第127話 久々のレベルアップ |
龍麻の攻撃!! ≪シギャアア!!≫ モンスターに50のダメージ!! モンスターを倒した!! チャラララッチャッチャッチャ〜!!! 龍麻はレベルが上がった!! 300の経験値を獲得、450ゴールドを手に入れた!! 「は、速い…。レベルが上がるのが凄く速い。まだ数戦しかしていないのに」 式の案内を貰ったとはいえ、たった独りで見知らぬ荒野へ出た龍麻は、途中途中で出くわすモンスターと怯むことなく勇敢に戦った。これから先は仲間だけに頼ってはいられない、龍麻自身も戦闘経験を積んでレベルを上げる必要性を強く感じていたから。 しかし、その決意と比して随分と簡単(?)に、龍麻はモンスター数体との戦いだけでレベルを上げた。 「そうか…。あの檀上門のモンスターが倒れた時はレベルが上がらなかったから…。次のレベルまであとちょっとってことだったのかな」 自分なりの答えを口にしてもそれに応えてくれる者はいない。 それでも龍麻はすぐに気を取り直し、頭上をふよふよと浮かぶ式神を見て嬉しそうに笑った。 「ねぇ、君が案内をしてくれるお陰で凄く助かるよ。それに…君のお陰で、俺の仲間も無事なんだって確信できた。ありがとう」 美しい、けれど少し不器用な御門の式神の姿を思い浮かべてから、龍麻はさらに意気揚々と歩を進めた。途中途中でモンスターが現れたが、いずれも今の龍麻でも倒せるレベルだ。グループでやってこられると多少手こずりはしたが、明らかに自分の≪力≫が変化していることを龍麻は自身で感じとっていた。 そして。 「うわあぁ…」 「それ」がはっきりと眼の前に現れた時、龍麻は思わず歓声を上げた。 「凄い…! 何て立派な樹なんだ…!!」 そこにあるのは、巨大な緑の樹木。太い根はどこまでも大地に張り、瑞々しい色の葉は幾重にも連なる枝に惜しげもなく生えそろっていて、その光1つ1つがまるで宝石のように輝いている。如何にも頑丈な枝木には色とりどりの小鳥が何羽も羽を休めていて、楽しそうにさえずっている。 「凄いっ。さっきまでの荒野が嘘みたい、別世界だ! 綺麗過ぎる…!」 「お兄さんは旅の人?」 「え? はい、そうです」 「ようこそ、サクラ王国へ!」 すっかりその大樹に魅入っている龍麻に、街の入口付近に立っていた少女がにこやかに声をかけてきた。大樹はちょうどその街の周辺を守るように立っている為、行商で行き来をする人々も龍麻がいる場所を通り、賑やかである。声をかけてきた少女もそうした商人らの手伝いでそこにいたらしい。 「貴方もサクラ王国のコンテストに参加しに来たの? 貴方、とっても素敵だもの、イイ線いくと思うわ。ほら、サクラ王国はここ、マガミノ街を真っ直ぐ通り抜けた先にあるのよ」 「コンテスト? まがみのまち?」 「あら、知らないの?」 「う、うん。俺は、知り合いの人にここへ行くよう言われてきただけだから。この国はどういう国なの?」 「どういうって言われても…」 少女はうーんと少し考え込んだ後、ぱっと笑顔を閃かせた。 「一言で言えば、女性の国ね! ここは女性がみんな、とても強くて賢い国なの!」 「女性が?」 「そう! 私も仕事でいろいろな街や国を見るけど…。どこの王政も男性中心、男がいばっている所が多いでしょう? あ、女王が統べる鳳鳴国はうちと近いかなって思ったけど…。でも、サクラ王国はたぶん世界で一番女性に優しくて、そして女性の権利が守られている国ね!」 「へ、へえ…そうなんだ」 龍麻には今イチぴんとこない台詞だった。 何せ、龍麻がこれまで出会ってきた女性は、みんながみんな男性に虐げられるようなタイプではなかったし、どちらかというと男性陣の方がタジタジしてしまうような感じだったから…。 「だからね、ここだけの話。男性の貴方は、むやみやたらに威張っては駄目よ」 その時、少女がこそりと囁くように言った。 「え? うん…俺は元々そんないばらないと思うけど」 「それならいいんだけどね。この国を治める女王様はいばった男性が大嫌いなの。可愛い男の子は大好物なんだけど…」 「好物?」 「あ、何でもないわ! とにかく、もっと街の中を見て、王城の方へも行ってごらんなさいよ。きっといろいろ楽しいものが見られると思うわよ!」 「う、うん…。ありがとう」 楽しいものより、秋月や元の場所へ戻る方策が分かる方がありがたいし、もしこの国が、勇者である自分の力を必要としないほど平和で強い国ならば、それはそれで次へ進もうと思うのだが――。 「まぁでもともかく、この国が俺の次の道を示してくれるはずだから。とりあえず、いろいろ中を見てみようかな」 そう独りごちて龍麻は街の中へと入り込んだ。 サクラ王国の城下町、マガミノ街へ―。 《現在の龍麻…Lv22/HP170/MP120/GOLD127250》 |
【つづく。】 |
126へ/戻/128へ |