第26話 導かれし勇者…

  秋月王国から東に位置する《東の洞窟》。←まんま
「 ほらほら、龍麻。そっちは行き止まりだから、こっちよ?」
「 ひーちゃん、そっちは沼地だ。踏むとダメージを受けるから行くな」
「 …………」
「 龍麻、ここね、宝箱があるのよ。うふふ…誰にも見つからないように土の中に埋めて隠しておいたから掘り返しましょ!」
  美里は宝箱を見つけた!! 美里は宝箱を開けた!!
  何と石の斧を手に入れた!!
「 ………ちっ」(密かに舌打ちの美里)
「 おーい、ひーちゃん、早く来いよ! あっちが奥の道だぞー!!」
「 あ、龍麻。道の陰には落とし穴があるから気をつけてね」


「 だーっ!! ちょっと2人ともっ!!!」


  龍麻はヒステリーを起こした!!
  ストレスがたまり、体力にも影響。3のダメージを受けた!!
「 ……? 何だ、ひーちゃん、どした。腹でも痛いのか?」
「 京一君、龍麻を貴方と一緒にしないで。きっとたくさん歩いて疲れたのよね。少し休憩する?」
「 違うっ! どっちも違う違うちがーうっ!!」
  龍麻はまたまた叫び声を上げた。
  するとその声に誘われ、モンスターがわらわらと寄ってきた!!
「 いっ…!?」
《 グハアアアー!!!》
  モンスターの群れが現れた!!
「 わわ…っ」
  龍麻は怯えた!
《 グハッハー!!》
  モンスターたちは嬉しそうに龍麻に襲いかかろうとした!!
  しかし!!
「 ん……?」
「 あら……」
《 !!? ビクゥーッ!!!》
  モンスターたちは京一と美里を見ると慌てて逃げ出した!!
  戦闘終了。←戦ってねえ
「 何だアイツら…。襲ってこないなら吠えてくんなっての」
「 そうねえ…。どうせなら回りこんでやっつけてしまえば良かったわね。そうすれば龍麻のレベルも上がったし…」
「 あ、そういやそうだな。しまったな」
「 …………」
「 しっかし、そういやモンスター、全然出てこねえな。これじゃひーちゃんのレベルが上がらねえぞ」
「 そうねえ。いっそのことこっちから捕まえて無理やり戦闘を…」
「 だから…だから、2人とも〜【怒】!!」
  呑気なコメントをする京一と美里に、龍麻はめいっぱいの怒声を上げた。
  2人はそんな龍麻をきょとんとした目で見つめた。
「 ……どうした、ひーちゃん。何怒ってんだよ?」
「 そうよ、龍麻。京一君が何か気に触る事をしたのかしら?」
「 お前。美里。テメエは自分が何かしたのかもって思わないわけか?」
「 思わないわね」(にっこり)
「 もうっ! いいから2人共黙れっての!!」
  龍麻は京一と美里をびしりびしりと指さして不毛な会話を制した。
  ぜいぜいと息を切らせ、それからぶうと口を尖らせる。
「 何なんだよ、さっきからさ! ここの洞窟に入ってから、俺、2人の誘導で思いっきりラクしてるじゃん!」
「 はあ…」
「 それがどうしたの、龍麻?」
「 どうしたの、じゃないよ! 2人が俺を探すために先にこの洞窟にまで来てくれた事は、それは勿論感謝してるよ! だ、だけどさ…! これ、こんなのじゃ、試練でも何でもないじゃないか! 俺は…迷う事なくこんな奥まで進んでこられて、おまけに宝箱の在りかまで教えてもらって…」
  そんなのはズルイと龍麻は思うのである。
  この洞窟のどこかにあるであろう、【勇者の証】を発見し、秋月王に献上すること。
  それを自力でやれて初めて、龍麻は自分に自信が持てると思っていたのだ。
  だからこそ、この洞窟には1人で来ようと思っていたというのに。
「 ……2人共強過ぎるよ…。こんな洞窟楽勝なんだろ…。これなら、2人がさっさと勇者の証を取って帰ってくれば良かったじゃないか…」
「 まあ、龍麻……」
「 ひーちゃん。くだらない事で悩むなよ」
  美里は一応龍麻に申し訳ないような表情をしてみせた…が、京一の方は別段龍麻の苦悩を何とも感じていないようで、ぽりぽりと頭をかき、ため息すらついてみせた。
