(7) 目が合った途端、この一言。 「 俺はお前が嫌いだ」 別にその言葉どうこうに驚いたわけではなかったが、改まってそう言われるとおや、と思う。遂に矛先がこちらへ向いたのか、と。 「 それはありがとう」 「 本気で言ってんだ、俺は!」 「 別に僕も冗談で礼を言ったわけではないよ。僕も君のようなタイプの人間はあまり好きじゃない」 「 へっ、『あまり』かよ! 俺は『大』嫌いだぜ!」 勝ち誇ったようになって、京一は笑った。言われた如月の方は眉すら動かさず、相変わらずの無表情だったのだが。 最近、港区で奇怪な事件が相次いでいた。 それを調べるために増上寺に赴いていた如月だったが、帰りがけ、龍麻がいれば食事にでも誘おうとして、新宿の街でばったりと京一に出会ったのだった。 そこで対面した途端、浴びせられた先の一言。 「 子供みたいなことを言うな、君は」 「 ああ!? 悪かったなー! てめえと違って俺は若いもんでね!」 「 それから声も無駄に大きい」 「 何だとーっ!」 「 それより、龍麻はまだ学校にいるか。彼に用があるんだが」 「 …いねーよ」 「 ふむ。もう帰ったのか。一足遅かったか」 「 サボったんだよ…。午後の授業出てねーもん、あいつ」 「 ?」 如月が無言で何があったのかと京一に問うと、京一の方はまるで悪いことをしてしまったかのような顔をして口ごもった。 「 ……」 けれど、如月が刺すような視線を向けてくる割には何も言わず、しまいにはそのまま去って行こうとするので、京一は思わず声を出していた。 「 俺は! あいつが…緋勇の奴が好きだ!」 「 ……」 「 あいつにも言った! 好きだって言ってやった! キスもしてやった!」 「 ……何だって?」 「 ざまあみろ! いくらお前の方があいつと親しくしてたって、あいつのこと『龍麻』って呼んでたって、今、あいつと近い存在なのは俺だ! 元々、そうなるべき存在だったのも俺だ!」 如月は京一のことをじっと見やった。紅潮し、精一杯虚勢を張っている男の姿が目に入る。けれど、その瞳は真摯なものだった。 「 俺は! あいつのことを護りたい! お前なんかよりもあいつのそばにいて、あいつのことを見てやりてえ! だから…もう遠慮なんかしねーぞ!」 「 …いつ遠慮していたと言うんだ」 つぶやくように言った如月のその声は、京一には届かなかったらしい。言うことを言ってすっきりしたのか、京一はそのまま堂々とした足取りで、如月の前から姿を消して行った。 「 そうなるべきだった…か」 如月は京一が去って行った方向を見やりながら、ぽつりと言った。 「 お帰りなさいませ、翡翠様」 家の表玄関から入った如月を丁寧な言葉で迎えたのは、織部雛乃―如月の幼馴染―だった。如月の元々の系統である飛水家と雛乃の織部家が、それこそ江戸の時代から懇意にしているという事情から、彼女とは物心ついた頃から知った仲であったのだ。 「 先ほどから、緋勇様がお待ちですわ」 如月の荷物を持ちながら、雛乃がにこにこして言う。 来ていたのか、と如月は心内だけでつぶやいた。 「 あー! 翡翠様、お帰りなさい〜」 「 ……」 居間にどっかりと腰を落ち着けていた龍麻が、如月を見つけてふざけたようにそう言ってきた。 「 翡翠様、どこ行ってらしたんですか〜? こんな可愛い子に店番なんかさせてさ〜」 「 …君は紅茶で酔っ払うのかい」 「 酔ってねえよ」 いきなり真顔になり、龍麻は黙りこんだ。後から雛乃が入ってくるのが見えたので、彼女の物言いを真似ることを控えたのだろう。 「 ちょっと暇だったから、旧校舎にでも誘おうと思って来ただけだよ…。そしたらいないからさ。