《9》
美里様はゆっくりとウゴーの元に近づき、そしてむんずとその首筋を掴んだ。
ぎゃ!
ウゴーは小さくうめいたものの、遂に観念したのだった…。
自分が悪い。自分が悪いのだ…任務をまっとうできなかったのは…。
美里様の神々しい笑顔がウゴーには眩しかった…。



雷角「つ、つまり…こういう事ですか、美里様。その者…貴女様のペット・ウゴーは、貴女様の命令で……」
風角「新サイトである剣風・外法ミックスのここ『銀の竜』サイトの偵察に来ていたと…?」
美里「ええ、そうよ。もう誰もが忘れてしまっていると思うけれど、私このサイトが新規openする前に、以前の毎日紹介のページでウゴーに命令していたの」
ウゴー「ウゴー…(涙)」

水角「剣風人物だけでなく外法キャラの偵察もするようにと…?」
美里「これは本当に予想外だったのだけれど…龍斗の方が京一君のご先祖との【オンリー】になってしまった今、その重要性はより一層増したと言えるわね。…外法の連中が龍麻に手を出してこないと何故言えるかしら? 彼らの動向を逸早くチェックする事は、私と龍麻の愛を成就させる為に絶対にしておかなければならない事だったのよ」
風角「は、はあ…」
雷角「さ、さすがでございます美里様ッ! そうですとも、この乱世の時代…この時代の人物だけでなく、外法世界の住人も警戒するのは必須事項でござりましょう!」
美里「ふふ…そうでしょう?」
岩角「ハラ減った……」
雷角「……(蹴)!」(こそっと岩角の背中に蹴りを入れる雷角)
美里「けれどこの子…その命令をしてから数ヶ月…ちっとも帰ってこなかったの」
ウゴー「ウゴー……(汗)」
美里「ウゴー、お前はこの間、一体何をしていたの? チェックするべき人物が大勢いるのは分かるけれど…ちょっと時間がかかりすぎなんじゃなくて?」
ウゴー「ゴウーン…」
美里「途中経過だけでも報告してくるのが当然でしょう? まあいいわ。さあ、お前が調べてきた全てを私に教えなさい」
ウゴー「ウ…ウウウ…ゴウー……(だらだら・汗)」
水角「……もしかしてこいつ……(汗)」
風角「ああ、これで散々泣いて怯えていた理由が分かった…こいつ…(汗)」
炎角「へい、ウゴー! お前、調査全然できてないんだな、イエ!?」←もう復活?
ウゴー「ギグッ!!」
美里「……? どういう事? ウゴー、お前……」
ウゴー「ピギャー(号泣)!! ぺこぺこぺーこぺこ!!」(謝りながら数枚の紙切れを差し出すウゴー)
美里「…………」
炎角「お、報告書!」
水角「でも何か妙に薄いねえ…」
美里「風角!」
風角「はっ!? はいぃッ!! 何でございましょうっ!!」
美里「……それを読んでみてちょうだい」

