《7》
うっうっう…うっう…。
そろそろ夜も明けようかという頃。
薄暗い屋敷の一室では何者かのすすり泣く声がちらほらと…。
うっうっう…ううう〜。
よよよよよ…よよよよよ……。
えぐえぐ…っ。うえうえうえっ…。
うおおんうおおんうおおんっ。
る〜るる〜るるるる〜いえ。
……? ど、どうやらその泣き声は1人だけのものではないようで……。


九角家・屋根裏の秘密部屋―。


雷角「うっうっう…御屋形様に失望されてしまった……ううう…」
水角「よよよよよ…。タダでさえ呆れられてたのに愛想をつかされたえ…よよよ…」
風角「いてて…身体が痛ェよ〜。うえうえっ」
岩角「うおおんうおおん! 腹減ったどー! 今日から三日間メシ抜きの刑なんて死んでしまうどー!!」
炎角「鬼道衆・哀しみの唄。る〜るる〜るるる〜る〜いえ〜」(スローステップ)
風角「大体なあっ。雷角! 元はといえばお前がくだらない計画を立てたからこうなったんだぜ!」
雷角「な、何っ!」
水角「そうだえ! 勝手に1人で盛り上がってわらわ達をこき使って。それで自分だけひーちゃん様に会いに行こうとして御屋形様のお怒りを買ってたんじゃあ、どうしようもないわよ!」
雷角「ななな何を言うか! そもそもおぬしらがきちんと使命をまっとうしておれば…!」
風角「俺らは精一杯やったっつーんだよ! 何の手掛かりもなく闇雲に行動させたのはお前だろ!」
水角「動く対象物なんて当てにならない占いに振り回されて、帰ってきた途端こんな大怪我負わされて。まったく、大したくたびれもうけだわ」
雷角「えーい何じゃ、お前ら! 黙って聞いておれば好き勝手ぬかしおって! お前らかて、御屋形様やひーちゃん様のご先祖に会いたいと言うておったであろうが! わしにだけ責任をなすりつけるつもりか!」
風角「ああそうさ、なすりつけてやる〜!」(ぐいぐいと雷角の髪の毛を引っ張る風角)←髪の毛ってあるよね、きっと…
雷角「くそ、何だこの〜引っ張り返してやるわ〜!」(ぐいぐい!)
水角「キーッ! ああ、むしゃくしゃするぅ〜!!」(1人髪の毛をかきむしる水角。ヒステリック風味)
岩角「腹減ったど……」(怒る気力ゼロ)
炎角「これ、食うか」(さっと岩角に一握りの袋を渡す炎角)
岩角「ん…何だそで…?」
炎角「ウゴーの餌だぜ」(ぽいぽいと目の前の檻に向かって袋の中に入っているパン屑を投げる炎角)
ウゴー「ウゴー……」(頑丈な檻に入れられ弱り気味のウゴー)
雷角「……そういえば、こやつは何でここに置いておるのだ?」(風角を引っ張りながら)
風角「いや分かんねえ…。何となく」(雷角を引っ張りながらウゴーを見る)
炎角「ほれほれウゴー。これを食え」(更にぽいぽいとパン屑を投げる炎角。どうやら飼いたいらしい)
ウゴー「ウゴーン……フウ〜(ため息)」
炎角「ほれ、岩角。ハングリーなら分けてやるぜ、イエ?」
岩角「おで…こんなの腹の足しにならない…。おで、ウゴーを食いたい…」
ウゴー「ドキィッ!!」
岩角「おで…腹減ってイライラしてきた……」(ぎろりとウゴーを睨む岩角)
ウゴー「ギャーギャー!! ピーピー【焦】!!」(じたじたと檻に体当たりして脱出しようとするウゴー)
風角「こらこら岩角。怯えているだろーが。そんなに腹減ってんなら外行って木の実でもかじってこいよ」
水角「そうそう。煩いわよ…。はー腰が痛いわ…」
ウゴー「ウゴウゴ…ウギューン…(涙)」
雷角「……それにしても何でこやつはこんなに悲しそうなのだ?」
風角「あ、それは俺たちにも分かんねえんだよ。何か色々愚痴ってたみたいなんだけどさ。俺らにはコイツの言語は意味不明だからな」
炎角「何かが悲しいって事だけしか分からないぜっ」
雷角「ふうむ……」
ウゴー「しくしくしく……」
天童「おい」
一同「びくうっ!!」