マジで何処行ってたの」 「 別に大した用じゃない」 「 …あっそ!」 龍麻はむっとしたようになって黙りこくった。 そんな龍麻を如月は立ったまま黙って見下ろしていたが、後ろにつく雛乃には優しい声で言った。 「 雛乃、悪かったね。店番だけでなく、客の相手までしてもらって」 それに対して雛乃は柔和な笑顔で実に自然に答えた。 「 いいえ、とんでもございません。緋勇様は、翡翠様の大切なお方ですもの」 一瞬、部屋の中がしん、と静まり返った。 「 ……雛乃」 「 それに緋勇様は、楽しいお話をたくさんして下さいました」 2人の様子にまったく気づいていないのか、雛乃はおっとりとした言い様を崩さぬまま続けた。 「 …どんな話をしたものやら」 慣れているのか、如月は何とか幼馴染のペースに追いつき、平然を装うことに成功していた。心の中では、龍麻の存在すら知らなかったはずの彼女が、何故そんなことを言うのかと訝しんではいたのだが。 一方の龍麻の方は、先ほどから胸の中に何ともいえない靄を抱えていたため、雛乃の言葉を噛み砕くのに少々の時間を割いていた。 「 龍麻」 「 ……」 「 龍麻」 「 えっ! あ、ああ、何?」 「 …それで? もうこんな時間だが、どうする? 今まで待っていたということは、これからでも行きたいと考えているのかい?」 「 別に…。どっちでもいい」 龍麻は興味のないように答えた。もとから旧校舎へ行く気などなかったし。本当にどうでも良かった。 「 何だそれは…」 けれど如月にはいい加減に流されたと感じたらしい。不快な表情を露にして、龍麻のことを見据えてきた。 しかし、そんな二人の雰囲気を壊したのは、やはり雛乃だった。 「 あの、よろしければ私がこれからお夕飯を御作りしますけれど…。緋勇様もご一緒に」 「 わっ、ホント!?」 優しい一言に、龍麻の顔がぱっと明るくなった。 「 いや、それはいい」 けれど喜ぶ龍麻の前に立ちはだかって、如月が一言言った。 「 雛乃は暗くなる前に帰りなさい。そんな事まで心配しなくても良いから」 「 えっ…。でも私なら大丈夫ですわ」 「 構わない」 はっきりと言う如月に、龍麻は驚いて黙りこんだ。あんな冷たい言い方をしなくてもいいのにと思う。 けれど、雛乃の方は如月の言い様に慣れているのか全く平然としており、二度断られるとあっさりと引き下がり、元の笑顔のまま、素直に退散して行った。 穏やかなオーラを持つ雛乃がいなくなると、部屋の中は一気に暗くなった。 「 …何で断るわけ? 俺がいるから?」 「 何故龍麻がいると断るんだ」 「 つまり、翡翠様は雛乃ちゃんが自分以外の誰かのために料理をするのが気に食わない。彼女の手料理を俺に食われたくなかったんだ」 「 …そういう風にとるのか」 「 それ以外、何があんだよ」 「 まあいい。どう思おうが龍麻の勝手だよ」 「 何だよ、その言い方!」 イライラして龍麻は声を大きくした。何だか分からないが、イライラした。雛乃ちゃんといる時は、彼女の素直さ、可愛らしさ、ひたむきさがとてもまぶしくてどんどん惹かれてしまって。一緒にいて楽しかったと思えた。 なのに、今は。 如月は龍麻の向かいに座ると、自分の分のお茶を淹れ始めた。こぽこぽと温かい音がして、龍麻も何となくそちらの方へと意識を向ける。 「 俺、そういえば今日、壬生に会ったんだ」 何か話そうと思って龍麻は口を開いた。 「 で、如月のことをホンモノの『人間嫌いだ』って言ってたよ」 多少誇張があったが、話というのはそうした方が面白いから、そうして話した。しかし、依然として如月はだんまりのままだ。 「 俺もそうかなって思った。