  その態度に龍麻はむっとして京一を睨みつけた。
「 な、何がくだらないんだよ! 俺、俺は真剣に…!」
「 分かってるよ。ひーちゃんが真剣なことはさ。けどよー。俺らに頼ることの何が悪いんだ? 俺らはひーちゃんについて行きたくて好きでやってる事だし。ま、俺らみたいな仲間を持てたのも、一重にひーちゃんの人徳?ってやつじゃねえの。それも才能だろ?」
「 そ、そんなの…! そんなのは違う!」
「 違う?」
「 そう…そうだよ! 違う!」
  ムキになってそれだけ叫んだものの、龍麻は後の言葉をすぐに見つけられずにぐっと押し黙った。
  悔しくて多くのことを考えられなかったというのもある。
  そんな龍麻に今度は美里が考えこむような仕草をしながら言った。
「 でも龍麻…。京一君なんかに同調したくはないけれど、貴方がこの事に引け目を感じる必要なんかないと思うわ。だってこの洞窟は龍麻でなければ攻略できないのですもの」
  美里の言葉に龍麻は「え」と顔を上げた。
「 それ…どういう事?」
「 行けば分かるわ」
「 ああ。行けば分かるな」
  京一もにっと笑って頷いた。
  龍麻は訳が分からず沈黙したままだったが、美里は尚も続けた。
「 それにね、龍麻。《勇者の証》がどんなものかは知らないけれど、私たち、きっと貴方がいなければこんな何もない洞窟には多分一生来なかったと思うわ。勇者というものに興味がない者にとってここは…本当に《何もない所》と感じるもの。私には分かるの」
「 何も…って、美里はもう1番奥まで行ったの?」
「 ええ。1番奥にあった【門】は開けていないけれど」
「 俺ら、みんな最後まで行ったんじゃねえ? 何せひーちゃんがそこにいると思ったからな」
「 …………」
  龍麻にしてみれば、ここのモンスターは強いと思う。怖いし、面と向かうと震えてしまう。
  京一と美里がいるからここまで来られたようなものだ。
  それなのに他の皆はもうこの洞窟を最後の方までらくらく攻略していたとは…。
「 何か俺。本当に情けない…」
  龍麻はハアと深くため息をついた。
  そんな龍麻を美里はにっこりと微笑んで言った。
「 そんな事ないわよ、龍麻。さっきも言ったでしょう。この洞窟、最後は貴方がいなければ攻略できないのだから。あ、そうそう、ところでここにも宝箱を隠しておいたのよ。あったわv」
  美里は宝箱を見つけた! 美里は宝箱を開けた!!
  何とくさりがまを見つけた!!
「 ………ちっ」(またまた使えないオーラ全開)
「 邪魔くせーもんばっかだなあ、ここの洞窟の宝。ひーちゃん、こんな荷物になるもんいらねーだろ。捨てちまえ」
「 え…っ。でも美里がせっかく…」
「 いいのよ、龍麻。私もいらないから」(きっぱり)
「 そ、そう…? それじゃ、さっきの石の斧も…」
  龍麻は石の斧とくさりがまを捨てようとした!!
  しかし!!
  デロデロデロデロドゥールッ!!(不吉な音楽)
「 な……っ!?」
  龍麻はアイテムを捨てられない!! 龍麻が捨てようとしたアイテムは再び龍麻の荷物入れの中に収まってしまった!!
「 な…何だあ…?」
「 ……? ひーちゃん何やってんだ? 捨てないのか?」
「 す、捨てようと思ったんだけど…何か…【離れ難い】オーラを感じて…捨てられない…(汗)」
「 はあ…?」
「 まあ龍麻。龍麻って手に入れた物はとことん大事にするタイプなのね。ステキよ…v」
「 は、はあ…」
  龍麻はずっしりと重い肩掛けカバンをじっと眺めた。
  石斧とくさりがまははみ出している。←邪魔
  京一がそんな龍麻に気を取り直したようになって言った。
「 ……まあ、町に帰って売ればいいだろ。それより奥に進もうぜ!」
「 そうね。行きましょう? あのコも待っているし…」
「 え? 誰?」
  龍麻は首をかしげたが、美里はうふふと笑ったきり答えてはくれなかった。


