第36話 暴れる異形 |
篠崎亭、朝―。 「 醍醐、テメエいつまで寝てんだ! 起きろ!」 京一が醍醐に蹴りを入れた!! 「 ぐおっ…!?」 醍醐は2のダメージを受けた!!(宿屋に泊まったばっかなのに…) 「 ぐぐぐ…京一…お前な……」 しかし醍醐は蹴られた腰をさすりさすりしながらも、不平の言葉を続けようとはしなかった。 どうやら自分が犯した昨日の失態(メイド龍麻を見て失神)をかなり恥じているらしい。 「 ひーちゃん、昨夜はよく眠れたか?」 「 うん。もうばっちりだよ。今日は早速町長の…アランの屋敷へ行こう!!」 「 ……平気か?」 「 も、もちろん…!」 龍麻はフンと気合を入れた!! +++ ハーレムタウンの街並は、龍麻が今まで見てきたどの場所よりも「キラキラ」していた。 大きさや店の数では、勿論大国秋月や徳川が勝っている。 しかし何というか…町の雰囲気が……。 「 きゃ〜そこのカッコいいお兄さん! うちで買い物していって〜」 「 可愛いボク〜? お姉さんがキミにぴったりの防具を選んであげる〜♪」 「 や〜ん、がたいのある人素敵よ〜vv ねえ一緒にお茶しない〜?」 龍麻たちは一歩、二歩歩く度に逆ナンされまくっていた!! 町を行き交う若い娘たちは皆刺激的な格好をしていたし、メインストリートに店を構えている店主も大概は色っぽく妖艶な女性なのだ。 「 な…何という煌びやかな通りだ…! 世の中にはこんなに年若い女子のいる町が…!」 「 俺…何か疲れる…(汗)」 龍麻と醍醐はそのあまりの華やかさと、自分たちに集中する視線にすっかり参っていた!! 龍麻と醍醐は精神的ダメージを受けた!! 体力にも影響、それぞれ4のダメージを受けた!! 「 お前ら何気負ってんだよ? いい眺めじゃねーか。綺麗なオネエチャンばっかでよ〜」 しかし京一はダメージを受けない!! むしろ体力が5アップした!! そんな京一に醍醐はフンと鼻を鳴らした。 「 俺はお前のように軽い男とは違い、こういう場面には弱いんだ。何だ、鼻の下を伸ばして」 「 はんっ、本当は嬉しいくせに無理すんなよ。大体鼻の下伸ばしてんのはお前だろーが」 「 きょ、京一、お前なー(焦)!!」 「 京一」 その時龍麻が口を開いた。 「 ……京一、こういうの嬉しいの?」 「 へっ?」 京一がそう言った龍麻を振り返ると。 龍麻は何とも言えない複雑そうな顔をしていた。 「 ひ、ひーちゃん…?」 「 …別にいいけど」 「 な…? ひーちゃん、何か怒ってるか…?」 「 べ、別に…っ」 龍麻は自分でも何故むっとするのだろうかと自身に戸惑いながら、ごまかすように京一から視線を逸らした。 「 お、おいひーちゃん…っ」 しかし京一がそんな龍麻に慌てて再度話しかけようとした時だった。 ドッカーン!!! 「 ……!? 何だ…っ!?」 突然、通りの1番奥の方から大きな轟音が響き渡り、地面がぐらりと揺れた。 「 何? ど、どうしたんだ…!?」 龍麻が驚いて辺りを見渡すと、町の人々が急いで店を閉め始めているのが見えた。 中の1人、黒髪を結った若い女店主がそんな龍麻の様子にはたと気づいて切羽詰まった声をかける。 「 旅の人、早く宿屋にでも戻りなさい! モンスターが出たのよっ!!」 「 モンスター!?」 龍麻がぎょっとして声をあげると、京一がすっと前に出て来て女店主に言った。 「 おい、ここはこんな昼間っから街中にモンスターが出没するのかよっ」 京一の言葉に女主人は緊張した面持ちでやや早口に告げた。 「 ええ、そうよ。もういつからこんな事が繰り返されているかしら。巨大な恐ろしい異形が町を荒そうと暴れ出てくるの」 「 一体どうして…」 「 でも大丈夫よ。町をめちゃくちゃにしたりはしないわ。いつだって町長のアラン様がすぐに鎮めて下さるんだから」 女主人はそう言い、けれど自らは逸早く隠れるようにして店の奥へと引っ込んでしまった。 