第27話 開かない扉 |
洞窟の1番奥には大きな大きな鉄の扉があった。 そのすぐ前方には暗い洞窟の中で異様な輝きを放っている真っ赤な鳥居のようなものがあり…。 「 勇者の門…?」 その赤い柱にはくっきりとそう書かれてあった。 「 何だかめちゃくちゃアヤシイ…(汗)」 「 あら龍麻。重要イベントには派手なアトラクションがつきものなのよ。ましてや龍麻が勇者と認められる為の試練だもの。それなりの格好はしておいてもらわなくちゃ」 「 格好悪いよ…異様に」 「 でもね、龍麻。見ていてね?」 腰の引けている龍麻に美里はにっこりと笑うと、まず自分が赤い鳥居をくぐろうとした。 しかし……。 「 あ……?」 「 私はこれ以上通れないの」 美里は片手を鳥居の前にかざすと、その手前で止まったままそう言った。 見えない何かが美里を扉の前へ行こうとするのを阻んでいるのだ。 「 俺もくぐれなかったぜ。どうやら選ばれた奴しか、この先には行けないみたいだな」 京一がそう言い、それからどんと龍麻の背中を叩いた。 「 ひーちゃん。くぐってみろよ」 「 お、俺?」 「 そうよ、龍麻。多分、貴方ならくぐれるわ」 「 頑張っテ龍麻パパ!」 「 え、ええ…? で、でも…俺、本当にくぐれるのかな…?」 皆に促され、龍麻は半信半疑ながらも赤い鳥居の下を恐る恐る通ろうとした。 すると―。 ひょいっ。 龍麻は鳥居をくぐり、扉の前へ辿り着いた!!(あっさりー!!) 「 おぉ〜やっぱな…」 「 スゴイ! スゴイネ、龍麻パパ!」 「 うふふ…やっぱり龍麻は私が思っていた通りの勇者ね…v」 「 ……。え、え…? な、何で、俺…?」 「 ひーちゃん、そのまま扉を開けちまえ」 京一がくぐれぬ鳥居の手前からそう声をかけた。 龍麻は振り返り、そんな京一と自分を見守る美里とマリィを見やってから、戸惑いつつもやや錆びついたような鉄の扉に手をかけた。 「 ん…? ん、んん〜!!」 しかし扉はびくともしなかった!! 「 あ、開かないよ…」 「 開かないのか?」 「 まあ……」 「 頑張っテ、龍麻パパ!!」 「 う〜ん、う〜ん!! ぷっはー!! だ、駄目だ、全然開く気配すらないよ…!」 「 おかしいわね…。龍麻は選ばれた勇者のはずなのに…」 「 現にこうして俺らと違って鳥居もくぐれたわけだしな。何が足りねーんだ?」 「 あ…!」 その時、龍麻が考えこむ2人をよそに声をあげた。 龍麻は俯いた視線の先、扉に《あるもの》がついている事に気がついたのだ。 「 か、鍵がかかってる!!」 「 はあ?」 素っ頓狂な声を出す京一に、龍麻は再びくるりと振り返って言った。 「 でっかい錠前がついてるんだよ! だから開かないみたい!!」 「 ………はあ」 「 龍麻。それならこの鍵を試してみて」 美里は懐から鍵の束をジャラリと出し、それを龍麻に投げて寄越した。 龍麻はそれを手にし、一つ一つ試してみた。 京一が不思議そうな顔をする。 「 美里。お前、あの鍵は何だ?」 「 金の鍵、銀の鍵、魔法の鍵、王家の鍵など、色々よ。うふふ…長く旅をしていると…ね。どうしてもいろいろな種類の物が入用になるから…」 「 ……(汗)。どうやって手に入れたのかは訊かねえでおく」 「 だ、駄目だ! どれも開かないよー」 龍麻は全ての鍵を試してみた! しかしそのどれもが当てはまらなかった!! 龍麻はふうとため息をついた後、ぽつりとつぶやいた。 「 やっぱ俺…勇者の資格ないのかも…」 「 まあ龍麻…」 「 おいおいひーちゃん。んな事で諦めるなって」 「 でも…」 「 お前だけそこを通れたのには何かワケがあるんだからよ。ちょっと周辺探ってみ。何かヒントがあるかもしれないだろ」 「 ヒント…?」 龍麻は辺りをくまなく調べてみた!! しかしめぼしいものは何もなかった!! 「 駄目みたいだ…あれ…?」 しかし龍麻が諦め、京一たちの元に戻ろうとした時、ふと。 鳥居の背中部分に何か文字が書かれているのが目に入った。 シュゴシャニ、ユウシャノアカシヲミセヨ 「 ……? ひーちゃん? 今何つった?」 「 あ…わ、分からないよ。ただここにそう書いてあるんだ…」 「 勇者の証を見せよ? …おかしな事を言う鳥居さんね。私たちはその勇者の証を得る為にここへ来たって言うのに…」 「 勇者の証がアレバ勇者の証が取れるノ???」 「 そ、そんな無茶苦茶な…」 龍麻が混乱したようになって口ごもった。 しかし京一が怪訝な顔をしてそんな龍麻に言った。 「 その前に…何かあったろ。“守護者”ってのは何だ?」 「 え…さ、さあ……」 「 龍麻の守護者という事かしら…。