第12話 パーティ再編成!?

「 わ、わああっ!?」
  朝、龍麻は目覚めた瞬間、その事態に奇声を発した。
「 ひーちゃん、どうしたッ!?」
  その声に、バーン!と部屋の扉を開いて一番に駆けつけてきたのは、京一。
「 ひーちゃん、どうしたのッ!?」
「 龍麻、何かあったのかッ!?」
  間髪入れずに桜井と醍醐もだだだと龍麻の部屋に駆け込んでくる。皆まだそれぞれの部屋で眠っていたのだろう、手に各々の武器を持ってはいるが、格好は寝間着のままだ。(醍醐は武道家だから素手だけど)
「 あわ…あわわわ……」
「 ひ、ひーちゃん…」
  上体を起こしたまま、ベッドにいる「彼女たち」を見て固まっている龍麻。
  そんな龍麻に、京一たちは呆気に取られた顔をした。
「 う〜ん…むにゃ…」
「 ……うふふv おはよう、龍麻」
「 み、美里…。それにマリイまで…」
  龍麻が奇声を発した理由。
  それは夜眠る前にはいなかったはずの美里とマリィが、今は自分を両脇から挟みこむようにして、同じベッドで横になっている…その光景を目にしてしまったからだ。マリィは龍麻の驚いた声にも気づかず、まだ眠りを貪っている。龍麻にしがみついた格好で。
  ちなみに美里も龍麻の腰のあたりにしがみついている。
「 どうしたの、龍麻。悪い夢でも見たの?」
「 あああ…あの…だって…」
「 葵〜! い、一体いつの間にボクらの部屋を抜け出してひーちゃんの部屋にッ!?」
「 貴女が眠った後よ、小蒔」
「 眠った後じゃないよ〜もう! あああ、何でボクとした事が葵の脱走に気づかなかったんだろう!!」
「 ふふふ…何故かしらねラリホー…v」
「 ………あの、その…そろそろ手を放して…」
「 美里! ひーちゃんから離れろ! ひーちゃん、嫌がってるじゃねえかよ【怒】!」
「 そ、そうだぞ美里。そういうのは、何だ…フェアではないと俺も思うわけで…」(ごにょごにょ)
「 あら、だってマリィが龍麻もいないと寂しくて眠れないって言うのですもの…。今までこの子…親の愛情を全く受けずに育ってきたでしょ」
「「「………」」」
「 だから私…せめてマリィのそんなささやかな願いをかなえてあげたいって思ったの。本当にそれだけだったのよ、龍麻…?」
「 そ、そうだったのか、美里…」
「 ひーちゃん、納得すんじゃねーって!!」
「 そ、そうだよ、ひーちゃん! キミって人は、つくずく世間知らずだね!!」
「 と、ともかく。龍麻にそういう刺激はまだ早いぞ、美里! この俺とて我慢しているのだからー」
「 はあぁー!?」←京一の怒りのこもった声
「 だ、醍醐クンまで…へ、変態だ……」(呆然とする桜井小蒔18才)
「 はっ!? い、いいいいや、俺は今一体何を言おうとしたんだッ【焦】!?」
「 うふふふふ……。そんな事だから、いつまでものろのろとした事はしていられないと思ったのよ…」
「「「「………」」」」(牽制しあう4人)
「 あ、あの…? み、みんな…?」←1人蚊帳の外の龍麻
「 う〜ん。ドウシタノ・・・?」
  その時、ようやくこの騒ぎに気づいたマリィが目をこすりながら身体を起こして皆を見つめた。
  それから寝ぼけ眼のまま、マリィは龍麻の顔を見てにっこりと。
「 龍麻パパ! オハヨウ!!」
「 な…ッ!?」
「 うふふ…。おはよう、マリィ」
「 オハヨウ、葵ママ!!」
(((調教されている…!!)))←3人の心の声
「 うふふふふ……。さあ、皆目覚めたところで朝食にしましょうか? ねえ、龍麻?」
「 え? あ、う、うん……(汗)」


