第38話 菩薩の愛に勝る者

  ハーレムタウン・町長アランの屋敷―。
「 さっきハ色々とバタバタしてたカラできなかったネ…」
  大きな広間に3人を通し、それぞれに冷たい飲み物を配り終えた後、町長のアランはフーとため息をついてから口を開いた。
「 アミーゴ」
「 何?」
「 再会のキッス〜♪」(がばあっ!!!
「 ぎゃあああ!!」
  アランの攻撃!!
  ミス!! 龍麻は必死になって逃げた!!
  しかし精神的ショックを受けた!! 体力にも影響、7のダメージを受けた!!
「 やめろこの変態町長がッ【殴】!!」
  京一の攻撃!!
「 グハアッ!? な、何スルネー!?」
  アランは10のダメージを受けた!!
  京一はさささっと龍麻を自分の後ろに隠した!!
「 ひーちゃんに手を出すんじゃねー! テメエは何いきなり襲いかかってんだっ!!」
「 うう〜京一〜(泣)」
「 OH、アミーゴ、龍麻! ドウシテそんな風にボクを避ける!? ボク、アミーゴと再会できてとってもとってもハッピーなのに…!」
「 こっちはハッピーじゃねえんだよ!」
「 OH、この煩い人、誰ネ、アミーゴ」
「 何だとー!!」
「 ま、まあまあ、お前ら少しは落ち着け」
  仕方ないなとばかりに醍醐が中に入り、両者をなだめた。
  それから庭先に置いてきた《盲目の者》を窓越しにちらと眺め、話を切り出す。
「 一体どう言うことなのか説明してもらおうか。龍麻、お前はこのアラン町長が呪いにかかっていたせいであの異形が戦わされていたんだと言ったが…?」
「 あ、うん。そうだよ」
  龍麻は京一の後ろからさっと顔を出し、頷いた。
「 俺もよくは分からないけど、あの盲目の者が言ってたんだ。『アランがご主人様との約束を守らないから自分が戦う羽目に陥っている』って」
「 ?? それはどういう…話が見えないな」
  醍醐が代表してアランに向き合う。
  町長のアランは今日1番の大きなため息をつくと、ソファに腰をおろし軽く肩を竦めて見せた。
「 ボク、そこにいるアミーゴとの恋に破れた後、しばらく傷心デシタ。この町に戻って来て可愛いレディたち見ても癒されなかっタ。まさに恋ノ病、ずっと臥せってマシタネ」
「 そういやそんな事、町の門番が言ってたっけな」
  京一がつまらなそうにつぶやいた後、アランは続けた。
「 ボクはこの町を守る町長。いつまでも落ち込んでたら駄目。デモ、力出なかったネ。けど、ある日この町にそれはそれは美しい天女が来タ…! ボク、びっくりシタ…!」
「 天女?」
「 ビューティフル! まさに美の化身! アミーゴが食べちゃいたいくらのプリティボーイなら、アオイはひれ伏したいほどのビューティフルレディだったネ!!」
「 ……プリティボーイとか言うな(泣)」
  龍麻が恨めしそうな抗議の声を漏らしたが、ぎょっとした顔でそれを遮ったのは京一だった。
「 ちょっと待て。お前今何て言った…? 葵って……言ったか?」
「 OH、言ったネ!」
「 アオイ…? そ、それは…」
  醍醐が何かを言いかけ、京一が髪の毛をぐしゃりとかき回す。
  龍麻がきょとんとしていると、アランが続けた。
「 美里葵はボクの理想の女性ネ! 強くて美しい! そしてボクの病気も治してくれた! ボク、すっごく感謝シタ!」
「 それでテメーは大事な青龍の鍵をあいつに渡しちまったのか?」
  京一が心底呆れた風に言うと、そう訊かれたアランはぱちくりと何度か瞬きをした。
「 OH、WHY? 何デドウシテあの鍵の事知ってル?」
  そしてアランは思い切り首をかしげた後、さっと部屋の隅に飾ってある龍の置物を指差した。
「 あれ、ボクの家に代々伝わるモノ。ボクの家系、青き龍の血を継いでいて、いつの日かこの世が闇に覆われた時、世界を救う使者と言われてル」
「 お前はそれが分かっていて受け継がれてきた大事な鍵を他人に渡してしまったのか?」
「 醍醐、お前もお前の鍵をリビングデッド佐久間に取られてるけどな」
「 うっ、それは…」
  京一に突っ込まれて咳き込む醍醐には構わず、龍麻はアランを見やった。
「 そんな事より、アランはその時自分の病気を治してくれた美里と約束したんだろ? 美里への愛を誓う証として、もうこの町で美人な女の子ばっかり集めてはべらすのはやめるって」
「 何、そうなのか、ひーちゃん?」
  京一の驚いたような声に龍麻はこっくりと頷いた。
「 うん。それでもし約束を違えるような事があるなら、アランにかけた呪いが発動するって…そう言っていなくなったらしいよ、美里は」
「 そうです、確かに約束しまシタ」
  アランはハア〜と大きく嘆息してから、悲しそうな顔になって項垂れた。
「 ボク、アオイに一目惚れして求婚したネ。でもアオイ、自分はやる事があるからボクのこの想いにすぐに応える事はできないって言っタ。でもボクが約束守ってアオイ一筋になるなら、いつかこの町に戻って来てくれるって言イマシタ」
「 ……なのに何でテメーは約束守らねーんだよ(呆)」
  京一の当然の質問にアランはまるで苦悩する芸術家か哲学家のように口許を歪め、片手を胸に置いた。
  そして。
「 OH…ボク、女の子大好きネ。アオイいない間、誰にも恋しないでいられるなんて土台無理難題、絶対ムリム〜リな事ダッタ…。ヤメヨウ思っても次の日には女の子に声かけてたネ。……そうしたら、その日を境に、ボクの屋敷裏にあの異形が出るようになっタ…」
「「「 呪いが発動したわけだ…」」」←3人一斉に同発言
「 ボクは《ウゴーの呪い》と呼んでたね。あの子、ウゴウゴ言ってはボクに襲いかかってきた。でも1回やっつければしばらくは静かになってタシ、呪いは何故か教会でも解けなかったから…マァ、仕方なかったネ」
「 仕方ないじゃねー!! テメエが女漁りをやめれば消える呪いなんだろーがッ!! 大体、この町かなり横暴だぞ!! 可愛くてHな格好した奴しか入れないとか!! ホテル代もめちゃくちゃ高ェしよ!!」
「 そんなのボクの町の勝手ネ〜。僕の町の人たちは皆喜んでル〜。むさい男共は殆ど入ってこられないしネ♪」
「 あ、あのなあ…!!」
「 しかしどうして龍麻はあの…ウゴーか? あの異形を手懐けることができたんだ?」
「 え?」
  醍醐の質問に龍麻はきょとんとした。
  それから自分でも分からないという風に首をかしげる。
「 さ、さあ…。でも何となく分かったんだよな。あいつ、もうこの呪いに縛られているのは嫌だ〜って悲しそうだったもん」
「 OH、さすがアミーゴ、素晴らしいネ! 異界のモノのハートもゲッチュー♪ そしてこのボクもまたまたキミのベリーな可愛さにメロメロキューヨvvv」
「 だ、だから唇突き出してウインクするのはやめろって…(汗)」
「 あれ? ところでアミーゴ、ボクに何か用があって来たんじゃナイのー?」
「 あ、忘れてた」
「 あまりにもバタバタしてたからな……」
  京一がやれやれという風になってつぶやいた。
  龍麻は改めてアランに自分がこの町に来た理由を話した。
  勇者候補として旅を始めていること、その証を得る為に4神が持つ鍵が必要だということ。
  アランに仲間になって欲しいということ。