それならまさしくこの私のことよね」 「 いや、それは違うと思うぞ」(きっぱり) 「 美里ママは龍麻パパの奥さんダモン!」 「 まあ、マリィ。良い子ね【愛】。ご褒美倍増しよv」 「 ワアイ♪」 「 あの…(汗)。それより、これからどうしよう…?」 「 そうねえ…」 「 情報が少な過ぎだな。とりあえず一旦出るか」 京一の言葉に龍麻が頷こうとした時だった。 「 ひーちゃーん!!」 「 龍麻!!」 何と桜井小蒔が現れた!! 何と醍醐雄矢が現れた!! 「 こ、小蒔ちゃん、醍醐!!」 「 うわーんひーちゃん、会いたかったよー(泣)!!!」 「 龍麻…! お、おおお俺も会いたかったぞ…(赤面)!!」 「 あ、う、うん…」 かなり感激にむせっている桜井と醍醐に尻込みする龍麻。 鳥居を抜け、2人の前に出るとまずは桜井ががばりと抱きついてきた。 密かにむっとする美里。 「 ひーちゃん、ひーちゃん、ホントもう大丈夫だった!? ボクがいない間ヘンな事されてない!? 誰にとは言わないけどさッ!!」 「 ……言わなくても目が訴えてるぞ、お前……」 京一のぼそりとした声を無視し、桜井は更に龍麻に言い寄った。 「 あのね、あのね! それよりボクたち、ひーちゃんを探して隣の国まで行ってたんだけど! 面白い情報を手に入れたんだよ! ここの扉を開けるヒントになるかもしれないよ!」 「 え…そ、それ本当…?」 龍麻が驚いて聞き返すと、これには醍醐が頷いた。 「 うむ。俺たちだけでなく、雨紋や高見沢なども方々へ散って様々な情報を入手していたようだが…。とりあえずこの東の洞窟に関する情報は俺と桜井が行った隣国にあったようでな。秋月に戻り、村雨から龍麻たちがここへ向かった事を聞いて急いで後を追ってきたんだ。このままでは、ここの扉は開かない」 「 ど、どうしたらいいの?」 「 それはね!!」 桜井はぎゅっと龍麻の腕を掴み……しかし何故かそれきり勢いこんだ口をぎゅっと引き結び黙りこんだ。 「 ……? 小蒔ちゃん…?」 「 …………」 龍麻がきょとんとしていると、こほんと咳払いをした醍醐がぽつりと言った。 「 ああ…そのう…何だ。今、俺たちは龍麻のパーティの一員ではないわけで…」 「 ええ…?」 「 その…まあ、そういうわけだ」 「 このやろう…お前ら…」 「 コスイ人たちね…」 素早く全てを察したような京一と美里が呆れたような声をもらす。 しかし2人のその反応にもまるで動じず、桜井はより一層のデカイ声で言い張った。 「 ふん、抜け駆けしてちゃっかりひーちゃんの後ついてってる2人に言われたくないよっ! ボクたちが必死こいてひーちゃんを探しながら得た情報だもん! ひーちゃんにパーティに入れてもらえなきゃ、この情報は教えられないねっ」 「 へ…あ、あのう、小蒔ちゃん…(汗)?」 「 ねーねーひーちゃん! ボクと醍醐クンを仲間に入れてよー! 一旦秋月のルイダンに戻ろ? そんでパーティ再編成してこのイベントクリアしよ? それがひーちゃんの貞操のためでもあるんだからさー!!」 「 う、うむ。そうだな、龍麻。俺もそれがいいと思うぞ…ごほん」 「 は、はあ…」 「 無茶言うなよ、お前ら…。今はあと1人しか仲間は入れられないんだからよ」 「 じゃあ、京一が抜けろ!」 「 何だとー!! 俺が抜けられるわけないだろーがー!!」 「 でもそうね。京一クンが抜けてくれたら万事うまくいくわ。そうしましょう」 「 み、美里、テメエ…!」 「 京一。お前はもう十分龍麻と組んだ。そろそろ龍麻の背中は俺に守らせろ」(ぽんと京一の肩を叩く醍醐)←結構ひどいやつ 「 ふ、ふざけんなー!!」 「 ちょっと、みんな…! 喧嘩しないでくれよ…!」 しかし龍麻のそんな声も仲間たちのがなりあいであっさりとかき消され……。 「 も、もう…。そんな事言うなら、また俺一人で旅するぞ…!」 またまた龍麻はやさぐれモードに突入するのであった。 とりあえず、龍麻たちは東の洞窟を後にした!! 龍麻たちは秋月王国、浜離宮に撤退した!! 龍麻は《離れ難い糸》という呪いにかかっている!! この呪いにかかると、一旦手にしたアイテムはどんな物だろうが捨てる事ができなくなる!! 無理にでも捨てようとするとダメージを受ける!! これは現在の仲間を外す場合にも該当する!! しかし龍麻はまだこの呪いの存在に気づいていない!! 《現在の龍麻…Lv12/HP70/MP40/GOLD4822》 |
【つづく。】 |
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