第39話 奇妙なハーレムナイト |
町長アランの屋敷―。 「 OH、アミーゴ。ホントにボクと添い寝するのは嫌デ〜スカ?」 「 嫌だ!」 「 しつけーんだよお前は!」 京一の攻撃! ミス!アランはダメージを受けない! 「 うっ、テメエ…!」 「 フフ…キョーチ、そんなに何度も同じ手は食わないネ」 「 くっ、なら本気で攻撃してやろうかっ!?」 「 こらこら…。龍麻が疲れているんだ。いい加減に今日はもう早く休んで、明日に備えよう」 醍醐がまともな意見を出す。 龍麻も途端ふわあと大きなあくびが出た。 「 うん。それじゃあ俺ももう寝るよ。俺はこっちの部屋を使っていいんだよね」 「 OH、アミーゴには1番の客室を用意させマシタ。キョーチと醍醐はそっちネ」(向かいの部屋をさすアラン) 「 俺たちは一緒くたかよ…」 「 それじゃおやすみ」 「 ああ。ゆっくり休むんだぞ、龍麻」 「 アミーゴ良い夢を」 「 ひーちゃん! ちゃんと中から鍵かけとくんだぞ!」 こうして4人はそれぞれの寝室へと入っていった。 +++ 龍麻は1人の部屋に入ってから寝着に着替え、部屋の周囲を見渡してため息をついた。 「 すごい部屋…。高そうな家具に…ベッドも大きいや…」 外れ村で貧しい生活をしていた龍麻には、ここハーレムタウンの高級な生活は逆に肌に合わないようだ。 テラスに通じる窓際に立ち、龍麻は夜空に輝く月を見上げた(その前方の木の上では盲目の者ウゴーがすやすやと眠っているのが見える)。 「 今頃…父さんや焚実や村のみんなはどうしてるかな…」 龍麻はふと故郷を思い出して懐かしい家に思いを馳せた。流れるままに勢いのままにここまで来てしまった。まだ自分が勇者だという確信もない。だからこそ始めた「勇者の証」を獲得する為の今だけれど。 やはり時々は不安になるのだ。 ごそごそごそ……。 「 え……?」 その時、天井から何かが這いずる音が聞こえた。 ごそごそごそ…すきっぷ! 「 な、何だあ…?」 更に……もう1人? 「 誰かいるのか…? でも、この上に部屋はないはずだし…」 龍麻は急に早くなる鼓動を抑える為、すうと大きく息を吐いた。 それから再び天井に目をやる。 気のせいかもしれない。最近疲れているし。または大きなゴキブリかねずみという事も考えられる。 しかし龍麻がそう思い込もうとした時。 また。 ごそごそごそ……ごそごそごそ……! 「 き、気のせいじゃない!」 人が天井を這いずるような音は更に響き、龍麻は思わず声を上げた。 そして龍麻が京一たちを呼ぼうと入口へ駆けようとした瞬間、不意にはっきりとした人の話し声がその這いずる音の方角から聞こえてきた。 「 うわっち! いってーな、炎角! テメエ、ちゃんと前向いてろ!」 「 イエイエ〜了解〜。でもここは狭いから〜ステップが踏みにくいぜイエ〜!」 「 あほか! こんな所でステップなんぞ踏むな! ここの家人に気づかれたらどーすんだッ!」 「 それもそうだなイエ〜でもすきっぷ!」 「 ………?」 あまりにも能天気なその会話に、龍麻は眉をひそめつつも一気に警戒の気を緩めた。 尚も天井裏の2人の会話は続く。 「 今日こそこの屋敷に隠されているという青龍の鍵と、できれば盲目の者が持っているボサツガンに関する手掛かりを掴んで帰るぞ。いい加減にしねーと俺ら御屋形様にぶち殺されるぜ」 「 オ〜イエ〜。雷角や岩角もこの間そうそうにぶっ飛ばされてたぜ〜コワイ〜ヒエッ!」 「 アイツらなんか朱雀と白虎の行方自体を見失ってっからな。