第19話 ローゼンクロイツ攻略1

  ローゼンクロイツ城、表門。
  モンスターの出現!!
  戦闘開始!!
「 グアアアーッ!!!」
  恐ろしいモンスターゴーレムAが現れた!!
  恐ろしいモンスターゴーレムBが現れた!!
「 おいおい、フツー主人公がレベル11の時にゴーレムなんか出るか?」
「 村雨! 感心していないで龍麻様の前に立ちなさい!!」
  芙蓉が村雨を叱咤した!!
「 んあ? しかしこんな奴ら、先生とお前らだけで十分だろ、なぁ先生?」
  しかし村雨は遊んでいる!!
  村雨は遊び人なので気が向いた時にしか攻撃に参加してくれない!!
「 よ、よーし…! 俺だって…!」
  龍麻の攻撃!!
「 グハ? グハーッ!!」
  ミス!! モンスターはダメージを受けない!!
「 わーやっぱりレベルがまだ足りなかったー!!」
  龍麻は戦意を失った!!(おい)
「 龍麻」
  その時、龍麻の前にすっと壬生が出て来た!!
「 龍麻、僕がやるよ」
  壬生の攻撃!!
  壬生はグループ全体に有効な攻撃魔法を唱えた!!
「 グアアアアーッ!!!」
  ゴーレムAは90のダメージを受けた!!
  ゴーレムAを倒した!!
「 グアアアアーッ!!!」
  ゴーレムBは75のダメージを受けた!!
  ゴーレムBを倒した!!
  45の経験値を獲得、340ゴールドを手に入れた!!
  戦闘終了。


+++


「 すごいな、壬生! 強いな〜!!!」
  龍麻は1人であっさりと門番のゴーレムを倒してしまった壬生を尊敬の眼差しで見つめた。
  壬生はそんな龍麻に少しだけ笑んでみせる。
「 僕はずっと1人で戦ってきたからね…。複数を相手にするのには慣れてるんだ」
「 ふーん…。でも壬生の魔法は本当カッコいいっ。なあ、俺もいつかあんなの使えるようになるのかなっ?」
「 なれるよ、龍麻なら」
「 そ、そうかな…? へへへ…よーし、頑張ろうっ」
「 ……と、やる気が出てきたところで、先生?」
「 え…あ…!」
  龍麻は先に城の扉を開けて中へと踏み出していた村雨に呼ばれ、あっと声を上げた。
  村雨が不意に自分に向かって投げてきたものがあったからだ。
  それは金ピカに輝く鍵だった。
「 これは…?」
「 今のゴーレムが崩れ落ちた所にあったのさ。持っておきな、役に立つもんだろ」
「 う、うん…! ありがとう村雨!!」
  龍麻は金色の鍵を手に入れた!!
「 龍麻様…! 誰か来ます…!」
「 え…!」
  芙蓉の緊張感のこもった声に龍麻ははっとして顔を上げた。

「 …………」

  城の中に入るとすぐに、何もない開けたホールの真中に少女が1人立っていた。
  目を閉じたまま、けれど確実に龍麻たちを「見て」いる事が龍麻には分かった。
「 き、君は……?」
「 龍麻、下がって」
  壬生がすっと片手を差し出し龍麻を自分の後ろへと下がらせた。
  芙蓉も同様である。壬生の隣に立ち、じっと相手を厳しい眼で見据えている。
  村雨は興味のなさそうな顔で灯りのない真っ暗な城内へ視線をやっていた。
  龍麻は背の高い壬生に隠されながら、必死にその後ろから少女を覗き見た。
「 ………誰ノ許可ヲ得テココニイル」
  少女が静かに口を開いた。
「 え……?」
  否、口は開いていない。しかし龍麻には少女が確かにそう言った声が聞こえたと思った。
「 心の声で僕らに問い掛けているようだ」
  壬生が言った。
「 心の声…?」
「 龍麻は聞かなくて良いよ。僕がこの子を倒す」
「 え…壬生…?」
  いかにも華奢で力のなさそうな少女である。
  けれど壬生が容赦のない声でそう言うのを聞いて龍麻はぎょっとした。
  けれど芙蓉もぐっと戦闘の態勢をとる。
「 ちょ、ちょっと…壬生…芙蓉さん…?」
「 龍麻様、お下がり下さい!」
「 ちょっと待ってよ、この子は…?」
「 おい先生よ」
  すると村雨が呆れたように言った。
「 まさかアンタ、こんな怪しげな城内に突然現れた奴を、見た目だけで敵じゃないって言う気かい?」
「 で、でも……」
  マリィの事があったからだろうか、龍麻は躊躇していた。
「 ちょっと待って…。ねえ、君、名前は…?」
「 龍麻様!!」
「 龍麻…?」
「 やーれやれ、困った勇者様だ…」
  三者三様がそれぞれの言葉を漏らしたが、それでも龍麻は少女に更に一歩歩み寄ると言った。
「 ねえ、君名前は…あるの…?」
「 …………ワタシノ」
「 うん」
「 ワタシノ、ナマエ…」
「 うん…!」
  しかし龍麻が頷きながら、更に一歩歩み寄った時だった。
「 龍麻!!」
  壬生が叫んだのと同時だった。

  ガッターン!!!

