第6話 闇の中の死闘 |
ミステリアスボサツ・美里葵がパーティに加わってからの龍麻ご一行。 龍麻は実に驚きの早さで日々レベルを上げていた! 旅の仲間が増えたという事もあるが、何より京一、桜井、そして美里葵は強かった。 はっきり言って龍麻は後方で突っ立っているだけで、戦っているのはこの3人。けれどレベルは上がるのだ。 持つべきものは強い仲間である。 しかしこんな事なら、もうこの3人が勇者でいいんじゃないだろーか?などと龍麻は思ってしまう。 かと言ってこのまま村へ戻ったとしても、あの父に追い出される事は目に見えているが…。 だから大国へは「一応」行かなければと龍麻は思っていた。(やる気ない勇者) 「 ふー、今日もいっぱい戦ったねー」 「 そうね。でもこの近辺にも随分モンスターが増えたわね…」 夕暮れ時。 そろそろこの辺りで打ち止め、テントを張って休もうかという頃。 美里は商売でこの辺りには何度も来ているが、以前はこんなに荒れた土地ではなかったはずだと龍麻に話した。 「 ふう…ん。やっぱり大国の王様が危惧した通り、この世界に何かが起きているって事かな?」 龍麻が不安そうに言う。すると元気娘・桜井がにこにこ笑って明るい声を上げた。 「 そうだとしてもさ! ひーちゃん勇者がいるんだもん。何が起きたってきっと大丈夫だよ!」 「 え…あ、あのなあ…。小蒔ちゃん、俺、何もしてないのにどっからそんな台詞が出てくるの?」 「 そんな事ないよー! ボクたちを動かしているのはひーちゃんのその笑顔なんだから! ねえ、京一!」 「 龍麻」 「 え? ……あ」 しかしその時、会話を遮断するように京一が龍麻の手首を掴んだ。ひどく真面目な顔をしている。 「 きょ、京一?」 「 お前、怪我してんじゃねェかよ。駄目だろ、痛かったら早く言わきゃ」 「 え…あ、ホントだ」 京一に指摘され、当の龍麻はぽかんとして自分の擦り切れた腕を見つめた。 どこでやってしまったのだろう。ほんの少しだが血も出ていた。 「 あーひーちゃん! どうしちゃったの、大丈夫!?」 「 まあ龍麻…私の接吻魔法でその傷を癒してあげるわ…!」 女性陣も慌てて心配そうな声を上げたが、最初にその怪我を見つけた京一は美里が恐ろしい処置をする前にと、さっさと自分で龍麻のその怪我の手当てをしてやった。 「 あ、ありがとう、京一!」 「 いいさ。今度から気をつけろよ?」 「 うん!」 「「 じとー 」」 ほんわかとした2人の空気を冷めた目で見つめる女性陣。 「 …こほん。それじゃー、テント作って休もう!」 「 そうね。龍麻も疲れたでしょう?」 「 うん。あ、なあ…でもさ。また俺1人なの、テント」 龍麻はなるべく控えめな感じで美里と桜井にそう言った。 美里が仲間になったお陰で、龍麻たちは荒野や森で野宿をする時もテントで休む事が出来るようになっていた。女性の美里が一体どこにそんな荷物を持っているのか不思議極まりなかったが、とにかく少なくとも3つ。夜になると美里はいつも自分のテントを出してくれた。 そう、3つ…。 「 俺と京一、2人で1つじゃ駄目なの?」 「 駄目!!」 「 うふふ…そんなの駄目よ、龍麻」 「 何で? 小蒔ちゃんと美里は2人で楽しそうに1つのテントに入って寝てるのにさ! 俺だって1人で寝るより京一と一緒の方が楽しいんだよ。なあ、京一だってそうだよな!」 「 ……俺がそう言ってもこいつら聞く耳持たねえだろ(ため息)」 「 あったりまえだろ! あーんな密室空間に夜間ひーちゃんと京一を2人っきりにさせるなんて、テントなしで野っぱらで寝るより危険だよ! ね、そうだよね、葵!」 「 うふふ…小蒔に同感よ」 いつの間にやらすっかり仲良くなっているらしい女性陣。 「 そういうわけでひーちゃん、諦めてテントに入る入る! 寂しくなったらボクたちの所に来ればいいよ!」 「 そうよ、龍麻。