  そうして、洞窟を更に更に奥に進んで行くと。
「 ココハ通さナイ!! Fire!!」
「 うぎゃあっ!! だ、駄目だ、逃げ…!!」
  脇役勇者候補たちはダメージを受けた!!
  脇役勇者候補たちは逃げ出した!!
「 一昨日オイデッ!!」
  マリィは戦闘に勝利した!!
  マリィはガッツポーズ!!


「 マ、マリィ…?」
  だだだと自分たちの横を通り過ぎ、退散していく勇者(候補)たちご一行を横目に眺めてから、龍麻は彼らに攻撃を仕掛けていたマリィに茫然と声をかけた。
「 アッ!! 龍麻パパ!! 葵ママ!!」
  マリィは龍麻たちの姿を認めると、ぱあっと笑顔になり、だだっと駆け寄った。
「 うふふ…マリィ、お留守番、ご苦労さま」
「 ウン! マリィ、葵ママのお言いつけ、ちゃんと守ったヨ!!」
「 うふふ…偉いわ…。後でご褒美あげるわね」
「 ワアイ♪」
「 あの…美里…これは…(汗)」
  自分の腕に縋りつくマリィに構わず、龍麻はひきつった顔で美里を見た。
  美里は平然として言った。
「 あら…うふふ。私たちが来るまでマリィにお留守番を頼んだのよ。ここから先が後から来たエセ勇者たちに荒らされたら面倒だと思って」
「 荒らされたらって…」
「 ………すげえ、えげつねえ(汗)」
  事を察した京一がぼそりとつぶやいたが、美里は勿論これを黙殺した。
「 ここから奥は本当の勇者、即ち龍麻しか踏み入れない聖域よ。と言っても、まだ1番奥の扉まで数百メートルはあって…。私もそこまでの宝箱を全部隠しておく時間がなくて。それでマリィに門番を頼んでおいたのv」
「 大丈夫!! マリィ、誰モ通してナイ!! 戦績、11勝0敗デス!!」
「 ……ねえ。もしかして今まで東の洞窟へ旅立って誰も帰ってきてないって…これのせいなの?」
  未だひきつった顔が元に戻らない龍麻に、美里は苦笑して首を振った。
「 嫌ね、龍麻。私がマリィをここに置いていったのはせいぜい1日前のことでしょ。それまでのエセ勇者たちは単にここまで来られなかったか、奥の【門】を開けられなかっただけよ」
「 奥の【門】…?」
「 ひーちゃんにしか開けられねえ扉だよ」
  これは京一が言った。京一も奥まで行っている為、この先の事を知っているらしい。
  龍麻は怪訝な顔をしつつ、とにかく奥に進むことにした。
  しかし、美里が幾ら勧めても、龍麻は途中途中にあった宝箱を決して開けようとはしなかった。



  マリィが仲間に加わった!!
  龍麻は《離れ難い糸》という呪いにかかっている!! この呪いにかかると、一旦手にしたアイテムはどんな物だろうが捨てる事ができなくなる!! 無理にでも捨てようとするとダメージを受ける!! これは現在の仲間を外す場合にも該当する!! しかし龍麻はまだこの呪いの存在に気づいていない!!
  《現在の龍麻…Lv12/HP70/MP40/GOLD4822》


【つづく。】
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