+++


「 フーム、やっぱりアミーゴはボクが好きになった人なだけはアルネ。勇者になっていたとはネ!」
「 いや…まだ勇者って決まったわけじゃないけど…」
「 ボク、アミーゴの力になりたい。ボクで良かったらアミーゴ、どんどん使ってくれて構わない! ボクの身も心もアミーゴのものネ!」
「 いいいいや・・・。そこまでは…いいから、ね…(汗)」
「 だからテメーはひーちゃんに色目を使うなっての!!」
  アランが仲間になった!!
  アランは自らに課せられていた《ウゴーの呪い》を解除した!!
「 ウゴー!!」(どんどんと窓ガラスを叩く音)
「 あ…ウゴーも仲間になるって言ってる」
「 マジかよ…(汗)」
  ウゴーが仲間になった!!
  ウゴーは自らに課せられていた《美里様令の呪い》を解除した!!
「 しかし町長が安易に町を留守にしても大丈夫なのか?」
  醍醐がいきなり旅支度をしてウキウキしているようなアランに心配そうな声をかけた。
  するとアランはくるりと振り返り、にこっと笑ってピースサインをしてみせた。
「 ノープロブレム! ダイジョブネ! それに、実はボクしばらくこの町を離れようと思ってたトコロ」
「 え? 何で?」
「 最近、ボクやボクの持つ青龍の鍵を狙って町をウロウロする輩がイタ。狙いはボクだけのようなので、ボクが町を離れた方が、ここの人は安全」
「 鍵を狙う輩…?」
「 鬼面をつけた不気味な奴ネ」
「 鬼面……」
「 デモ、今日はもう遅い。ボクの屋敷に1泊して、明日の朝早くに出よう♪ アミーゴは当然、ボクのベッドの中で眠るネ!!」
「 なわけねーだろ【殴】!!」
  京一の攻撃!!
  アランは15のダメージを受けた!!
「 OH、ヒドーイ、さっきから何デスカ、キミは〜!?」
「 何だはこっちの台詞だ〜!!」
「 やれやれ……」
  こうして、青龍・アランが一向に加わり…。
  龍麻たちはハーレムタウンでの2日目の夜を迎える事になったのだった。


  ごそごそごそ……。


  天井裏に隠れる、怪しげな影には気づかずに……。



  龍麻は旅の仲間・アラン蔵人と知り合った!! 龍麻は美里様の下僕、盲目の者ことウゴーと知り合った!!2人には美里様によってそれぞれ強力な呪いがかけられていたが、何故かそれは龍麻と出会う事によって消滅した!!
  《現在の龍麻…Lv13/HP64/MP40/GOLD5242》


【つづく。】
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