始めは壬生と似てるって思ったけど、壬生って冷たそうでいて、実は熱い奴じゃん。でも、お前って見た通りのまんま、いっつも冷めた態度ばっかだし」 如月はまだ口を開かない。龍麻も段々ムキになってきた。 「 嘘はつくしさ!」 ぴくりと肩を揺らして、ここで如月が龍麻を見た。 「 僕がいつ君に嘘をついたんだ」 そしてやっと声を出した。それで龍麻の熱も高くなった。 「 ついただろ! 人間嫌いの奴が何であんな可愛い彼女作ってんだよ!」 「 僕は確かに基本的に人と関わるのが好きじゃないが、人間嫌いだなどと言ったことは一度もない。それに雛乃を自分の彼女だと言ったこともない」 「 じゃ、隠してたって言い換える」 「 何をだ」 「 雛乃ちゃんの存在をだ!」 「 隠してなどいない。別に話す必要などなかったから話さなかっただけだ」 「 へえ、そっか! 俺との関係って、やっぱし自分の彼女のことを話すだけの間柄じゃないんだ! そりゃそうだよな! ただの常連客に彼女の話なんかいちいちしないもんな!」 「 龍麻。君は何を怒っているんだ」 「 怒ってなんかいない!」 「 怒っているじゃないか。大体、雛乃は彼女じゃないとさっきも言った。雛乃が自分でそう言ったのか」 「 …幼馴染だって」 「 その通りさ」 「 お前がそう言えって言ったんじゃないの」 「 …龍麻」 「 ああ! もういいよ、こんな話!」 胸のむかつきを抑えようとしながら、龍麻は自らの雑念を振り払うように、投げ捨てるようにそう言った。 「 君がいいというのなら、いいさ」 如月も素っ気なく言った。その態度にいたたまれないものを感じながらも、けれど龍麻は涼し気な顔でお茶を飲むこの如月という男に、今どうしても構ってもらいたかった。 聞いてもらいたかった。 「 如月」 だから、名前を呼んだ。そして相手が返事をする前に続けた。 「 俺、何でこの街に来たんだろ…」 「 ……」 「 俺、ここで一体何してんだろ…。この東京にいる鬼や悪霊を退治するために俺って奴が必要なの? でももしそうなら…何で俺にも如月みたいな、そうだっていう決定的な験<しるし>がないんだろう」 「 験?」 「 『お前は選ばれたものなんだ』っていう、確かな『何か』だよ。こんな曖昧な《力》だけじゃなくて、それこそ如月みたいにしっかりとした家計図なり、俺の運命を教えてくれる誰かなりが出てきてくれても良さそうなもんじゃないか。なのに、誰かに呼ばれたという気はしても、その『誰か』は一向に俺の前には現れてくれない。鬼なんか倒したって、何も終わらない。何も始まらない」 「 ……」 「 別にそんなものはなくてもいいんだ。あってもいいけど…。でも、何か中途半端だ。気持ち悪いんだよ…」 「 独りで悶々と考えているからだ」 「 そんなことないよ。俺は迷えば、いつだってこうやって、如月や壬生に訊いてるだろ」 「 …仲間は多いほどいいんじゃないか」 「 え?」 「 たとえば…あの真神の4人とか」 「 ……」 「 彼らと苦しみを共有すれば、君は今よりもっと楽になれるよ。元々、君は彼らと共にあるはずだった、そう思う。それがどうしてこんな事になったのかは分からないがね」 「 如月はそうしてほしいのかよ…」 「 何だって?」 「 …そういう風に聞こえるよ。前も言ったよな。あいつらに自分の力のこと言えって。俺にこうやって愚痴られるの、ウンザリしてるわけ」 「 …龍麻。さっきから何をイライラしているのか知らないが、そういうことを言われると、いい加減僕も頭にくる」 「 如月が悪いんだろ!」 「 そうか。それじゃ僕のどこが悪いのか、はっきり言ってみてくれ」 「 …結局、如月は俺のことなんかどうでもいいんだ」 「 何だって?」 