第48話 その見据える先 |
モンスター爺さんやウゴーと別れて白蛾の森を出た龍麻は、ふと思い出したようになって醍醐たちに不思議そうな視線を向けた。 「 そういえば、醍醐たちはモンスター爺さんに教えられてここに来たと言っていたけど、何で俺たちがこっちに来ているってモンスター爺さんは分かったの?」 「 うむ、それはな…」 しかし醍醐が龍麻に答えようとした、その時である。 「 う〜ふ〜ふ〜。それは〜ミサちゃんのお陰〜」 「 わ!!」 仲間の1人、裏密ミサが現れた!! 「 裏密…お前、急に現れるのはやめろ(汗)」 醍醐はその不気味なオーラが苦手なのか、裏密の突然の登場に仲間内で1番ぎょっとしたようになって仰け反った。……が、すぐに立ち直ると、恨めしそうに口を尖らせた。 「 お前は何故そう龍麻の行き先が分かるんだ」 「 あれ…? モンスター爺さんが教えてくれたんじゃないの?」 「 あ〜ひーちゃん。ボクたちはモンスターお爺ちゃんからひーちゃん達の事を聞いたんだけど、そのモンスターお爺ちゃんはミサちゃんに聞いたみたいなんだよね。ひーちゃん達の行方」 「 そう…なんだ?」 「 ミサちゃんのペットもお世話になっているからね〜。その先の名もない村で偶然お会いしたから〜」 「 名もない村?」 「 あ、この先に本当に小さい村があるんだよ。地下通路と繋がっているひっそりとした所でね」 首をかしげる龍麻に小蒔がそう説明した。それから自分も龍麻と話したいとばかりに身を乗り出す。 「 あのねえ、ひーちゃん。ボクたちは醍醐クンの予想を頼りにその名もない村近辺で佐久間を探していたんだ! 佐久間は普段は人里離れた森や山に出没する事が多いんだけど、人に飢えると近くの村に現れる事も多いから」 「 奴がよく出没する山から1番近い人里と言えば、そこの村だったからな」 「 そこでマリィたち、御爺ちゃんに会ったんダヨ!」 マリィも龍麻に懐きたいのだろう、片手をぎゅっと掴んでくると嬉しそうに見上げてそう付け足してきた。 その後を再度醍醐が続ける。 「 村に立ち寄られていた龍山先生からお前の事を聞いてな。それで俺たちは白蛾の森へ向かったというわけだ。……ああ、その途中であの岩角にも出くわしたわけだが…」 「 あ、何かあいつもそんな事言ってたっけ」 龍麻が思い出したようにそうつぶやくと、今度はアランが苦笑したようになって両肩を上げた。 「 アイツ等は何故かボクたちの鍵を執拗に狙ってタ。醍醐クンもそれでマークされてたのでしょうネ」 「 俺は鍵なんぞ持ってなかったがな…」 「 うふふ〜それはまあ〜良いとして〜」 一通りの会話が済んだ後、皆の中央に立つようにして裏密が言った。 「 ひーちゃんは〜。これから奪われた4神の鍵のうち3つを鬼道衆たちから取り返さなきゃならない〜」 「 う、うん。裏密さんって何でもお見通しだね」 「 いや〜ひーちゃん、まだミサちゃんって呼んでくれない〜」 「 ………(汗)」 「 で、お前は何しに現れたんだ?」 「 うふふ〜。予言をしに来たの〜。これからの旅の行方を見定めよう〜」 裏密はそう言うと懐から手のひらに乗るくらいの水晶玉を取り出し、それをふっと宙に浮かした。 「 うわ…」 龍麻が驚いたようにその玉の行方を眺めていると、やがてその水晶は青色を放ち、そして赤色へと変化していった。 そうしてそれが再び裏密の手に戻ると。 「 あのね〜ひ〜ちゃん〜」 裏密は言った。 「 残念だけど、小蒔ちゃんにはパーティ離脱を宣告しなくちゃ駄目だよ〜」 「 え…」 「 えええッ!?」 これに一番大きな声を出したのは、当然の事ながら名指しをされた小蒔だった。 「 ど、どうして!? 何でボクが離脱しなきゃならないのさ〜!!」 「 ひ〜ちゃんは〜。理由が分かるよね〜?」 「 あ……」 そうだった。 これは4神のイベント。青竜、白虎、朱雀、そして玄武。彼らと行動を共にし、そして目的を果たさなければならないのだ。 