あれほど賑やかだった通りがあっという間に猫の子一匹見当たらない。 しんとした寂れた一本道に様変わりしてしまった。 ズズーン…ドーン……!! 恐らくは町長の屋敷の方角だろう、未だに地響きは続いている。 「 町長は1人でそのモンスターと対峙してるって事かな…?」 龍麻がつぶやくと京一が剣をとんとんと肩先で叩きながら首を捻った。 「 俺の町長のイメージって、女はべらしてるやらしい男の図だからよ。町の為に1人勇敢に異形と対決するとこなんざてんで想像外だぜ。ひーちゃんは奴と会った事あるんだろ? 青龍なだけあってやっぱ奴って強いのか?」 「 多分…」 「 多分って何だよ」 龍麻の茫然とした言いように京一が苦笑する。 龍麻はいやなものを思い出したような苦い顔になって続けた。 「 だって…確かに凄そうな武器は見せてもらったことあるよ。霊銃っていう特別な《力》のあるありがたい守り神だって。でも俺、あの人で思い出す事って言ったらがばあっ!!しかないんだもん」 「 何だ、お前たち。一体何の話をしているんだ?」 要領を飲み込めない醍醐が不思議そうに割って入った。 京一はそんな醍醐にただ首を振り、「いいから行くぜ」と言って先を急ぎ始めた。 +++ ハーレムタウン・町長―アランの屋敷―。 「 でっかい家だなあ、やっぱり」 「 俺の村くらいあるんじゃない(汗)?」 「 そりゃ言い過ぎだろ」 京一と龍麻が半ば呆れて宮殿のような巨大な屋敷を見上げていると、既にさっさと中の使用人らしき女に声をかけた醍醐が戻ってきて言った。 「 何でも町長は現れた異形を地下のエドガワ神殿に封じ込めに行っていて留守だそうだ」 「 はあ…?」 「 エドガワ神殿って…?」 京一と龍麻がほぼ同時に疑問の声を上げると、醍醐も「ふーむ」と腕を組んで首をかしげた。 「 この屋敷のすぐ裏にあるらしいのだが…。何でもこの町は大体決まった周期に同じモンスターが現れて暴れるらしくてな。その度に町長のアランがそいつを魔封じ用に創設した屋敷裏の地下神殿に閉じ込めるようなのだ」 「 閉じ込めてんのにまだ出てくんのかよ」 「 そうらしい。封じ込めてもまたどうしてかすぐに復活して現れるようなのだ。町長はそれほど力の強くないモンスターだから大した作業ではないと言って毎回そいつが出てくる度に退治していると」 「 よくそんなめんどくせーこと続けるな…」 「 それはやっぱり…町の為なんじゃない?」 京一と龍麻がそれぞれの感想をもらすと、その時再び地面がぐらりと揺れた。 ズズーン…ドドーン…!! 「 町長がモンスターと地下で戦っている音だそうだ」 醍醐が言う。 京一は龍麻を見て「どうする?」と訊いてきた。 「 どうするって…。まあ俺たちが行かなくてもアラン1人で大丈夫みたいだけど…それでも一応行ってみようよ。モンスターが出たって知って知らんフリはできないよ」 龍麻が答えると醍醐は感心したようにうんうんと頷き、京一はにやりと笑った。 「 な、何だよ…?」 その笑いがどことなくからかいを含んでいるような気がして龍麻はむっとして口を尖らせた。 すると京一は片手をふらふらと振ってから「いやな」と言った。 「 ひーちゃん、初めて会った時はモンスターって言うとすぐ戦意を喪失してたのにな、と思ってよ」 「 そ、それは〜!」 「 成長したなあ」 「 や、やっぱりからかってるじゃないかー!!」 「 ………おい龍麻、京一。頼むから俺もお前らの中に入れてくれ(泣)」←疎外感 こうして3人は未だ地下で戦闘を繰り広げているらしい町長・アランの助っ人へ向かった!! が、その時ふと。 「 ウ…ウゴ〜!!!!」 ……異形の悲痛な叫び声が聞こえたような気がした。 《現在の龍麻…Lv12/HP71/MP40/GOLD4836》 |
【つづく。】 |
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