《22》 |
大層恐ろし…いや、我らが聖女、可憐で美しい美里様がお姿を隠してしまわれたのとほぼ同時刻。 彼らはようやく外法世界での再会を果たした。 風角「ううう〜よろよろ…。ひどいよひどいよひーちゃん様ぁ〜【悲】」 水角「ううう〜痛いぞよ痛いぞよ。あの根暗暗殺者めよくも〜【恨】」 炎角「シャウッ! ダンスッ! 敗北敗北悔しいぜ〜イエ【♪】」 岩角「ううう〜腹減ったどー。死んでしまうどーおで、どうしたらいいどー【泣】」 雷角「ううう〜折角折角楽しかったのに〜いいじゃないか少しくらい〜【嘆】」 一同「………んっ!?」(一同が山の中の広い場所でばったりと顔を合わせた!) 風角「あああー! み、みんな、無事だったのかーっ!!」 水角「風角、炎角、岩角、雷角! みんな、いるねーっ!!」 炎角「イエイイエイ! いるぜいるぜ俺はここにいるぜイエーっ!!」 岩角「わーみんないるどー! おですごく嬉しいどーっ!!」 雷角「お、おおお! 皆、皆、いるな! よくもまあ、こんな場所で偶然…っ!!」 そうして互いが互いの無事と再会を喜び、涙にむせびつつ手を握りあう。 さながらそのシーンは、固い絆で結ばれていた家族が悪魔の手によってバラバラに引き離されたものの、それぞれがそれぞれの苦難を乗り切って見事再会を勝ち取った感動ドラマのようであった!!(訳分からん) 風角「……かくかくしかじか。そういうわけで俺はひーちゃん様のご先祖様には会えたんだけどよー。ヘンなハゲた坊主にぼこぼこにされてここまで飛ばされちまったってわけ。ひーちゃん様のご先祖様…すっげー変わり者だったぜ〜」 水角「でもいいわよ〜あんた、ひーちゃん様のご先祖様に会えたんでしょ!? ねえねえ、やっぱり可愛らしかった?」 風角「んー…へへ、まあな♪」 水角「やーん! このこの、羨ましい〜【殴】!」(ごつごつ!) 風角「痛ェ痛ェ! やめろよ〜俺、そこ攻撃された場所なんだからよ〜」(でもにへらとしている風角) 雷角「わしは御屋形様のご先祖様が治める村で布教活動だけはしっかとしてきたものの、実際御屋形様にもひーちゃん様のご先祖様にも会えなんだ…。自分の先祖には会ったんだがな…」 風角「嘘っ!? 俺も雷角の先祖に会ったぜっ!?」 雷角「何…!? お前も礼拝堂に来ておったのか!?」 風角「礼拝堂…? いや、俺の話はさっきので全部だぜ。だから〜俺が最初に会った御屋形様の片腕とかいう嵐王…って、あれ? あいつが雷角の先祖じゃねーの??」 雷角「違うぞ。わしはこの目で自分の先祖を見た。お前、誰と勘違いしておったんじゃ」 風角「あれ〜? おかしいな〜? じゃあ、あいつ誰の先祖だったのかな〜?」 水角「先祖といえば、わらわも自分の先祖に会ったぞよ! きっと雹ちゃんはわらわの先祖と思うのよね〜。あの美人さんな顔といい、画才といい。雹ちゃんはもう村でもきっての売れっ子同人作家だぞよ♪」 雷角「何と、水角もわしと一緒に村で九主を広めておったとはな〜」 水角「ぐふふ。勿論。どんな不測の事態に陥ろうとも、九主を布教しよう!っていうわらわたちの任務を疎かにするわけにいかないからねえ」 雷角「ふふふ…そうじゃなそうじゃな」 岩角「ん〜?」(首を捻って何事か考え込む岩角) 風角「あれ? 俺らの今回の目的ってよー。御屋形様とひーちゃん様のご先祖様に会う事じゃなかったっけ?」 雷角・水角「へ?」 炎角「イエッ! そうだぜそうだぜっ! 俺もひーちゃん様のご先祖を探して踊りながら旅をしていたんだぜ〜イエッ!」 水角「そういえばそうだったわ」 雷角「そういえばそうだったの。すっかり忘れていたわい」←お前が言い出したんだろ 風角「炎角。じゃあ、お前は御屋形様かひーちゃん様には会えたのかよ?」 炎角「ノンノンノン! 踊っていたら炎の使い手が俺を殴打し〜イエッ。更に更に踊り狂っていたら、今度は金髪のガンマンが俺の行く手を阻んだんだぜ〜イエッ!」 水角「……何でこんな時代に金髪のガンマンがいるんだえ?」 雷角「炎角の事だ。また一人で夢でも見ておったのだろう」 炎角「イエイエイエ〜。それにしても何で俺だけ2回もやられたんだ〜??」←ノリで 岩角「…………」 水角「ん? ところで岩角。あんたは何処で何してたんだい?」 岩角「ん〜おでか?」 風角「お、そうそう。まあお前の事だから、どうせ山で食い物でも探してうろついてたんだろーけどな!」 