鬼道衆らが一瞬しんと静まり返った中でウゴーの事を考えている時だった。
突然部屋の扉が開き、外から現れた御屋形様こと天童様に、皆は思い切り意表をつかれてしまった。


雷角「ななな何でございましょう、御屋形様っ!!」
風角「お、御屋形様っ。俺ら、もうなーんも企んでなんかないですぜっ。おとなしーく怪我の治療に専念してますっ」
水角「そそそうですとも〜。只今原稿にも全く着手しておりませんしっ(焦)。極めて健全にまっとうな日々を送っておりますわっ」
天童「……さっきからまだ何時間と経ってねェだろーが。それでお前らがまた何かやらかしてやがったとしたら俺だって堪んねえよ」
雷角「は…ははははっ。そ、そうでございますとも! 御屋形様も大変ですっ」
風角「うんうん。ロクでもない部下を持つと苦労しますねー」
水角「まったくですわね〜ほほほほ」
天童「ギロリ」
3人「びくうっ!」
天童「ふう…ったく……」
岩角「御屋形様〜ごめんなざい〜(涙)。おで、腹減ったど〜(だー)」
炎角「御屋形様、コイツ、何を食うんでしょうねイエ! パン屑には見向きもしないんですイエ!」
天童「……こいつ……」
ウゴー「ウゴウゴー…(怯)」
炎角「可愛いですぜいえ〜。御屋形様〜こいつ、うちのペットにしていいですか、いえ〜」
雷角「な、何を言うのだ、炎角!?」
風角「そ、そうだぜ! こ、こいつはあの恐ろしい菩薩眼の僕なんだぜ!」
水角「そうそうっ。さっさと竹薮にでも捨ててきなさいなっ」←ひでえ
炎角「嫌だぜイエ〜。こいつも戻りたくないって言ってるぜ、イエ〜」
風角「へ? お前、こいつの言葉が分かるのか?」
炎角「分からないけど、そう言っている感じがするんだぜっ。俺とウゴーは通じ合ってる、テレポーテイションッ!」
風角「いや、それ意味分からねえって!」
天童「お前ら、煩ェ。ちょっとは黙れ」
一同「しーん」
岩角「ぐるるるる……きゅうぅぅ〜」←腹の虫
天童「…………」(じっとウゴーを見つめる天童様)
ウゴー「………くすん」(涙目で天童様を見上げるウゴー)
天童「…………」
ウゴー「ウゴ……(涙)」
天童「………けっ。くだらねえ」
雷角「へ…? お、御屋形様…?」
天童「バカバカしい。俺は寝る!」(すっかり興味をなくしたようになって部屋を出て行こうとする天童様)
風角「御屋形様っ!? こ、こいつの考えが読めたのですかっ!?」
天童「あぁ?」
水角「本当でございますかっ!? そ、それでこいつは何と…!?」
天童「どうでもいいだろうがよ。こんなもん、さっさとどっかに捨ててこい!」
炎角「ええ〜。俺、イヤイヤイヤイヤダンスっ!」(駄々っこのポーズ)
風角「お、御屋形様! で、でもコイツの通訳をできるひーちゃん様のところには連れて行かなくて良いので?」
天童「何でそこで龍麻の奴が出てくるんだ【怒】! いいか、こんなくだらねえ事にあいつを巻き込むな! とにかくいつまでも置いておかねえで、適当な所に離してこいってんだ!」
雷角「は、はあ……」
水角「わ、分かりました」
風角「ひーちゃん様ズハウス訪問の夢が…(涙)」
岩角「腹減った……(涙)」
炎角「ショック! ショック! ショッキーンっ!!」←ホントにショックなのかよ


こうして、その夜一睡もしていない鬼道衆たちは。
身体を休める事も叶わず、天童様の言いつけを守る為ウゴーを何処か適当な所へ捨てに行くことにしたのでした。
その先に恐ろしい魔の手が忍んでいる事も知らずに……。


ウゴー「ウゴー……(震)」



以下次号……






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