《21》 |
遅い…遅いわ…一体何をしているのかしら…。 この私がわざわざ力添えをしてあちらの世界へ飛ばしてあげたのに…報告の一つもないなんて…。 ……………。 ぎりっ。 深い闇の中でそうつぶやく声が聞こえる…。 ついでのその傍でガタガタと恐怖に震えているような正体不明の物体も一つ…。 辺りには他に誰もいない。 そう、何故ならここは絶対無敵の聖女様専用・VIPルームなのだから…! 聖女様「それにしても退屈だわ……」(ふう…) 謎の物体「びくびくっ。どきどきっ」 聖女様「………この企画、去年からやっててまるで進展がないじゃないの…。お正月だって終わってしまったわよ…」 謎の物体「グオ…こくこく」(「そうですね!」と必死に頷いてみせる謎の物体・下僕くん) 聖女様「……ウゴー」 ウゴー「びくうっ!!」(謎の物体はウゴーだった!)←バレバレ 聖女様「退屈だわ」 ウゴー「グ?」 聖女様「退屈なのよ」 ウゴー「グオッ。ウ、ウゴウゴウッガー♪」(腰フリフリ) 聖女様「お前の踊りなど見たくないわ」 ウゴー「ピッキーン」(石化) 聖女様「はあ……。玩具たちも帰って来ないし。龍麻はここ数日、連絡してもなかなか捕まらない…。日を変えて京一君だの如月君だの壬生君だのの相手しているみたいだし。私の龍麻を皆でとっかえひっかえ…許せないわ」 ウゴー「ウゴー…びくびくびくびく(汗)」 聖女様「あんな連中との付き合いなんて適当でいいのに…私の龍麻はいつだって律儀なんだから…。この間なんて私が初詣の後、2人だけで一緒にお買い物に行きましょうと誘ったのに、『今日はこの後違う奴と用があるから』ですって…。龍麻…照れているのね…。そうよね、龍麻は愛情より時に友情を優先してしまう人だから…」 ウゴー「ウゴーン」(こくこく) 聖女様「でも」 ウゴー「ビクッ」 聖女様「……何日経っても私の番にならないじゃないの…。ああ…龍麻…今何処にいるの…!」 ウゴー「ウゴ……」 聖女様「ウオッチしましょ」(ぴっ!) ウゴー「!?」 聖女様はそう言って不意に手にしていたリモコンのボタンを前方に向かって押した。 すると真っ暗闇だった空間は不意にぱっと燈った巨大なスクリーンの光で明るくなり、目の前には―。 緋勇龍麻、その人の姿がくっきりと浮かんだ。 どうやら寝起きである。 ウゴー「ウゴッ!?」 聖女様「うふふふふ…。龍麻、可愛い…。今お目覚めだったのね…うふふ…そのパジャマも、いつ見ても可愛いわ」 ウゴー「ウ、ウゴーウゴーッ!」 聖女様「どうしたの、ウゴー。あら貴方には見せた事なかったかしら? 邪魔な奴らが多くてなかなか2人っきりになれない私たちですもの、隙を見つけて龍麻の部屋の随所に超小型監視カメラを設置したのよ。そうすればいつでも好きな時に龍麻の様子を見守る事ができるでしょう?」 ウゴー「だらだらだら(汗)」 聖女様「あら…うふふ、龍麻ったら。あくびなんかしちゃって、可愛い……」 ???『おーい、ひーちゃん』 聖女様・ウゴー「!!???」 スクリーンから突然流れてきたその声に、2人は一瞬にして凍りついた。 画面の龍麻が呼ばれて振り返る。その声の主に笑顔を見せる。 龍麻『あ、京一、おはよ。早いなーもう起きてたのか?』 京一『へへへ…俺だってたまには早起きくらいするぜ? それより見てくれよ、ひーちゃん。京一特性朝ご飯だぜー♪』 龍麻『おっ、すごいっ! ホントすごいな、これ全部京一が作ったのか!?』 京一『まあな。 ひーちゃん、いっつもラーメンと酒ばっかかっくらって身体に悪い事ばっかりしているからよ』 龍麻『何言ってんだよーお前に付き合ってるからそうなるんだろっ。昨日だって勝手に押しかけて無理やり飲ませ…』 ブチッ。 ウゴー「!?」 聖女様「…………」 ウゴー「ウゴッ! ウゴウゴグオー! ぶんぶん(焦)!!」 聖女様「無理やり…無理やりですって…?」 ウゴー「ウゴ!?」 聖女「無理やり付き合いを強制したんですって…?」 ウゴー「ガ!?」 聖女様「あのエロ猿…その上私の龍麻に無理やり襲い掛かったんですって…?」 ウゴー「ウゴ!? ウゴーウゴー!!」(「そんな事ひーちゃんは言ってないよ!」と言っている) 聖女様「京一君…新年早々やってくれたわね…。この私ですら、お年始回りで疲れている龍麻に遠慮してまだお家へ行ってないっていうのに……」(メラメラ) ウゴー「ウゴーウゴー(汗)! ぱにっくぱにっく!」(うろうろぐるぐると逃げ惑うウゴー) 聖女様「やっぱり今年も京一君は要チェックね…。……ちっ、あの役立たずの鬼道衆…蓬莱寺一族の抹殺とやらはどうなっているのかしら…」(ぎりと指を噛む聖女様) ウゴー「ぶるぶるぶる……」 聖女様「こうなったら…様子を見に行くしかなさそうね…!」 ぶわり。 聖女様はそう言うとすっと手をかざし、そうして鬼道衆たちを送り出した時と同様、目の前に巨大な異空間を作り上げた! そして、怯えて動けなくなっているウゴーをそのままに、一人さっさとその中へと入って行ってしまったのだ! さすが行動派の美里様である! あ、言うの忘れてたけど、聖女様とは美里様の事であったのだ!(知ってるよ) ウゴー「ウウウ……オロオロ……」 ???「………相変わらずめちゃくちゃな女だな………」 ウゴー「!?」(突然背後から声が聞こえ、ウゴーは飛び上がって振り返った) ???「ふん、あいつら姿が見えないと思ったら、あんな女に良いように利用されていたとは」 ウゴー「ウ、ウゴーッ」 ???「……………」 ウゴー「びくびく…っ」 ???「……ち。しょうがねえ」 ウゴー「ウゴー!?」 ???「テメエも来い」 ウゴー「ウゴー!!」 ウゴーは訳が分からないうちに、突然現れた謎の男によって無理やり美里様が作った異空間の中へと放り込まれた! さあそんなウゴーの運命は!? そして任務をまるで果たしていない鬼道衆たちの運命は!? そして我らが美里様の運命は!? そしてそして急に現れた謎の人物とは一体!! もうすぐ終わるからついてきてね! 以下次号…… |