うふふ…優しくしてあげるから…」 「 龍麻。大人しく寝てろ。絶対テントから出るなよ?」 「 う、うん…分かった(汗)」←京一に言われるまでもなく何かを感じ取っているらしい龍麻 こうしていつものように、龍麻、京一、美里&桜井の3つのテントが夜の森の中に設置された。 そして。 「 う…ん……」 龍麻は割と早くに寝付いたが、その夜は妙にじめじめとして寝苦しかった。 「 あー…水…飲みたいかも……」 一度ごろりと身体を反転させ、龍麻は寝言のように呟いた。 ガサガサッ。 「 ……ッ!?」 その時。 ゴソゴソッ。 バサリッ。 くんくん。くんくんくん。 「 な…何…?」 龍麻のテントのすぐ前。 何か生き物の動く音が聞こえた。 ふんふんふん。 じり…っ。ジリジリジリッ…! 「 は、入って来る…?」 がばりと上体を起こして龍麻はごくりと息を飲んだ。 何だかひどく嫌な予感がする。 テントの入り口に視線を集中させ、龍麻は急に背筋が寒くなるのを感じた。 と、その瞬間――。 「 グッハーッ!!!」(ヨダレ全開、体液バリバリ!!) リビングデッド・佐久間猪三が現れた!! 「 ぎゃー!!!!!」 龍麻は精神的ダメージを受けた!! 「 グハハーッ!! ク…? クククククチ…クチビ…ッ!!!」 リビングデッド佐久間のターン!!(遊○王かよ!) しかしリビングデッドは様子を見ている!! ( こここ怖いよーッ!!!) 龍麻のターン!! しかし龍麻は身震いしている!! 声も出ない!! 「 クチビルーッ!!!!」 リビングデッド佐久間の攻撃!! 佐久間は龍麻のクチビルを狙っている!! もの凄い形相で龍麻にキスをしようと襲いかかる!! 「 ぎゃー!!!」 龍麻は精神的ダメージを受けた!! 体力にも影響、30のダメージを受けた!! 龍麻は戦意を失った!!(またかよ!) 「 龍麻!!」 京一が現れた!! 「 グア!? ジャマッハーッ【怒】!!!」 リビングデッド佐久間の怒りと嫉妬の攻撃!! ミス!! 京一はダメージを受けない!! 「 当たるかよッ!」 「 グッガー!! クチビルクチビルーッ!!!」 リビングデッド佐久間・規格外の攻撃!! 佐久間は京一は無視し、龍麻のクチビルを狙った!! 「 やだーッ【涙】!!!」 ミス!! 龍麻は何とかクチビルを守った!! しかしまたしても精神的ダメージを受けた!! 体力にも影響、20のダメージを受けた!! 「 こんの変態モンスター…! 龍麻、俺の後ろに回れ!!」 「 京一〜【泣】!!」 京一の攻撃!! 会心の一撃!! リビングデッド佐久間は500のダメージを受けた!! 「 グハーッ!!」 リビングデッド佐久間を倒した!! 1の経験値、1ゴールドを手に入れた!! 戦闘終了。 「 ………はぁ…(涙)」 龍麻はへなへなと座りこんだ。テントはめちゃくちゃ、後から駆けつけてきた桜井と美里はその惨状に茫然とした。 「 ひーちゃん! 一体何があったの!?」 「 龍麻…! まあ…大丈夫? 私の接吻魔法で貴方の心の傷を…」 「 龍麻」 「 京一!!」 しかし龍麻は自分を助けてくれた京一にひっしと抱きついた。 面白くない桜井と美里……。 「 ううう…恐ろしかったぁ…。あんな恐ろしいモンスターは初めてだよ〜!」 「 ……俺もだよ(違う意味でな)」 「 それにしても何だったの? 京一が消滅させる前にちらっと見たけど、世にも恐ろしい醜い顔してたよね」 「 欲望の固まりね…。明らかに龍麻だけを狙って襲いかかっていたのも気になるわ」 「 うっ、気持ち悪…っ」 想像するだに恐ろしい。龍麻は縋りついている京一の胸に思わずゲロを吐きそうになった。 しかし、そうなる前に新たなる人物が4人の前に姿を現した。 「 そこにいるのは誰だ?」 「 !?」 全員がその声に反応し、暗闇の中からやってくるその姿に目を凝らした。 