その森には、姫がいた |
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―水鳥のいる泉― 友之が指し示した方向から、王子は水鳥が羽を休めている泉へ駆け寄りました。 「 あの悪魔のような母親は雪の姿を魔法で変えていると言っていた…。とすると…」 『 グワワワ…』 『 ガーガー…』 王子は傍目から見ると明らかに「ヘンな人」のようになりながら、泉にいる鳥たちを一羽一羽食い入るように見つめました。 「 お前か!? それともお前か〜!?」 『 グワ』 『 ガー』 『 ガガガガ!』 「 お前か、お前だろ!? こら、いい加減ちゃんと答えろ〜!!」 『 ギャーギャー!!』 「 ぎゃー、じゃないっ。魔法で雪になってんのは分かってんだぞー!!」 『 ギャーッ!!』 自分の言葉がまるで通じていないような鳥たちに、王子はすっかり興奮してしまっています。一羽の首根っこをむんずと捕まえて泉から引きずり出すと、ゆさゆさと乱暴に揺さぶっては暴れる鳥に無理矢理喋らせようとしています。 『 ギャー!!』 『 グワワワーッ!!』 静かで平和な泉に突然侵入してきた「ヘンな人間」に、その場にいた捕まっていない水鳥たちまでもがすっかりパニックになっています。バタバタと羽を羽ばたかせて、皆が皆一斉に泉から飛び立っていきます。 「 あ、待てお前ら! もしかしてあっちの…!?」 『 ギャー!』 その様子に当の王子もパニックです。 しかし、オロオロとしている間に掴んでいた鳥も含め、全ての水鳥たちは一斉に王宮から離れて行ってしまいました。 「 ………雪」 半ば茫然自失で王子がそう呟いた時です。 ボーンボーンボーン……。 「 はっ!」 その時、0時の刻を示す鐘の音がどこからともなく聞こえてきました。 「 ゆ、雪…!」 『 うふふふふ…あはははは…王子…王子、愚かな王子…!』 「 お、お前…!」 すると遥か上空からあの雪也の母親という女魔法使いの笑い声が王子の耳に届いてきました。 『 残念でしたわね…! タイムリミットよ。あの子の事は、元々縁がなかったと思って忘れる事ね』 「 ふ、ふざけるな! 雪を、雪を出せ…!」 『 王子。勘違いなさっては困る』 姿を隠したまま魔法使いは言いました。 『 私は、王子にもあの子にもちゃんとチャンスを与えてあげた。しかし王子はあの子を見出せず、あの子も王子の前に出る勇気を持てなかった。結ばれる運命にはなかったという事…!』 「 ま、待て…!」 『 私たち親子はあの森を出て、何処か遠くへ行く事にしますわ…。ほほほほ…』 「 ………ッ!」 そうして、それきり女魔法使いの声が聞こえる事はありませんでした。 「 何故…。何故、出てきてくれなかったんだ…」 王子は暫くの間、ただ夜の闇に浮かぶ月の光を眺めたまま、もう何処にもいないであろうあの青年の姿を思って唇を噛みました。 どうやらバッドエンドのようです…。 過去に遡り、他の場所を探してみますか? |
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【おわり】 |