  秋月王国に来てから3日目。
  まだ3日だというのに、次から次へと色々な事が龍麻の身には起こっていた。
  秋月王に会えるまで、その間はただ町の見物をして過ごそうと思っていただけであるのに。
  何やら変わった《力》のある者がちが次々と目の前に現れる。
  そして、昨日の呪い騒ぎである。その事件の一役を担っていたマリィはどうやらジルと名乗る者に操られているだけのようだったが、他にその者に動かされているというイワンとトニー。
  この2人は、昨日の捜索では見つける事ができなかった。
「 マリィが俺らの仲間になった事に気づいて、一旦は引いたのかもしれねえな」
  宿屋の食堂で朝食を囲みつつ、京一がそう意見を述べた。
  醍醐も頷く。
「 うむ。向こうが俺たちの存在には気づいているのは間違いないだろう。相手は2人のようだし、一度そのジルとやらの指示を仰ぎに自分たちのアジトへ引き上げた事は十分考えられるな」
「 じゃあ今日はどうするの? そいつら、探しようがないよね?」
「 マリィ、お前は奴らのいる場所、本当に知らないのかよ?」
「 ウン…。マリィ…マリィ、何も覚えてナイ…マリィ…怖い…」
  マリィは美里のスカートの裾を引っ張り、べそをかいた。
  龍麻はそんなマリィの姿を見て、皆に言った。
「 俺…会ってもらえるかは分からないけど、今日王様のところへ行こうと思うんだ」
「 えっ。でも、ひーちゃん。王様は勇者候補には明日会うって言ってるんだよ?」
  桜井の言葉に頷きつつも、龍麻は他の仲間たちにも視線をやって後を続けた。
「 でも、この国の緊急事態でもあるんだし…。その、この国の人たちに呪いをかけようとしている奴のことは早く知らせた方がいいと思うんだ」
「 そうだな…。俺たちで何とかできるならそうしたかったが、事は複雑になりそうだしな」
  醍醐が龍麻の発言に納得したように頷いた。

「 じゃあ〜ひーちゃん〜。選んで〜」

「 !?」
「 テ、テメエ、いつの間に…!」
  その時、不意に龍麻たちの背後に立ってそう言う者の姿が…。
「 た、確か占い師の裏密ミサさん…?」
「 いや〜ひーちゃん〜。ミサちゃんって呼んで〜」
「 ……(汗)。あの、カードをどうもありがとう…。何に使うかよく分からないけど…」
「 うふふ〜。あのカードには〜既に〜炎のカードが追加されているはず〜。後で確かめてね〜」
「 え…?」
「 そんなことより、選ぶってのはどういう事だ?!」
  京一が皆の疑問を代弁すると、裏密ミサはにた〜と不気味な笑みを浮かべてから言った。
「 パーティは最大5人までなんだよ〜。それ以上になると〜酒場で登録して〜待機ってなるの〜。それがここでのDQの掟〜」
「 な、何を分からない事言っていやがる…!?」
「 えええ、皆で行動しちゃいけないの!? 5人って…この中で1人だけがあぶれるって事!?」
  桜井が衝撃を受けた顔で龍麻を見やる。
  龍麻は眉間に皺を寄せたが、裏密に何か逆らい難いものを感じて何も言えずにいた。
  するとすかさず美里。
「 龍麻。それじゃあ私とマリィは連れて行って。私たちは離れてはいけないもの。そうでしょ?」
「 マリィ、龍麻パパと一緒にイル!」
「 そ…っ! な、ならひーちゃんボクも連れて行ってよ!! ボクがいなかったら誰がひーちゃんの貞操を護るのさ!?」
「 ご、ごほごほ…っ。それなら俺が…」
「 さり気なくエロい醍醐クンは黙っててよ【怒】!!」
「 さ、桜井…お前…(汗)」
「 う〜ふふ〜。もう既に〜仲間割れ〜? 総受けパーティは怖いねえ〜」
「 ………ひーちゃん、どうすんだよ?」
  京一がため息交じりに聞いた。
  龍麻はしばらく悩んだ後、思い切って口を開いた。
「 俺…!」


+++


  秋月王国城門前――。
「 やっぱでっかい国の城ってのは間近で見るとすげーな」
「 うん。俺、多分もう一生見る事ないだろうなあ…」
  龍麻がそう言うと、横にいた京一はにやりと笑って言った。
「 何言ってんだよ、世界を救う勇者様が。これから幾らでもデカイ国回るんだろ?」
「 きょ、京一までそういう事言うか…っ。俺は違うよっ。王様に会って、俺が勇者じゃないって分かったら、俺は村に帰るんだから」
「 ……村にねえ」
「 そうだよっ」
「 …………」
  龍麻のその台詞に京一は何事か言いたそうな顔を見せたが、しかしすぐに改まると。
「 よっし! じゃあ、さっさと用を済ませようぜ!」
  そう言って、龍麻の背中を力強く叩いたのだった。



  龍麻は旅の仲間、桜井、醍醐、美里、マリィと一旦別れた!
  龍麻は仲間を京一だけとした!
  《現在の龍麻…Lv10/HP65/MP35/GOLD5291》
  《状態異常…龍麻は「嫉妬の炎」という呪いにかかった! しかし龍麻はこの呪いの存在にまだ気づいていない! この呪いは教会か、レベルの高い魔法使いにしか解く事ができない!!》


【つづく。】
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