ガサガサと茂みが揺れ、そこから現れたのはがたいのある大男だった。 見るからに武道家然とした男。 「 女連れでこんな危険な森を…旅の者か?」 「 そうだけど、貴方は誰?」 皆を代表して桜井が訊いた。男は桜井を見ると丁寧に頭を下げ、言った。 「 失礼。俺はこの近くの寺院に住んでいる醍醐雄矢という者だ。最近この近辺を不死身のモンスターリビングデッド佐久間というのがうろついているので、夜警を強化していたところでな」 「 リビングデッド佐久間ってさっきの!?」 「 何…? キミたちの前に現れたのか!? 狙われたのは貴女たちか?」 醍醐はそう言って桜井と美里を交互に見やった。 しかし2人は同時に首を横に振り、「あっち」と京一に縋り付いている龍麻を指差した。 「 む…君は…」 「 あ…お、俺、緋勇龍麻……」 「 緋勇龍麻…。奴は君を狙ったのか…」 「 う、うん…。怖かった…。クチビルクチビルとか繰り返してさ…おえっぷ…(汗)」 「 あんな化け物はこの辺りにはいなかったと思うのだけれど?」 美里が訊くと、醍醐ははっと我に返ったようになって龍麻から視線を外すと頷いた。 「 うむ。いつの頃からか現れては、美しい者の唇だけを狙い、この辺りを徘徊するようになったのだ。狙われた者はその唇を奪われるまで後をついて回られるという…」 「 えええええっ!? じゃ、じゃあ、そいつはまたひーちゃんの唇を狙って現れるっていうの!?」 「 俺は奴を消滅させたぜ?」 今度は京一が醍醐に言った。しかし醍醐は首を横に振った。 「 何故か倒しても24時間後には復活している…。残念だが…」 「 そ、そんな…! あんな奴がひーちゃんの唇を…唇を狙っ…」 「 小蒔、気持ち悪いことをリピートして私にまで想像させないで。龍麻、大丈夫よ。貴方の可愛い唇は私がきっと護ってあげるから…!」←護ってもらうんじゃなかったのか 「 ボ、ボクだって護ってあげるよ、ひーちゃん!」 「 龍麻。安心しろ。あんな化けもんにお前を指一本触れさせやしないさ」 「 京一…みんな…。あ、ありがとう…」 「 あー、ごほん。それなら、俺もお前たちと共に行こう」 すると突然、醍醐がそんな事を言った。 「 はああ?」 それに対する龍麻を覗いた3人の返答。 「 ご、ごほ…(慌)! 実は、もうすぐ寺院を離れて一人武者修行の旅に出ようと思っていたところなんだ。それにリビングデッド佐久間は俺にとっても因縁の化け物。何せ俺が狙って倒せなかったモンスターなどあれくらいだからな。お前たちと行動を共にしていれば、必ず奴とまた対峙する事もできるだろう。だからだな―」 「 ……醍醐クン、もしかしてひーちゃんに一目惚れしたの?」 「 !? な…なななな何を言っているんだっ(焦)!!」 「 呆れたわ…。堅物そうな顔して私の龍麻に近づこうなんて」 「 ここここら…! お前たち、俺は…!」 「 うん、いいよ。一緒に行ってくれるなら頼もしい!」 けれど龍麻は言った。 「 仲間はたくさんいた方がいいし…。それに強そうだもん。ね、京一もいいだろ?」 「 何人になろうが同じ事だ。俺は構わねェよ」(ため息) 「 うん。じゃあ、宜しく、醍醐?」 「 あ、ああ…! お前はこの俺が護ろう、龍麻!」←もう龍麻呼び こうして龍麻の元にまた1人、頼もしい仲間が加わった。 そして龍麻は以後、この夜に出会った恐ろしいモンスター・リビングデッド佐久間につけ狙われる運命を背負う…! 「 ククク…クチビル……ッ!!」 前途多難な勇者・龍麻…! 龍麻は旅の仲間、醍醐雄矢と知り合った! 《現在の龍麻…Lv09/HP55/MP30/GOLD5300》 《状態異常:龍麻は「金銭感覚ゼロ」という呪いを受けている! この呪いは教会でしか解く事ができない!》 |
【つづく。】 |
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