そりゃ〜御屋形様もお怒りになるってもんだ」 「 イエ〜。けど俺らも2人で青龍担当なのに任務をまっとうできないから〜イエ。お仕置きされる時はあいつらの2倍になるだろうぜイエ〜」 「 嫌なこと言うなよ…(汗)。ここは2人担当が妥当だろ! 道心や劉がウロウロしてるよーな町だぜ? 命が幾つあっても足りねーっつの」 静かにしろという割にめちゃくちゃ聞こえる2人の会話である。 「 ………悪者なんだよな?」 龍麻は1人でつぶやいた後、おそるおそるという風に部屋の壁に飾られていた剣を取った。 そうして、それを思い切り天井に向かって突き立ててみた!!←結構大胆 グサリ!! 飾りの剣の割にかなりの切れ味!! 剣は天井に深く突き刺さった!! 「 いってー!!!」 ???の人物に攻撃が当たった!! 相手は15のダメージを受けた!! 「 OH、風角どうした? 何かズボンの尻の部分が破けてるぞイエ!! ホイミ!!」 先ほど「炎角」と呼ばれていた人物がホイミを唱えた!! 「風角」と呼ばれた人物の傷が回復した!! 「 ……誰なんだ!!」 グサリグサリ!! 龍麻は更に違う剣を天井に突きつけた!! 龍麻の攻撃!! 「 ぐはあっ!!」 「 痛いぜイエ〜!!」 風角と炎角はそれぞれ20のダメージを受けた!! 「 ぐぐぐ…し、下に敵がいるようだぜ炎角…!」 「 おかしいぜイエ〜。この下の客室にはいつも誰もいないはずだぜイエ〜」 「 しかし見つかっては仕方がない。おりるぞ!」 「 イエ!!」 ドサリっ!! 「 !!!」 天井裏から風角と炎角が現れた!! 「 誰だ、お前らは…!!」 龍麻はすかさず身構えた!!パジャマ姿だけど!! 目の前に現れたその不審人物は黒装束に鬼の面を被った正体不明の怪しい2人組だ。 どう見ても「道に迷った善良な一般庶民」には見えない!! 「 お前らか! アランを狙ってるって鬼面の奴は!!」 「 ………おい炎角」 「 イエ!」 「 こいつか? 今俺らに剣を突き立てたのは?」 「 そうみたいだぜイエ!」 「 何と…こんな可愛い子がこの屋敷にいたとは知らなかったぜ……」 「 俺も知らなかった! イエ! チューリップのパジャマが可愛いイエ! ハートマークイエ!」 「 あ、今俺もそう言おうと思ってたとこ」 「 な…何なんだ、お前たちは…!!」(じりじりと後ずさりする龍麻)←何か嫌なものを感じているらしい 「 ふ…聞いてくれるか、では答えよう! おい、炎角!」 「 オーイエ! 俺たちは!!」(びしいっと決めポーズ!!) 「 俺たちは!!」(びしいっ!!) 「 世界を統治し支配する! 御屋形様の懐刀! イエ!」(ホップ!!) 「 鬼道を操り闇を疾走する!!」(ステップ!!) 「 オ〜天下の5人組、鬼道衆だぜイエ〜イ!!」(びしびしいっ!!)←ジャンプして龍麻を指差し決めポーズ! 「 …………はあ?」 龍麻、ちょっぴり固まる。 「 ふっ、今は2人しかいないので2人バージョンだが、俺らが5人揃うとホントスゴイんだぜ?」 「 オ〜イエ〜。で、お前は何なんだイエ〜」 「 え。お、俺…?」 「 そうだぜイエ〜。お前、俺らだけに名乗らせて自分は名乗らないなんて駄目だイエ〜」 「 あ、お、俺、緋勇龍麻…」 龍麻の言葉に謎の鬼道衆・風角と炎角は互いに顔を見合わせた(鬼面だけど)。 やがて風角が感心したような声をあげる。 