始める龍麻
如月「……龍麻。ほら、行くよ」
龍麻「やだ〜。翡翠、おんぶ〜」
如月「…………まったく。子供じゃないんだから、そんな風に甘えても駄目だよ。さあ、いつまでもそんなくだらない事をしていると僕は先に行くよ」
龍麻「ちぇっ。冷たいのっ」
如月「………戻ったら何処か美味い店にでも行こう。奢るよ」
龍麻「ホントッ!? やった、ラッキー! じゃあ、急ご急ご!」(すっくと立ち上がって如月を追い越し、駆け出す龍麻)
如月「ふ…。ほら、龍麻。そんな風に急ぐと転ぶよ」
龍麻「平気、平気〜! …って、あ…あ!?」
如月「龍麻…っ?」
龍麻「うわ…っ!!」


後ろにいる如月を見ながら走り出していた龍麻は、前方に現れた人影に気づくのが一歩遅れた。
どすん、と大きな音を立てて、龍麻は不意に現れたその人物に思い切りぶつかり、そのまま尻餅をついてしまった。
相手の方もぐらついたのだろうか、暗闇の中で何やらぐるぐる回っている…。


龍麻「い、いって〜…」
如月「龍麻、大丈夫か!?」(慌てて龍麻に駆け寄る如月。そしてすぐに前方に鋭い視線を向ける)
???「ぐーるぐーる、ぶつかられてもぐるぐるダンシンッ!!」(龍麻にぶつかられてもへっちゃらのようだ。くるくる楽しそうに回っている模様)
風角「うわっ、いいなーお前! ひーちゃん様にぶつかってもらえるなんてよー」
水角「ほーんとほんと! うっらやましいぞよ〜。わらわもひーちゃん様と密着したいぞよ〜」
炎角「ヘイヘイヘイヘイ! ひーちゃん様ズ、ボディアタック! ラッキ!」
龍麻「………あ(汗)」
如月「…………」(頭痛がするのか、額に手をやりため息をつく如月)
風角「いやはや、それにしてもひーちゃん様! このような所でお会いできるなど、感激の極み! すっげー偶然〜♪ 運命の糸!?」
炎角「イエーイ! ひーちゃん様、お久しぶりだぜーイエッ!」(ステップステップ♪喜びのダンスを披露)
水角「まあー本当にひーちゃん様! この暗闇の中でもその美貌は翳る事なくより一層輝いて見えますわ〜。もううっとり〜」
風角「いや〜ホント、俺たちツイてるな〜。良かったな、お屋敷にいる方の任務につかなくて!」
水角「ホントホント♪ わらわ達の普段の行いの良さ故ね〜」
炎角「イエイエ〜。一日一善良い行いッ!!」←どんどん訳の分からない奴になっていく…
如月「……龍麻。君の許可さえ下りれば斬るが?」
龍麻「え…(汗)? そ、それはさー。ちょっと待とう、とりあえず」
風角「はっ! そういえばひーちゃん様っ。何故にこのような場所に? そして何故にそのような者と一緒に!?」(今頃如月の存在に気づいたらしい)
水角「そうですわよ、ひーちゃん様! このようなくっらい地下水路で何を? まさかこのカメめに無理やり連れこまれて…!」
風角「な、何ィィィィ!? そ、そして無理やり押し倒されて…!」
炎角「そして無理やりちゅーされたのか〜イエッ!? ノンノンノン!」
風角「ギャー(叫)!!」
水角「いやー(絶叫)!!」
炎角「ひーちゃん様は御屋形様のものぉ〜!! ダンシンッ!」
如月「…………龍麻【怒】」(ちゃきん!と既に刀を出して戦闘モード全開の如月)
龍麻「わあっ(焦)! お、落ち着け、翡翠! ちょちょちょちょっと待てって!」(必死に如月を押さえつける龍麻)
風角「うわっちゃー! いやいやいやー! ひーちゃん様がカメに抱きついたー!!」
水角「きいやあああ!! 九主オンリーの肌には受け付けられない他カプリング〜!!」
炎角「ぐえええええ!!」←2人にあわせてゲロ真似の炎角
龍麻「ちょ、ちょっと【怒】! 君たち、いい加減にしろよッ! しまいにゃ俺が黄龍ぶちかますぞッ!」
風角「へ…だ、だってなあ…」(ぶちぶち)
炎角「だってだぜ、イエッ」(いじいじ)
水角「ひーちゃん様がカメなんぞといちゃついてるんですもの…」(ぶーぶー)
龍麻「………【呆】。あのな。もうくだらない事言ってないで。君たちこそこんな所で何しているわけ? 俺たちはね、前のサイトで留守番してたから、これから新しいサイトへ移動するところなんだ」
風角「あ、そうなんですか〜」
水角「それなら新しいところはこの先をすぐ行った所ですよ。ここからクリックするとすぐトップページですわ」
龍麻「あ、そうなんだ、良かった…。で、君たちは何を?」
風角「何をって…」
如月「事と次第によっては龍麻が止めても斬るぞ」
龍麻「翡翠っ」
水角「お〜やだやだ、すぐに暴力に訴える野蛮人は〜」
炎角「ランボーモノッランボーモノッ!」(はやし仕立てるように挑発口調)
風角「ちょっと人気投票で1位だったからって調子に乗るなよな! 新しいサイトは我らが御屋形様と俺たち鬼道衆メインだぜッ!」←勝手に決めないで下さい
如月「…………(ぷるぷる)」←怒りも頂点に達しそう
龍麻「鬼道衆さん…」
風角「はーい、何ですか、ひーちゃん様〜♪」
水角「どうしましたか〜? 邪魔なカメを抹殺します〜?」
炎角「ぐーるぐるぐる……」←ただ踊っているだけ
龍麻「……いい加減、ここにいる理由をちゃんと話さないとぶっ飛ばすよ?」
一同「びくっ!」


