第47話 陰陽の竜 |
小蒔が仲間になった! 醍醐が仲間になった! マリィが仲間になった! …少しうざいから今まで避けてたけど、仲間が増えた時の音楽! ンチャチャチャチャチャチャチャ♪チャチャチャチャチャチャチャ♪チャラララララララララララリ〜ラ〜♪ 「 ふう…。というわけで」 「 何がどういうわけなんだよ(汗)?」 何やら異様に疲弊したような醍醐を見ながら、龍麻は自身でも疲れたように息を吐いた。 すると傍にいた小蒔がこれまた仲間内で一番ぐったりしているウゴーを抱えながらハッとしたようになって言った。 「 ちょっとちょっとひーちゃん! ひーちゃんこれで5人仲間にしちゃってない? 人数オーバーだよ!」 「 え?」 「 ほら、アラン君と、このウゴーでしょ? それにボクとマリィと醍醐クンで…仲間が5人になってる! 確か4人までじゃなかったっけ?」 「 そういえば…」 「 ふぉっふぉっふぉっ……その心配には及ばん」 「 あ!」 その時、一体いつの間に現れたのだろうか、龍麻たちのすぐ目の前に見知らぬ老人がにこにこと笑って立っていた。 「 貴方は…」 「 龍山先生! まさか我々の後を…!?」 しかし龍麻が訊こうとした瞬間、醍醐が焦ったようになって声をあげた。 「 いけません先生、ここはまだ危険です! この森の結界も解けかけておりますし…今はまだ村の方に避難されていた方が…っ」 「 何を言うておる。結界が解けたのはこのわしがここを離れたが故。第一、ここはモンスター達の唯一の避難場所じゃ。わしがここを退くわけにはいかぬ」 「 し、しかし…!」 「 醍醐、この人醍醐の知り合いなの?」 「 ひーちゃん、このモンスターの御爺ちゃんは醍醐クンの武術のお師匠様なんだって」 小蒔は戸惑う龍麻に逸早くそう言い、それから「ボクたち、お爺ちゃんにひーちゃん達がこっちに来てるって聞いたから急いでやって来たんだよ!」と付け足した。 「 あの…?」 「 ふぉふぉふぉ…さて、勇者・龍麻よ」 「 !」 突然自分に向き直り、そんな事を言ってきた老人に龍麻ははっとして口を閉ざした。 白髭を豊かに蓄えた落ち着いた風貌の老人はそんな龍麻に気さくな声で言った。 「 わしはモンスター爺さんじゃ」 「 は、はあ…」 「 現在、世の人々は多くの凶悪モンスターたちによって日々恐怖に満ちた生活を強いられておる。しかし…モンスターの多くは元は害のない動植物…。浄化魔法や魔物馴らしによって元のおとなしい生物に戻るやつはいっぱいおる。わしはそれ以外のモンスター…動物に戻れないままのやつじゃな、それらを保護し、人間と共に旅が出来るものたちを預かっておるのじゃ」 「 じゃ、じゃあこのウゴーも元はおとなしい何かの動物だったんですか!?」 「 ん…それは異界からやってきた元々の異形じゃな」 「 あ、そ、そうですか(汗)」 「 しかしそういったものたちがこちらの世界に彷徨い出て来てしまった事とて、別段そやつらのせいではない。…全てはこの世を闇の混沌へ落とそうとする諸悪の根源…魔王のせいじゃて」 「 魔王?」 「 ひーちゃん! 何だか最近になって特にひどくなっていってるみたいなんだ! 世界がさ!」 「 え…」 小蒔の言葉に龍麻はどきんと胸を鳴らした。 世界は今どうなっているというのか。 「 ふぉふぉ…まあ積もる話は中でするとしようかの。そのモンスターも随分衰弱しておるようだし」 「 あ、ウゴー!」 「 ウゴ〜…へろへろ(涙)」 「 フォフォ…なあに、わしが結界を張り直せば元気になる。ともかくは中へ」 龍麻はモンスター爺さん・龍山と知り合った! 龍麻たちはモンスター爺さんの家の中に入った!!(ただし、アランとマリィには小屋の外の見張りとしてその場に残ってもらった!) ××× 「 その昔、この世界は偉大な2人の神によって支えられていたと言われておる」 モンスター爺さん・龍山は、ウゴーに何やら液状の薬を飲ませた後、切り株のテーブルを囲んでいる龍麻たちに突然そう切り出した。それから自らもテーブルの一角にあった木の椅子に腰かける。 「 これを見るが良い」 そして龍山は龍麻たちに一枚の羊皮紙を広げて見せた。 