「 わ、わああああーッ!?」
  突然床がパカリと開き、龍麻はそのまま仕掛け罠によってマッサカサマに下へと落ちて行った!!
「 わあわあわあわあ死ぬーッ!!!」

  ピューン!!!!




  ………ヒューンンン………



  ………ウゥンン…………


  ドッスン!!


「 いってえ……!」
  龍麻は城の最下層にまで落ちてしまった!!
  しかし勇者なので死にはしない!!
  ただ精神的ショックは受けた!! 体力にも影響、10のダメージを受けた!!
「 ……うう、失敗した……」
「 龍麻様!!」
「 あ…芙蓉さん!?」
  その時、上から芙蓉がやってきた!!
「 龍麻、大丈夫かい?」
  壬生も来た!!
「 フー、何だってこんな湿っぽい所に落ちるかねえ…」
  村雨も後を追ってきた!!
「 み、みんな…来てくれたの…?」
「 そりゃーリーダーが行く所にはついていくだろうがよ。なぁ、壬生?」
「 龍麻、怪我は?」
  壬生が屈みこんで龍麻の手を取った。
「 う、うん…。大丈夫だよ」
「 ……君は無茶をする人だね」
  壬生はつぶやくようにそう言ってから、龍麻の顔がよく見えないと思ったからか不意に片手を挙げ、魔法を唱えた!!
  龍麻たちの周辺が仄かに明るくなった!!
「 お、こりゃ便利だな」
  村雨が感心したように言った。
  芙蓉は警戒したように辺りを見回す。あるのは石の壁だけだ。四方の角にはそれぞれ上へ昇る為の階段も見える。
「 ……ここは城の中とはいえ、奴の幻術で迷路のように複雑な造りに替えられているはずです。何とか元の場所に戻る道を見つけなければ…」
「 まあ、そう焦るな。ゆっくり行こうぜ?」
「 村雨! お前はふざけるのも大概に…!」
「 先生はどうだい? ちょいと休みたくなったり…してんじゃねえか?」
「 え…俺…?」
「 敵の居城で一休みするなんて聞いた事ないけど」
  壬生が呆れたように言い、芙蓉がぷりぷりしている中、けれど村雨は依然として涼しい顔をして龍麻を見やった。
  龍麻はそんな村雨を見てから自分と共に屈みこんでいる傍の壬生を見つめ、最後に芙蓉を見やった。
  そして、ふと。
「 …そういえば、お腹減った…」

  ぐううううう……。

「 た…龍麻様……?」
  芙蓉がぽかんとして思い切り腹の虫を鳴らした龍麻を呼んだ。
  すると途端、村雨がおかしそうに笑声を立てた。
「 くくく…っ。そうだろうともよ、先生。アンタが元気にならないとこの先へは一歩だって進めない。おい壬生。お前、何か持ってるか?」
「 ……何かって」
  壬生は呑気な村雨とそれに思い切り乗ってしまったような龍麻に面食らった様子で言い淀んだ。
「 あ、そうだ、俺これ持ってる!」
  しかし龍麻が懐をごそごそと探り取り出した物を見た時にはさすがの壬生も。
  そして仲間たちも。
「「「…………」」」
「 ほら、リンゴ! これね、小蒔ちゃんから貰ったんだ! 皆で分けよう!」
「 ………龍麻様」
「 俺ァ遠慮しとくぜ」
「 え、何で??」
「 ……ふっ」
  壬生は思わず笑みをもらした。
  龍麻は壬生の初めて本当に笑ったようなその様子に驚いた顔を向けた。
  壬生はそんな龍麻にあっさり言った。
「 ……龍麻。そのリンゴ、腐ってるよ」



  龍麻は金の鍵を手に入れた!!
  龍麻は仲間が遠慮する中、真っ赤なリンゴを食べた!!
  龍麻のHPが回復した!! 腐ってても食べれば回復するのである!! (しかし実は腐る前に食べると幸運な事が起きるというアイテムだった!!)
  《現在の龍麻…Lv11/HP65/MP34/GOLD6382》


【つづく。】
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