第37話 ホイミに続きやっと…? |
アラン町長の屋敷裏―地下エドガワ神殿―。 「 うわ…どこまで続いているんだ、この階段…?」 龍麻は屋敷の人間が渡してくれた松明を頼りに恐る恐る歩を進めていた。 ズズーン……ドドーン……!! ウゴー…!! ゴゴーン…!! その間も地下一帯に響き渡る戦闘音と異形らしきものの喚き声。 龍麻のすぐ後ろを歩いている醍醐が言った。 「 ここがどこまで深いのかは分からないが…俺たちが町長とモンスターのいる場所に近づいているのだけは確かだろう。この地響きも徐々に強くなってきているようだしな」 「 しっかしあれだな、神殿って言う割にめちゃくちゃ荒れてんな、ここ…」 京一が最後尾を歩きながら辺りに注意を配りつつ付け足す。 そうこうしているうちに―。 『 キエエエーーー!!!』 モンスターが現れた!! 「 うぜえ!」 京一の攻撃!! 『 グワアアアーーー!!!』 モンスターは80のダメージを受けた!! モンスターを倒した!!(一瞬ッ) 70の経験地を獲得、80ゴールドを手に入れた!! 戦闘終了。 「 しけてるぜ…」 京一のつまらなそうなつぶやき声に、しかし龍麻はハアーと安堵の息を漏らした。 先刻からこれの繰り返しなのである。 歩く度にモンスターが現れ、それを京一が一撃で仕留める。 松明の灯りは小さく頼りないので、いつモンスターが襲ってくるか見当もつかない。 1人モンスターと対峙している町長を助けようと地下に入ったまではいいが、この何ともいえない「嫌な感じ」は龍麻を常に不安な気持ちにさせていた。 「 おい京一。どうでもいいがたまには俺にも戦わせろ。さっきからお前ばかり攻撃しているじゃないか」 そんな龍麻には気づく風もなく、醍醐が不満気な様子で自分の後ろを歩く京一に声をかけた。この戦いで名誉挽回といきたいところなのに出番がない。少々焦り気味の醍醐なのだ。 しかし京一は至って素っ気無い。 「 お前が鈍臭いからいけないんだろーが。今、<すばやさ>幾つだよ?」 「 うっ…それを言われると…(汗)」 「 俺も…多分すごく低いと思うけど…」 龍麻もちらと2人を振り返り、申し訳なさそうに頭をかく。 勇者のくせにあまり戦っていない龍麻の成長率は、この「魔人なDQ!」も既に37話にきているというのに、かなりもってひどいものがあった。 そこで京一はふと思い立ったようにぽんと手を叩いた。 「 そーだな。さすがにひーちゃんももちっと早く動けるようになんないとやべーよな。―よし! そんじゃあ次のモンスターの時は俺は様子見しとく。お前らだけで戦えよ!」 「 え、ええ〜! うう、でも…でも、そうだよな。たまには俺も戦わなきゃな…!」 「 心配するな龍麻。お前はこの俺が護ろう!!」(鼻息荒い醍醐) 「 お。って言ったら、どうやらここが最下層らしいぞ」 「 え」 「 出た、モンスター」 「 ウゴ〜〜〜!!!」 「 突然か〜(泣)!!」 京一が指差した方向には、巨大な、それはそれは見るも恐ろしい異形の者がその空間いっぱいに身体を広げ、何やら激しく吠えたてまくっていた。 「 ウゴー!! ガオー!!」 「 あわわわわわ…ななな何なんだあのデカイモンスターは…!!」 龍麻はすっかりたじたじである。 醍醐もさすがに面食らった模様で、その場に佇んでその異形を見上げている。 「 むう…これほどまでに巨大なモンスターだったとは…。京一、お前は見た事があるか?」 「 俺もねェよ。さすがにここまでデカイと呆れるな」 「 呆れてる場合じゃない〜(涙)」←すっかり戦意喪失の龍麻 しかし3人がそれぞれの感想を漏らしていた、まさにその時だった。 「 そろそろ眠るネ! ハードレイン!!」 