「 他人だもんな、所詮」 勢いのままそう言った後、龍麻は顔をあげた。 そこには何とも表現しようのない顔をした如月がいて―。 龍麻はカッと身体の中が熱くなるのを感じて、立ち上がった。 「 俺、帰る…っ!」 「 龍麻…」 「 こんな所、もう用ないから! つまんないし! 如月だってそうだろ! 今からでも雛乃ちゃん、呼び戻せば!」 「 龍麻、何なんだ、君は!」 如月も珍しく大きな声を出して立ち上がった。目線が対等になると、龍麻は途端に息苦しくなり、くるりと如月に背を向けて、部屋から出て行こうとした。 「 龍麻!」 しかし、素早く如月に手首を捕まれ、引きとめられた。 その手の感触に、龍麻は何故か胸が痛んだ。 「 は、なせよっ!」 「 本当に帰るのか」 「 そう言っただろ!」 「 龍麻。きちんと僕の顔を見て言うんだ」 「 何でだよ、離せって!」 龍麻は自分のことをまるで悪いことをして怒られているような子供のように感じて、何とか如月の手から離れようと乱暴に自らの腕を振った。 けれども、如月の拘束はより強くなり、今度は肩まで捕まれて、壁に身体を押しつけられてしまった。その際、出し抜けに頭を軽くぶつけてしまう。 「 痛ッ…!」 「 龍麻、僕を見ろ」 しかし、壁に頭を打ち付けた龍麻に、それをした張本人は謝ることすらしなかった。依然厳しい表情のまま、先刻の命令を龍麻が守るのかどうかと、ただ待っている感じだ。 「 ……」 如月の視線が痛くなるのを感じて、龍麻は恐る恐る如月の方へ視線を向けた。 真っ直ぐ射るような視線がそこにはあった。…そういえば、初めて出会った時もこいつはこんな眼をしていたなと龍麻は思った。 そして如月の方も、ようやく自分の方を向いた龍麻に拘束の力を緩めた。相変わらず手首は掴んだまま離さなかったが、先ほどの激しさと強さは既に消えていた。 それで龍麻もようやく言葉を出すことができた。 「 ……ごめん」 謝った。如月に軽蔑されるのだけは避けたかった。 「 悪い。本当にごめん。…俺、今日一日イライラしてて…」 「 ……」 「 何か分からないけど…頭、ごちゃごちゃしてて…」 「 …自分の非が分かっているのなら、それでいい」 如月はそう言って、それから優しく龍麻の頭を撫でた。そして、驚く龍麻にそっと言った。 「 僕の方こそすまなかった。…痛かったかい」 「 へ、平気…」 いつもの如月だった。 龍麻は妙に安堵して、そのままその場にへたりと座りこんだ。 如月もその横に座り、そうしてそっと龍麻の髪の毛に自らの指を絡ませた。 再び部屋の中に静寂が訪れた。 気の早い蝉が辺りで鳴き始めるような季節だった。じわりと熱い気温を肌で感じ、龍麻はふっと息を吐いた。 「 京一が…」 そして、龍麻は口にしていた。 「 京一が、俺のこと好きだって」 「 ……」 「 キスまでされた」 「 ……」 「 気色悪かった…けど、嫌じゃなかった」 如月がどんな顔をしてこの話を聞いているのだろうと龍麻は思ったが、かと言って顔を上げる勇気はなかった。 「 京一はいい奴だ。美里さんたちだって。…ホントはみんなと一緒にいたらきっと楽しくて心強くて、良いと…思う。でも、俺変に意地張っちゃったんだな。自分から仲間になるんじゃなくて、向こうから言ってきてほしい…なんてさ」 馬鹿みたいだろ? そう言って龍麻は一人で笑った。 「 でも、でもさ…。あいつらは自分の《力》のことを俺に話してはくれない。ずっと一緒の壬生だって、本当の自分を見せてくれない。そういうのってショックだよ。たとえ…俺のことを考えてくれていたんだとしても」 好きだから、なおさら。 