風角「は…? お、俺が読んでもいいので…?」
美里「…………」
風角「びくうっ! はっ! すぐに!! すぐに読みますーっ(焦)!! え、えーとっ!!」(ウゴーから紙切れを奪って読み出す風角)
岩角「……ハラ減った……」
ウゴー「ヒンヒン……(泣)」
風角「え、えーと。『銀の竜』におけるウゴー君が出会った要注意人物…? 初日、壬生紅葉(ついでに佐久間)、2日目、如月翡翠(ひーちゃんといちゃついていた)。……???」
雷角「……あ。それ、前のサイトの時の毎日紹介でもやってたなあ……」(もう殆ど忘れてるって…何せ1日で削除した話…汗)
美里「……それで? その後は? 外法の人間たちのリサーチはどうなっているの?」
風角「は、はあ…あのう。これで終わりみたいです」
美里「…………」
ウゴー「ピギャー!! ウゴー!! ウゴゴー(焦)!!」←必死
雷角「……? 何を言うておるのだ…?」
ウゴー「ウゴウゴガウゴウゴーンっ(泣)!! ウゴーウゴー!!」←更に必死
美里「………うふふふふ」
鬼道衆「びくうっ!!」
美里「うふふふふ…そうだったの…。それは可哀想だったわね……」
ウゴー「ピッキーン!!」(メドゥーサに睨まれたかのように石化してしまったウゴー)
雷角「あ、あのう…美里様…。差し出がましいようですが、こやつはどんな言い訳をしたのでございますか?」
美里「ふふふ……あのね、一生懸命探したんだけれど、何処を彷徨っても誰とも出会わなかったんですって」
風角「は、はあ……」
水角「哀れね・・・いかにも要領悪そうだものねえ…」
美里「うふふふふ…それでね、ウロウロしている間に新しいサイトは開いてしまって、自分の任務がどうなったのかも書かれずにあの時のページは放っておかれてそのままで、やっぱりひどく孤独だったのですって……」
雷角「そ、そうでございますか…。それは…」
風角「それはウゴーも……」
美里「役立たず」
鬼道衆「どきいっ!!」
美里「満足に命令の一つもこなせないなんて…。情けない…」
雷角「あ、あの…美里様…(怯)?」
水角「こ、ここで爆発されるのだけは・・・…あの、わらわ達もいますし……」
美里「そういえば貴方たち、私がいないと思ってこの子をエサに龍麻に近づこうとしていたじゃない?」
鬼道衆「ぎくうっ!!」
美里「………良い度胸ね………」
雷角「ご、誤解でございまする、美里様!! わ、我々は常に御屋形様と深い繋がりのある貴女様の僕でございますれば…!!」
美里「あら、そうなの」
風角「そーうでございますともっ! 我らがっ! ひーちゃん様の動向を気にするのも、全ては美里様のひーちゃん様に良からぬ虫をつけぬためっ!」
水角「そ、そうそう! そうでございますっ! 美里様を差し置いてひーちゃん様に近づこうとする輩は我らの敵っ!!」
炎角「イエーイそうですぜ〜! だから俺たち剣風の奴らだけでなく、これから外法の奴らも抹殺しに行こうとしてたんですぜ!」
美里「……あら。何かしら、その話は?」
雷角「!!! そ、それがですなっ。実は我らは蓬莱寺京一の先祖である蓬莱寺京梧を抹殺し、未来に蓬莱寺一族の種を絶やそうという計画を立てていたのでございますっ!!」
水角「そ、そうそう! そしてゆくゆくは他のライバルも・・・! ね、風角!!」
風角「そうですー!! な、岩角!?」
岩角「……おでの食い物を取る奴は全員やっつけてやるどー【怒】」(何やら違う方向で殺気立っている)
美里「……ふ、なるほど。そうなの…。子孫には叶わないから先祖から抹殺ってわけね……随分せこい考えではあるけれど…」
鬼道衆「どきどきどき……」
美里「…………」
鬼道衆「どきどきどきどき(汗)」
美里「……まあ、面白いじゃない。なら、やってみるといいわ…。貴方たち如きに殺られるようなら、彼らもそれまでの人間ということ…」
雷角「で、では…!?」
美里「……ウゴーの任務。お前たちにやらせてあげるわ。生死は問わないから好きにやってごらんなさい。私はね…ここを…私と龍麻の愛の城を荒らす可能性がある連中の情報が、今一つでも多く欲しいのよ」
雷角「は、ははー!! その任務、我らにお任せ下さいっ!!」
風角「連中の動向を探り!」
水角「殺せる者は殺してきますわっ!!」
炎角「でも俺たちも向こうの連中になかなか会えないんだぜーイエ!!」
美里「ふふ……この私を誰だと思っているの? 私は美里葵、ここの正当な主よ。現に私だけは外法旅行の際に向こうへ自由に行き来していたでしょう?」
雷角「で、では…!?」
美里「お前たちを向こうの世界へ送ってやるわ…。さあ―」
鬼道衆「!!!!???」


美里がすっと片手を挙げた瞬間。
暗黒空間にぽっかりと大きな穴が開き、先の見えない異世界空間への入り口が浮かび上がった。
そしてそれはあっという間に途惑う鬼道衆たちを飲み込み、もの凄い勢いで彼らを奥の次元へと引き込んでいった。


美里「うふふふふ……さあ……私の為に働きなさい……」
鬼道衆「どわああああ――――――――!!!」


さあ鬼道衆たちの運命や如何に!?
いよいよ次回、舞台は外法世界へと移る…!



以下次号……







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