「 グオオー【怒】!!!」 「 OH、今日のキミはなかなかしぶといネ!?」 「 な、何だ…!?」 あまりに巨大な異形に気を取られ、最初は気づかなかった。 龍麻たちが下り立った神殿の中央―異形と真正面から対峙するようにして、1人の青年がそこにいた。長身で金髪。彼は何やら手にしている金属の武器で巨大異形に攻撃を仕掛けている。 「 あ、あれはアラン…!」 後ろ姿だけで確信したのか、龍麻は大声でその町長の名を呼んだ。 京一が剣を携え、1人納得するようにつぶやく。 「 するとやっぱりあれが封印してもすぐに復活してくるってモンスターか。確かにしぶとそうだぜ」 「 うむ。あの男も散々攻撃しているようだが、なかなか倒れないな」 「 ウゴー!! グオガー!!!」 「 どうしたネ!? 今日は眠るのが遅いンじゃないのカイ? そろそろ疲れてきたダロウ?」 「 ウゴウゴゴー!!!」 「 オーケイ!! もう一撃喰らいたいんだネッ!!」 アランとモンスターの攻防は続く。 醍醐が横でぼうと突っ立っている龍麻に声をかけた。 「 龍麻、俺たちも助太刀しよう! 3人で攻撃すればあの魔物とて倒れるはずだ!!」 「 え……う、うん。でも……」 しかし2人の戦いを見ていた龍麻は、醍醐のその台詞に途惑ったような声を出した。 「 ?? どうしたんだ、龍麻?」 醍醐が不審の声をあげる。 それでも龍麻の視線はただひたすら異形にあった。 「 え、と……。うん、何か……」 「 ……? ひーちゃん??」 京一も様子のおかしい龍麻に怪訝な顔を見せた。 しかし京一が再度声を掛けようとした時、龍麻が口を開いた。 「 何かおかしいよ。あのモンスター…何だかとっても悲しそうだ」 「 はあ…?」 「 どういう事だ、龍麻? モンスターが悲しいなどと…俺には奴が怒り狂っているようにしか見えないが…」 「 うん。よくは分からないけど、あのモンスター、さっきからちっともアランに攻撃してない。確かに暴れて周りの柱やら壁は破壊しているみたいだけど…でも何だか……」 「 ……? 龍麻。モンスターにそんな人間のような感情はない。もしあそこにいるアランが手を抜けばここの地下神殿は奴にあっという間に崩されてしまうだろう」 「 でも……でも、やっぱり!」 「 龍麻!?」 「 おい、ひーちゃん!!」 龍麻は驚く醍醐と京一には構わず、だっと異形の元へ駆けて行った!! 「 ちょっと待って!!」 「 ……!? キミは…!!?」 「 アラン、久しぶり。ちょっと待ってくれ、こいつに手を出すの…」 「 !? オー……! マサカマサカ……! 信じられナイ、もしかして、タ、龍麻…? アミーゴ?」 突然現れた龍麻に町長アランは絶句してぴたりと動きを止めた。 「 OH…! ホントにホントに…アミーゴ、龍麻!!!! ボクは夢を見ているのカイ??」 「 夢じゃないよ、アラン。俺だよ、外れ村の龍麻だよ。俺、お前に用があってこのハーレムタウンにやってきたんだ。でも今はそんな話は後回し。ちょっと、この異形を俺に見させて」 「 !! 何をするんだい、龍麻! 近づいたら危ナイ…!!」 「 いや…大丈夫……」 龍麻はアランに背を向けると、目の前の異形に向き直った。 「 グオー……!! ウゴゴゴ……!!」 異形は突然現れた別の人間・龍麻に対し、ぴたりと動きを止め、静まった。 そして何かを探るように頭部の方にあるてっぺんの大きな目で見つめてきた。 「 ウゴー…ウゴゴゴ……!!」 「 怖がらなくていいよ。お前、本当に俺たちの敵なの?」 「 ウゴ!? ウゴ…!! ウゴウゴウゴ……!!」 龍麻の声に異形はびくんと身体を揺らし、それから巨体を丸く屈めこませながら龍麻の方に頭を向けた。