龍麻はそう言って、また一人で笑った。 「それに、如月だって…」 「 僕が何だ」 「 雛乃ちゃんみたいな可愛い子がいて、ずるい」 「 …馬鹿馬鹿しい」 「 何が!」 かっとなって龍麻は如月に詰め寄った。 「 だってそうじゃないか。自分はいつも独りだみたいな顔してさ!」 「 君は僕がいつも独りでいたらいいと思っていたのかい」 「 別に…でも、俺、自分が独りだから…。お前にも、在る意味そういうキャラを期待はしてたかも」 「 …それが馬鹿馬鹿しいと言ってるんだ」 如月はここで自分に近寄った龍麻の腕をぐいと掴んだ。その痛みと、突然のことに龍麻は思い切り面食らって体勢を崩した。 そこを如月に抱きとめられる。 「 き、如月っ…?」 「 僕自身はそんな事を望んでいない。…君と出会ってからは」 「 え…」 問い返して、でもその答えは返ってこなかった。 龍麻に向ける言葉を出すはずの唇が。 龍麻自身のそれを捕らえたから。 「 ……!」 優しく重ねられたその唇は、やがてもっと深く龍麻を求めるように、何度も角度を変えて下りてきた。如月の熱を感じ、また龍麻は自分自身の熱が上がるのを感じ、思わずびくりと身じろいだ。 けれど、龍麻を抱く如月の腕の力は一層強まって離されることがなかった。 「 んっ…ぅ…!」 息を吸いたいと唇を開いた矢先、如月に舌を差し込まれる。自分の舌を絡めとられて、 再び意識が遠のきかける。 ぎゅっと如月の腕を掴んだ。 「 ……」 やがて長い長い口づけが終わって。 まだ近くに如月の唇を感じていたが、強い視線を感じて龍麻は瞳を開いた。案の上、自分を見つめる端整な顔の男の姿が映る。 けれど向こうは何も言わない。ただじっと見つめてくるだけで。 どうしよう。 自分の中の何かが。ひどく、熱い。 「 龍麻」 その時、如月が呼んだ。いつもと同じ表情のままだった。 「 好きだ」 そして、そう言った。 「 う、そだ…」 掠れた声でそれだけを言うと、如月の瞳が揺れた。ぎっと腕を捕まれて、その痛みに顔を歪めた。 「 い、痛…っ」 「 君は…そうやって僕の気持ちを流してしまうんだ?」 「 だ、だって…」 「 君は僕の言葉が信じられないのか…」 暗く、翳った声だった。ぎくっとして顔を上げると、そこには怒ったような顔の如月があった。 そしてその直後、肩を押され、押し倒されていた。 「 如月…っ?」 「 信じさせてあげるよ」 言って如月はもう一度龍麻に深い口付けを与えた。上から覆いかぶさって龍麻の手首を掴むと、逆らえない状態の龍麻に何度も貪るようなキスを重ねた。 「 んっ…! や、やめ…如…」 けれど声は返ってこなくて。 龍麻は如月の行為が怖くなり、何とか抗おうとした。けれど、如月によって自らのシャツを縦に引き裂かれ、露になった胸に唇を当てられて。舌で刺激を与えられると。 「 ひ…あっ…!」 龍麻は無意識のうちに敏感に反応していた。ぴくんと背中が反り上がって、上ずった声が口から漏れた。 「 あっ…!」 こんな感覚。 こんな自分。 初めてだった。分からない。そして、その感覚を自分にもたらしてくる如月の眼が。 何だろう、ひどく胸が痛い。 「 如月…」 不安になってその名を呼ぶと、如月は龍麻への愛撫を止めてじっと龍麻の方を見つめてきた。そして、瞳を閉じる龍麻に、促すような瞼へのキスをした。 龍麻が視界を開くと、如月はそんな龍麻の耳元へ唇を寄せ、そっと囁いた。 「 龍麻…君を愛してる」 それから再び、如月は龍麻に口付けをした。 |
To be continued… |
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