岩角「うん。おで、山でたくさん美味いもの食った」 雷角「ふう〜やれやれ。仕方のない奴だ」←あんたよりよっぽどまともだったと思うが 岩角「おで、おで…すごくいい奴に会ったんだど。優しくて美味いもんいっぱい作ってくれで。おで、すごく楽しかったから、最初ずっと任務の事を忘れていたんだど」 風角「ははは。やっぱりな」 水角「ほほほ。まったくお前らしいねえ」 炎角「仕方のない奴だぜーイエッ!」 雷角「まったくじゃ。鬼道衆としての自覚が足らぬぞ」 岩角「うん、ごめん〜。でも、おで、急に思い出せたんだど! おでたちの任務! それでおで、山を下りなきゃって思って、泰山ともお別れしなきゃって思ったんだど!」 風角「泰山? そいつが親切にしてくれた奴か?」 雷角「一応帰る前に礼でもしておくか。岩角が世話になったのだしな」 水角「ああ、そうだねえ。わらわ、まだ雹ちゃんの同人誌ストック持ってるから…」 風角「うお、マジかよ! 俺にも見せてくれよー!」 炎角「俺も俺も俺も見たいぜ〜!!」 水角「ほほほ。あんた達には帰ってから。その方がお楽しみも増すってもんでしょ」 風角「ちぇ〜。じゃあ、早く帰ろうぜ!」 雷角「ふむ、そうじゃな。御屋形様とひーちゃん様のご先祖様を見られなかったのはちと心残りじゃが…。今村に戻るのは少々危険過ぎるからな」 水角「そうだえ! わらわ、今村であの壬生の先祖に出くわしたら今度こそ殺されてしまうよ!」 風角「俺なんかひーちゃん様自身に目つけられてるからな」 炎角「俺なんか村に一歩も入れないぜ、イエー」 雷角「わしもじゃ。御神槌め、融通の利かない奴じゃからのう…。ま、ほとぼりが冷めた頃また遊びに来るという事でいいか?」 風角・水角・炎角「賛成〜♪」 岩角「……………」 妙に和んでしまっている4人を前に、岩角はしばし黙り込んでいた。 しかし何度も何度も思いを巡らし、そして4人を見、岩角は遂に思っている事を言葉にする事ができたのだった。 岩角「でも、おでたち菩薩眼様の任務を果たしてないどー」 ぴき。←何かが音を立てて割れた 雷角・風角・水角「……………………」 炎角「………おぉ〜忘れていたぜ〜ィェ」 岩角が4人をじっと見詰める。 4人はしばらくしてから、不意に口を開いた。 一同「わーすーれーてーたーッ【焦】!!!!!」 水角「ぎゃあぎゃあぎゃあ!!! どうしよーどうしよー!!!」(じたばたじたばた!) 風角「ぎええええええ!!!! しまったぁーっ!!!!」(どたばたどたばた!) 炎角「そういや俺たち、菩薩眼に飛ばされてこの世界に来られたんだぜ〜イエッ!」(ダンスダンスダンス!) 雷角「ななななな何て事だーっ【恐】!!! わ、わしとした事がうっかりしておったーっ【怖】!!」(ウロウロウロウロ!) 岩角「皆忘れてたのか!? ダメだどダメだどー。おでたち、大変な事になるどー!!」(どすんどすんどすん!) 鬼道衆「しーん…………」 ひとしきり暴れた後、5人はしんと黙りこくった。 何という重大な事を忘却していたのか。 彼女ははっきり言って御屋形様より恐ろしい存在だ。 彼女の辞書には御屋形様と違って「容赦」という文字はない……。 5人は一斉にごくりと唾を飲み込んだ。 あれから一体どれくらいの時間が経過してしまったのだろうか。 彼女は今、相当に焦れているに違いない。自分たちからの報告がまるで入ってこない事に。 雷角「……行くしかあるまい」 風角「そうだな」 水角「そうだね」 炎角「やるぜやるぜ俺はやるぜー!」 岩角「何処へ行くんだー?」 雷角「決まっておろうがっ! これから我らの総力でもって蓬莱寺京梧の抹殺に向かうっ!」 風角「行くしかねえっ!」 水角「でないとわらわたちが殺される〜!」 炎角「俺たち、二度とあっちの世界へ帰れないぜイエー!」 岩角「!! そんなのヤだど! おで、御屋形様に会いだい! ひーちゃん様にも!」 風角「俺だって!」 水角「そんなのわらわだって!」 炎角「俺もだぜイエ!」 雷角「わしだって! よし、いざ行かん、江戸の町へ下りるぞー!」 一同「おー!!」 こうして。 ようやく自分たちの元の任務を思い出した鬼道衆たちは。 山を下り、目的の人物・京一のご先祖である蓬莱寺京梧の抹殺を遂行する為、町へと向かって行くのだった。 そのもうすぐ傍まで、魔の手は近づいてきているという事も知らずに……。 以下次号…… |