「 ほう、緋勇…ってか? それって暗黒竜を地下に封印したっていう伝説の勇者、緋勇弦麻と同じ名じゃんか」 「 いい名前だなイエ〜」 「 ……? あ、ありがと……」 じりじりと自分に近づきながら品定めしてくる2人に戸惑いながらも龍麻は律儀に礼を言った。 やがて2人はすっかりリラックスしたようになりながら部屋の中央に胡座をかくときょろきょろと辺りを見渡した。 「 ふーしかし疲れたな。さっきは剣で突かれたからマジ痛かったしよ」 「 イエ〜俺も〜」 「 あ、ご、ごめん…。大丈夫だった?」 「 ん? ああ、平気平気。こんなん、いつも御屋形様にやられてる攻撃に比べたら大した事ねーから。えっと、ところであんたはこの屋敷の人?」 風角の質問に龍麻はふるふると首を横に振った。 「 あ、んーん。俺は違う。ちょっと泊めてもらってるんだ」 「 あーやっぱり。良かった。じゃあ俺らは敵同士じゃないんだよな」 「 良かった良かったイエ〜」 「 良かった良かった……って、ちっがーう!!!!」 龍麻は思わず飛び退って大声をあげた!! 風角と炎角はぽかんとしている。 「 どうしたんだ、何か俺ら変なこと言ったかな、炎角?」 「 俺には分からない分からないイエ〜」 「 お、お前ら、何リラックスしまくってんだよ…! さっき言ってたろ、青龍の鍵を狙ってるって…!!」 ゼエゼエと息を継ぎながら言う龍麻。危うく2人のペースに巻き込まれそうになっていたが、よく考えたらこの2人は屋敷の侵入者なのである!!(よく考えなくても侵入者) 「 一体何を企んでいるんだっ」 「 何をって……」 風角がつぶやいた時、しかし不意に鍵のかかった扉がドンドンと激しく鳴り響いた。 「 おい、ひーちゃんどうした!? 誰かいるのかそこに!!」 「 京一…っ」 龍麻がはっとして部屋の入口に視線をやると、既に醍醐やアランもいるのだろう、龍麻の声を聞きつけた3人が扉をぶち破らんほどの勢いで騒いでいた。 「 あ、やべー…。炎角、今夜はやばいぜ。退散だ」 「 オ〜イエ〜。アランは強いからなイエ〜。退散退散〜」 「 え、と…。あ、ひーちゃんってあだ名なんだな? すっげえ可愛いなあ」 「 イエッス! 俺も気に入った! 高貴な名前! ひーちゃん様また会おうぜイエ!!」 「 ひーちゃん様か! そりゃいいな! うん、俺もこれからひーちゃん様って呼ぶな! また会おうぜ、ひーちゃん様!!」 「 ちょ…お、お前ら一体…!!」 「 俺たちは鬼道衆!! 覚えておいてくれよ、ひーちゃん様…!!」 「 イエ! 憎き徳川をやっつける!! 俺らは鬼道衆鬼道衆イエ〜!!」 「 でな、俺らの御屋形様は九角天童様って言うんだっ。いつかひーちゃん様にも会ってもらいてーな!!」 「 待っ…!!」 「 ひーちゃん!!」 バンッと京一が扉をぶち割って入ってきた時には―。 「 ………何なんだ」 「 ひーちゃん…っ!?」 「 …………」 「 ひーちゃん何があったんだっ!」 「 龍麻、大丈夫か!!」 「 アミーゴ!!」 「 ……あ、俺は大丈夫……でも……」 龍麻は茫然としながら、改めて2人がいた場所に目をやった。 どうやって消えたのだろう、おかしな2人組の姿はもうどこにもなかった。 龍麻は「変な鬼道衆」の2人、風角と炎角と知り合った!! しかし仲間を示す《不思議なカード》にこの2人の絵柄は見つからなかった!!2人は仲間対象者ではなかった!! 《現在の龍麻…Lv13/HP80/MP50/GOLD5242》 |
【つづく。】 |
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