龍麻は眉をひそめる小蒔を見つめ、哀しそうな瞳を向けた。 「 ごめん、小蒔ちゃん」 「 な…っ。どうして、ひーちゃん!? 玄武君が仲間になるまで、ボクがいたっていいじゃないッ」 「 うん、でも……」 しかしそれではいけないのだと、何故か龍麻の脳は命令していた。 恐らくは、このイベントに関係のない者が加われば、その者の命が危険に晒される。 そんな予感。 「 大丈夫。俺、すぐにこの問題を解決して、また秋月に戻るから!」 「 ……ひーちゃん」 「 小蒔ちゃん。秋月で待っていてよ。裏密さんも」 「 ミサちゃん〜元からそのつもり〜」 裏密はキシシと笑った後、小蒔に向けて片手をゆらりと差し出した。 「 さ、ルーラで帰るよ〜」 「 ………分かった」 暫し黙っていた小蒔は、しかしこくんと頷くと、意志の通った強い目を龍麻に見せて言った。 「 ひーちゃん! 絶対無事に帰ってきてよね! 怪我なんかしたら承知しないよ?」 「 うん」 小蒔のその言葉に龍麻はにこりと笑った。 桜井小蒔がパーティから外れた!! +++ 龍麻、醍醐、アラン、そしてマリイという新メンバーは、小蒔と別れてから龍麻とアランが来た道ではなく、醍醐たちが辿ったという名もない村へと進路を向けた。すぐに徳川へ向かいたいという気持ちも勿論あった。しかしもしかすると佐久間が出没するかもしれないという可能性と、何よりも龍麻自身、現在の村の状況を見てみたいという気持ちが強くあった。モンスター爺さん・龍山が、大国以外の村や町はひどい事になっている言っていた、その事が気になっていた。 そして、現に。 「 フリーズショット!!」 アランの攻撃!! 「 グギャアアッ!!」 モンスターに50のダメージ!! モンスターを倒した!! 50の経験値を獲得、400ゴールドを手に入れた!! 「 あ……」 「 龍麻パパ、血が出てるヨ!」 マリィが青ざめて叫んだ。見ると龍麻の腕には知らない間にモンスターによってつけられた傷があり、そこからどくどくと赤い血が流れ落ちていた。 「 大丈夫か、龍麻!!」 醍醐も慌てて駆け寄る。龍麻は焦ったようになって傷口を布で押さえた。 「 ご、ごめん。ボーっとしてた。これくらい大丈夫だから」 「 本当か? 無理をするなよ、連続で出てきているからな。もうすぐ日が落ちるからだろうが…」 「 龍麻パパ、もうすぐ村だから頑張っテ!!」 「 うん……」 そうなのだ。 小蒔たちと別れてから、龍麻たちが向かう先々に凶悪なモンスターが現れる。アランが止めを刺した今の異形で、一体何匹目だっただろうか。果てしなく続くかのような久しぶりのその激しい戦闘に、龍麻は思わず己を飛ばしそうになっていたのだった。 「 ……ッ」 ゼエゼエと切れる息に震える身体。龍麻は必死で深呼吸を繰り返した。今まで戦わずにきたツケが一気にきたという感じだ。 「 龍麻」 するとその時、龍麻たちから少し離れた場所で前方を見つめていたアランが声を出した。 「 え…?」 その、どことなく陰の篭った初めての呼び方に途惑っているのにも構わず、その仲間…アランは龍麻に背中を向けたまま続けた。 「 龍麻。油断イケナイ。ここハ荒野…気を引き締めテ」 「 あ…う、うん」 厳しい物言い。龍麻はごくりと唾を飲み込んだ。醍醐やマリイもぽかんとしてそんなアランの事を見つめた。 「 ……夜がクル」 アランはそんな仲間たちの様子に気づいていないのか、ただ静かにそう呟いた。 「 ア……」 どうした事だろう。 あんなに明るく、ただはちゃめちゃなだけの、そんないつものアランの気配が今はない。 「 アラン…?」 龍麻の声にアランは答えなかった。ただ自らの武器を手にし、どこかびりりと張り詰めたような氣を己に巻きつけたまま。 アランはただ遠くを見つめていた。 《現在の龍麻…Lv13/HP27/MP35/GOLD6840》 |
【つづく。】 |
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