やっぱりそれなりに龍麻が怖いらしい鬼道衆の3人組。彼らは脅されて一気にしーんと黙りこんだ。
そしてこそこそと密談開始。


風角「な、なあどうする(焦)? ひーちゃん様に言うか?」
水角「それはマズイぞよっ。わらわ達の作戦は誰にもばらしてはならないと雷角が」←ミサちゃんにはバレている…
風角「でもよー。ひーちゃん様に隠し事ってできなくねえ? 炎角、お前できるか?」
炎角「キャンッ! ムリッ! むりむり、むーりむり! 俺はひーちゃん様の奴・隷〜♪」(腰フリフリの炎角)
水角「けど、ひーちゃん様に蓬莱寺京一の先祖を抹殺に行くなんて言ったら怒られないかしら?」
風角「……怒られるだけならまだいいけどな…。はっ! で、でもちょっと待てよ…!」
水角「ん、何どうしたの」
風角「あのオカルト女は地下水路、つまりここに俺たちを向こうの世界に飛ばす為の手がかりがあるって言ったんだよなっ!?」
水角「!! そ、そしてその対象は常に動いていると…!」
炎角「イエ〜。ひーちゃん様は〜ここを歩いて来ていたぜ〜移動してきていたぜ〜」
風角「って、事は…。手がかりを握っているのは、ひーちゃん様…!?」
水角「そ、そうね、その可能性は大だわねっ!!」
龍麻「………ちょっと。さっきから何こそこそ話しているわけ?」
如月「龍麻。君は優し過ぎる。だからこんな連中が調子に乗って…」
風角「ああっ! そ、そういえばこの邪魔なカメも移動してきたんだよなっ」
水角「あああ! そうだぞよっ! このカメも同じだぞよっ。容疑者の1人…っ!」←いつから容疑者に…
風角「むむむ……。そういえばコヤツの家は代々怪しげなものを売りつける骨董屋…。もしや、向こうへタイムトリップできる何か珍しいアイテムを持っているのかもしれないぜ…!」
水角「なるほど…それは考えられるわね…!」
炎角「怪しい怪しい〜探るぜ、探ろう、このカメを〜」


一度思いついたらまっしぐら。
3人の思考の中では「外法世界への鍵を握る人物」は龍麻から一転、如月へと移行されていった。
残酷無比な鬼道衆たちの鋭い眼光が、今、如月に向けられる!


風角「ふふふ…ここで会ったが百年目…。我らに目をつけられるとは哀れな事よ…」
水角「我らは、鬼道衆―」
炎角「絶対〜無敵の〜鬼集団ッ!」
風角「カメこと如月翡翠ッ! 貴様を倒しッ! 完膚なきまでに叩きのめしッ! そしてお前の持ち物全て我らが徴収するッ!」
水角「そして我らが悲願を達成するッ!」
炎角「そしてひーちゃん様もモノにする〜♪」
風角「いくぜ、水角、炎角ッ!」
水角「いつでもいいぞよ!」
炎角「ラジャー! イエッ!」
風角「必殺! 鬼道衆、トリプルアターッ…・」
水角「トリプル必殺ーッ…」
炎角「ダンシングアターッ…」


如月「飛水流奥義、瀧遡刃!!」


お馬鹿3人組「ウギャ―――――――!!!」(お空の彼方へ飛ばされました)
龍麻「う…わー…。すごい、星になった…」
如月「……剣が汚れたよ」(ちゃきんと刀を収める如月)
龍麻「あーあ。はは…ま、今回はしょーがないよな」(苦笑)


鬼道衆の悲願(とやら)は果たして成就できるのだろうか……。


以下次号……






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