ふんふんと何かを探るように身体を近づけてくる。 「 アミーゴ、危ないヨ!! 離れて!!」 「 龍麻!!」 「 ひーちゃん!!」 龍麻に近づく異形。京一たちが剣を繰り出そうと身構えると、しかしそれを龍麻が制した。 「 ちょっと待って。悪くないよ。こいつは、俺たちを襲う気はないみたいだ」 「 ウゴ〜……グオグオ♪ グオ〜ン(涙)」 みると異形は大きな身体を必死に丸めながら、自分に優しく触れてくる龍麻を嬉しそうに見つめていた。 「 ウゴ〜ン、グオ〜ン♪」 「 そうなんだ…。お前、ちょっとかわいそう……」 「 お、おい、ひーちゃん(汗)?」 「 何と…龍麻はモンスターと意思を通わせる事ができるのか…!」 龍麻のモンスターと会話をしているような様子に京一たちはすっかり面食らっている。 そしてもう1人、銃を携えていたアランは…。 「 OH…龍麻、やっぱりキミはタダモノじゃナイ…! この凶暴な盲目の者、支配下にオイタ・・・!!」 ただひたすらにキラキラとした目で龍麻の事を見つめていた。 そして、龍麻が異形と話を始めてから数十分後。 龍麻は異形に向かって力強く頷いてみせた。 「 そうなんだ。それじゃ、もう大丈夫だからお前は元に戻りな」 「 ウゴ…ウゴー!!」 「 な、何が…!?」 皆が目を見張った。 龍麻が盲目の者に何かを言った時、それは起こった。 「 グオーガー!!!」 異形は一声大きく叫ぶとみるみるうちに縮んでいき―あっという間に手乗り猿くらいの大きさになった。 そうして懐くように龍麻の肩先にぴたりと寄り添い、すっかりおとなしくなったのだった。 「 ウゴ〜ンvvv」 「 はは…よしよし、良い子だ」 「「「ボーゼン」」」←一同呆気 龍麻は<盲目の者>を支配下においた!! 300の経験値を獲得、10ゴールドを手に入れた!! 龍麻はレベルが上がった!!(チャラララッチャッチャッチャ〜!!) 龍麻は《まものならし》をおぼえた!! 龍麻は盲目の者から宝箱を貰った!! 《ボサツガンのぷろまいど》を手に入れた!! 戦闘終了。←戦ってないし 「 おい、ひーちゃん。一体何なんだ…?」 何がどうなのかさっぱり分からない一同を京一が代表して龍麻に訊いた。 龍麻はくるりと振り返ると少しだけ首をかしげた。 「 あのな、何でかは分からないんだけど、俺、こいつの言っている言葉が分かったんだ。こいつ、本当は戦いたくないって言いながら暴れてたから…きっと理由があるって思った」 「 理由…何だったんだ?」 「 ウゴ〜」 盲目の者が何かを言いたげに一声吠えた。 「 あのな、こいつは」 龍麻が代わりに口を開く。ちらりとアランの方に目をやって。 「 こいつはアランに掛けられた《呪い》のせいで毎回戦わされてたんだって」 「 呪い?」 「 この町長に呪いが?」 「 オー…龍麻……」 「 だろ、アラン?」 龍麻が訊くと、今まで事の次第を茫然と眺めていたアランは、やがて髪の毛をくしゃりとかきまぜてから参ったというように苦笑した。 「 バレてしまっては仕方ありませんネ。積もる話はボクの屋敷でしましょう?」 「 おいおい……?」 「 一体…?」 京一と醍醐には何が何やら分からぬまま、とにかく一向はアランの屋敷で話を聞く事になった。 アランが何かの呪いにかかっているということ、それとこの盲目の者が暴れていたということ。 中途半端だけど、続きは次号…!! 《現在の龍麻…Lv13/HP71/MP40/GOLD5242》 |
【つづく。】 |
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