「 神は時に我等人間のようなお姿をする事もあったが、大抵は…これ、このように巨大な美しい竜のお姿で大地を見守っておられた」 「 竜」 「 真っ黒と真っ白だ!」 小蒔がはーと息を吐きながら絵に描かれている竜に顔を近づけた。確かにそこには黒い墨で描かれた竜と、細い線だけで象られた白い竜が互いに交じり合うようにして描かれていた。 「 陰陽の理」 モンスター爺さん・龍山はそう言ってからゆっくりと龍麻に視線を向けた。 「 黒き龍は闇夜を持って人々に安らぎを、白き龍は光を持って人々に活力を与えておった。そうして世界は均衡を保っておったのじゃ。しかし…その均衡を壊した者がおる」 「 そ、それがさっき言っていた魔王…とかいう奴ですか?」 龍麻が訊くと、龍山は不意に視線を外し、突然素っ頓狂な声をあげた。 「 そういえばおぬし、徳川の如月に会ったそうじゃの」 「 え?」 「 龍山先生、あの者をご存知なのですか?」 これに驚いたような反応を示したのは醍醐だった。 「 先生があの者と知り合いとは初耳です」 「 知り合いという程でもない。薬の調合に使う物を手に入れる際、ちょいと話したくらいでな」 「 ボクたちは醍醐クンがモンスターお爺ちゃんとお知り合いだったって事にも驚いたけど」 小蒔がすかさずそう言って龍麻に同意を求めた。 小屋に入る時にも小蒔は龍麻に言っていたのだが、醍醐は旅先で出会ったこの龍山に師事する事によって多くの武術や魔術を学ぶ事が出来たらしい。そうして暫く修行を重ねた後、この近くの土地でリビングデッド佐久間を始めとしたモンスターから人々を護る役割を買って出ていたようなのだ。 「 俺は先生や龍麻と違って魔物ならしなどの特技は持ち合わせていないからな」 醍醐は申し訳なさそうにそう言ったが、龍山は軽く笑ってから首を振った。 「 それぞれにそれぞれの役割がある。それで良い」 龍山は言ってから再び龍麻に向き直った。 「 その話は良いのだが…如月がおぬしの事を気にしておった」 「 え…?」 「 まだ生きているか、とな」 「 な、何だそれ…っ」 思わずむっとして龍麻が抗議の声をあげようとした瞬間、しかし龍山はそれを遮って自らが口を開いた。 「 勇者・龍麻よ。最近、徳川から秋月までの行路で大きな地殻変動があった事は知っておるな?」 「 あ…はい」 「 わしが留守をしていたのもその為じゃ。あれによって多くの異形が世界各地へと飛び出し、また凶悪化したモンスターも一気に増えた。徳川や秋月と言った大国はまだそれほどの被害は出ていないようじゃが、その周辺の町や村は大変じゃて」 「 そ、そうなんですか…?」 「 それと同時に各地で様々な呪いが氾濫しておる。その騒動を起こしているのが…どうやら《鬼》と名乗る者たちらしい」 「 鬼道衆…!?」 「 ……如月はそちらの討伐にも忙しくてな。徳川ではただでさえくだらぬ騒動が絶えぬというのに、ちとあやつが気の毒になる」 龍山は一方的にそれだけを言ってからふうとため息をつき、背後でぐっすりと眠り込んでいるウゴーを見てから素っ気無く言った。 「 この盲目の者は暫くわしが預かろう。おぬしたちは徳川へ向かうといい。おぬしたちにはあやつの…如月の手が必要じゃし、奴もまた然りじゃ。そして如月を訪ねれば…自ずと今の世界の様子も分かる」 「 …………」 2人の神の話も途中だったというのに、しかし龍山はそれ以上の話を龍麻たちにしてくれようとはしなかった。 しかし、これだけは分かった。 今、世界で大変な事が起ころうとしているということ。 4神の鍵を取り戻すべく、鬼道衆たちを追わなければならないということ。彼らが放っているらしい呪いを止めること。 そして、如月翡翠に会うということ。 「 行こう…っ」 龍麻はがたんと椅子を蹴って立ち上がった。 龍麻はウゴーを仲間から外した!龍麻は休まず、モンスター爺さんの家を出た! 現在の仲間は、青龍のアラン、白虎の醍醐、朱雀のマリィ、そして桜井小蒔である! 《現在の龍麻…Lv13/HP65/MP50/GOLD5755》 |
【つづく。】 |
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