第1話 旅立ち

  まだ朝日が昇りきらない時刻、深い眠りの底にいた龍麻は父・鳴瀧に叩き起こされ、そして言われた。
「 起きなさい、龍麻。今日は旅立つには絶好の日和だ」
「 ……えぇ〜? うーん、まだ眠いよ…」
「 お前は今日から勇者となり、魔王を倒す為の旅に出るのだ」
「 はぁ…? ……お父さん。朝っぱらか何なの? って、まだ殆ど夜じゃない!」
  龍麻は父によって無理やりベッドから追い出され、眠い目をこすりながら不平を漏らした。
  けれど普段からマイペース強引直球型の父はまるで聞く耳を持たない。
「 いいから行け。お前は選ばれた勇者だからいつまでもこんな外れ村で油を売っていてはいかん」
「 ちょ…お父さん、でも俺、まだ何の事か全然分からな…」
  バタン。
「 …………」
  しかし寝ぼけた龍麻が混乱しているうちに、父・鳴瀧は少しの荷物だけを投げて寄越し、家の戸を固く閉ざしてしまった。
「 もう…たまに家に帰ってきたと思ったら、一体何なんだよ…」
「 お。龍麻、おはよ!」
「 あ…焚実」
  その時、龍麻の家の前を親友の比嘉青年が通りかかった。
「 どうした? お前がこんな朝早くに家を出るなんて珍しいな」
「 あのな、焚実。俺、よく分からないけど、今日から勇者になって旅に出なくちゃならなくなった」
「 はあ?」
「 父さんに言われたんだ。で、今追い出されたとこ…」
「 追い出されたって…」
  比嘉青年は目をぱちくりやりながら、ぽつんと家の前に立たされた親友・龍麻をまじまじと見やった。
  それからしばらく考え事をして、比嘉青年は思い出したようにぽんと手を打った。
「 そういえば最近、大国アキツキーから世界各国に力のある勇者を募るというお触れが出ていたな」
「 何それ?」
「 今、世界は何か悪い事が起きようとしているってもっぱらの噂なんだよ。親父さん、それでじゃないかな。アキツキーが求めている勇者として龍麻にそこへ行けと言ってるんだと思うよ」
「 そんなむちゃくちゃな。俺、ただの平凡な村人なのに…」
「 ははは、そんな事ないよ」
  比嘉青年は自分を否定する龍麻ににっこり笑って首を振った。
「 龍麻は特別な奴だと思う。俺、前からそれは思ってた。きっとお前はこんな小さな村の百姓で終わる奴じゃないって。いつか何かでっかい事をやらかす奴だって。そう、思ってた」
「 焚実〜。人の事だと思ってそんな事気楽に言うなよー」
「 まあまあ、いいから。試しに行っておいでよ。それで選ばれなかったら帰ってくればいいじゃないか。大国では珍しい本もいっぱい出てるって言うから、お土産に買ってきてくれ」
「 ………うー」
「 その間、村の事は俺に任せておけって。な?」
「 うん……じゃあ、行ってくる」
  こうして、龍麻は何が何やら分からないうちに村を出て、父や比嘉青年が言うように大国に向かって旅立つ事になった。
「 あ、そうだ。お前にこれ、やるな。気をつけてな!」
  そして龍麻は比嘉青年から餞別を貰った。



  龍麻は薬草を5個手に入れた!
  《現在の龍麻…Lv(レベル)01/HP(生命数)30/MP(魔法力)05/GOLD(お金)200》



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